『仮面ライダー鎧武』『艦隊これくしょん』の基本設定をベースに独自要素、解釈を詰め込んでおります。
本作における艦娘の設定は公式ノベライズ作品『陽炎、抜錨します!』及び『鶴翼の絆』を参考としております。
※今後、分量が多い話は複数パートに分けて投稿します。
息を切らせながら、夕張は森の中を駆け抜ける。
怪物の事、逃がした陽炎と黒潮の事が脳裏にチラつく。押し寄せる数々の不安が心を、蒸し暑さとぬかるんだ地面が身体を疲弊させる。だが、彼女は挫けることなく走り続ける。仲間を思って。
ふと夕張は、何かの気配を感じた。例の怪物が追ってきたのかと思い、走りながら後ろを振り返る。だが視界には薄暗い森の風景が広がるのみ。どうやら後ろには何もいないらしい。夕張は足を止めると同時に周囲を見回す。
すると、前方で何かが動いたように思えた。
(もしかして、先回りされた?)
夕張は警戒しつつ目を凝らして、目の前を見据える。
すると薄暗い闇の中を、人影らしきものが近づいてくるのがわかった。それは先程自分達を襲った、ずんぐりむっくりの怪物とは異なるシルエットのように見えた。それの手足は幾分かスレンダーで、ずっと人に近い姿に感じられる。
(少なくともあの怪物じゃ無さそうね。誰かしら?)
一安心した夕張は「お~い!」とその影に呼びかけつつ、大きく両手を振る。
きっと陽炎らの報告を受けて、救援に来てくれた者だろう。そう合点した夕張の顔は、自然と綻んでいた。
だが、目の前の影が近づくにつれ、何か違和感が大きくなっていった。
肩の部分が人にしては随分と盛り上がっており、やたら角ばっているような印象を受ける。初めは艦娘の艤装か何かだろうと思っていたのだが、その形は彼女にとって見覚えの無いものだった。
更に目を凝らすと、頭部に鋭い物が付いているのが薄っすらと見て取れる。頭部に艤装を付けた艦娘といえば天龍が思い当たる。だが彼女の頭部に付けられる艤装に比べて、それは鋭く、大きすぎた。
怪訝そうな表情の夕張の前に、やがてその影の主は姿を現わした。その姿を目にした夕張の表情は恐怖に歪んだ。それは怪物
であった。
茶色の身体に水色のラインが胴体と手足に走り、肩には羽のように広がった鋭く尖る枝角。頭部には、その顔の倍以上の長さを誇る二本の角が、天を指すように伸びていた。
怪物の容姿は例えるなら鹿。鹿と人間を掛け合わせたようなモノであった。
「あ、ああ……」
目を見開き、か細い声をあげて後ずさりする夕張。
怪物は獣じみた息遣いをしながら一歩、また一歩と近づいてくる。怪物の顔、それに刻まれた線のような、眼と思わしき部分がギラリと光り、夕張を睨みつけるような仕草を見せた。
次の瞬間、夕張は悲鳴を上げ、怪物に背を向け全力で逃げ出していた。
シカ型の怪物は、両腕を広げて天を仰ぎ見るような仕草で咆哮する。
そして、逃げる夕張を追いかけだした。
夕張は走った。残った力を全て振り絞るようにして走った。
手を、髪を大きく振り乱し、森の中を駆け抜ける。時折後ろを振り返る。しかしながら怪物との距離は一向に開かない。それどころか、逆に怪物に距離を詰められつつある。
夕張の身体が疲弊してるのもそうであるが、シカ型の怪物の動きが素早いのも要因だった。
背中越しに怪物の足音が、荒い息遣いが聞こえてくる。徐々に大きさを増し近づいてくるそれらに夕張は恐怖した。
普段、異形の海の怪物“深海棲艦”と戦いを繰り広げる艦娘である彼女も、艤装を身に付けていない状態では、ただの人間、ただの少女である。一人きりで薄暗い森の中、未知の怪物に追いかけられる。
夕張の体力と精神力は限界に近づいていた。
「きゃあっ!」
膝の力が抜けた一瞬、ぬかるんだ地面に足を取られバランスを崩す。そのまま地面を転がった夕張は、大木に背中をしたたかに打ち付けてしまった。激痛が身体を駆け抜ける。
「ゲホッ、ゲホッ!」
思わず咳き込む。一瞬意識も遠くなりかけたが、わずかな気力を振り絞りこれを耐え抜く。
疲労が溜まり、水に濡れて重くなった身体。それをどうにか動かして立ち上がろうとする。
「痛ッ!」
夕張の右足に激痛が走った。足首を抑え、傷みによって歪む瞼を何とかして開きながら見やる。右の足首には幸いにも、折れているような様子は見受けられない。だが少なくとも、捻挫ぐらいの怪我は負っているように思われた。
再度体に鞭打って立ち上がろうと試みる。しかし、足首に激痛が走り、夕張は地面にへたり込んでしまう。
―――ピシャ、ピシャ―――と音がする。
夕張は恐る恐る顔を上げた。目の前にはシカ型の怪物の姿。同時に雷鳴が轟き、稲光が怪物を照らし出す。
「い、嫌……」
地面にへたり込んだまま後ずさりする夕張。地面を、泥を掻き分ける手に何かが当たった。目を向けるとそこには、先程まで彼女が手にしていた火かき棒があった。どうやら転んだ時に取り落してしまっていたらしい。
後ずさりする夕張に対し、怪物はゆっくりと歩みを進め近づいていく。
「こ、来ないでーーーー!!!」
夕張はそのままの姿勢で、両手で持った火かき棒をやたらめったらに振り回した。ブンブンと音を立てて火かき棒が空を切る。
ガキッ!!と音が鳴り、夕張の手に確かな手ごたえが。
(当たった!)
微かな希望をもって、その方向を見やる夕張。だが、その眼に映ったのは、火かき棒の先端を片手で握りしめた怪物の姿だった。
「ヒッ!」
夕張は思わず火かき棒から手を放してしまう。そして怪物は無情にも、手にした火かき棒をいとも容易く折り曲げ、放り棄てた。
怪物の手が夕張に向かって伸びていく。それから逃れようと夕張は、更に後ずさろうとするが、その背中は木に阻まれてしまう。
夕張は恐怖に体を震わせ、瞳から大粒の涙を流した。
迫る怪物の魔の手。そして、怪物の額が不気味に蠢きだし、徐々に横へと開き始める。そこには鋭い牙の生えた、口のような物が……
(やだ、やだよ。こんな所で怪物に襲われて、食べられて死ぬなんて……そんなの、そんなのって)
怪物の手が、ガタガタと小刻みに震える夕張の頭を掴みかける。
「いやぁぁぁぁぁーーーー!!」
闇に包まれた森の中に、夕張の悲鳴が響き渡った。
「はあぁぁぁぁぁ!!」
雄叫びを上げる一人の男が、怪物へと飛びかかった。そしてそのまま、もつれ合うように両者は地面を転がっていく。
「……え?」
一瞬の放心の後に、夕張は涙に濡れた瞳をゆっくりと動かし、怪物の転がっていった方向を見やる。するとその視線の先には、シカ型の怪物と対峙する、軍服を纏った男の背中があった。白かった軍服は雨と泥に濡れて、所々茶色に染まっている。
「貴虎、なの?」
「夕張さん!」
息を切らせながら陽炎が駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか!?どこか怪我とかしてませんか!?」
夕張の肩を掴んで呼びかける陽炎。
「……陽炎?」
「良かった、無事で。本当に良かったです」
瞳を潤ませた陽炎は、夕張の身体を抱きしめた。困惑した表情の夕張もまた、両手を陽炎の背中へと回し、その身体を抱き返す。
目の前の少女の体温の暖かさが、とても心地良く思えた。
(やはりインベスだったか。しかもこいつは進化した上級種。厄介なことになった)
怪物、シカ型のインベスは、いきり立った様子で貴虎へと襲い掛かる。強靭な手足から繰り出される攻撃を、貴虎は紙一重でかわしていく。
(武器も無しに、コイツと戦うのは分が悪すぎる)
数々のインベスと戦い、それらを屠ってきた貴虎といえども、味方の援護なしで生身での戦闘は厳しい。
かつての経験のおかげで攻撃に対処できてはいるが、それもいつまで持つかはわからない。ここに辿り着くまでに体力も大分消耗していた。
初めはインベスの攻撃を避けきっていた貴虎。しかし体勢を崩した一瞬、敵の攻撃が貴虎の動きを捉えた。
「くっ!」
インベスの拳を腕でガードして、致命傷を負う事はさけられた。しかしながら腕を襲う激痛に体が悲鳴をあげる。
更に、それで貴虎が怯んだ隙を付いてシカインベスは、猛ダッシュと共に貴虎へと体当たりを仕掛ける。
貴虎はこれを回避できず、その身体を大きく跳ね飛ばされてしまった。
「がはっ!」
地面に叩きつけられ、そのまま転がる貴虎の身体。幸いにも雨で軟らかくなった地面が衝撃を吸収してくれたおかげで、落下によるダメージは殆どない。だが、シカインベスの繰り出す打撃は、確実に貴虎へダメージを蓄積させている。
(だが、今のこの状況なら……)
ふらつきながらも起き上がった貴虎は、陽炎へ向け告げた。
「陽炎、夕張を連れて逃げろ!」
「でも貴虎さんが!」
「そうよ!このままじゃ、あの怪物に貴虎は……」
「大丈夫だ!俺の事なら心配無い!早く行くんだ!」
そう叫んでシカインベスと取っ組み合う貴虎。鋭い枝角が、彼の体に傷を刻んでいく。
夕張と同様に、不安げな表情を見せていた陽炎であったが、奮戦する貴虎の姿を見て決心したように頷くと
「行きましょう夕張さん!貴虎さんの頑張りを無駄にしない為にも!」
夕張へと手を差し伸べる。対して戸惑いの表情を浮かべていた夕張であったが、怪物を懸命に足止めしようと足掻く貴虎の姿を見て心を決めた。陽炎の手を取り、彼女の肩に手を回して立ち上がろうとする。
「痛っ!」
捻挫した足に痛みが走る。
「大丈夫ですか!?」
「私は平気よ。それよりも早く……」
陽炎の肩を借り、夕張は怪我をした足を引きずるようにして歩き出す。
(行ってくれたか……)
去りゆく彼女らの後ろ姿を見て、貴虎は安堵する。
シカインベスの注意は完全に自分へと向いている。このまま注意をひき続けて、彼女らの逃げた方とは反対の方向へ誘導し、隙を見て自分も撤退する。そうすれば少なくともこの危機を乗り切る事は出来る。
もっとも、基地へ引き返しても例のディエンドと名乗った侵入者の脅威があるため、安全とは言い難い。それに関しては、提督が上手く事を運んでいてくれるのを祈るしかなかった。
そう考えつつ、シカインベスと交戦し続ける貴虎。そんな彼の目に飛び込んでくるモノがあった。
(あれは!?)
眼前のシカインベスの肩越し、数十メートル程離れた所に灰色の人影。
(もう一体のインベスだと!?)
それは山小屋で夕張達を襲ったインベス。シカインベスなどの強力な個体へと変貌する前の姿。言わば“初級インベス”と呼べるものだった。
(目の前のヤツ一体ならまだどうにかなるが、もし二体同時に相手をしなければならないとなると……)
その時、シカインベスが後ろを振り返る。どうやら初級インベスの存在に気が付いたらしい。そして唸り声のようなものを上げる。
(くっ、アイツをこちらに呼び寄せるつもりか!)
だが次の瞬間、シカインベスは一目散に後方の初級インベスの元へと駆け出して行った。
困惑しつつも貴虎は、何事かと視線を初級インベスの方へ向ける。
すると何かを手にした初級インベスが、まるで小躍りをするかのような動きをしているのが見えた。手に握られているのはヘルヘイムの果実であった。そして、口元へとそれを持っていき食そうとする。
だが次の瞬間、初級インベスの体は宙を舞う。シカインベスが猛突進を喰らわせてきたのだ。
地面を転がった初級インベスは立ち上がると、地団太を踏んで怒りを露わにする。
一方でシカインベスは、自らが吹っ飛ばした者の事など気にも留めない様子で、地面に落ちた果実を拾い上げる。そして開いた額の口に放り込んだのだった。
(食料を巡っての仲間割れか?ならばこの好機を逃す手は無い)
と貴虎は木陰に隠れて思案する。だが……
「!?」
貴虎は驚愕した。
果実を取り込んだシカインベスが体をブルッと震わせたかと思うと、緑の光と共に溢れ出した植物の蔦や葉が、インベスの体をたちまち包み込んでいき、肥大化していった。
やがて緑の光と植物は弾け飛び、そこには筋骨隆々に巨大化した下半身、さらにそれ以上に大きく膨れ上がった胴体と、巨鳥の羽の如く広がった枝角を肩に携えた姿に変貌を遂げた、シカインベスがいたのであった。
(ロックシードも用いずに更なる進化だと!?どうなっている)
巨大化したシカインベスは、有り余った力を解放するかの如く、腕を大きく振り回した。周囲の木々がその怪力により次々になぎ倒されていく。そしてそれは、哀れにも果実を奪われてしまった初級インベスの頭上へと倒れ込んでいく。地響きと共になぎ倒された木々の下敷きになった初級インベス。その身体が動きだす事は二度と無かった。
続いてシカインベスは、大地を揺るがさんばかりの咆哮を上げた。周囲の空気がビリビリと震える。そして泥や草花を巻き上げながら地響きを起こして、猛スピードで走り出す。その方向は……
「しまった!」
陽炎の肩を借りて歩いていた夕張の耳に、奇妙な遠吠えが聞こえてきた。
不思議に思い、後ろを振り返る。陽炎もほぼ同じタイミングで後ろを振り返った。それを見て、気のせいでは無い事を悟る夕張。二人はお互いに顔を見合わせる。
「もしかしてあの怪物かしら?」
「かもしれないですけど……」
陽炎は言外に、今から戻っても仕方がない、といったニュアンスを含ませる。無論夕張もそれを承知の上。貴虎の事は心配であったが、彼のためにも今は基地へと向かうのが先決。そう考え正面へと向き直ろうとする。
「……?」
すると続けて夕張の耳に地響きが聞こえてくる。それは徐々に大きさを増し、更には大地までもが震動し始める。
謎の音の正体は何か、それを確かめるために自分たちの歩いてきた方向を、目を凝らしてじっと見つめる。すると巨大な獣の様な何かが、近づいてくるのが目に映った。それは瞬く間に彼女達との距離を詰めていく。
「危ない!」
咄嗟の判断で夕張は陽炎と共に、横っ飛びに身を投げる。その隣を謎の獣が駆け抜ける。
「な、何ですか一体!?」
体を地面に伏したまま顔を上げる陽炎。彼女の視線の先、数十メートル程で急停止した巨獣が飛び跳ねる。
腕を振り回し、自らの胸を太鼓のように打ち咆哮する。
暫くの後、それはクルリと後方へと向き直る。そして片足を後ろへと何度も何度も蹴り上げる。
「まさか……」
夕張は、牛が闘牛士へ向け突進する直前の光景を思い浮かべた。自分の予想通りに怪物が突進してきたら、陽炎共々その巨体に押しつぶされてしまう。隣に伏せる陽炎も全く同じ事を考えているのか、顔を青ざめさせている。
夕張は負傷していない陽炎だけでも逃がすべく、彼女の身体に手をかけ抱き起こそうとする。
と、その時、彼女の眼前に人影が立ちはだかった。
「どうやら……間に合った、ようだな」
「た、貴虎!?」
息を切らせながら上下する肩越しに見える彼の横顔は泥と痣、擦り傷から滲む血で汚れていた。軍服も所々が破け、その下に負った傷から血が流れている。それは怪物との戦いの激しさを物語っていた。
貴虎は、今にも突撃しようとしている怪物の方へと一歩、また一歩と近づいていった。
「ダメ!私の事はいいから、陽炎を連れて逃げて貴虎!」
怪物が後方への蹴り上げを止めて、荒い息を吐いた。
その姿を見て貴虎は、フッと笑みをこぼす。そして手近にあった、鉄パイプ程の大きさの枝を拾い上げて構えをとった。
「お前たちは、大切な仲間は俺が守る!この命に変えてもだ!」
シカインベスが力を込めた足で大地を蹴り、猛烈なスピードで突進を開始した。
快速で森の中を駆け抜ける少女が一人いた。仲間から受け取った荷物を脇に抱えて。
「にひひっ!やっぱり誰も私に追いつけないね」
島風は得意気に笑いながら、なおも走り続ける。
彼女が抱える荷物、それは川内がディエンドから奪い返した植木鉢だった。
川内は武道場を飛び出した直後、川内の訓練に付き合うために外で待っていた島風に、それを託したのだ。とにかく遠くへと走るようにと言われた島風は、自慢の脚を活かして、敵に感づかれる前に演習場付近から離脱していた。
川内との夜戦訓練に付き合っていたおかげで、目はいつも以上に闇に慣れていた。そのため、夜の森でも苦も無く走れている。
「でも、どこまで行けばいいんだろう?このままじゃ、あっという間に島を一周しちゃうよ」
そう呟いた時だった。
「うわぁっ!」
彼女が手にした植木鉢が突如として黄金色の輝きと熱を発しだした。
島風は思わず手に持った鉢を離してしまう。
「あっ!」
しまった、という表情をする島風。だが次の瞬間、目に映る不可思議な光景に彼女は唖然とした。
「……浮いてる」
そのまま地面に落ちて割れるかと思われた植木鉢は、ふわふわと上下に揺れながら宙に留まっていた。そして、スーっと島風の目線ほどの高さへと浮き上がってくる。
「きれい……」
周囲を優しく照らす黄金色の光に、島風は思わず見とれてしまう。暖かな光を放つ植木鉢は、やがてその姿を黄金の光球へと変化させ、凄まじい勢いで空へと飛び上っていった。眩く輝く光の尾を描きながら。
自分の元へ突進してくるインベスを見据える貴虎の脳裏に、死に対する恐怖は無かった。彼に恐怖があるとすれば、後ろにいる少女達を死なせてしまう事、それだけだった。
手にした得物は木の枝、目の前の怪物を相手にするには無謀。そして、その振舞いはあまりに無策すぎる。
だが彼の体は、自然とそれをせずにはいられなかった。
(私にもこんな無鉄砲な所が残っていたとはな)
自嘲する貴虎。そして眼前に迫りくるインベスを前にして、腕へと力を込めた。
刹那、天が瞬いた。
貴虎とインベスとの間に、一柱の黄金色の光が顕現した。それは迫りくるインベスを激しく吹き飛ばした。
そのあまりの眩しさに貴虎は、思わず手にした枝を地面に落とし、両腕で頭を覆う。
(何が起こった!?)
顔をしかめながら、瞳をゆっくりと開いていく貴虎。
彼の眼前にそびえる光の柱。その中には、二つの小さな影が映っていた。
何かに導かれるかの如く貴虎は、光の中へと手を伸ばし、その影に手を触れた。
掴んだ影の感触は、彼にとって非常に馴染み深い物だった。それと同時に光は収束し、貴虎の手の内にある物体に収まるようにして消えていった。
「これは!?」
貴虎の手に収まっていたのは、中央に大きな窪み、傍らに黄色い刃の小刀を携えた奇妙な形の黒い機械。
そしてもう片方の手には、緑色の果実を模した、錠前のような物体。
「戦極ドライバーとロックシード!何故ここに!?」
困惑する貴虎、その一方で吹き飛ばされたシカインベスが、巨体に見合わぬ機敏な動きで跳ね起きた。
そして再び、貴虎の元へ突進を開始した。
(いや、そんな事、今はどうでもいい。この力さえあれば!)
貴虎は手にした機械を腰の高さにかざす。すると黄色いベルトが瞬時に伸び、戦極ドライバーが体に装着される。
「変身!」
右手のロックシードのスイッチを押す。掛け金が伸び上がり、ロックシードが開錠される。
【メロン!】
電子音声が響き、貴虎の頭上へ黄金の輝きが収束、輝きが弾けると共に緑色の果実のような球体が出現した。
猛スピードで突っ込むシカインベスが、眩い輝きを身に受け、顔を覆い悶え苦しんだ。
貴虎はロックシードをドライバーの窪みにはめ込み、掛け金を手で押し込んで錠前を閉じる。
【ロックオン!】
合戦の始まりを告げるようなホラ貝の音色と、リズミカルな音楽が周囲に響き渡る。
貴虎はドライバーの小刀を振り下ろし、ロックシードを割り開いた。
【ソイヤッ!】
頭上の果実が落下し、貴虎の頭に覆いかぶさると同時に、その身体が白の戦闘服に包まれる。
【メロンアームズ!天・下・御免!!】
緑の果実が彼の上半身を覆うように展開する。
優美な琴の音色が、ドライバーから奏でられた。
溢れる黄金色の輝きに目を晦ませられたシカインベスは、ブルブルと首を一振りし立ち直ると、改めて顔を正面へと向ける。
するとそこには、腰に刀を携え、左手に盾を構え、網目状の模様が刻まれた緑色の装甲を身に纏った鎧武者が、悠然と立ちはだかっていた。
鎧武者は腰の剣を右手で抜き、構えをとると
「はあぁぁぁぁぁ!!」
気迫に満ちた雄叫びを上げ走り出したのだった。
降りしきる雨は、いつしか止んでいた。