「あ、ありえるかぁ!!」
「
煙が払われ邪悪なる死の権化が姿を見せた。
それを人は魔王と呼ぶだろう。
ここは如何なる慈悲も持たぬ、おぞましきアンデッド達に支配される地獄の大陸。
そしてこの一団は全ての生ある者の敵であるアンデッドより無辜の命を解放し、同胞の
今回の一団を任された
この街を跋扈する大量のアンデッドを目にした時から相手を侮ったことなどない。
しかしながら、その警戒レベルがまるで足りていなかった事をすぐに悟った。
目の前の魔王から放たれる死の香りに、ただただ圧倒される。
この者の存在は、
「シャグラ…シャグラよ…。どうする…。」
「…あの魔王を倒さなければ生者に未来はない。」
既に自分達の大陸に一度攻め込んできているのだ。
ここで引くことは再び大陸に攻め込まれる事を意味するだろう。
「私達で倒せるのか…あれを…。」
「…できるかどうかじゃない。やらなければ――」
シャグラはそう言いながら目を見開いた。
シャグラの目の前には病んだような、白蠟じみた真っ白な肌の美しい少女。
そして魂を吸い込むような真紅の瞳と、可憐な唇から小さく覗く鋭利な犬歯。
その者の種族の答えは「――ヴァ…ヴァンパイア!!」
「見ればわかりんしょう。ギャアギャア言いんせんでくんなまし。」
(またアンデッドだと!?この大陸は一体どうなってるんだ!)
シャグラが手の中の
「<
「<
容易く力を奪われたシャグラは抵抗しようとするが、自分達の持つ力の全てが意味をなさないと知る。
飛ぶ力を奪われ、怒号を上げながら否応なく自由落下し、重力の底に激突すると、全身の骨が砕ける猛烈な痛みがシャグラを襲った。
当然シャグラだけではなく、次々と
デミウルゴスは落下した虫ケラに向かって歩き出した。
落ちた
(ゴミ虫ですね。まったく。)
デミウルゴスは心の中で悪態を吐くとスーツを手で払った。
汚れているわけではないが、
仮に土が少しもついていないとしても、これは創造主たるウルベルト・アレイン・オードルより頂戴した大切な衣装なのだし、側にはフラミーもいるのだから綺麗にしておかねばならない。
デミウルゴスは偉大なる創造主を思い出し、懐かしい気持ちに微笑むと無様で惨めな
そして転がる最も身分の高そうな男の銀色の髪を掴んだ。
しかし、デミウルゴスは強い。
確かに力では守護者の中で下位に位置するが、デミウルゴスが勝てない者はこの世に二人しかいないのだ。
ナザリック地下大墳墓の絶対支配者、アインズ・ウール・ゴウン。そして、絶対不可侵の主人、フラミー。
他の者達ならば――守護者達相手であってもデミウルゴスは必勝の舞台を用意し、勝利をその手におさめるだろう。
そんな男を前に、
「…っく…。」
「全くフラミー様とアインズ様のお手をこうも煩わせるとは…。これまでで最も愚かな下等生物ですね。」
デミウルゴスはこちらを睨む者の情報を整理する。
脅威度、E――虫けら。
誤算率、E――皆無。
重要度、B――生け捕りすべき情報源。
つまりはモルモットだ。
モルモットは数度血を吐くと喋り出した。
「…聞け…支配される者よ…。我らは
「不敬ですね。アインズ様はこの世の正当なる支配者ですよ。さて――」
デミウルゴスは拷問し、尋問したいと思うがここは聖王国だ。
聖王国ではデミウルゴスは慈悲深く、愛に満ち、王座にすら相応しき清廉な男という役を演じなければいけない。
『――私の質問に答えなさい。あなたの名前は?』
「シャグラ・ベへリスカだ。」
シャグラはハッと口を抑える。
何が起きたのか理解できない様子だ。
『シャグラ・ベヘリスカ、どこから来たのか言いなさい。』
「…この海のずっと向こうにある最古の森にあるエルサリオン上王国から来た。」
『何故我が国を襲う。』
「我らの
デミウルゴスは顔をしかめ、酷く鬱陶しそうな顔をした。
アインズの生み出した
呪言にかかったふりをして嘘を言っているのではないかと、更に呪言を重ねる。
『今すぐ自分の喉を切り裂きなさい。』
シャグラは裂ける道具を持ってない為、自分の爪でバリバリと喉を掻き毟った。
痛みに泣き、自分の血に溺れながら喉を切って行く。
しばしその様子を眺めていると、瞳は死への恐怖に染まった。
周りで見ている
演技ではない様子を見るとデミウルゴスは頸動脈を目の前の者が切ってしまう前に再び呪言を使った。
『やめて良い。』
シャグラは痛みに悶え、首を押さえてのたうちまわった。
デミウルゴスはきちんと呪言が効いている様子に、口に手を当て考え始めた。
そのすぐ近くでフラミーはアインズ達をすり抜けた
聖典達が次々と負傷者や死者を運んで来る。
「フラミー様、休憩サレマスカ。」
「まだまだやれますよ。海上都市に感謝しないとね。」
ギルド武器の破壊以来、アインズ同様魔力の尽きる様子のないフラミーはコキュートスに笑って見せた。
聖王国ではかなりの数の
「光神陛下!!」
そう呼んだのは現聖騎士団長、グスターボ・モンタニェスだ。
「グスターボさん!――それに、皆さんも!」
続いてネイアの先導に従い九色のオルランド・カンパーノ、同じく九色でネイアの父パベル・バラハ――そして聖王女カルカ・ベサーレス、神官ケラルト・カストディオも姿を見せた。
続々と膝を付く面々。
聖王国の民は以前フラミーに蘇生を拒否された苦い過去があるので、此度の死者が蘇生されていくことに安堵せずにはいられない。今はあの時とは違い、真っ直ぐアインズとフラミーへの信仰に染まっているので受け入れられているのだろうと思っている。
復活させられたばかりの、立ち上がる事も叫ぶこともままならない街の者達はフラミーへなんとか礼だけ言うと祈りを捧げた。国を襲った
「光神陛下、彼らは邪悪なる存在ではないようです。」
カルカは自分の召喚した
説明する本人の声には信じられないと言うような響きがあるが――「そうですか。」と言うフラミーには何の驚きも感慨もないようだった。
デミウルゴスに問いただされる
何か訳があるのだろうかとカルカとケラルトが視線を交わしていると、最後の
一斉に平和のシュプレヒコールが上がる。
「カルカ殿、生死の神殿を借りても良いかな。」
深い声音に天を仰げば、一仕事を終えたアインズがいた。
「当然でございます。あそこは神王陛下と光神陛下のための場所なのですから。」
「助かる。」
そういうとアインズは地に降り、フラミーを踊るようにくるりと回し、全身、手の甲、平――耳を確認する。
「…ふむ。なんともないか。」
「なんともありませんよぉ。」
フラミーの微笑みにアインズは安堵の息を吐いた。
「では、
神殿では聴取が続いた。
「私の生み出した
アインズの眼光に
「魔王が…。
アインズの瞳の光は細められた。
「その煌王国で冒険者達は生きているのだな。」
「…口封じに行く気か。」
「口封じ?逆だな。存分に語らせるとも。我が国の裁判を受けてもらう。精神を操作する魔法を使用する。」
「野蛮な!!そんな方法で聞き出した証言にどれ程の信憑性があるというんだ!!」
「
「であれば――」
「しかし、私は決して嘘偽りを語らせたりはしない。断言する。そして嘘偽りを語らせた者がいれば私は決して容赦しない。さぁ、これ以上の問答は不要だ。」
アインズは
向けられた者は顔を吹き飛ばされるのだろうとギュッと目を瞑る。
「<
厳かな声が響く。
ページをめくるように
――『…
――『煌王国軍が来てくれなければ我々は生涯奴隷でした!』
――『神魔大陸に神聖アインズ・ウール・ゴウン魔導国…?』
――『この者達が乗ってきた船を出そう。』
――『アインズ・ウール・ゴウン!!許さないぞ、アニラを…ラウルパを…よくも!よくも!!』
見知った冒険者の救いを求める言葉、幽霊船へ航海に必要なものを積む
アインズは舐めるように記憶を見た。
そして煌王国と呼ばれる国とその城の周りを目に焼き付ける。
転移に支障をきたさぬよう、伽藍堂の頭蓋骨の中に叩きこんだ。
カルカ達が胸の前に手を組む中、アインズは目の前の者の記憶を閉じた。
「隣の大陸への道はこれで開かれた。捕らえられている冒険者の奪還と査問を行う。」
久しぶりに聖王国勢出たけど殆ど喋らなかったぁ!!
次回#51 閑話 聖王国女子
11/9はいい靴の日だったそうです!
イイクツと打ったらアイカツと変換されて吹きました(^p^)
【挿絵表示】
©︎ユズリハ様の可愛すぎる三人(ニグンさん、フラミー様、御身!!)