仮面ライダー斬月・艦   作:はちコウP

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この作品は2015年5月29日にpixiv https://www.pixiv.net/novel/series/452817 に投稿した作品を加筆・訂正した物となります。

『仮面ライダー鎧武』『艦隊これくしょん』の基本設定をベースに独自要素、解釈を詰め込んでおります。

本作における艦娘の設定は公式ノベライズ作品『陽炎、抜錨します!』及び『鶴翼の絆』を参考としております。


※今後、分量が多い話は複数パートに分けて投稿します。


【第八話】part2

 食堂のある建物まで走り着いた貴虎は、息を整えつつ、服や髪に着いた雨水を払い落とした。なるべく雨除けになる物の下を駆け抜けて来たのと、防水加工が施されているおかげで、身に着けた軍服は大して濡れてはいなかった。髪の毛を取り出したハンカチで拭く。多少の湿り気が残っていた気がしたが、大事無いと判断し、後は自然に乾くまで放っておくことにした。

 雨足は一層と強まり、時折稲光が空を白く染め上げていた。その様を一瞥すると、貴虎は食堂へ向け歩を進めていった。

 食堂に入るとテーブルの一画に三人の人影が。

 座っていたのは提督・龍田・天龍で、貴虎に気付いた龍田が手招きをしている。

 天龍は「よう」と手を軽く上げ、提督は貴虎の方を軽く一瞥した後、そのまま食事を続ける。

 食堂の職員から定食の乗せられたお盆を受け取ると、貴虎は三人の座る席へと向かっていく。

「お疲れ様です」

「仕事は順調か?」

 提督が言う。

「はい、丁度一区切りついた所です」

 貴虎は、お盆をテーブルの上に乗せ席に着いた。

「仕事って何やってんだ?」

 隣に座っていた天龍が、声をかけてくる。

「哨戒任務の編成及びスケジュール表の作成だ。暫くは私が担当する事になった」

「ふーん、なるほどな」

 軽く相槌を打ち、天龍はスプーンで目の前のカレーをよそって口に運ぶ。

「面倒くさくねぇか?人の予定をやり繰りするなんて、オレは考えるだけで頭が痛くなってきちまうんだけど」

「この程度の仕事など、何の問題も無い。むしろ楽な部類だ」

「天龍ちゃん、細かい事考えるの苦手だものね~」

「うるせえ、どうせオレは頭良くねぇよ」

 口を尖らせた天龍は、皿を手で持ち、残りのカレーを一気にかっこんだ。

 龍田が「あーん、拗ねちゃ嫌よ天龍ちゃん」と言いつつ、水の入ったコップを手渡した。

 まだ口の中に残るカレーを、天龍は手渡された水と共に飲み干していく。

 天龍の言動を茶化すようにしつつ、一方で彼女を気遣う行動をする龍田。二人が一緒にいる時は、大抵こういった流れが見られる。数日この場所で生活して、これが龍田なりのコミュニケーションの取り方なのだろうと、貴虎は理解していた。

 そんないつものやり取りを眺めつつ、貴虎は食事をとり始める。

「龍田、例の点検工事はどうなっている」

 提督が口を開いた。

「第四会議室の空調工事なら、今日中に終わる予定ですよぉ」

「そうか、なら明日いっぱいで資料と書類の整理を済ませておけ」

「了解しましたぁ」

「第四会議室ってずっと使われないで、書類置き場になってる部屋だよな」

 と、天龍。

「ええ、そうよぉ。だからいっそのこと改装をして、資料の閲覧室にしようって事になったの。それで手始めに壊れたままの空調を整備してもらうの」

「そいつは良いな。あそこ夏場に入ると暑くてたまんないんだよ。書類を探してたら数分と経たずに、汗だくになっちまうんだもんな」

 その暑さを思い出してか、天龍は手を団扇にして扇ぐ仕草をする。

「別棟以外にも空調の整備は入るのだな」

 何の気なしに貴虎が呟くと。

「え?どういうこと貴虎さん?」

 龍田が不思議そうな表情で聞いてきた。

「さっき私と入れ替わりに、空調整備の作業員が別棟にやってきたのだが」

「そんなはずないわぁ。別棟の空調は、この前点検したばかりよぉ」

「そうなのか?では、彼が場所を間違えてしまったという事か?」

「それも無いわよ。作業員さんは、本土から泊まり込みで来ている他所の人だけど、何度もウチに来てる人だから。場所を間違えるなんて事はありえないわよぉ」

「……貴虎、そいつに何か妙な所は無かったか?」

 向かいに座る提督が、真剣な表情で聞いてくる。

「妙な所?……いえ、特には」

「些細な事で構わん、言動、態度、動き。何かしらの接触はあったはずだ」

「私に対し、こちらの責任者かと尋ねてきましたが。あとは、そのまま別れただけで……」

 貴虎の言葉を聞くや否や提督は

「天龍、貴虎すぐに別棟に行ってその作業員を捕まえてこい」

 と命令を下した。

「え?いきなりどうしたってんだよ提督」

 天龍が戸惑いの声を上げる。

「軍の関係者は責任者なんて言い方はしない、階級や役職で呼ぶのが普通だ。が、それ以前に何度もこの基地に出入りしている人間が、俺の顔を知らないはずはない。貴虎が出会ったそいつは、ニセモノだ」

「っ!?」

「マジかよ?」

 貴虎と天龍は驚愕する。

「ちっ!わかった。行くぜ貴虎!」

「ああ!」

 席を立った二人は即座に駆け出した。と、そこへ

「大変大変大変だよーーー!!!」

 那珂が大慌てで食堂へと駆け込んできた。そして、丁度出て行こうとしていた貴虎に勢いよく衝突してしまう。

「うわわぁ!」

 ぶつかった衝撃で那珂は後ろに倒れそうになるが、貴虎が素早くその腕を掴み、引き寄せた。

 おかげで抱き抱えられるような形になりつつも、なんとか那珂はバランスを保って立ち直る。

「大丈夫か?」

 貴虎の問いかけに対し

「あ、ありがとう……」

 と那珂は言う。突然の衝撃に彼女は呆けていたが、ハッと我に返ると、素早く提督の元へ駆けていき大声で告げた。

「人が、倒れて縛られてた!」

 

          ――――――――――――――――――――――――――――――

 話は少し前に遡る。

「すみません那珂さん。書類を運ぶのを手伝わせてしまって」

「気にしなくていいよ。後輩を大切にするのも、先輩アイドルの大事な務めなんだから」

「ありがとうございます」

 作戦立案、研究などに使用した書類の片づけを命じられた吹雪。そのために第四会議室へ向かう途中で、彼女は那珂と出会う。那珂は事情を聞くと、進んで手伝いを始めたのであった。

「それにしても~カワイイ後輩アイドルが出来て、那珂ちゃん幸せだよ~」

 吹雪へ向けて那珂は、満面の笑顔を向ける。

「ア、アイドルっていつの間に……」

「え?こないだ一緒に踊ったじゃん。だから吹雪ちゃんもアイドルの仲間入りだよ!」

 一層にこやかになった笑顔で、嬉しそうに告げる那珂。が、その一方で吹雪は乾いた笑い声を漏らす。

「は、あはは。わ、私には那珂さんみたいなパフォーマンスするのは、荷が重いかなって……」

「あ!それダメ!」

 那珂がピシャリと言う。

「あ、え?」

「那珂さんなんて、他人ギョーギな言い方は可愛くないからダメだよ!那珂ちゃんって呼んでね」

「え……でも先輩にちゃん付けするのは、ちょっと」

「いいからいいから、呼んでみて。せーの!」

「えーっと……那珂、ちゃん?」

「うん!その調子!ハイもう一回!」

「な、那珂ちゃん!」

「うん!吹雪ちゃんベリーグッド!」

 満面の笑みを浮かべる那珂。

「こんな風に呼び合えば、み~んなすぐに、と~っても仲良くなれて、自然に笑顔になれる気がするでしよ?」

「は、はあ」

「女の子はみんなアイドル!笑顔が一番なんだからね!」

 資料を小脇に抱えたまま、片手でVサインを作り、那珂はその手を高く掲げる。

 吹雪は戸惑った様子で、マイペースに話す那珂を見ていたが、次第にその屈託の無い笑顔に釣られるように、笑みを浮かべていたのだった。

「そうですね、笑顔は大切です!」

「分かってきたねー吹雪ちゃんも。それじゃあ、みんなをもっと笑顔にするために、後で歌とダンス練習をしよう!」

「そ、それは遠慮したいかな、なんて……あ、そろそろ会議室ですよ!」

 流石にこれ以上付き合うのは危険だと判断したのか、吹雪は目的の会議室へ向け駆け出していく。

「も~連れないな~吹雪ちゃんってば」

 那珂は不満げに口を尖らせながら、吹雪の後を追った。

 

 吹雪がゆっくりとドアを開く。するとドアの隙間から、むわっとした熱気と古ぼけた紙の臭いが溢れ出す。

 その不快さに吹雪は顔をしかめた。

「うわっ!何これ!」

 遅れてたどり着いた那珂が、目を丸くする。

「この部屋は空調が壊れてて、いつもこの調子なんです」

「う~入りたくないなあ」

「私も嫌ですよ。でもワガママは言ってられません。さっさと用事を済ませちゃいましょう」

 吹雪は入口のそばのスイッチに手をかけた。すると、数度の点滅の後に、天井に備え付けられている蛍光灯が室内を照らし出す。

「さあ、行きましょう。那珂ちゃん」

「う~……ムシムシして気持ちわる~い」

 那珂は部屋の暑さに顔をしかめつつ、額を拭う。入って間もないというのに、籠っていた熱気のせいで額に汗がにじんでいた。

「……ううっ……う」

「あれ?那珂ちゃん、何か聞こえませんか?」

 那珂の前を歩く吹雪が振り返る。

「え?」

 吹雪に言われ、那珂は耳を澄ましてみる。

「……う、うう」

「何だろう……誰かの、声?」

 謎の声らしきものの出所を探り、部屋の中を見渡す二人。

「あっ!あそこです!」

 吹雪が指さした先にある机の影で、何かが蠢いた。

 那珂と吹雪は顔を見合わせて頷くと、ゆっくりその場所へと近づいていく。

「!?」

 二人は驚愕した。そこには猿ぐつわを咬まされ、両手足を縛られた下着姿の男が横たわっていたのだった。

「だ、大丈夫ですか!?」

 吹雪は倒れている男の傍に駆け寄り、猿ぐつわに手をかける。どうやら男は気を失っているようだった。

 続いて那珂は、男を縛り上げているロープを解こうと試みる。しかし固く縛られたロープは簡単には外れない。

 吹雪が猿ぐつわを外すのとほぼ同時に、男が意識を取り戻した。

「うっ……こ、ここは?」

 呻くように声を絞り出した中年の男。吹雪はその顔に見覚えがあった。

「あなたは!」

「知ってるの吹雪ちゃん?」

「はい、時々本土からやって来る作業員さんです。横須賀鎮守府所属のはずなんですけど、那珂ちゃん知らないんですか?」

「横須賀って働いている人がいっぱいいるからなあ。那珂ちゃん、この人の事はわかんないや」

「き、君達は、ここの艦娘か?」

「はい。それにしても、一体どうしたんですか?」

 吹雪の質問に対し、朦朧とする意識の中、男は記憶を辿りだす。

「う……俺は、空調整備のために、この部屋に来て……そうだ、突然後ろから頭に衝撃を受けて!」

「誰かにぶたれちゃったって事?」

 那珂の言葉に男は頷く。

「一体誰がこんな事を……」

「とにかく提督に知らせなきゃ!那珂ちゃんが行ってくる。吹雪ちゃんは作業員さんを見ていてあげて」

「はい、よろしくお願いします!」

「作業員さん、ロープ切る道具も持ってくるから、ちょっと我慢しててね」

 そう告げると那珂は、提督達の元へと駆け出して行った。

 

 

「……やはりな」

 報告を聞いた提督は、貴虎と天龍へ目配せをする。それに無言で頷くと、二人は別棟へ向け全速力で駆け出した。

「え、何?どういう事?」

「緊急事態よ、理由は走りながら話すわぁ。那珂ちゃんついて来て、みんなを集めるわよぉ!」

「う、うん!」

 そうして龍田と那珂も食堂を後にする。

 独り残った提督は静かに目を閉じ、深呼吸をする。そして、ゆっくりと車椅子を動かし始めた。

 

          ――――――――――――――――――――――――――――――

 

「一通り見て回ったけれど大した物は無いな。偶然たどり着いた世界、期待するだけ無駄か」

 別棟の廊下を進みつつ男は一人ごちる。手持ち無沙汰なのか、かぶっていた作業帽を手に取り、右手でクルクルと

回している。

「さて、ここが最後の部屋かな」

 男は貴虎の部屋のドアを開けて、足を踏み入れる。

 廊下からの光が差し込む薄暗い室内を、ぐるりと一周歩いてみるが、男の目に留まるような逸品は見受けられない。

「机にベッド、本棚……他の部屋と同じような、殺風景とした部屋だね。それと、土だけが入った鉢植え。寂しさが際立つなあ」

 男は完全に興味を失った様子で、手にした作業帽を目深にかぶり直すと、部屋を後にしようとした。

 と、その時

「ん?」

 突如として目の前のドアが、部屋全体が、淡い黄金色に染まりだす。

 男は何事かと後ろを振り返る。すると、机の上に置いてある鉢植えから光が溢れだしているのが目に映った。

「これは……」

 机の上の鉢植えを男は手に取る。すると、鉢植えの中央部の土がわずかに盛り上がり始めているのが見られた。

 覆いかぶさる土を押しのけて、何かが飛び出そうとしている。男は固唾を飲んでその様子を見つめる。

 そして一瞬の後、土を掻き分けるようにして双葉が中から姿を現した。宝石のように透き通る緑色をしたそれは、黄金色の輝きに包まれている。やがて溢れ出る光は徐々に弱まってゆき、部屋は再び薄暗い闇に包まれる。

 その奇跡とも呼べるような光景を見ていた男は笑みを浮かべ、植木鉢を手に取り静かに、だが興奮を抑えきれないといった様子で呟いた。

「素晴らしいね、こいつは大したお宝だ」

 と、その時、一帯に警報音が鳴り響きだす。

「意外と早かったね。まあ思わぬ収穫もあったし、そろそろ退散するとしよう」

 そう呟くと、男は手にした帽子をかぶり直し、植木鉢を抱え、貴虎の部屋から飛び出した。そして部屋のすぐ近くの階段を駆け下りはじめる。丁度その時、階段の踊り場へと、白い軍服に身を包んだ男が駆け込んで来た。

 

「何をしている貴様!」

 貴虎は階上の男へ向け叫ぶと、全力で階段を駆け上がる。対して侵入者は身をひらりと翻し逃走を図る。

 追跡してくる貴虎を尻目に、廊下を一目散に駆けていく。その先には、もう一つの階段があった。探索する間に男は建物の構造を把握していた。そのまま一気に階下へと駆け下りて、貴虎を撒こうという算段である。しかし……

「もう逃げ場はねぇぞ!」

 反対側の階段を昇ってきた天龍が、男の退路を塞ごうと立ちはだかった。男は、天龍の姿を確認すると同時に急停止する。

 そして後を追いかけてきた貴虎も、男と数メートルの間合いをとって立ち止まる。そのまま飛びかかる事も出来たが、万が一に備え警戒するに越したことはない。

「う~ん、まさかこんなに早く来られてしまうとはね。まいったまいった」

 挟み撃ちにされ、不利な状況に陥ったにも関わらず、おどけた調子で男は言う。

「随分と余裕だな。舐めやがって」

「無駄な抵抗はやめて、大人しく投降しろ。さもなくば……」

 男に向けて警告を告げる貴虎は、彼の手にしたある物に気付き、眉をひそめた。

「その鉢植えは!?」

「悪いけど、こんな所で捕まる気は無いよ。こんな素晴らしいお宝を手に入れたんだから」

 見せびらかすような仕草で鉢植えを振ると、男は廊下の窓へと向き直り、それをぶち破って外へと飛び出した。

「なっ!?」

「ここは三階だぞ!マジかよ!?」

 驚愕する貴虎と天龍は、男が破った窓へと駆け寄り、下に目を向ける。だがそこに人影は無い。

「こっちだよ、お二人さん」

 顔を上げ、声のした方向へ目を向ける貴虎と天龍。するとそこには、木の枝の上に立つ男の姿があった。

「じゃあね」

 ひらひらと手を振ると、男は軽やかに跳躍し、地面へと降り立つ。男の姿は夕闇と、生い茂る木々に紛れて、あっという間に見えなくなってしまった。

「くそッ!逃げられた!」

 天龍が苛立たしげに、窓枠を拳で叩く。

「追いかけるぞ!」

 と言うや否や貴虎は、窓枠に足をかけ跳躍した。

 貴虎は地面へと落ちる瞬間に、体を転がし衝撃を分散させる。転がる体が、水たまりに溜まった雨水を周囲に飛び散らせた。

 勢いよく数回転した貴虎は、何事もなかったかのように、スッと立ち上がる。地面がぬかるんで柔らかくなっていたおかげで、体にこれといった痛みは無かった。

 と、後ろの方でバシャリ!ドスン!と音がする。

 振り返ると、天龍が尻餅をついて倒れているのが目に映る。どうやら着地の際に足を滑らせたらしい。

「大丈夫か?」

 差し伸べられた手を取り、天龍が立ち上がる。

「俺としたことが、滑っちまった。でも大した事ねえよ」

 そして、貴虎と天龍は男の後を追い、森の中を駆けていった。

「しっかし、あの男と言いお前と言い、ムチャしやがんな」

「この雨と地面の状態なら大丈夫だと思った。お前の方こそ平気なのか?」

「へっ!あれくらいで怪我するほど、ヤワな鍛え方してねぇよ」

「そうか。だがそれにしてもあの男、何処へ……」

「このまま闇雲に二人で走ってもしょうがねぇな。二手に分かれようぜ」

「ああ」

「オレは港に近い方へ行ってみる。ヤツがこの島から出るとしたら、そこしか無ぇからな」

「わかった。私はこのまま森の中を捜索する」

「おう、じゃあな!」

 天龍は右手側に進路を変えて走りゆく。その後ろ姿を一瞥すると、貴虎も正面へと駆け出すのであった。

 

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