あとひたすら推理しまくります。
書くときに改めて思ったけど魔術とかろくに知らない一般人が動く鎧とか見たらSANチェック案件ですね…
つまり一般人が初対面の相手にケルト式野獣の眼光で睨まれたり訳の分からないままセイバー召喚しちゃったりしたらSANチェックなのか…?(錯乱)
奥の扉に向けて出血している腕をハンカチで押さえながらひたすら走り続ける。
その間、バッグの中からスマホを取り出して家族に連絡だけ取ろうとしたが、起動すら出来ない。電源を何度入れても虫に食われた蜜柑が画面に映らない。焦る。
しかし、他の道具は別で、水筒のコーヒーも飲め、家庭科の裁縫道具なども取り出せた。
どうやら使えないものはスマホだけのようだ。
扉にたどり着きダメ元で開けようとしたが、意外にも普通に開いた。扉の先は―
「はあ?どうなってんだよこれ…」
海士城学園の玄関だったのだ。しかも外に出られるような窓は一つとして存在しない。どう考えてもおかしい。
人も一人として、いや、一人だけ蒼一の5m程前、下駄箱の辺りにいる。しかしこんな顔立ちの整った少女は学校で見たことがない。いるならとっくに話題になっているだろう。更に言えばこの少女は、何故かローブを冬でもないのに羽織っているのだ。
とりあえず蒼一はその少女に近づき、話しかける。
「おいアンタ!誰かは知らないけど逃げろ!鎧の化け物が来てるんだ!」
“金髪のツインテールの少女”が口を開いた。
「貴方、死にたいようね?」
言っている意味が分からなかった。しかしすぐに思い知った。
下駄箱の先の東西の廊下から、正面の階段の上から、聞き覚えのある金属音がする。
ガシャ。
ガシャ。
ガシャ。
下駄箱の先に、広間に進む。
そこでさっき切り抜けたものと同じ鎧が3領、ここに向かってくるのを目にした。そして―
「ならさっさと死になさい」
「うおおっ!?あっぶねえな!?」
少女が背後からダガーで突いてくる。
その殺意の塊をなんとか躱すことに成功したが、鎧はもう三方から蒼一に近づいてくる。
正に四面楚歌。どこか一方向から突破するしか手はないだろう。
(逃げるならどっちだ!?後ろは駄目だ、鎧に囲まれる!そもそも鎧のいないような方向がない!クソッ!なら一か八かだ!)
「…!?追撃しなさい、
蒼一は階段に向かっていく。階段の上で鎧が立ちはだかるが間に合わない。振り回された剣が空を斬る。
と同時に、剣を振り回した右腕の脇下に飛び込み、そのまま上階に駆け上がる。二領の鎧が追うが、動きが遅い。鎧が四階にたどり着く頃には彼は姿を晦ましていた。
(逃げたわね…けれど驚いたわ。まさか高低差の不利があるはずの階段を選ぶなんて。同調が遅れた。しかし…あれは意図して選んだの?それともまぐれ?まあいいわ、理事長室の憑依鎧も戻ってきた。これで5対1よ、どう来る?久我蒼一)
現在地点、三階。教室の隅に隠れて呼吸を整える。
(マジで危なかった…敢えて中央階段を選んで虚を突いて逃げることはできたみたいだが…)
蒼一はどうにか四階に上った後、東階段から三階に下りていた。しかしここに来るまで他に誰とも会わなかった。もう一度スマホを確認したがここでも点かない。
腕はまだ痛みを感じるが出血はもう治まったようだ。
だんだんと呼吸が整い、ここから逃げるための情報も整理されていく。
とりあえず今の状態を再確認しよう。
俺は理事長室らしき部屋に入ったら鎧に襲われた。その時に腕を負傷したけど動かすことに問題はない。
廊下から学校の様な場所に入ったら少女と鎧に襲われて全力逃走。そして今に至る。
バッグの中身は全てある。教科書、弁当、水筒、裁縫道具と課題作品用の布、使い物にならないが捨てられないスマホ。
この状況を切り抜けるにはどうするか。それには彼女について知る必要がある。
まず鎧を動かしているのは彼女だろう。彼女はあの時指示を出していた。追いなさい、と言った割には全然俺に追いつけてなかったが。あと、あの鎧はファントムと呼ばれているようだ。それにしても、
(あの鎧だけはあの時他のよりも速かった。それを考えると不可解な点がいくつかある)
脳内で注視するべき点がリストアップされる。
(まずは何故あの鎧“だけ”だったんだ?追ってきた鎧は片方は速かったけどもう片方は鈍かった。鎧を操っているのがあの子ってことは分かるが…ひょっとして操作するにしても制限があるのか?)
少女の目的が俺の殺害というのは分かる。けど何故俺を殺そうとしているのかは分からないし、分かっているのは彼女が鎧を操っていることぐらいだ。
この局面では、“どうやって殺りに来るのか”が重要になるのかもしれない。
様々な方法を考案してみると、もっと確実性のある方法が存在するのに何故使わないのかというが浮かぶからだ。
簡単な例で言えば、鎧の数を四体よりも増やすという方法だ。鎧で校内を埋め尽くしてしまえばそれだけで詰ませられる。ここには他の生徒はいないしこの方法はできるずだ。
が、それをしていないのは鎧が足りないからだとか一度に四領までしか操作できないからだとかいう仮説が立てられる。
そして、後者の仮説が真ならあの鎧の速さも同じ原理なのかもしれないという新たな仮説も立てられる。実際、あの鎧はただ斬りかかるだけではなく逃げるときに俺が通ろうとする道を塞ぐように剣で薙ぎ払ってきた。
他の鎧と違って“まるで意思があるかのように”。
(未だに鎧を動かす方法は分からないが、ひょっとして自分の意思で操作できるのは一領だけ?)
鎧がオートで動いているとして、鎧のAIの様なものの性能に差がある、というだけではすまない点もある。上階から見えたが、あの鎧だけは階段で追ってきた時から俺の方を見ていなかった。
階段で、というのも重要だ。逃げた方向の鎧を自分の意思で操作しようとしていたと考えれば合点がいく。
何故一領だけなのかは、大方同時に精密に操作するための脳のキャパが足りない、単純にコントローラの様なものが一つしか無いといった理由だろう。
「こんな状況なのに俺って結構冷静だな…」
本題と関係ない馬鹿馬鹿しいことについて考えるのはやめよう。どうせただの生存本能みたいなものなのだろう。
少女の能力が「鎧に簡易的な殺戮AIを与えることができ、一領位は自分の意思で動かせる」というものだと仮定して、そうでないとしても今絞られているものなら逃げ回るのは容易だ。
しかし俺の今の“ここから無事に生きて帰る”という目的上で考えるとこれは悪手。脱出のための手がかりが探せなくなるし何よりその手がかりの前で複数に待たれたら間違いなく詰む。
(倒すことができれば攻撃を受ける心配もなくここから脱出するための手がかりを探せる…そして少女の能力がそれで間違ってないなら―)
この学校の構造が本当に海士城学園となら確実に少女を倒すための手段は揃っている。が、まだ懸念があった。
(殺すのはまずいな…人生棒に振りたくないし。けど自分で動かせるのならまずいな…気絶でいくか?)
それは、魔術の類を知らない一般人として非常に常識的かつ、この状況からしたら少々滑稽なものだった。
気絶させるという方針を定めた蒼一は、少女を確実に無力化し、鎧の動きを停止させるための手順として体育館倉庫に向かった。
(しっかし…やってきたことはともかく…かなりの美女だったなあいつ…)
などと、殺伐とした脳味噌に下らないことを考えさせながら。
執筆中に腕が痒くて掻いてたら血が出てきてました。
無辜の怪物Eぐらいは発動してるかもしれないですねクォレハ…
あと最近は「ハリー・ポッターと野望の少女」とか「人理を照らす、開闢の星」とか読んでますので多少更新が遅くなります。
よろしくおねがいします。
とりでした。