眠る前にも夢を見て   作:ジッキンゲン男爵

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#45 閑話 だってだって男の子だもん

 セバスができたての食事を乗せたサービスワゴンを押して寝室の扉をノックすると、しばらく時間が経ってから支配者が久しぶりに顔を見せた。

「す、すまん。後三十分だけくれ…。」

 その姿は全裸にガウンを掛けていて全身汗だくだった。

「かしこまりました。では、三十分後に再び――」

 扉の向こうから何かを言っているフラミーの声が聞こえるとアインズは部屋の中へ振り返り、しばらく何かを考えた。

「……やっぱり二時間で頼む。」

 そして急ぐように扉は再び閉じられた。

 

 お世継ぎが楽しみだとワクワクしながらセバスは一度食堂に戻った。

 二時間後では食事は冷めてしまうし、その時間に合わせて再び料理長に作り直してもらった方がいいだろう。

 食堂につくと、キラキラした視線でメイド達がセバスを見ていた。

 

「アインズ様達はまだもう少しお勤めされるそうです。」

 キャー!と上がるメイドの声にセバスも嬉しそうにうんうん頷いた。

 

+

 

 結局二時間の約束も破られると、三日後支配者はようやく一人で寝室を出て来た。

「これはアインズ様。おはようございます。」

「すまなかったな、セバス。また食事を無駄にした。」

「いえ。そんな事もございましょう。それで、今度こそお食事になさいますか?」

「いや。良い。フラミーさんも寝ている。それより私が休んでいた間の外の事を知りたい。アルベド達を呼んでくれ。」

 ふぅーと長い息を吐くと支配者はソファに身を沈めた。

 セバスは深々と頭を下げてからこういう時に呼び出される知恵者三名を呼び出した。

 

 現れた知恵者達はアルベドだけいつもと違う少し露出の多いドレスを着ていた。

「アインズ様!ついに私もお誘い頂――」

 駆け出そうとするアルベドの首根っこを掴むとデミウルゴスはため息をついた。

「私達もいる以上そんなわけ無いでしょう。――アインズ様。お待たせいたしました。」

「父上。ご無沙汰しております。お元気そうで何よりです。」

「…お前たちも相変わらず元気そうだな。さて、私が休んでいた間の外の様子を教えろ。」

 

 知恵者三人は一度視線を交わすと、アルベドが代表して応えた。

「んんっ。この三週間――。」

「三週間!?そ、そんなに経っていたか…疲労無効は確かにフラミーさんの言う通り危険だな…。」

 

 アインズは一週間は遊んでいたつもりだったが、あまりにも長すぎた自主謹慎に頭を抱えた。

 そして疲労無効無く蕾の回復だけで過ごしたフラミーがよく三週間も壊れずに付き合ってくれたなと思う。

 いや、勿論やらしい事をせずにひたすら二人の思い出の話をして過ごした時間もあったが。

 ご飯にしたいと言い続けながらよがっていた姿を思い浮かべると一度首を振った。

「父上、よくお休みになられましたか?」

「あぁ…いくらなんでも少し休みすぎたな。」

「寝所に上がられる前に本当はお話ししようと思っていたのですが、私は弟がようございます!」

 息子のリクエストにデリカシーがない男は嫌われると心の中のメモに書き残す。

「…やかましい。アルベド、遮って悪かったな。続けてくれ。」

「アインズ様?私は男の子でも女の子でも、もちろん両性でも!いつでも産む準備はできておりますわ!」

「…デミウルゴス。お前が教えろ。」

 いやんいやんと腰をくねらせる統括と、ワクワクと花を散らしている息子を前にアインズは苦笑した。

 女子を連れ込んで三週間も寝室から出なかったのだから、当然交わっていると思われても仕方がないが――それにしても皆正直すぎる。

 

「は。この三週間強、大した変化はございませんでしたが、一点だけ早急にご報告しなければならない事が。バハルス州と面するカルサナス都市国家連合から、今後は隣り合う国同士是非懇意にと舞踏会の誘いが来ております。ちなみに私はお嬢様を望んでおります。」

「…お嬢様の情報は良い。それより舞踏会だと?」

 アインズの心の中には複雑なものがあった。その中で最も大きいのは「踊れるわけ無いでしょ、この馬鹿ぁ!」という絶望にも似たものである。つい顔を覆いたくなるが、抑制によってそれには至らない。

 特に今回の舞踏会は自分をまるで知らない者達による会であり、その場での失態は大きな余波を生むだろう。「神」という今まで作り上げた立場が瓦解することは無いにしても、それに匹敵するだけの何かが起こったとしてもおかしくは無い。今ある評価が一気に地の底にまで落ちるのは間違いが無い。

「――…この中で踊れる者はいるか?支配者として情けないが…私は踊れんし、恐らくフラミーさんも踊れんだろう…。」

 アインズの心中とは裏腹に、アルベドは目を輝かせた。

「実はそんな事もあろうかと、カルサナスから連絡が来て以来、三人で恐怖公の下へ行き必死に練習いたしました!アインズ様!練習ではパートナーとしてこのアルベドが御身にお付きいたしますわ!!」

 

「最初からフラミーさんと練習した方がいいと思うが…。」

「いいえ!素人同士では上達に時間もかかりますので!練習だけでもこのアルベドとっ!」

 そういうものかなぁと二人の息子に視線を送ると、デミウルゴスはうんうんと頷いていた。

「…まぁパンドラズ・アクターと手を取り合うよりはましか。」

「そんな父上!」

「あ、いや冗談だ…。お前はデミウルゴスと共に全体を監督したりフラミーさんに教えたりしてくれ。それで、いつ舞踏会は開かれるんだ?」

不服そうな雰囲気を出してからパンドラズ・アクターは応えた。

「まだ三ヶ月はございます。」

「そうか…。三ヶ月あれば何とでもなりそうだな。」

 

 アルベドはワクワクと翼を揺らし、アインズに近付き手を伸ばした。

「アインズ様?まずは少し、アルベドにお時間を下さいませ!」

「ん?あぁ…そうだな。あまりにも無様ではフラミーさんにも笑われる。」

 その手を取って立ち上がろうと力を込めると、アルベドは立たせる気など最初からなかったかの様にアインズに引っ張られその胸にダイブした。

「…何をやっている?」

 スリスリと胸に顔を擦り付けると、情欲に濡れた金色の瞳でアインズを見上げた。

「レッスンの前にまずは少しお情けを!」

 その瞳の向こうにフラミーを幻視し、アインズは思わず反応してしまった。

「まぁ!!アインズ様!!お早く!!」

「あっ、や、やばい!!離れなさ――。」

 罪悪感につい寝室へ視線をやると、寝室の扉からガウンを羽織ったフラミーが顔をのぞかせて居た。

 いつからそうしていたのか不明だがアインズの背にはタラリと冷や汗が流れた。

「あ、あぁ!早く!アルベド、どきなさい!!」

 アインズが立ち上がろうと腰をあげるとアルベドに太ももをギュッと抑えられ再び座らされた。

「いいえ!いいえ!!このアルベドを求めて御身の御身は疼いてらっしゃいます!!」

 もそもそとアルベドがローブの中に手を入れ始めると寝室の扉はパタリと閉められた。

 慌ててアインズは人化を解くと、アルベドの肩を持って後ろに押そうとするが、まるで石像のようなそれはフラミーの時のように後ろに押せる気配はない。

「お前達!アルベドは今日から謹慎だ!」

「…そ、それは、次はアルベドと寝所に上がるという意味で…?」

 デミウルゴスは判断がつかないようで困ったようにアルベドとアインズを見た。

「まぁ!!是非、是非謹慎いたしましょう!!」

「ち、ちがう!そうじゃない!この謹慎はお前一人だ!!」

「父上、妃の数だけ弟の確率は上がりますが?」

「お前は誰の味方だパンドラズ・アクター!!アルベド、兎に角離れなさい!!」

「アインズ様!お慰めいたしますので、早く人にお戻りください!!」

「セバス!!何をぼうっとしている!手伝え!!」

 控えて様子を見ていたセバスは慌ててアルベドを引き剥がした。

 

 アルベドがセバスに連れて行かれる中、アインズは自分の体の正直さにほとほと嫌気がさした。

「…レッスンは謹慎が解けてからにしよう。」

「「かしこまりました。」」

 息子二人は頭を下げ、今後のレッスンの計画を立てようとその場で楽しげに話し出した。

 解散と言わなければここを動く様子のない二人に苦笑しながら、寝室をノックする。

 しかし何の返事もなく、アインズは恐る恐る扉を開けた。

 

「フラミーさーん?」

 扉から顔をのぞかせて猫なで声で呼びかけると、そこには誰も居なかった。

「あー…そりゃそうだよな……。」

 念の為寝室に入り生命探知(ライフエッセンス)を発動させるが生き物の気配はなかった。

 

「父上?」

「アインズ様、如何なさいましたか?」

 後ろからかかる声にアインズは自分を責めてから口を開いた。

「…約束しときながら俺ってやつは…。お前たち、私はちょっと出る…。」

 

+

 

 フラミーは第六階層の湖畔に立つ水上ヴィラで一人気持ちの整理をしていた。

 これ以上は増やさないと約束してくれたアインズのためにも今いる彼女の存在はちゃんと認めなければいけない。

 指輪を交換した日、アインズにとって初めての相手だったフラミーから、当然一人以上増やさないと誓った思いはあまり正しく届いていなかった。

 そもそも既に友達以上奥さん未満の存在だと思い込んでいる三人は、この"増やさない"という約束に含まれないものだと認識していた。

 村瀬は生まれた時から孤独だった。身の回りに人は多くいたが、誰もが他人であった。

 手に入れた事がある者達と違い、手に入らない事に慣れているし、手に入れた後の情景を大して知らないと言うのは彼女の抱える問題のひとつだろう――。

 

 コテージの大きな窓を開けて目を閉じると、建物の足に水のぶつかる音が聞こえた。

 フラミーはアインズとアルベドは実際どこまでいっているんだろうと考える。

 毎晩欠かさず眠っていたため知らなかったが、もしかしたら夏に人の身を手に入れて以来皆既に抱かれているのかもしれない。

 手慣れた様子のアルベドと、それを見るアインズの瞳は自分を抱いていた時と全く同じ色をしていた。

 シャルティアには竜王国でキスさせていたし、ドラウディロンはアインズといつか結婚すると常に豪語していた。

 フラミーは既にいるこの三人をすごいと思う。

 皆がアインズを独占したいと思っているだろうに、まだ誰も「増やさないで」と頼んでいなかったことに深く感謝した。

 優しいあの人は誰かにそう言われたらすぐに分かったと頷いていただろう。

 なんでもっと早く素直になれなかったんだとフラミーは後悔した。

 どんどん周りに女性が増えてしまう前に気持ちを伝えていたら、その時から増やさないとすぐに誓ってくれていたに違いなかったのに――。

 フラミーはため息をつくと目を閉じて水の音を聞きながら眠りに落ちた。

 

 第六階層に夕暮れが訪れるとフラミーは目を覚ました。

 スッキリした頭で目を開くと、いつの間にかそこにはアインズが一緒に寝ていて、自分の上にはアインズのローブがかけられていた。

 見慣れ始めたアインズの長い睫毛を眺めながら、この景色を本当は何人が見たのだろうかと思う。

 ローブをずらすようにアインズに掛けるとアインズも目を覚ました。

「…あ、フラミーさん…。」

「おはようございます、アインズさん。」

「あの…俺…アルベドのっん――」

 フラミーは取り敢えず今はアルベドの名前を聞きたくないとアインズの口をそっと塞いだ。

 アインズはこれまでと違うキスに余程嫌な思いをさせてしまったとフラミーを抱きしめた。

「はぁ、フラミーさん…すみませんでした…。」

「良いんです。仕方のない事だってほんとは良く解ってますから。」

「そ、そんなことは…。」

 辛そうな顔をする支配者をフラミーは抱き締めると、この人にこんな顔をさせてはいけないと思った。

 アインズがどう思っているかは置いておいて、支配者として子供はたくさん持たなければいけないだろうし、アインズが支配者でいる事で多くの恩恵を受けている自分がその仕事を否定してはいけないだろう。

 

 自分がきちんと納得して四人で仲良く子供を産めるならそれが一番なのだ。

「…アインズさん…?あの、私に気を遣わないで…たくさん子作りして良いんですからね。」

 アインズは切なそうな金色の瞳に吸い込まれた。

「え?い、いいんですか…?」

「はい。私、ちゃんと、受け入れるから…。」

「そ、そんな誘い方……ああー!もう!ダメだ!!」

 アインズは顔を真っ赤にするとフラミーを抱きしめたまま立ち上がり、転がるように転移門(ゲート)に入った。

 寝室に着くと、アインズはフラミーに気を使うことをやめ、何度も何度も子作りに励んだ。

 訳もわからず激しく抱かれるフラミーから上がる声がたまに執務室にまで漏れてはデミウルゴスを悩ませ、パンドラズ・アクターと謹慎が解けて戻ったアルベドを喜ばせた。




杠(ユズリハ)様がフラミー様を描いてくださいました!!(*゚∀゚*)
可愛くて、これはアインズ様も抱き抱きしちゃうのも納得ですよ!!
よかったら皆様ご覧になって下さい!!

【挿絵表示】


あ、将来的にちゃんと誤解は解きますよ!!

次回 #46 閑話 影の立役者
12時です!

そして約束のブツです。(真顔
https://syosetu.org/novel/195580/7.html
既に読んだ方達は、もっとほぐしにほぐした方がいい派と、いいじゃん!いいじゃん!すげーじゃん!派で分かれました。笑
はじめてのR18だ!
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