仮面ライダー斬月・艦   作:はちコウP

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この作品には『仮面ライダー鎧武』『艦隊これくしょん』の基本設定をベースに独自要素、解釈を詰め込んでおります。

本作における艦娘の設定は公式ノベライズ作品『陽炎、抜錨します!』及び『鶴翼の絆』を参考としております。





【幕間 其の一】

 

「畜生!船底に穴を空けられた!」

「とっとと穴を塞げ!モタモタしてるんじゃねぇ!」

 激しく揺れる船の中を、屈強な男達がせわしなく動き回っていた。

「積み荷を投げ捨てる?バカヤロウ!んな事出来るか!余計な事考えてる暇があんなら必死こいて水を掻き出せ!」

 船長と思わしき髭面の男が、意見した部下を怒鳴りつける。

「おい!甲板の野郎どもはどうなっている!」

 髭面の男は、手に持った無線機に向けて声を張り上げた。

 

 無線機からノイズ混じりに聞こえてくる声に、筋骨隆々の体躯をした中年の船員が舌打ちをした。耳に当てていた無線機を口元に当てて、脇のボタンを押して返答をする。

「こちら甲板!ヤツらがどんどん近づいてきてやがります!攻撃も激しくなってきてる!このままじゃ追い付かれてボロボロにされちまいやすよ!」

《ウダウダ言ってねぇで何とかしろ!ありったけの弾を叩きこんでヤツらをぶっ殺せ!》

 船長の罵声に対し、聞かれないように男は再度舌打ちをする。

(ぶっ殺せ!?んなの無理ってわかるだろうが!)

 男は懐に無線機をしまい込むと、甲板に備え付けられた機関銃に手をかける。

 彼が狙う標的は船に近づいて来る、海上を蠢く多数の黒い影。深海棲艦。その群れの駆逐級の一体だ。

「喰らえっ!」

 引き金を引かれた機関銃が激しい振動と共に、込められた弾丸をすさまじい速度で吐き出してゆく。弾丸は迫りくる深海棲艦の周囲に着弾。激しい水しぶきが発生する。

 そして深海棲艦の身にも着弾。だが、金属製の板をも貫通する威力を誇る弾丸は、敵駆逐艦の装甲を傷つける事は無かった。

 数百発の弾丸を正面から受けても深海棲艦は、怯む様子すら無く平然と船を追いかけて来る。

 駆逐艦群の一体が、その口を大きく開いた。

 そこから伸び出る砲身より、砲弾が放たれる。

 砲弾は男らの乗る船の十数メートル横へと着弾。立ち上がった水柱から飛び散る水しぶきが、甲板へと降り注いだ。

「俺に任せろ!」

 と、全身ずぶ濡れになりながら別の男が躍り出る。

 その肩には対戦車用のロケットランチャーが。

 激しく揺れる甲板上で何とか狙いを定め、敵へ向けて発射する。

 爆音と煙を放ち高速で飛んでゆくロケット弾。

 これもまた、迫りくる駆逐艦の顔面へと着弾。巻き起こった爆風が、深海棲艦を大きく後方へと吹き飛ばした。

「っしゃあ!!」

 ロケット弾を撃った男は片手でガッツポーズをとるが、程なくしてその眼を驚愕と共に見開いた。

 弾の直撃を受けた駆逐艦は水面を数度跳ねた後、水しぶきを高く噴き上げて着水。

 だが、数秒の後に再び水面へと浮上し、航行を再開していた。

「くそったれ!バケモノめ!」

 機関砲を撃った男が地団太を踏み、怒りを露わにする。

「お、おい!アレを見ろ!」

 と、今度は傍で双眼鏡を覗きこんでいた見張りの男が海上を指差した。

 機関砲を撃った男が双眼鏡をひったくるように奪って、見張りの男の示した方角に目を向けた。

 編隊を組んで航行する駆逐艦の更に後方、そこには全身黒づくめの、青白い肌をした女の姿があった。

 その女は腰の辺りまで長い黒髪を垂らし、両手には身の丈と同じ程の大きさの黒い盾を構えていた。盾には砲塔が生えており、ゆっくりと旋回、微動するそれは男達の乗る船に狙いを定めていた。

 深海棲艦の戦艦。戦艦ル級であった。

「ヤベェ!あんなの喰らったらマジで沈むぞ!」

 男は戦慄し、身を震わせる。

 その脳裏には、これまでの人生の記憶が走馬灯のように駆け巡った。

 男は思わず目を瞑り、頭を抱えるようにしてその場にうずくまった。

 と、その時。

 上空に響くエンジン音とプロペラ音。

 高速で船の上空に飛来した、ラジコン程度の大きさの飛行機の編隊が、戦艦ル級へ向けて一直線に飛んでゆく。

 やがて戦闘機は海面付近まで一気に降下、下部に搭載されていた魚雷をル級の進路へ向けて投擲したのであった。

 

「……艦攻隊、敵戦艦を撃沈。続けて索敵機より伝令。敵残存戦力は駆逐三、軽巡一、雷巡一」

 青色と白色を基調とした弓道袴姿の女が、淡々と情報を告げる。

 口調と同様にその顔も、落ち着いた、と言うよりもむしろ無表情、と表現するのが適していると思える様であった。

 それを受けて傍らに立つ、黒髪長髪の女が苦笑気味に口角を吊り上げた。

 その女は一見するとモデルが似合う程の長身と、引き締まった体躯をしていた。しかし、露出された肌の一部からは鍛えられた筋肉の様子が窺え、表情の凛々しさも相まって、アスリートと表現した方が些か適している様に思われる。

「大規模作戦の帰路でこのような事態に遭遇するとは。少々暴れ足りなかった所だが、あの程度の戦力では、満足のいく歯ごたえは期待できそうにないな」

 呟いた女は、右手のひらを大きく開き、前方へ向けてグッと突き出した。

 その動きに呼応するかのように、彼女が背負った巨大な鉄塊に取り付けられた砲塔が旋回、砲身が上方へと傾いてゆく。

 そして彼女の背後を航行する女性達もまた、装備した武器を敵のいる方角へと向ける。

「だが、私は如何なる敵にも容赦はせん!全艦、全砲門一斉射!撃てーーーっ!」

 号令と共に放たれた多数の砲弾が、深海棲艦群の頭上へと飛来する。

 その戦闘が終了するまで、そう長い時間はかからなかった。

 

「た、助かったーー」

 見張り役をしていた男が安堵の声を漏らしつつ、その場にへたり込んだ。

「もうダメかと思ったけど、とんだラッキーだな俺達は。艦娘が偶然近くを通りかかるなんてよ」

「まったくだぜ。にしても、あんな玩具みてぇな武器でヤツらをあっさり沈めちまうなんてな。話には聞いてたが、この目で見るまで信じられなかったぜ」

 ロケットランチャーを抱えた男が、甲板の手すりに寄りかかりながら言う。

「あれに比べたら、コレが豆鉄砲みたいに思えちまうぜ」

 と、自らが撃っていた機関砲を手で軽く叩きつつ言った。

「違いねぇ!ハハハハハハッ!」

 男らは愉快そうに笑いあう。

 すると、彼らが身に付けた無線機からノイズ混じりに声が聞こえてくる。

《こちら…………所属…………通…を……周波……合わせ……》

 男らは即座に耳を傾ける。暫くして男らは、何とか聞き取れた指示に従い無線の周波数を調整する。やがて音声がハッキリと聞こえるようになった。

《こちら横須賀鎮守府所属航空母艦“加賀”です。ご無事でしょうか?》

「おおっ!こっちは大丈夫だ!アンタらのおかげで助かったぜ、ありがとよ!」

 やや興奮気味に男が言う。

 だが対する加賀は、相変わらずの淡々とした口調で言葉を続けた。

《ところで一つ聞きたい事があります》

「おう、何でも答えてやるぜ!」

《つい先刻、付近を航行していた輸送船が何者かの襲撃を受け、積み荷の大部分を強奪されたとの連絡が入っています。それについて事情をお聞かせ願えますでしょうか?》

 同時に周囲に響き出すエンジン音。

 それは船を取り囲むように上空に展開した、小型戦闘機群から発せられていた。

 茫然とした様子でその光景を見上げていた男らは、武器を甲板に置いて、ゆっくりと両手を上げたのであった。




※第二話の一部に加筆し挿入しようかと思ったのですが、都合により番外編として別枠で投稿する事としました。

時系列としては、救助された貴虎が眠っている頃に起きていた話となります。
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