仮面ライダー斬月・艦   作:はちコウP

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この作品は2015年8月6日にpixiv https://www.pixiv.net/novel/series/452817 に投稿した作品を加筆・訂正した物となります。

『仮面ライダー鎧武』『艦隊これくしょん』の基本設定をベースに独自要素、解釈を詰め込んでおります。

本作における艦娘の設定は公式ノベライズ作品『陽炎、抜錨します!』及び『鶴翼の絆』を参考としております。


※今後、分量が多い話は複数パートに分けて投稿します。


【第九話】part1

「ハァハァ……」

 雨の降りしきる森の中を夕張は駆けていた。その手には歪んだ火かき棒が握られている。

 彼女らが雨宿りしていた山小屋の扉を破壊し、入り込んできた灰色の怪物。その姿に初めは面食らったものの、夕張は果敢に立ち向かい、陽炎と黒潮を逃がす時間を稼ぐことに成功した。

 そして夕張自身も、怪物を火かき棒で滅多打ちにして怯ませた隙に逃げ出すことが出来た。怪物が想像よりも強力な戦闘力を持っていなかったのが幸いだった。

 怪物から逃げる夕張は、後ろを振り返る。その視線の先には薄暗い森の木々があるのみで、怪物の追ってくる様子は見受けられない。どうやら一先ずは撒くことが出来たらしい。

「ふぅ」

 安堵の溜息を吐き、夕張は走る速度を少し落とす。全力疾走して来たせいで、ひどく体が疲労しているのがわかる。正直言ってすぐにでも休みたいところだが、立ち止まるわけにはいかなかった。万が一あの怪物が基地に辿り着いたら、その場にいる人を襲わないとも限らない。それに陽炎と黒潮の安否も気になる。

「……痛ッ!」

 脇腹の辺りに痛みを感じた。見ると上着が裂け、その下に軽いひっかき傷があるのがわかった。

(あ~~、あの時に……でもこの程度の傷、気にしてなんかいられないわ!頑張って走らなきゃ!)

 と、自分を奮い立たせつつ夕張は、疲労の溜まりつつある脚を動かし続けた。

 

          ――――――――――――――――――――――――――――――

 

「て……提督なの?」

「あ、ああ……て、提督が……ガイコツの怪人になっちまったぁぁぁ!!」

 提督の変貌する様を間近で見ていた龍田と天龍が、驚きの声を上げる。

 後ろに控えていた鳳翔達も驚愕し、目を見開いていた。

 貴虎とて例外ではなく、突如として変身した(えびす)提督を困惑の眼差しで見つめている。

「提督、あなたも……」

 その一方で

「フフフ……」

 ディエンドだけが不適に笑っていた。

「まさか、キミだったとはね。帽子に隠れてよく顔が見えなかったから気付かなかったよ」

「ほう、俺の事を知っているのか」

「ああ、勿論。僕は全てのライダーに関する知識を持っている。でなければ世界を巡るのに色々と不便だしね。それに、以前キミの力を借りて戦ったこともある。まあ言ってみれば、キミには間接的とはいえ恩があるようなものだけど……」

 パチンと指を鳴らす。

「今はそんなの関係ないね」

 ディエンドの合図でライオトルーパー達がスカルに襲い掛かる。

 対してスカルも駆け出して応戦した。

 トルーパーの一体が、短剣型になった固有武装のアクセレイガンを振りかざす。スカルはその短剣が振り下ろされるより先に、敵の腹部へと拳を叩き込む。重い一撃を受けたトルーパーは堪らず後ずさる。

 攻撃後の隙を狙い、スカルに向けて残り二体のライオトルーパーも、左右から短剣を振り下ろした。

「はっ」

 スカルは床を転がって、その攻撃をかわす。振り下ろされたアクセレイガンの刃が、床を切り裂き傷を刻んだ。

 すぐさま立ち上がり、体勢を立て直したスカルが天井を仰ぎ見る。そして再び敵に対して向き直った。

「貴虎、奴が盗った物は俺が取り返す。自分の仕事場であんなコソ泥に盗られたとあっちゃあ、俺の沽券に関わるからな。夕張の事はお前に任せる。陽炎、貴虎を案内してやれ」

 目の前の敵を見据えたまま、後ろの貴虎と陽炎に向け提督は告げた。

「指令!?でも!」

「わかりました、よろしくお願いします」

「貴虎さん!?」

「行くぞ、陽炎。私を夕張の所まで導いてくれ」

 突然下された命令と、目の前の状況に狼狽していた陽炎であったが、貴虎の真剣な眼差しを見てとると、自らも覚悟を決め頷いた。そして二人は全速力で外へ向け駆け出していった。

 一方で体勢を立て直したトルーパー達は散開し、再び短剣を構えてスカルへと切りかかっていく。

「危ねぇ提督!」

「助太刀しぁます!」

 混乱から立ち直った天龍と龍田が駆け出そうとする。

「来るな!」

 スカルが一喝した。

 ビクッと体を震わせ、動きを止める天龍と龍田。スカルがわずかに横顔を二人の方へ向け、何か合図を送るかのように微かに頷く。そしてトルーパー達が正に攻撃を加えんとする瞬間、スカルの胸元にある―――まるで人間の肋骨を思わせるような―――白銀のラインが前方へ向けゆっくりと開くような動きを見せた。

 更に、その前方の空間が揺らぎだしていく。それと共に紫色の球状のオーラが出現。中心部にドクロのような意匠を形成し、徐々に肥大化するそれは、強烈な光とエネルギーを発し、スカルへと接近するトルーパー達を弾き飛ばした。

 スカルは身につけたベルト“ロストドライバー”のスロットから素早く“ガイアメモリ”を抜き取り、右腰にある別のスロットへそれを装填すると、手のひらで叩くようにスイッチを押した。

【スカル!マキシマムドライブ!】

 電子音声が響き渡ると同時に右足へと力を込めたスカルは、目の前のエネルギー球へ渾身の回し蹴りを叩き込んだ。

 

          ――――――――――――――――――――――――――――――

 

 背後から聞こえてきた爆音に、陽炎は思わず足を止めて振り返った。演習場の方で、もうもうと煙のような物が立ちこめているのが見てとれた。

「大丈夫だ。提督に任せておけば、きっと」

 静かな、落ち着いた声色で貴虎が言う。

「……うん、そうよね」

 そう言って頷くと陽炎は、素早く回れ右をして再び走り出した。

(みんな、頑張ってね。夕張さんを連れてすぐに戻るから!)

 

         ――――――――――――――――――――――――――――――

 

 武道場内に舞い上がった粉塵が、徐々に晴れていく。

 ディエンドは周囲を見渡す。スカルと娘達の姿は既になく、壁の一部に大きな穴が空いていた。

 どうやら一同は、そこから外へ逃げたらしい。

(大口を叩いておいて逃げ出すとはね。……いや、あえてそう言っておいて意表を突いたって所かな?)

 そう思案し頷き、ディエンドは呟く。

「まあいいか。邪魔者はいなくなったことだし、やっぱり暫くこの世界を巡って、更なるお宝を探してみるのも良いかもしれないな」

 その時、頭上から「ポンッ」という奇妙な音がした。

 ディエンド、そしてトルーパーズが音のした方を見やると、天井の骨組みに逆さになってぶら下がっている少女の姿があった。少女はニッと笑うと、レンズ部分が真っ黒に塗りたくられたゴーグルを装着する。

 次の瞬間、凄まじい光の奔流が場内を照らし出した。

 

 「くっ……!」

 突然に溢れだした眩い光に、目を眩ませられたディエンド。マスクのおかげで眼への致命的なダメージを負うような事は無かったものの、ショックから立ち直り、その目が慣れるまでには僅かばかりの時間を要した。

 「……やられた」

 彼の手に握られていたはずの、鉢植えが消えていた。

 恐らく先程の少女の仕業だろう。ディエンドが光に怯んだ僅かな隙をついて奪い取ったのだ。そう判断したディエンドは、ライオトルーパーズに彼女を追わせるように指示する。

 彼らは一斉に駆け出し、スカルの攻撃によって破壊された壁から外へ飛び出していった。

 

 外へ出た彼らが周囲を見渡そうとした時、風を切るプロペラ音と共に、激しい衝撃が身体を襲った。

 小型の零戦による、機銃掃射が浴びせかけられたのだ。

 トルーパーズの眼前を、銃口から煙の尾をなびかせて飛び去っていく零戦。

「こっちですよ!」

 声のした方に振り向くと、弓を構えた鳳翔が第二射を放とうとしていた。トルーパーズの一人がガンモードとなったアクセレイガンを構え、鳳翔に狙いを定める。

「おりゃあぁぁぁ!!」

 その瞬間、天龍がトルーパーズの頭上の木から飛び出し、大剣を振り下ろした。

「えいっ!」

 更に、木陰から走り寄った龍田が、すれ違いざまに薙刀による一撃を、トルーパーの胸部に叩き込んだ。

 トルーパーズを奇襲した天龍と龍田は二手に分かれ、別々の方向へと走り去っていく。

 敵が彼女らの攻撃に気を取られている隙に、鳳翔もその場を素早く離脱していた。

 そんな艦娘達を先に排除すべきと認識したトルーパー達は、三方向に分かれ駆け出して行ったのだった。

 

          ――――――――――――――――――――――――――――――

 

「やっぱ夜戦は良いよね!気分最高!」

 演習場を飛び出した川内は、森の中を一人駆ける。

 薄暗くなった演習場で、彼女は早めの夜戦訓練の準備をしていた。

 今までであれば深夜、場合によっては明け方まで訓練に明け暮れていた川内であったが、この基地に配属されてからは周囲からの圧力――主に横須賀提督からの命令が、最も強いのであるが―――もあって、そういった事が出来なくなっていた。

 そのため生活リズムも変化し、夜中の二時を過ぎると猛烈な眠気に襲われるまでになっていたため、訓練の時間を前倒しせざるを得なくなっていたのだ。故に、悪天候のため早くから暗くなりだした今日などは、彼女にとって至福の時を長く味わえる格好の日であった。

 先刻まで武道場の天井の骨組みを歩いたり、ぶら下がったり、といった具合でバランス感覚を養う訓練―――川内がそう称しているだけで、艦娘の戦闘に役立つかは不明―――をしていた彼女は思わぬ形で“実戦”へと臨むことになったのである。

 眼下で起きていた謎の侵入者とのやり取り、提督の変身などの出来事に、他の者達と同様に目を見張った川内であったが、天井を見上げた提督と視線が合った時、自らのすべきことを瞬時に理解し、実行したのだった。

 提督達が脱出し敵に隙が出来た瞬間、訓練用にこっそり持ち出し、腰に下げていた照明弾を手にして発射。そして素早く、命綱として体に巻き付けていたロープを伸ばして着地し、鉢植えを奪い取って外へと飛び出したのである。

 普段では味わえない、スリリングな体験に興奮し、顔をほころばせて走る川内。

 そんな彼女の目の前で、銃声と共に足元の土と草が弾け飛んだ。

「うわっ!」

 驚きの声を上げ、川内は急停止する。

「まったく、部屋の中で派手な“花火”を撃った上に僕のお宝を奪って逃げるなんて、とんだイタズラっ娘だね」

 木陰からディエンドが姿を現わした。

「あんた随分とすばしっこいんだねえ。こんなに早く先回りしてるなんて」

「この程度のこと造作もないよ。それよりも……」

 ディエンドは、銃をクルクルと回して構えなおした。

「僕のお宝はどうしたのかな?」

「さあ何の事かしら?そんなモノ知らないよ」

 川内は降参のポーズをするかの如く、軽く両手を上げてヒラヒラと動かす。その手には何も握られていない。

「イタズラっ娘のうえに嘘つきだなんて。どうやら、おしおきが必要みたいだね」

 溜息混じりに言葉を吐くと、ディエンドは銃口を川内へと向ける。

 川内はじりじりと後ずさりをしつつも、腕を曲げ、袖に取り付けられている砲を構えた。

(この中に入ってるのは訓練用の模擬弾。まともにやりあっても勝てないだろうし、どうしたもんかな……)

 雨粒に混じって、冷や汗が彼女の背を伝う。拳をギリリと握りしめ、眼前の敵を注視し、発砲をしようとした……

 次の瞬間

「とお!」

 木陰から跳躍した骸骨頭の超人が、ディエンドへ向け拳を叩きこんだ。

 だがディエンドは、バックステップでこれを避ける。両者の着地の衝撃で、泥水が周囲に飛び跳ねた。

「ありがと提督!助かったよ」

「お前の方こそ、よく俺の策に気付いたな」

「へへへっ!」

 鼻の下を人差し指でこすり、得意げな表情の川内。

「お前はあいつらに加勢してやれ。こいつは俺が引き受ける」

 スカルが親指で指し示した方向では、天龍らがトルーパーズと交戦する音、剣戟や銃声が聞こえてくる。

「わかった、夜戦なら私にまかせといて!」

 ニッと笑うと川内は反転し、仲間達の元へと駆け出して行った。

 それを見送るとスカルは、ディエンドの方へと向き直る。

「お前の獲物は、どっかに行ってしまったみたいだな。諦めて退散したらどうだ」

 だがディエンドは、そんな呼びかけを意に介すことなく「フッ」と笑う。

「なかなかやるね、さすがは仮面ライダースカルといったところかな」

「俺にはお前のようなヤツと同じような“仮面ライダー”なんて名前で呼ばれる趣味は無いんだがな」

「ライダーにも色んなのがいる、みんなが僕の様な振舞いをするわけじゃない。それと、君のお弟子さんは仮面ライダーという名を、いたく気に入っているみたいだけど……」

「何?」

「おや、興味あり気な感じだね?君がいなくなってから、あの世界がどうなったのか。それを知りたいのなら、教えてあげてもいいけど」

「…………」

「でも、タダってわけにはいかないね。情報に見合ったお代を払ってもらわなきゃ。う~ん……キミのベルト、ロストドライバーにスカルメモリと交換ってことでどうだい?それも結構レアなお宝だしねえ」

「…………」

「それだけじゃない。大人しく僕が退散するという約束もおまけで付けよう。もちろん兵隊さんもだ。悪い条件じゃないだろう?」

「…………断る」

「ふぅ、キミも貴虎君と同様に物わかりが悪いねえ。こんな好条件を突っぱねるなんて」

「それだけ情報があれば十分だ。全部わかった」

「何だって?」

 ディエンドは、マスクの下に怪訝そうな表情を浮かべる。

「俺がいなくなった後、アイツは俺の持ってた荷物に手を出して戦ったんだろう。あの囚われのボウズと一緒になってな。そして、今も戦い続けている。大方そんな所だろうな」

「……まいったねぇ」

 首の後ろに片手を回すディエンド。そのマスクの下の素顔は、苦笑を浮かべている。

「ついでに……いつまでたっても帰らない俺に、しびれを切らしてやって来た俺の娘も、一緒になって何かやってるんだろうな、あいつらと」

「ハハハ、流石は名探偵さんだ。そこまでお見通しとは、恐れ入ったよ」

「……なるほど。最後のは当てずっぽうだったんだが、何事も言ってみるもんだ」

「なっ!……重ね重ね、まいったね。まんまとカマをかけられてしまったようだ。本当に食えない人だ」

「情報提供の礼に、こんなモンよりずっと良い宝をやろう」

 人差し指でコツコツとロストドライバーを叩き、スカルが告げる。

「へぇ、それは一体どんな物なんだい?」

「俺の部屋にある棚に羊羹が入ってる。競争率が高くて滅多に手に入らない逸品だ。それをやるから、とっとと自分の家に帰るんだな」

「羊羹だって?そんな物が僕の狙うお宝と釣り合うわけがないだろう。話にならないな」

「そうか、なら交渉は決裂だな」

 言うとスカルは彼専用の拳銃“スカルマグナム”を手に取り構えた。対してディエンドも“ディエンドライバー”を構えてその銃口をスカルへと向ける。

 お互いに銃を向け合ったまま、対峙する二人は、黙したまま睨みあう。雨粒が木々を打ち付ける音、それに混じり遠くで艦娘達とトルーパーの戦闘する音が響いていた。

「……一つだ」

 ディエンドが呟いた。

「何だ?」

「僕が背負う罪の数さ。さっき君が問いかけただろう?」

「随分と慣れた手口をしているから、熟練の賊かと思ったが、お前、盗みに入るのは初めてか?」

「何を言ってるんだい、世界中のお宝は僕が手にして然るべき。僕がお宝を盗るのは罪でも何でもない。もっと別の事さ、別の……と、お喋りが過ぎたね」

 ディエンドは腰のホルダーから新たに一枚のカードを取り出し、銃へと装填した。

「最近手に入れたこの新しいカード、君で試させてもらうとしよう」

【KAMENRIDE! MAGE!!】

 電子音声と共に発射された光の残像が実体化し、新たな三体の戦士が出現した。

 その戦士達は、宝石の原石のような形の橙色のマスク、左手の大きな鉤爪の付いたグローブ、人間の手のひらを模したような形のバックルが付いたベルトが特徴的であった。

 そして三体の戦士は、スカルへ向けて一斉に突撃を開始する。

 スカルは右手で構えた銃のトリガーを引き、敵の集団へ向け銃弾を放った。

 

 

 

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