そしてドラ蔵は[アインズ様にちゃんとまっすぐ振られる]で決まりました!
今回は出てきませんが、近々ドラちゃんのご活躍をどうぞお楽しみに!
アインズはフラミーが寝入ると静かに起き上がり、デミウルゴスとセバスの様子を思い出してスクリーンショットを眺めていた。
「――たっちさん、ウルベルトさん。貴方達そのままの二人なんですよ。本当見せたかったな。ははは。」
虚しい独り言に応えるものはおらず、アインズは裸で隣に眠るフラミーの顔を軽く撫でた。
「貴方達が来てくれてたら良かったのに…。」
そうしたら、あの日の勝利条件は満たせていたかもしれない。
アインズはため息を吐くとスクリーンショットをしまった。
暫くフラミーを眺めているとパブリックスペースと部屋をつなぐ扉からほんのわずかに声が漏れて来ていた。
普通の人間には聞こえないほど小さな、囁きにも満たない音量だ。
妙に温かい雰囲気にアインズはベッドを抜け出した。
「お前達、何をしている?」
ネイアはもう随分前に寝室に入ったはずの神王の登場に思わず声をあげた。
「あ!神王陛――」しー、と口元に人差し指を当てながら扉を閉める神王に頭を下げ、声を小さくする。
「陛下。申し訳ありません、うるさかったでしょうか…。」
ネイアは紫黒聖典の姉二人、番外席次、守護神二名の全員に教えを語っていた。
「アインズ様、誠このネイア・バラハは素晴らしいですね。御身が見出しただけはあります。」
「バラハ様がこうしてアインズ様とフラミー様を語る姿は見ていて実に気持ちのいいものでございます。」
デミウルゴスとセバスは嬉しそうにうんうん頷いていた。
紫黒聖典はツアーの襲撃の際にエ・ランテルで暫く過ごしていた間、日々セバスと神殿で顔を合わせていたし、デミウルゴスとも聖王国で散々連絡を取り合っていたため、この守護者達とはそこそこの親しさだ。
時には反神王派勢力を暗殺した死体の回収を頼んだり、
セバスは誰にでも分け隔てないが、デミウルゴスも割とこの三人を気に入っている。
クレマンティーヌは頭こそ悪いが非道でそこそこ話が通じるし、レイナースは同じ宗派――もといフラミーを心から崇めているし、ネイアは至高の二柱を愚者達に正しく分からせる力を持っているのだ。
「そ、そうか…。あまり遅くまで起きていると日中もたんぞ。まだまだ先は長い。」
番外席次はアインズの様子をじっと見た後口を開いた。
「…それより、陛下はフラミー様を失っても消滅しないんですよね。」
「今度は何だ?消滅などする筈ないだろう。私は万一あれを失うようなことがあれば取り戻すためになんでもしよう。必要であれば世界を引き換えにしてもいい。」
「それはどうして?陛下はフラミー様の弱さに寄りかかられているわ。」
「寄りかかってるのは私の方だ。私が強くあるためにはあの人がいる。お前はまだ何もわかっていない。」
ネイアが息を飲むのを聞くと、アインズは少し恥ずかしいことを言ったかなと頭をワシワシとかいた。
「強い光ほど…深い闇を生む…。」
ネイアの呟きは聖典と番外席次を振り返らせた。
「ん?何か言ったか?」
「いえ…陛下、光神陛下は御身を照らす光なのですね。」
「…まぁそういう事だな。さぁ、そろそろ寝ろ。番外席次は明日もバラハ嬢の下につくんだぞ。」
アインズはそう言うと照れ臭くなって再び自分の光の下へ帰った。
全員がバラバラと立ち上がる中、番外席次はネイアの手を取った。
ネイアはこの化け物が、自分はか弱く少し力を入れたら壊れてしまうような存在だとちゃんとわかってくれているだろうかと僅かに不安になる。
「…ネイア・バラハ。本当に闇だけではだめなのね…。」
「ん…はい。光のみを追っても、闇のみを追ってもいけません。あの邪竜との戦いも、光神陛下がお力を与えて、神王陛下は再び立たれましたし。」
「そうね…。でも私は光なんかもたないわ…。」
「そんな事はありません。光神陛下は正しく救いを求めれば、必ず祝福してくださいます。」
「…そう。私は…私はこれからどうするべきなのかしらね…。」
ネイアは救いを求めて嘆く番外席次を哀れに思うと、手をつないだ。
「行きましょう。ここでは陛下方のご迷惑ですから、私の部屋に。」
番外席次は頷いた。二人で与えられた部屋に向かおうとすると、クレマンティーヌとレイナースも付いてきた。
「私たちも聞いちゃおー。」
「ネイアの話はいつも為になるわ。デミウルゴス様のおっしゃる通り、神都でニグン隊長と一緒に講演をした方が良いでしょうね。」
翌朝、いつまで経っても聖典が起きてこない為セバスがナザリックから朝食を持ってきた。
パブリックスペースで守護者と揃って食事をとると、アインズは流石にそろそろ起こしに行くかと考える。
「だから早く寝ろと言ったのにな。まぁ修学旅行は盛り上がってしまうものか。」
「なるほど、宗学旅行ですか。」
「あぁ。楽しいもんだろう?」
「誠に仰る通りでございます。」
ニコニコ顔のデミウルゴスを優しい気持ちで眺めながらアイスマキャティアと呼ばれるこの世界の謎の飲み物を飲む。
モモン姿の時にお預けを食らっていた分、アインズはそれにすっかりハマっていたのでナザリックでも作らせていた。
守護者を連れて修学旅行をしてもいいなと考えていると、妙にフラミーの口数が少ない気がした。
「フラミーさん、昨日よく眠れませんでした?」
「あ、いえ…。…私、ちょっとクレマンティーヌさんの部屋に行ってきてみようかな?」
腰を浮かしかけるフラミーをセバスが手で制する。
「それでしたら私が起こして参りましょう。」
「はは、男の人に起こされたらちょっと可哀想ですから良いですよ。セバスさんは良かったらお昼のお弁当を副料理長さんに頼んでおいてください!」
フラミーはナザリックに
フラミーは昨日のアインズのベッドでのつぶやきを聞いて、どうやったらアインズがこの世界で寂しさを感じずに過ごせるのか解らず少し落ち込んでいた。
たっち・みーもウルベルトもモモンガの大切な人だ。
一度手に入りかけたモノがあった分、ほかに寂しさを埋める対象を求めたくなるのは人間の性か。
(でも男友達の代わりにはなれないしなぁ…。)
フラミーは考え事をしながらクレマンティーヌがいるはずの部屋の扉を叩いたが、中からは物音一つしなかった。
「クレマンティーヌさーん?」
恐る恐る扉を開けて中を覗くが、ベッドは腰掛けた程度しか使用形跡がない。
部屋の中央にあるローテーブルの上には磨いたであろう鎧が置かれていた。
書類は綺麗にまとめられてデスクに置かれ、まだ仕事をするつもりだったのか開かれたノートにはそっとペンが乗せられている。
家出ではなさそうな雰囲気に少し安心すると、フラミーはレイナースの部屋へ向かった。
そこでも返事はなく、部屋に侵入するとやはり鎧が丁寧に置かれ、ベッドは未使用だ。
ただ、クレマンティーヌの部屋とは違い、ドレッサーの前にはたくさんの美容グッズらしき物と、フラミーとレイナースの写真が私物のバッグの上に置かれていた。
フラミーはすぐにその部屋も後にし、ネイアの部屋をノックする。
やはり何の返事もなく、すぐに部屋の扉を開け中に入ると――フラミーは少し笑ってから静かに扉を閉めた。
そこでは四人がベッドの上でそれぞれ縋るように眠っていた。
ネイアの胸に抱かれ、クレマンティーヌを足蹴にする番外席次。
番外席次と手を繋いで抱え込むようにするネイアと大の字になるクレマンティーヌ。
クレマンティーヌの首に輝く黒いロケットは開き、アインズの写真が入れられている。
豪快なクレマンティーヌの腕枕で眠っているレイナースは自分の白いロケットを握りしめていた。
どんな夜を過ごしたかは分からないが、なんとなくこの四人は仲間になれたんじゃないかとフラミーは思った。
フラミーは仲間や友達が孤独を癒す何よりもいい薬だとよくわかっている。
アインズにも友達ができればあの孤独を埋められると言うのに。
起こしてしまっては可哀想だが、あまり遅いとそろそろ――部屋にはノックが響いた。
「…っんん……。」
誰かの唸り声が聞こえる。
フラミーは足音を立てないように軽く浮かび上がると、そうっと扉を開いた。
「あぁ、フラミー様こちらにおいでに――」扉の向こうにいたデミウルゴスはちらりと中を見ると声を上げた。
「――コラ!!いつまで寝ているんだね、君達は!!」
途端に紫黒聖典がベッドから落ちるんじゃないかと言う勢いで起き上がった。
「うわ!で、でみうるごすさま!!??」
「ふらみーさま!!こ、これは!」
「えっ!!いま何時ですか!?」
「んん…ふらみーさま…。」
少しのんびりしたような雰囲気の番外席次を引きずり、慌ててベッドを降ると四人は床に膝をついた。
デミウルゴスの額には青筋が立っているようだった。
「「「「おはようございます!!!」」」」
「ははは。おはようございます。」
「おはようございますじゃない!」
デミウルゴスはズカズカと中に入り、四人に大説教会を始めた。
四人はすっかり顔を青くし、自室だったネイアを置いてそれぞれ自分の部屋へ向かって駆け出した。
フラミーも怒り足りないデミウルゴスの手を引きずるようにネイアの部屋を後にした。
「フラミー様。昨日アインズ様が仰った通り余りあれらを甘やかしてはいけません。奴らは所詮言葉の通じる畜生です。」
こちらを見ているアインズにフラミーは手を振ると立ち止まった。
「ふふふ。そう言わないでください。私、なんだか安心しちゃいました。」
「安心?何かあれらのせいでご心配事が?」
「はい。番外席次さんをちょっと。」
デミウルゴスは子供が欲しいとうるさい猿を思い出すと僅かに怒りに震える。
だからフラミーの前でああ言うことを言って欲しくなかったのに。
「御身が望まれるのでしたら、あれは即座にスクロールにいたします。」
「えっ!ダメですよ!そんな必要ありません!」
「しかし…。」
デミウルゴスは引っ張られてきたまま繋がれた手に視線を落とした。
いつも不敬な者の処刑を言い渡さないフラミーが心配になった。
「…フラミー様、何かにお悩みになるような事があればすぐにお教え下さい…。」
「あ、じゃ、じゃあ、あの…。」
フラミーはアインズの友人になってやってほしいと思った。
アインズに敬愛とも恋とも言えない複雑な気持ちを抱くデミウルゴスに頼んでは残酷だろうか。
「…デミウルゴスさんの気持ち、よく解っているのにこんな事を頼んじゃ良くないって分かってるんですけど…。今夜、アインズさんが私の部屋に来る前に…お仕事が済んだら少し時間もらえませんか。私、待ってますから。」
デミウルゴスは瞳と口を開けた。