眠る前にも夢を見て   作:ジッキンゲン男爵

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試されていた日常
#81 外伝 ゴーレムクラフター


 近頃殆どの守護者達は皆出払っている。

 双子は言わずと知れた牧場地下施設の建造に行っているし、コキュートスも冒険者が国民ではない亜人を見つけるたびに陽光聖典を連れて出動しているし、デミウルゴスと転移門(ゲート)を開けるシャルティアは不敬大国である煌王国に行き王女達をいじめたり羊の回収を行ったりと忙しい。

 守護者ではないが、セバスも夜になるとエ・ランテルに嫁に会いに行くし、ナザリックはどことなく静かだった。

 

 今日アインズはいつものトロールの実験を済ませると、ナインズの一歳の誕生日の祝賀パーティーで腰に携えるのに丁度いい王笏代わりになる短杖(ワンド)を見繕うために宝物殿に飛んだ。アインズはかなりの衣装持ちだが、一度でも神官たちに見せた事がある短杖(ワンド)は祝いの日だし使いたくなかった。

 沢山のフラミー像に迎えられ、宝物殿を進む。今日もフラミー像はピカピカだ。

 ちなみに以前一体フラミー像をもらって帰ったところ、フラミーに捨てられそうになったので慌てて宝物殿に戻した。

 そして、様々な意味で鈴木の黒歴史である男がいる部屋の扉を開けた。

 

「――お前、何やってんだ?」

 パンドラズアクターはアインズが以前一番可愛いと選んだフラミー像の手に葉っぱを持たせようと試行錯誤していた。

「これは父上!ただ今フラミー様が拾われた落ち葉のレプリカをフラミー様像にお持ちいただこうとしているところでございます!」

 パンドラズアクターが振り向いた瞬間、フラミー像の手の中からハラリと葉っぱのレプリカなる謎のものは落ちた。

「っあぁ!!」

 息子はそっとフラミー像の手に葉を戻した。

「やれやれ、お前は本当にフラミーさんが好きだな。」

「は!大好きであります!!」

 アインズの呟きにパンドラズアクターは何の躊躇いもなく即答した。

 自分を抱きしめるようにして幸せそうに揺れる様子にアインズは頭が痛くなる。

「…俺ってやつはもう…。落ち着きなさい。」

「は!して、父上。何かご用で?」

「あぁ。適当な短杖(ワンド)を何本か持ってきてくれ。大聖堂でやる誕生日会で使う。」

Wenn es meines Gottes Wille(我が神のお望みとあらば)!!」

 パンドラズアクターはカツンっと踵を合わせ、姿勢良く敬礼をした。

 これは期待できる。良い逸品を持ってきてくれそうだ。

 しかし、アインズは沈静された。

 

 パンドラズアクターが応接間を後にすると、アインズはソファに座り、トロールの巻き戻し実験でひどく疲れた体――いや、始原の力の枯渇を休めた。

 今日は三人も巻き戻しを行ったために相当疲労した。いつもは二人にしておくと言うのに、もうナインズが一歳になるかと思うと妙に気が逸った。

「ふぅ…この体のままなら寝ないだろうが…やはり骨に疲労感は気持ち悪いな…。」

 自分の顔を覆うように数度撫で、最後の一滴を使うように人の体を呼び出した。

 

 眠りかけ、こくりこくりと船を漕いでいると扉がノックされる音がする。

 アインズが気怠い体で許可を出すと、ビロードの布張りのトレーに短杖(ワンド)を十本ほど乗せたパンドラズアクターが戻ってきた。

「お待たせいたしました!丁度良さそうなものをお持ちいたしました!」

 扉を開けた風がフラミー像の手の中から葉っぱを飛ばすと、パンドラズアクターは「あぁ…」と悲しげな声を上げた。

 アインズは葉っぱのレプリカには興味がないので持ってこられたトレーを覗き込んだ。

 どれも良い王笏代わりになりそうだが――「随分派手だな。」

 使わないので第一位階の魔法しか使えないようなものや、初心者向け短杖(ワンド)だって構わないが、中には相当な破壊の力を込めた短杖(ワンド)もあった。

(――ま、中身はなんでも良いか。使わないしな。)

 アインズは適度に豪華そうに見える一本を受け取るとローブの腰にさした。

「これはどうだ?」

「持ってきておいて何ですが、こちらの方がよろしいのでは?」

 アインズは差し出された一本を受け取ると、それはまた非常に派手な短杖(ワンド)で笑った。

「やれやれ。ではこの二本を持っていこう。衣装と並べて考えてみるか。さぁ、じゃあ私は行く。」

 そう言って人間の重たい体で立ち上がると、パンドラズアクターが扉を開けた。

 すると金貨の山の間に置かれているフラミー像の方から幼い笑い声が聞こえ、アインズとパンドラズアクターは目を見合わせた。

 

 声の方に行けば、フラミー像に興奮しすぎて過呼吸のようになっている――大量に耐性の指輪を装備させられたナインズと、金貨の山に腰掛けるフラミーがいた。

「あ、アインズさん、ズアちゃん。」

 おーいとフラミーが手を振るとアインズもへらりと表情を緩めて手を振り――パンドラズアクターもぶんぶん手を振り返した。

「…お前に振ってるわけじゃない。」

「…いえ、私かと。」

 二人の間で微妙な空気が流れる中、ナインズは手近にあった金貨をぽいぽい投げ、フラミーはそれを止めた。

「メッ!投げちゃメ!でしょ。」

「ぶぅ。」

「お金は大事にして?」

 ナインズが手元にある最後の金貨を放り投げると、あたりには突然男の声が響いた。

 

 ――金の重みを知らぬ者に宝物殿に入る資格はない!これは誅殺である!!

 

 アインズとフラミーは目を見合わせた。

「この声は……」「るし★ふぁーさん!!」

 厄介な男の声を聞き、アインズの脳内に幾度もかけられた迷惑が途切れ途切れに浮かぶ。正直言ってあまり好きではない男だ。

 フラミーもギルドの運営にそう携わっていた訳ではなかったが、あの日(・・・)からは少し苦手になった。

 

+

 

 真っ白い肌の六対の翼の熾天使は自室のアイテム整理箱から今日の種族変更に必要な特別な装備を取り出していた。PKに合ったりして誤ってドロップしないようにきちんとナザリックに置いていたのだ。

(――モモンガさん達もう待ってるかな?)

 翼から輝きが落ちる課金アイテムをペロロンチーノに激しく勧められ、最近ついに課金した光をもたらす者(ルシフェル)は輝いていた。

「よーし!これとこれだぁ!」

 フラミーは必要アイテムをきちんと装備すると部屋を出た。

 

 ――すると、そこには仁王立ちの天使人形がいた。

「フラミーさぁん。」

「わっ!るし★ふぁーさん。こんにちはぁ。」フラミーは笑顔のアイコンを出した。

「あなた悪魔になるってまじんこ?」

「あ、そうなんですよ!今日神の敵対者(サタン)になってきます!ただの天使だった時からずっとウルベルトさんに勧めてもらってたんですけど、ようやくこれで悪魔になれます!」

 それを聞くとるし★ふぁーはスゥ――と息を吸った。

「うんじゃあ行かせなーい!!」

 耳がキンキンする程の大声量だった。

「えっ!?」

「オラァ!!フラミーさんこいつを食らえ!!山河社稷図!!」

 るし★ふぁーが世界級(ワールド)アイテムを広げると辺りの景色は美しい花畑になった。

 このアイテムは簡単に言えば使用者含む相手を隔離空間に閉じ込める物だ。空間は全部で百種類の中から所有者が選択することができる。

 そして、異空間から脱出されると所持権限が相手に移ってしまうと言う特性を持つ。このアイテムは以前ギルド、アインズ・ウール・ゴウンが敵対ギルドからその方法で奪っており、返してほしいとの連絡が後を絶たなかった。

 フラミーは後にスレイン法国の従属神に向かって山河社稷図を使用した時、この日のことを少しだけ思い出したらしい。

 

 山河社稷図はそこにいた全てを飲み込んだ為、花畑には棒立ちのNPC――男性使用人や一般メイド達があちらこちらに立っていた。

「るし★ふぁーさん!勝手に世界級(ワールド)アイテムなんて持ち出して、またモモンガさんに怒られますよぉ!」

「フラミーさん、俺らルシファー仲間の天使仲間じゃん!この世にルシファーを広めて世界中をルシファーで埋め尽くそうって誓い合った事を忘れたとは言わせないですよ!」

 るし★ふぁーの周りを黒い星が煌めくエフェクトが舞う。

「忘れるも何もそんなこと誓ったことないですよぉ!」

 フラミーがひーんと困った声を上げて泣いたアイコンを出していると、伝言(メッセージ)が届いた。

「――はひ。あ、師匠!遅くなってすみません。大丈夫ですよ!ただ…今第九階層にいたんですけど、なんかるし★ふぁーさんが山河社稷図広げちゃって…。」

「師匠?…――あ!フラミーさん、ウルベルトさんが来たりしたら俺怒られちゃうからやめてよ!!」

「やめてってこっちのセリフですよぉ!」

「やーだよ!俺は神の敵対者(サタン)なんて反対だからね〜!光をもたらす者(ルシフェル)のままで良いじゃん!」

「もー!サタンもルシファーも同じものなんだから良いじゃないですかー!」

「同じじゃないっすよ!天使は天使同士仲良くしましょうや!!」

 二人が花畑でわちゃわちゃしていると、花畑の端に続々と人影が現れた。

 

「るし★ふぁー!出かけるってのに何邪魔してくれてんだよ!ったくフラミーも早く連絡すりゃいいのに!」

 ウルベルトの叱るような声にフラミーは泣いてるアイコンを出して応えた。

「皆さんお待たせして本当ごめんなさぁい。」

「ははは、フラミーさんは悪くないと思いますよ。おはようございます。」モモンガはいつもの優しい声で手を上げてそう言うと、汗のアイコンを出して厄介な男に続けた。「それにしても…るし★ふぁーさん勝手に世界級(ワールド)アイテム持ち出していい加減にしてくださいよ!」

 

「やっほーフララおはー。」

「るし★ふぁーさんに目を付けられてたとはね。僕たちが迎えに行くべきだったね。」

 ぶくぶく茶釜とやまいこの言葉が続いた。

 

「モモンガさん、そろそろるし★ふぁーさんは宝物殿出禁にした方がいいんじゃないですか?」

 ぷにっと萌えが大きな帽子のツバを人差し指で退けて、るし★ふぁーを見ると、タブラ・スマラグディナも肯いた。

「こないだなんて勝手に最強のゴキブリを作っていましたしねぇ。もう追い出しますか?なんて、ふふふ。」

熱素石(カロリックストーン)をメインコアにした最強ゴーレム作りたいですし、るし★ふぁーさんの力は必要ですよ。」

 ぬーぼーの主張に「確かにそれはそうですね」と知恵ある二人が言うと、知恵なきバードマンがフラミーに手を振った。

「おっ!フラミーさんついにキラキラエフェクト買ったんだ!ね?ね?早く買えば良かったっしょー!」

 

 ウルベルト、モモンガ、ぶくぶく茶釜、やまいこ、ぷにっと萌え、タブラ・スマラグディナ、ぬーぼー、ペロロンチーノは花畑の真ん中にいるるし★ふぁーとフラミーに向かった。

 

「ほら、るし★ふぁーさん早くこれ解いて宝物殿に返してください!」

 モモンガがそう言うとるし★ふぁーはフラミーの腕を掴んで飛び上がった。

「返して欲しくば出口を探すのだ!ふふふふ!フラミーさん逃げるぞっ!」

「っえ?に、逃げ?」

「そら!早く!!悪の集団が来るぞぉ!!」

 そう言うとフラミーを引っ張り飛び去った。

「っあ!るし★ふぁー待ちやがれ!」

 それを追ってウルベルトがビュンと飛ぶと、モモンガは背を見送った。

「は〜今日フラミーさん種族変更できない気がしますね。皆さん、出口を探しましょうか。」

 モモンガの言葉に全員が賛成、と声を上げた。

 

 その後中々脱出路が見付からず、フラミーの種族変更は翌日へと持ち越された。

 翌日には宝物殿にたっちみーが仁王立ちし、フラミーは無事に堕天した。

 

+

 

 アインズとフラミーが杖を抜くと、天井近いところに設置されている柱飾りのガーゴイルが動き出し、ズンッと降りて来た。

「本当にるし★ふぁーさんて奴は!!」

「ズアちゃん、ナインズを!!」

 パンドラズ・アクターがナインズを抱き上げると、支配者達はガーゴイルに向かった。




結構41人やプレイヤー出てきて欲しいと言うお話をいただき思い出話(°▽°)

次回#82 外伝 大災厄の魔

ユズリハ様に過去のフラミー様と、本編現在フラミー様いただきました!

【挿絵表示】

それから、骨ンズ様と始原の人ンズ様も!

【挿絵表示】


+

御身が前半にうとうとしてる時に見た世にも奇妙な夢を書きました( ・∇・)導入が同じなので貼ります。
https://syosetu.org/novel/195580/37.html

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