デデーン
金色の髪の少女は少し焦っていた。
「何故未だに見つからないの…?」
もともと久我蒼一がこの学校の生徒で校内の構造をよく理解しているとはいえいくらなんでも見つからなさ過ぎる。
この学校は階は多いものの一階一階はそこまで広くはない。あれから数十分探し続けているが全く見つからないなんてことはないはずだ。それに五感を持つ憑依鎧がドアの開閉音だとか、上下階の足音だとかそういったものは聞き逃さない。
なら体育館のような本校舎以外の場所にいるかもしれない。体育館は広い。こんな場所なら憑依鎧に囲まれても振り切れるだろう。
視界の先に妙なものが映る。布に何かが覆い被さっている。割と大きめの何かが20mほど先にある。確認するべきか?
「引き続き護衛しなさい、憑依鎧。…?」
足下に何かが引っかかる。これは、白い糸?憑依鎧は足長なせいで越えてしまったようね。けど、こんな陳腐な罠を張ったところで私が―
ドガッ!!
「ッ!?何!?」
高速で何かが憑依鎧を攻撃している!?けど敵の姿は見えない…どうなっているの?近くに教室はない。後方に下がりながら様子を伺うしかないようね。そして攻撃の正体は同調を行えば分かるはず。
(同調……………!?こんなアナログな方法で!?)
攻撃の正体はただのピッチングマシンによる豪速球だった。あの布が覆っていたのは彼が攻撃を行う為の機械だったのだ。
それにしても威力が高すぎる。受けた様子を見てみれば鎧だとしても当たり所が悪ければバランスを崩してしまう程の威力があるらしい。やはり退くべきだ。
ドガッ!
こうしている間にも豪速球が飛んでくる。威力が十分弱まる位置まで退かなければ。…こんな時に通知?
《久我蒼一を発見》
(4階担当の憑依鎧がようやく発見した!同調ッ!)
即座に同調を行い蒼一の逃走経路を確認する。廊下を走って…どうやら中央階段から降りるようだ。ちょうど私も中央階段前にいる。一階に来るのならこちらはピッチングマシンを抑えていない側の憑依鎧で挟み撃ちに出来る!
「憑依鎧!中央階段側を警―」
「やっぱりまだそこにいたか、鎧女!」
瞬間―私の目に映ったのは、もう中央階段から降りていた久我蒼一の拳が鳩尾にめり込む瞬間だった。
「痛ッ!?」
スローモーションに見えた。拳が沈み、激痛が走り、そして下駄箱の辺りに吹き飛ばされる。
「ぎッ、あ"あ"あ"あ"あ"ッ!」
まだ痛い。苦しい。吐きそうだ。どうしてもういるの?彼は4階にいたはずじゃないの?
「お返しだ、鎧女!そこを動くな!」
彼がすぐに掴みかかってくる。憑依鎧に反撃させるためにダガーで足止めしようとしたが手刀で弾き飛ばされる。
「あぐッ!?」
そのまま流れる様に目に手刀を叩き込まれる。前が見えない。気配が後ろに回っ―
「ファントムを止めないと殺す…!」
「はぐッ!?」
ヘッド…ロック…!?不味い…本気で殺す気…!?くっ…嫌…死にたくない…解除しない…と…
「全てのファントムを止めたか?」
「え…え…助け…て…離して…もういいでしょう…?」
これで…緩まるはず…
ギュウウウウッ!!
「あっ…ぎぃっ……!?なん…でぇ…!?ひぎっ!…やめ…しんじゃ…から…い"い"い"っ!?……ゆる…めで…ごめ…んなさ…い…ぃ………」
彼は…一向に緩める気配が…ない…嫌…まだ私の家は…大成…してない…のに…あ……意識…が―
「ゔ…っ―」
「ふう…これで無力化出来たか…死んで…ないよな?」
彼女の首に手を当て脈を確認する。どうやら止まっていないようだ。少し息が荒いが呼吸もしている。後は起きる前に裁縫用の糸で拘束してしまおう。
これでこの学校擬きから脱出するためのファーストステップが終わる。
彼女が起きたら…さっきの呻き声の時点で心苦しいが拷問でもするしかない。自動操作が出来るなら縛られていても動かせるはずだ。彼女を隷従だとかそんなレベルで痛めつけるなりなんなりしなければファントムの攻撃を受けるだろう。
方法は…
「ゴクリ…」
いやいやいや、そんなことをしてはいけない。
彼女が割と巨乳で顔立ちも整っている美人だとはいえそんなことをしてはいけない。
昔は敗国の女性は辱めていた国もあるらしいがたりめーだそんなもん。
アウトに決まっているだろう。
というか…若くないか?下手したら俺より歳下だぞ?
「とはいえどうするかなあ…この娘をどうにかして屈服させなきゃいけないのに…うん…」
…疲れたのか?眠くなってきた…あークソっ…眠―
―終わったようだね。二人とも回収しなくちゃ。
合格だよ、久我蒼一君。
書いてて気づいたけど、これリョナラーホイホイ回じゃないか…たまげたなぁ…(驚愕)
もういっそ原作ということでR18書きましょうかね…やるとしたらもちろん別の小説扱いで投稿します。
(リョナは多分)ないです。