仮面ライダー斬月・艦   作:はちコウP

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この作品は2015年8月6日にpixiv https://www.pixiv.net/novel/series/452817 に投稿した作品を加筆・訂正した物となります。

『仮面ライダー鎧武』『艦隊これくしょん』の基本設定をベースに独自要素、解釈を詰め込んでおります。

本作における艦娘の設定は公式ノベライズ作品『陽炎、抜錨します!』及び『鶴翼の絆』を参考としております。


※今後、分量が多い話は複数パートに分けて投稿します。



【第九話】part2

「くそっ!」

 天龍が舌打ち混じりに吐き捨てるように言う。

 彼女の振るった刀は、ライオトルーパーに容易く受け止められていた。

(短剣でオレの刀を止めるなんて、凄げぇパワーだ……)

 チラリと視線を愛刀の刃へと向ける。数回打ち合っただけにも関わらず、天龍の刀には所々に刃こぼれが見受けられた。

 敵の力もさることながら、使っている武器そのものも特殊な造りをしていると思われる。

「チッ!」

 このまま打ち合いを続けても分が悪いと悟った天龍は、バックステップでライオトルーパーと距離をとった。

 刀を振り回し、相手を牽制しつつ間隔を徐々に開けていく。

(癪だがオレがまともに相手しても、アイツには勝てる気がしねぇ。木々の影に隠れながら移動して他の武器を調達するか、他のヤツらと合流するしかねぇな)

 トルーパーから十分に距離を取った所で、天龍は体を反転させ駆け出した。

 それに対してライオトルーパーは、急いで追いかけるような素振りは見せなかった。

 悠々と歩きながら、手にした短剣を拳銃の形へと変形させた。そして、そのトリガーをゆっくりと引く。

 銃口から連続して光弾が放たれる。光弾は天龍の脇をかすめて飛んでいった。

「なっ、なんだよあれ!」

 後ろを振り返りつつ逃走する天龍は、顔を青ざめさせた。彼女の前方にあった木の一本に、パックリと大穴が空いていたのだ。

「あんなもん当たったら、タダじゃすまねぇぞ!」

 天龍は敵に狙われまいと、木々の間を縫うように、ジグザグな軌道を描きつつ駆け抜けていく。

 と、天龍の視線の先で光が弾け、耳に何かが砕けるような音が入ってきた。ハッとしてその方向へ目を向ける。

 トルーパーの銃撃によって撃ち抜かれた木が、バキバキと音を立てて、天龍めがけて倒れ込んできた。

 急制動をかけて、それをかわそうとする天龍。しかし、ぬかるんだ地面に足を取られ、思い通りに方向転換が出来ない。

 歯噛みする天龍の眼前に木の幹が迫ってくる。

「危ないっ!」

 突如として横から跳びすさった何者かによって、天龍の身体は跳ね飛ばされた。

 地面を転がった彼女の真横で、地響きを伴って大木が倒れ込んだ。

「痛ッててて……」

「大丈夫?危機一髪だったね」

 仰向けに倒れていた天龍が目を開けると、そこにはニッとした笑みを浮かべた川内の顔があった。

「川内か、おかげで助かったぜ」

 川内が差し伸べた手を取り、天龍は立ち上がる。そして、傍らに転がった刀を拾い上げた。

「さあ、夜戦はこれからが本番だよ。敵さんもそのつもりみたいだし」

 小型の砲が取り付けられた腕を曲げて、構えをとる川内。

 その視線の先には、悠然と歩いてくるライオトルーパーの姿があった。

 川内は、素早く狙いを定めると即座に砲撃を放った。激しい砲声と共に弾が放たれる。

 ライオトルーパーは、横に跳びすさってそれを避ける。砲が着弾した地面が泥と草を跳ね上げる。

 続けざまに第二射が放たれた。それは体勢を崩したトルーパーへ向けて、一直線に飛んでいった。

 避けられないと判断したトルーパーは、両腕で頭を庇うようにして防御姿勢をとる。

 すると、ガンッ!カンカン!と砲撃にしては軽く、甲高い音が響いた。

 もちろん川内が発射したのは実弾ではなく、訓練用の模擬弾。派手な砲撃音に不釣り合いな、あまりに軽い衝撃に拍子抜けしたような様子のライオトルーパーであったが、気を取り直すと体勢を立て直し駆けだした。しかし、僅かな間に川内と天龍の姿は消えていた。どうやら闇に紛れて逃げ去ってしまったらしい。

 ライオトルーパーは銃を構え直すと、それを撃ちつつ二人の艦娘が逃げたと思われる方角へと突き進んでいった。

 

          ――――――――――――――――――――――――――――――

 

 薙刀とアクセレイガンの刃とがぶつかり合い、激しく火花を散らせる。

 龍田は攻撃を加えると、即座に敵との距離を開く。そして木陰や障害物を利用して身を隠す。彼女と戦っているトルーパーは、それに対応するため、武器を銃へと変形させようとする。だが、その隙を見計らい飛び出した龍田が、再び斬撃を叩きこむ。

 こうして付かず離れずの戦いを続ける事により、龍田は相手のペースを乱し続けていた。

(このまま戦い続けても埒が明かないから、どうにかしたい所だけどぉ……)

 勢いよく振り回された龍田の刃が、今度はライオトルーパーの胴を捉えた。が、甲高い金属音を響かせる強固な装甲に攻撃は阻まれる。薙刀の柄を握る龍田の手に痺れが走る。思わず取り落としそうになるのを、すんでの所で堪え、龍田は物陰へ移動し身を隠した。

(私の武器じゃあ簡単にはダメージが与えられないみたいだしぃ、どうしたものかしらねぇ……)

 考えを巡らせながら龍田は、敵に感づかれないように姿勢を低くしつつ、忍び足で移動する。

(やっぱりこのまま時間を稼いで、装備を持った増援を待つのが得策ね。艦娘の砲を当てれば流石に、この人達もひとたまりもないはずよねぇ)

 そして、トルーパーの死角へと回り込むことに成功した龍田は、横薙ぎの一撃を放とうと構えをとった。

 と、その時

「ああっ!」

(!?―――あの声は、黒潮ちゃん!?)

 龍田の耳に悲鳴が聞こえてきた。その声がした方を見やると、薄暗がりの中で黒潮がうずくまっているのが見えた。

 そこへ迫る一体の銀面の兵。

 二者の間には、地面に倒れ込んだ黒潮を守らんとする鳳翔が立ちはだかっていた。

「いけない!」

 二人を助ける為に駆けだそうとした龍田の耳に、ヒュッと風切り音が聞こえた。

 それに反応し素早く振り返った龍田は、薙刀の刃を眼前にかざす。

 キンッ!という金属音と共に火花が飛び散る。龍田が相手していたライオトルーパーの短剣と、薙刀の刃とがぶつかり合う。そのまま二人は鍔迫り合う体勢となった。

(迂闊だったわ)

 龍田の頬を汗が伝う。こんな状況になっては先程までのように、逃げながら戦う事は不可能。少しでも力を抜いてしまえば、敵の短剣が容赦なく龍田の身体に突き立てられる事だろう。黒潮と鳳翔を助けるどころか、自分の身を守るのが今の龍田には精一杯だ。

「鳳翔さん!黒潮ちゃん!」

 龍田の叫びが薄闇の森の中にこだました。

 

 

 艦載機による攻撃、天龍と龍田の連携で敵を分断し、そのうちの一体を誘い出した鳳翔は、黒潮を伴って森の中を駆けていた。

 走り続けて結構な時間が経つ。鳳翔は、ふと隣の黒潮を見やる。すると彼女は鳳翔の視線に気づいたのか、口角を吊り上げてニッと笑ってみせた。そして再び前を見て走り続ける。その息遣いは大分荒くなっているように思えた。

(強がっているようですが、黒潮さんは大分疲弊しているようですね)

 鳳翔は黒潮の様子を見て察した。

 無理もない。彼女は陽炎と共に必死になって、謎の怪物から逃げてきたのだ。そして、ようやく辿り着いた場所では別の敵の襲撃、肉体的にも精神的にも辛いであろうことは明らかだった。

(あの者達に応戦するにも黒潮さんは丸腰、私の艦載機を飛ばそうにも敵との距離が近すぎる。開けた場所ならまだしも、こうも木が生い茂った場所で、策も無く闇雲に艦載機を発艦させるのは……ここは何としてでも逃げ切らなくてはいけませんね)

 鳳翔が思案していると

「ああっ!」

 目の前を走る黒潮が、地面から飛び出るように生えていた木の根につまづいて転んでしまった。

 疲労していた黒潮はバランスを崩し、まともに受け身を取る事も出来ず、走る勢いそのままに地面を転がり倒れ伏してしまう。

「黒潮さん!」

 と叫ぶ鳳翔の背後から、何かの迫ってくる気配がした。

 振り返り目を見開く。その先には、銃を携えたライオトルーパーの姿があった。

 その者は悠然とした動作でもって、銃口を倒れた黒潮へと向ける。

「いけません!」

 鳳翔は即座にトルーパーと黒潮の間に割って入り、その両腕を大きく横に広げた。

「アカン!鳳翔はん!ウチに構わず早う逃げや!」

 うつ伏せの体勢のまま、顔を上げて黒潮が叫ぶ。

「それは出来ません」

 鳳翔は黒潮の方を振り返らずに、射抜くような視線をライオトルーパーに向けたまま口を開く。

「いざという時に、皆さんを守るのが私の務めですから」

「それはこっちのセリフや!空母の護衛は駆逐艦の務めや!」

「洋上での作戦行動中はそうかもしれませんが、今は状況が違います」

「せやけど!そんな」

「それに……」

 黒潮の言葉を遮るように自らの言葉を重ねつつ、鳳翔は口元に微笑を浮かべる。

「ここで逃げたら提督に顔向け出来ません」

 そして鳳翔は、ゆっくりと瞳を閉じた。

 ライオトルーパーがターゲットを正面に立つ鳳翔へと変更、そして銃のトリガーにかけた指に力を込めた。

 黒潮は口を大きく開き叫びを上げる。同じように大きく見開かれたその瞳からは、一筋の涙が零れ落ち、雨粒と共に地面に吸い込まれていった。

 

「どっかーーーん!!!」

 底抜けに明るく、よく通る声と共に、爆音が鳴り響いた。

 何処からか放たれた砲撃が、鳳翔へ銃口を向けていたライオトルーパーの側面に直撃。猛烈な勢いで吹き飛ばされたライオトルーパーは大木に激突し、その身体で枝をへし折りながら地面に転がり落ちる。

「お待たせっ!艦隊のアイドル那珂ちゃん、現場到着ぅ!」

 トルーパーへ向け砲撃を放った艦娘―――那珂は満面の笑みを浮かべ、左手で作った横倒しのピースサインを目元へ近づけてウィンクをする。

「那珂ちゃん!」

「那珂はん!」

「良かった、みんな無事だったんだね!」

 鳳翔と黒潮の元へ駆け寄る那珂。差し出された鳳翔の手を取り黒潮は立ち上がる。

「ありがとう。那珂ちゃんのおかげで助かったわ」

「おおきに、那珂はん」

「いいのいいの。それよりも黒潮ちゃん、はいコレ」

 そう言って那珂は、片手に持っていた荷物を黒潮へと手渡す。

 首かけ紐が括り付けられた金属製のそれは、陽炎型の一部艦娘の愛用する型式の連装砲であった。

「おおっ!これがあれば百人力や!」

 黒潮は早速、連装砲を身につけて、砲の両サイドに取り付けられた取っ手を握りしめ、構えてみせる。

 その時、吹き飛ばされて倒れ込んでいたライオトルーパーがゆっくりと起き上がる。そして何事も無かったかのように立ち上がると、三人の艦娘めがけて歩を進め出す。

 だが、その場の艦娘達は、最早その敵の姿に恐れを抱いてはいなかった。いや、それを掻き消すほどの戦意と勇気が心に満ち溢れてきたのだった。

 那珂はその場でクルリとターンを決めたあと、腕を曲げ砲撃の体勢をとり、黒潮も那珂の横に並び立ち、愛用の武器の狙いを目標へと定めた。

 鳳翔は彼女らの後ろへと身を引き、艦載機を発艦すべく弓に矢をつがえる。

 と、同時に響き渡った砲撃音が戦いの再会を告げた。

 

 

 一方、龍田の元にも援軍が到着していた。

「どりゃぁぁぁぁぁ!!!」

 勇ましく声を張り上げながら跳躍する天龍が、龍田と交戦していたライオトルーパーに向けて刀を振り下ろした。

 龍田と唾ぜりあっていたトルーパーは、跳びすさってその攻撃から逃れる。

「天龍ちゃん!」

「無事だったか龍田!?」

「私もいるよ、お忘れなく」

「川内ちゃんも」

 駆け寄ってきた川内が、親指を立てて口元に笑みを浮かべる。

「へへっ!そして更にもう一人」

 天龍が得意気に言うとほぼ同時に、一度距離を開いたライオトルーパーが、再び間を詰めるべく駆け出していた。だが……

「いっけぇ!!」

 ライオトルーパーの眼前の地面に、轟音と共に砲弾が着弾。彼は思わずその動きを止めてしまう。

「吹雪ちゃん?」

 声のした方向へ向いた龍田の目に飛び込んできたのは、砲口から煙を立てている連装砲を、両手で構えた吹雪の姿であった。その勇ましさと共に緊張感とを持った眼差しは、敵へ真っ直ぐに向けられている。

「オラァ!」

 龍田の目の前に立っている天龍もまた、腰にぶら下げていた砲を構えて砲撃を開始した。ただしそれは、普段彼女が背負った艤装に装着されたものではなく、吹雪と同形式の駆逐艦用連装砲だった。

 砲撃は敵に直撃こそしなかったものの、敵への牽制及び衝撃による微量のダメージを与えることには成功しているように思えた。

「はい、これ龍田の分だよ」

 川内が龍田に吹雪型駆逐艦用の連装砲を手渡す。

「逃げる途中で合流した吹雪に渡されたんだ。龍田が使うといいよ」

「駆逐艦用でも結構やれるぜ!」

 楽し気な声色で天龍が告げる。

「行くぜ龍田!オレらであの仮面野郎を倒すんだ!」

「…………」

 暫しの沈黙の後

「そうねぇ、私達に手を出した事を一生後悔するくらいに、たっぷりとお仕置きしてあげようかしらぁ」

 闇に映える、ある意味で誰よりもにこやかな―――見る者が見れば震え上がるような―――笑みを浮かべた龍田は、天龍と共に、先程まで自身と交戦していたライオトルーパーへと突撃を開始したのであった。

「いやー、ノってるね龍田ってば……と、吹雪!」

 天龍、龍田の背を見送った川内は、吹雪へ呼びかける。それを受け川内の方を振り向く吹雪。

「あたしらはアイツの相手だ」

 そう言って後方を振り返り川内が指さした先には、彼女らを追いかけてきた、残り一体のライオトルーパーの姿があったのだった。

「了解です!」

 返事をした吹雪は、即座に連装砲の狙いを定め、砲撃を開始した。

「それじゃあ、アイツに私たちの魅力をたっぷり教えてあげようか、夜戦でね!」

 

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