眠る前にも夢を見て   作:ジッキンゲン男爵

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#48 閑話 不敬なイラスト

カルサナス出発数日前。

アインズは踊りを何とか身に染み込ませると、恐怖公から休憩の許可が出た。

練習がステップアップしていく中で、フラミーと日々踊っていたが、踊り以外では触れ合っていないし、同じく休憩に入ったフラミーに会いに行きたいところだが――

「まずは風呂だ。」

本番と同じ条件の練習が始まっている為、アインズは人の身で踊っていた。

フラミーは「汚いおじさん」と言う生き物を嫌っているため清潔を心掛けなければいけない。

それに、アインズは風呂が好きだった。

人の身は代謝するので風呂の入り甲斐があるし、自分でも洗える為三助の三吉君に手伝わせる必要もない。

真っ直ぐスパリゾート・ナザリックへ向かいながら、やっぱり風呂はこうでなくちゃと胸を弾ませていると、スパの入り口前に同じく休憩に入ったデミウルゴスとパンドラズアクターがいた。

扉に手をかけていた二人はアインズの気配を察知し、すぐに廊下で跪いた。

「父上!」

「なんだ。お前達も風呂か。」

「は。フラミー様のお手を取るのにむさ苦しいのも如何なものかと。」

「…良い心がけだ。フラミーさんは汚いおじさんと言う生き物を心底嫌っているからな。」

デミウルゴスは僅かに背を震わせた。

「ところで、この風呂の会に私も参加してもいいかな?」

「「もちろんでございます!」」

アインズは二人のいい返事を聞くと男湯の脱衣所へ踏み入れた。

「「「これはアインズ様!!」」」

中ではメイド達が掃除をしていた。

 

「なんだ?休館日だったか?」

「とんでもございません!お使い下さい!」

メイド達は掃除の手を止めると流れるように控えだした。

アインズが出て行かないのかなと様子を見ていると、何の違和感も持たないのか男性守護者は自分の脱衣カゴを決めそれぞれネクタイを引っ張り始めた。

「い、いやちょっと待て!!」

アインズは慌てて二人のネクタイに触れる手を握りしめた。

「ア、アインズ様如何なさいましたか?」

「父上?」

「お前達…やっぱりスパはやめだ…。」

二人はネクタイに触れたままポカンとアインズの手とアインズを交互に眺めた。

「…二人とも私の部屋の風呂に来なさい。」

アインズはそう言うとデミウルゴスのネクタイをキュキュっと引き上げた。

デミウルゴスは元から緩めにネクタイをしているし、シャツも割と開けている為、はだけ方がパンドラズアクターの比じゃなかった。

「こ、これはアインズ様…恐れ入ります…。」

アインズは隣で早く自分もという雰囲気を出し続ける息子のネクタイもキュッと締め直した。

「さぁこれでいい。」

「ンンンン父上!!ありがとうございます!!」

アインズは花を撒き散らかす息子に鎮静されながら、左手の薬指にはまる指輪をトントン叩くと転移して行った。

 

支配者のいなくなった脱衣所でメイド達は少し赤くした顔を見合わせた。

「「「「「「公式供給キターーー!」」」」」」

それは雄叫びだった。

「爽やか!!爽やかすぎるタッチ!!!」

「そんな事をされてはデミウルゴス様は!!パンドラズアクター様は!!!」

「んんん!甘酸っぱい!!」

「デミウルゴス様のネクタイに触れられた時の、あの戸惑い!!」

「悪魔だというのになんと言ういじらしさ!!」

「はぁ〜〜〜〜〜尊。」

メイド達は一通り盛り上がるといつもより更にスピーディに仕事をこなし大急ぎで執筆(・・)に向かった。

 

+

 

アインズは自室の風呂、と言っても銭湯よりも広いような風呂で男性守護者二名とくつろいでいた。

「はーやはり風呂はいいな。…ん?」

誰かに呼ばれる感覚にアインズはこめかみに触れた。

「私だ。」

『私です!』

二人とも私と応える詐欺のような状況だが、アインズは相手が誰だか分かると顔を綻ばせた。

「フラミーさん。どうかしましたか?」

『あの、カルサナスで着るドレスのご相談をしようかな…って。それで、良かったら私の部屋に――』

「行きます。すぐ行きます。」

『わぁ良かった!待ってますね!』

何が起きたのかすぐに理解した男性守護者はすぐに風呂を上がる準備を始めた。

 

「すまないな。私は行く。お前達は好きなだけ入っていなさい。」

「よ、よろしいのですか…?」

「宜しい宜しい。のぼせないようにな。」

「父上。休憩終了までどうぞたっぷりお勤めください。」

「…いや、違う。違うぞ。」

アインズは何故自分の息子だと言うのにこうも開けっぴろげなんだろうと頭を悩ませるとそそくさと風呂を上がってフラミーの部屋へ向かった。

「どうします?デミウルゴス様。」

「せっかくアインズ様のお部屋にいる御許可を頂いたのだから、もう少し――。」

「いえ、これ、飲まれます?」

「…私はたまに君についていけないよ。」

 

男性守護者はしばらく経ってからアインズの出汁を上がると、アインズの執務室でメイドが盛り上がっている声に首を傾げた。

 

「君達、御身のお部屋で何をしているんだ。」

扉を開けると、机の上には大量の書類が無造作に載っていた。

「で、デミウルゴス様!?パンドラズアクター様!?」

メイド達はアインズが立ち去り割と時間も経っていたし、守護者も当然指輪で転移して帰っていると思い込んでいた。

この二人は転移の指輪を着けることを許されているのだ。

「…なんですか?これは。アインズ様の執務の書類ならこのような扱いは――。」

デミウルゴスは机の上に散らばる紙を拾い上げると、硬直した。

「ん?デミウルゴス様何ですか?」

パンドラズアクターも近寄って手元のそれを覗き込むと、あぁと声を漏らしてうんうん頷いていた。

 

「やはり父上が人化するようになってからは人の身の御身とデミウルゴス様が定番ですね。以前は断然玉姦がメイドのお嬢様達の中では流行っていたようですが。」

「こ……これは…これは…。」

デミウルゴスは余りにも不敬なそのイラストの数々に目眩を覚えた。

「骨に擦り付けるのもありましたが、やはりいれるというのは大事な――。」

「パンドラズアクター!君は何を言っているんだ!!」

デミウルゴスは当たり前のように謎の言葉を話し始めたパンドラズアクターのジャケットを掴み上げ額に青筋を立てた。

パンドラズアクターは人差し指と親指を合わせて円を作り、その中にもう片方の人差し指を入れていた。

「デミウルゴス様が父上を愛していても何の不思議もないことでしょう。」

「アインズ様を敬愛していてもこのような不敬を働くほど私は落ちていない!」

バンッとイラストを叩くとデミウルゴスはそれを放った。

「デ、デミウルゴス様申し訳ありませんでした。」

メイド達は急ぎ大不敬イラストを回収していくと頭を下げ、デミウルゴスはメイドの手の中で整頓された書類を奪い取ると全員を睥睨した。

「君達もあまり御身に不敬な真似をすれば殺しますよ。」

「「「「も、申し訳ありませんでした…。」」」」

「まったくこんな…。」

デミウルゴスは書類に目を落とすと、しばらくそれを眺めた。

「…これは私が処分します。」

メイド達が反省の面持ちで頭を下げるとデミウルゴスはそのまま自分の階層へ転移して行った。

「まぁ仕方ないでしょう。デミウルゴス様は父上にもフラミー様にも一方通行プラトニックラブですから。」

「そうですね…。」

メイド達は取られてしまった新刊のラフが火山に放り込まれる様を幻視して泣いた。

 

デミウルゴスはメイドの想像通り火山に大不敬祭りを放り投げた。

ぶちぶちと文句を言いながら赤熱神殿にある自室へ帰ると、机の上に乗っているフラミーと昔撮った写真をしばらく眺めた。

満足すると机の引き出しを開け、空の写真立てを取り出す。

「これはまぁ不敬ではないですね。」

一枚だけ残された、アインズにネクタイを結ばれるデミウルゴスのイラストは写真立てに入れられ机に飾られた。

 

それを悪魔達とメイド達が発見するまであと数時間。

 

+

 

アインズはドレスルームの扉の前に座り、これかこれかこれかこれかこれかこれか……と無限に続くフラミーのファッションショーをほやほやした気持ちで眺めていた。

「それともこっちですか?」

「はは。可愛いです。フラミーさん。」

どれを見てもアインズはそれしか言わなかったが、毎回フラミーは顔を赤らめて嬉しそうに笑った。




一週間前に感想欄で盛り上がりを見せたお話ちゃんを…!
ソフトに行きました( ´∀`)箸休め

次回#49 それぞれの思惑

踊るパンドラズアクターとデミウルゴスいただきました!
ユズリハ様よりです!

【挿絵表示】


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踊る?運ぶ?御身もいただきました!

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