#1 旅立ちの準備
アインズは長期になる旅の準備を始めていた。
執務のため毎日ナザリックに帰ってくるつもりではあるが出来ることなら気持ちだけでも旅を楽しみたい。
数日分の服を
骨の身の間は気にならなかったが、人の身の時はローブだとしゃがんだり立ったりする時に意外とはだけるのが恥ずかしかったのでこの旅には
何故女性がああもスカートの中身を見事見せずに暮らせるのか不思議だ。
「…あとはキャンプ要員の選出だな。」
いや、あちらの執務室はオフィスと言った方が正しいかも知れない。
あの戦いを見た小さな国々や、
もはや魔導国の大神殿に勤める神官は神々に祈りを捧げるよりも
「これは陛下!評議国は如何でしたか?」
忙しそうに動き回っていた神官達が陛下陛下と言いながらどんどん集まってくる様子に、何故だかアインズは他所の子供達を預かる保父さんのような気分になった。
「あぁ。聞きたいか?それはもう――最悪だったぞ。」
「「「「はははは。」」」」
神官達と声を合わせて人の身で笑っていると、外から姦しい声がしてきた。
「くっっっそいてぇ!!!!」
「だ、大丈夫ですか?先輩…。」
「ネイア、あんたこれが大丈夫に見えるわけぇ!?」
「でかい声出すから響くのよ。」
「はぁー!あんたもちったぁ私を心配してくれたっていいんじゃないのぉ!?」
神官と目を見合わせると、聖典のトップに立つ、かつて土の神官長を名乗っていたレイモンが恥じ入る様にアインズを見た。
「も、申し訳ありません…。どうも紫黒聖典はいつもああいう感じでして…。」
これまで六大神信仰だった旧法国に存在した六色聖典は闇の神に傅く漆黒聖典、光の神に傅く陽光聖典、闇と光の二柱に傅く紫黒聖典の三色聖典を残して解散し、それぞれが皆神殿で働いている。
四大神の神官長達もただの神官長として日々懸命に働いていた。
現在陽光聖典は、魔導国となって一年が経過しバハルス州ティト市と名を変えた
邪竜が出てくる時に起こした大地震で、数本の塔の先端が崩れてしまった為だ。
すっかり塔の修復人として呼ばれるようになったが仕事がない漆黒聖典よりはましだろう。――そう、漆黒聖典は現在特別することもなく、日々番外席次の鬱憤晴らしに付き合わされているのだ。主に隊長が。
レイモンが頭を下げると、レイモンの手伝いをしていた漆黒聖典所属のクアイエッセも慌てて頭を下げた。
「申し訳ありません。陛下。いつもクレマンティーヌには陛下に恥をかかせるなと言い聞かせているのですが…。」
「ああ、良い。ちょうど漆黒聖典と紫黒聖典を呼ぼうと思っていたところだ。」
神官達は目配せすると、入り口に近かったものが残りの漆黒聖典を呼びに行った。
「ったくどいつもこいつも碌な力持っちゃいない。」
ぶちぶち文句を言いながらクレマンティーヌは執務室に足を踏み入れるとハッと足を止めた。
「へ…へいか…。」
「陛下?…陛下!」
「へ、陛下!」
アインズは入ってくるや否や陛下しか言わない紫黒聖典に少し笑うと、ちょいちょいと人差し指で三人を招いた。
すぐに周りを囲んでいた神官達は道を開くと、クレマンティーヌはゴクリと唾を飲み込んでから踏み出した。
クレマンティーヌはその身の痛みを堪えるようにゆっくりと跪き、一歩後ろにレイナースとネイアも続いた。
「お前たち、久しいな。聖王国での任務大義だったな。」
「は…恐れ入ります…。」
「どうした。何故そう暗い顔をする。長期の任務が解けたのだぞ。」
クレマンティーヌは躊躇いがちに口を開いた。
「…聖王国南部が手に入ったのは…全て御身の働きでございます。」
デミウルゴスとパンドラズ・アクターの機転によって、力の届く範囲まで中継された戦いの映像は実に素晴らしい働きをした。
神の戦いを見せ付けられた聖王国南部はすぐ様神王に恭順する事を決め、紫黒聖典は聖王国でのその長きに渡る任務を解かれたのだ。
アインズは"自分達で手に入れてみせる"と折角ここまで頑張ってきたと言うのに手柄を横から掻っ攫う形になってしまったことを不憫に思った。
「全てはお前達の積み重ねた物があってこそだ。…それよりクレマンティーヌ、お前は怪我をしているのか?血が出ているようではないが。」
「神王陛下。隊長は邪竜の放った真夜中の夜明けに貫かれたのです…。」
代わりにレイナースが応えるとアインズは納得した。
「あーそう言うことか。まぁ、お前はそうだろうな。少し待て。」
すぐにこめかみに手を当てると、ンンと咳払いをしてから喋り出した。
「フラミーさん。すみません、今神都大神殿の執務室にいるんですけどちょっと来てもらえませんか?」
するとすぐに
「お待たせしました、アインズさん!」
「フラミーさん、忙しいところすみませんね。」
フラミーはアインズを見ると嬉しそうに近寄った。
「いいえ!ちょうどさっきまで大聖堂の写真撮ってたんですよ。」
大聖堂はもう残すところ彫刻や装飾だけで建物は完成していたがフラミーはここまで来たからにはとしつこく写真を撮り続けていた。
「それは良かったです。」
当たり前のようにフラミーを引き寄せるとアインズは顔を寄せた。
唇ではなく、鼻の先だけをちょいと付けると二人は笑い合った。
「えらい、我慢した。」
「でしょう。」
周りの神官達は嬉しそうにその様子を眺めた。誰も目を逸らさない――いや、それどころかその光景を目に焼き付けようとしているような気すらする。
「ふふ。それで、どうしたんですか?」
「それがクレマンティーヌが
アインズはフラミーの首にかかる青い鳥のようなネックレスをコンコンと叩いた。
「あらら。」他人事のようにそう言うと、クレマンティーヌを指差し、無造作に魔法を送った。「――<
クレマンティーヌはその身からようやく痛みが消えると頭を深く下げた。
「あ!ありがとうございます!どの神官もぜーんぜん使えなくて困ってたんでっ――っつぅ!!」
レイナースのチョップを食らってクレマンティーヌは頭をさすると忌々しげに後ろを見た。
隣で跪く漆黒聖典隊長と隊員達の目は鋭い。
「はは、お役に立てて良かったです。でもあんまり悪い事ばっかりして紫黒聖典の二人に迷惑かけないで下さいね。」
悪い事をする、と言う言葉にクレマンティーヌはわずかに冷や汗をかいた。
神々の前で隠し事は不可能だ。
「あ…はい…。ひ、控えます…。」
「クレマンティーヌ!お前は普段何をしてるんだ!!」
クアイエッセの嘆きが響くと、クレマンティーヌの反対側、隊長の隣でずっと静かにしていた女がゆっくりと口を開いた。
「――クインティアの片割れ。あなた私の陛下に何迷惑掛けてるの?」
その声は低く、隠しもしない敵意が含まれており、その場の者はゴクリと唾を飲んだ。
「い…ば、ばんがい…。」
「陛下。私が断頭しましょうか。」
アインズはどうして自分の周りはこうも過激な奴が多いんだろうと顔に手を当てた。
「…やめろやめろ。何のためにフラミーさんが回復したと思ってるんだ。さぁそんな事より聞きなさい。これから私達は八欲王の空中都市のある南方の砂漠へ向かう。それに伴って聖典を連れて行きたいんだが、陽光聖典はティト市に出ているし、お前達どちらかと――」
「是非我が漆黒聖典と。」「是非我が紫黒聖典と。」
同時にそれぞれの隊長が声を上げる。
忌々しげに互いを睨み合い、隊員達の顔には「そっちが身を引け」と書いてあるようだった。
番外席次はどうせ自分は連れて行って貰えないしと頬を膨らませると立てている膝に頬杖をついた。
アインズは番外席次のつまらなそうなため息を見ると、この間ツアーが指輪の制作を教えに来た時に和解したことの一つを思い出した。
ツアーが竜王の娘と子供を作れば始原の力が竜王に戻るのなんのと言っているのを聞き流しながら、アインズはそんな者の存在を許すならうちの番外はどうなんだと訪ねた。
「――どちらと出かけるか決める前に、番外席次よ。」
「はい。」
若干の投げやりさが含まれる返事だ。
「お前の外出を禁ずる評議国との協定をツアーと話し合って撤廃した。お前は今日から自由だ。しかし、力の使い方をお前は知らなすぎるようだ。ツアーにお前の教育を頼まれた。この旅には漆黒聖典が来ても紫黒聖典が来てもお前は共に来い。」
それは天啓だった。
「じ…じゆう…。」
番外席次はゆっくりとその言葉を繰り返した。
クレマンティーヌは漏れなくこいつが付いてくるのかと思うと僅かに辟易したが、アピールするなら今だとすぐに口を開く。
「では陛下。番外を連れて行くなら男性も混じる漆黒聖典よりもこの紫黒聖典を。」
レイナースとネイアは空気を読まずになんでも言える自分達の隊長を喝采した。
「それもそうか。よし。では紫黒聖典よ。お前達にしよう。旅の準備をしろ。いつもので頼む。」
「「「は!!」」」
漆黒聖典はしてやられたとその様子を見たが、隊長はやっと番外席次がまともになりそうな様子に少しだけ安堵したのは言うまでもない。
やったー!!末妹達との旅ダァー!!
挿絵…アフラマズダーの全容+アインズのパンツスタイルを描いてから、
人の身御身とフラミー様のいちゃつきも描いて結局二枚も入れてしまいました(´∀`)あぁ〜〜
次回 #2 やんちゃ坊主
ドラちゃんの運命や如何に…!
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このまま死ぬまで幸せな夢を見続ける
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アインズ様にちゃんとまっすぐ振られる
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他に好きな人ができる(宰相かなぁ
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紆余曲折してアインズ様を諦める