眠る前にも夢を見て   作:ジッキンゲン男爵

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降臨する神々
#1 眠りに付かずに


 ――そうして、ヘロヘロもログアウトし現実へ帰って行った。

 

 ここは体感型オンラインゲーム『Yggdrasil(ユグドラシル)』の世界。

 仮想世界内で現実にいるかのように遊べるそのゲームは、西暦二一二六年にスタートして以来、一世を風靡し――二一三八年の今日、幕を下ろす。

 

 このゲーム内のどんな場所よりも価値があるその場所には、骸骨の魔王が取り残された。

 ――魔王、モモンガはたった一人、四十一席ある円卓にいた。

 彼らにも生活がある。忙しかったんだ。

 そう自分に言い聞かせる。

 だが、諦めきれない感情が空席に向かってぽろりとこぼれ落ちた。

「折角の最終日ですから……良ければ最後まで遊んでいきませんか……」

 その声はモモンガ自身が呆れてしまう程に情けなかった。

 

 はぁ、とため息をつこうとした瞬間――

「はい!」

 虚しいはずだったセリフに、明るい肯定が届いた。

 

 ヘロヘロの座っていた方を向いていたモモンガは驚きながら、声がかかった方へ振り返った。

「――いつの間にインしてたんですか!フラミーさん!!」

 モモンガの斜向かいには――天使にも見紛う六枚三対の翼を背負う、藤の花のような淡い紫色の肌をした女性が座っていた。

 彼女は神の敵対者(サタン)、悪魔だ。

「ふふ、今ですよ!でも驚いちゃったなぁ。インしたらいきなり最後まで遊びましょうなんて!」

 嬉しそうな声で笑う彼女はアインズ・ウール・ゴウンを設立し、後ろから数えたほうが早いほどに遅くギルドに加入したメンバーだ。

 遅くにギルドに入っただけあって、ゲームを始めたのも遅く、今でもたまに気が向くと遊びに来ていた。

 

「あ、ははは、すみません。ヘロヘロさんに言ったつもりだったので……」

 モモンガはそう応えながら、驚きが落ち着いたせいか再び寂しさを感じ始めていた。

「ヘロヘロさんいらしてたんですね。私お会いし損ねちゃいました……」

 寂しさは伝播するようで、楽しげな雰囲気だった声音は少しトーンが下がったようだ。

 モモンガは折角最後の時に来てくれた仲間の気分を落とさせてしまったことを反省し、努めて明るく返す。

「あ、でもヘロヘロさん、またどこかでお会いしましょうって言ってましたよ!」

 フラミーはどこかで……と、来るはずのない明日を探すようにオウム返しをした。

 それはモモンガ自身の姿に重なった。

「そうだ!ねぇ、モモンガさん。私今日落ちたら、皆でまた軽く遊べるようなゲーム探します!だから、良いものが見つかったらまた一緒に遊んでくれませんか?」

 モモンガは声が上擦りそうになるのを抑えながら、勿論!と笑顔のアイコンを出した。

 

+

 

 その後強制ログアウトまで約八分と短い時間を見咎め、華々しく終わりを迎えようと二人は決めた。

 モモンガはギルド武器を携え、フラミーと共に玉座の間へと向かった。

 

 途中NPC達――執事たるセバスや、戦闘メイド(プレアデス)を引き連れ、第十階層玉座の間へと辿り着く。

 玉座に掛けたモモンガと、玉座を挟みNPC(アルベド)とは逆サイドに立ったフラミーは感慨深げに四十一枚あるギルドメンバーの旗を眺めた。

 モモンガは途中、このNPC(アルベド)はどんな設定だったっけ……と思ったが、今はギルドの思い出に浸る事にした。

 

(本当に……楽しかったんだ……)

 

「ホント楽しかったですね」

 

 口に出ていたかと、この日二度目の驚きを持って声の方を見ると、モモンガは変わるはずのないフラミーのアバターの表情に涙を幻視した。

 

「次のゲームが見つかったら、私も晴れて初期メンバーですね」

「ふふ、そうですね。俺とたった二人で始まっちゃいますけど」

「モモンガさんは結構やり込む人だからなぁ。ふたりぼっちじゃすぐ置いてかれちゃいそう」

 朗らかな笑い声が響く。

 

(最後の時を一人で過ごさないで済んで良かったなぁ……)

 

 そう思ったのはモモンガか、フラミーか。

 

 いよいよ時間が迫る。

 

 何年も遊んだゲームだ。

 

 アバターも、ハンドルネームも、既に半身のようになってしまった。

 

「こんな時、どんな言葉が似合うんだか……私、よくわかんないです。」

 へへ、とフラミーから薄い笑いが漏れた。

 

 こんな時にサービス精神が旺盛になってしまうのは男の性だろうか。

 

 15……14……13……――

 

「フラミー、そう寂しがる事はない。今日でユグドラシルは終わりを迎えるが、我らアインズ・ウール・ゴウンと、そしてナザリックの繁栄はここで終わるわけではないのだ」

 

 これまで多くの友人達と遊ぶときによくやっていた、モモンガの「魔王ロール」だ。

 その声はどこか威厳を感じさせるものだった。

 

 8……7……6……――

 

 フラミーは大きく頷く。

「はい!モモンガ様!次の世界でもまた共に歩みましょう!」

「そうです!じゃなかった!その意気だ、フラミー!」

 アバターの二人の表情は動くことはない。

 しかし、この時お互いの感情は十分すぎるほどに伝わっていた。

「――モモンガさん、本当にありがとうございました」

「……俺の方こそ。本当にありがとうございました」

 

 3……2……1……――

 

「アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ!!」

 

「「「アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ!!」」」

 

 二人は驚きに肩を揺らし、追従した声の主たちを見た。




か、書いてしまいました。
因みに私の中の「サタン」のイメージはデビルマンの飛鳥了最終形態でございます。
でも肌色の肌では捻りがないかと思い、とりあえず異形感出していこう!ということで紫です。
緑も良いと思いかけたのですが、緑じゃナメック星人ですものね。

2019.4.27 ペリ様誤字修正ありがとうございます…(//∇//)使い方がわからず一瞬戸惑いましたが無事に直せました。
また一つ賢くなりました!
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