眠る前にも夢を見て   作:ジッキンゲン男爵

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#117 閑話 観劇

 二週間後、ナインズ達を乗せた馬車は闘技場へ向かっていた。

 闘技場には一度も行ったことがない為、アインズ達は久々の馬車だった。ナインズとアルメリアにとっては生まれて初めての馬車だ。

 

 出発地点はアーウィンタールにある闇の神殿。そこに勤める死者の大魔法使い(エルダーリッチ)巻物(スクロール)を用いて転移門(ゲート)を開き、面々は現れた。

 その神殿はかつて火の神殿だったが、国名が帝国から神聖魔導国に変わった時、ジルクニフから熱く改宗を推され、半ば強制的に改名させられた。

 バハルスでは政治と宗教に密接な結びつきがない為、かなり難儀したようだった。

 なんと言っても旧スレイン法国は六大神信仰だったが、旧帝国は四大神信仰。ここは旧王国のように国民が直接力を見せつけられたわけでもない。闇と光の神がそもそも存在するのしないのと、まずはそこからだった。

 しかし、今では神官達も馴染んでいる。ジルクニフからも神々の素晴らしさについて聞かされているし、 飛竜騎兵(ワイバーンライダー)達がティト市から来て神殿に祈りを捧げに訪れるその度、現存する神の奇跡を聞かされるのだから。

 彼らは今日初めて見た神々の威容にただただ頭を垂れた。

 

 今日の演劇は神へ奉納されるため、多くの高位神官達と護衛に陽光聖典が付いている。五台もの馬車が連なり、春に浮かれる街を行く。

 そのうち、最も豪奢な馬車の中でナインズは渡された仮面を手に首を傾げた。

「お父さま、これなぁに?」

「窓の外を眺める間は念の為にそれを着けなさい。このままだと街がパニックになる。お前は私に似すぎだ。」

 それはユグドラシル時代にアインズが強制的に手に入れさせられた呪われたアイテム。

 ――通称嫉妬マスク。

 残念ながら枚数ならうんざりするほどあるので、アインズは何の躊躇いもなくナインズへやった。

「邪魔ぁ。」

「面倒だろうが、お前と街の為だ。」

 アインズはナインズの手の中から仮面を取ると、その顔にかけてやった。

「ちゃんと前は見えるだろう?」

「わぁ、邪魔じゃなかったぁ!」

 ナインズはすごいすごいと仮面を触り、窓の外を心置きなく眺めた。

「――あ!お父さま!見て、見て見て!」

 馬車の外を指差すナインズはシートの上に立ち、円形の闘技場を前に興奮している。脱いである靴は丁寧に二足揃えられていた。

「見ているぞ。私も初めて来たが…すごい建物だな。」

「ナザリックのアンひテアトむる(アンフィテアトルム)の方がすごいけど、これもすごい!」

「九太、ナザリックの物と外のものを比べてはいけない。わかるな?」

 人の手で作られた物とCGによって指先一つで生み出される物は決して比べてはいけないのだ。

 アインズが告げると、ナインズは頷いてから再び闘技場を見上げた。

 そうしていると、馬車は貴賓席に直接上がれる出入り口に乗り付けた。

「お母さま!起きて、着いたよ!」

 正面に座るフラミーはアルメリアを膝に乗せてすやすや眠っていたが、ナインズが膝を叩くと目を覚ました。

「は〜、もう着きました?おはよう、ナイ君。ナイ君は今日も元気だね。」

「えへへぇ。リアちゃん、着いたよ!」

 ナインズは丸くなるアルメリアの翼をめくった。

「にぃにぃ。」

 アルメリアは大きな瞳に涙を浮かべていた。

「リアちゃん?どうしたの?」

 ナインズがフラミーの膝の下にしゃがみ、顔を覗き込むとアルメリアは再び自分の翼に包まった。ナインズはどこにいても大人しく笑っていたが、アルメリアは知らない場所も知らない人も苦手だ。冬にあったナインズの誕生祭にアルメリアも行き、お披露目があったが、ずっとフラミーの膝の上で丸くなっていた。翼をめくると大粒の涙を浮かべてしまうので、神官達でもあまりアルメリアの顔を見ることができた者はいない。

「九太、花ちゃんはもう少し寝かせてやろう。無理に起こすことはない。さぁ、それよりお前は靴を履かなきゃな。」

 アインズは小さな靴をナインズに一足づつ渡し、ナインズはまだ不器用な手で足を靴に突っ込んだ。

 フラミーはアルメリアが泣き出さないように気をつけて抱き上げると白い翼で大切に包み込む。

「リアちゃん、お外出るけど、大丈夫だからねぇ。」

「おか、おかぁ。」

 えぅえぅと泣き声を上げそうになるアルメリアはフラミーに必死に張り付くと自らの翼を口に入れしゃぶった。アルメリアの視界はフラミーの翼でいっぱいだ。

 そうしているとノックが響き、一番にアインズが降りた。

 身分から考えればあまりアインズが一番に降りるのは良くないかもしれないが、辺りの索敵やらを行うなら一番力のあるアインズが降りるべきだろう。

 神が行うなら、何であっても正解になる――という恐怖の事態に陥っている――のでアインズはもはや小難しいことはあまり考えないことにしている。

 そこには最高神官長や闇の神官長、光の神官長、陽光聖典、アルベドとシャルティアがいた。この面子のお出かけに最強の盾と総合力最強の二人が付くのは当然の事だろう。

「神王陛下、殿下、長時間のご移動お疲れ様でございました。」

 仮面を外したナインズもすぐに後を付いて降りてきたので、闇の神官長マクシミリアン・オレイオ・ラギエは二人に頭を下げた。

「うむ。ラギエ、気にするな。」

 アインズはそれだけを言うと、フラミーを迎えるように馬車に振り返った。

 そして、ナインズが一言。

「ラギエさんも、皆さんも、楽にして下さい!」

 アインズはアルメリアを抱くフラミーの足元が危なくないように手を差し伸ばしていたが、ナインズのその言葉に振り返り、ふっと笑った。

 アインズが優しいのはナザリックの者達に対してだけだ。神官長達の頭を上げさせるのはフラミーを下ろしてからで十分。そう思っていたが、ナインズは誰にでも優しかった。

「――ナインズ、偉いな。」

「はい!」

 いいお返事が返り、フラミーも微笑んだ。

 神官達は改めてフラミーとアルメリアにも頭を下げ、歩みを進め始めた。

 貴賓室は三部屋あり、闘技場の経営に寄与している資産家用、貴賓室を借りられるだけの額を支払える者用、そして神々用だ。

 これはかつては資産家用、貴族用、皇帝用だったものだがこのように割り振られ直した。

 歴代皇帝のために作られていた部屋に現地の神官達が案内する。

 初めて近くで神々を見た現地の神官達は振り返りたい気持ちを何とか封じて進んだ。これほど側で神とまみえる事は二度とないかもしれない。オシャシンでいつでも見られるが、生で見られる神々を目に焼き付けたい。

 ――しかし、神官は気付いていないが、振り返りたいと言う欲求は神を見たいからと言うだけではない。

 本能が絶対強者達に背中を取られた事に怯えているのだ。

 

 やがて角を曲がり扉が見えると言うところまでくると、そこには四人の女子がいた。

「――あら?紫黒聖典?」

 フラミーの呟きに四人娘は振り返る。

「あ、陛下方。お待ちしておりました!中の安全確認は済んでおります!」

 真面目な雰囲気のクレマンティーヌが膝をつき、後ろの三人も即座にそれに続く。

 道中の警護は守護者と陽光聖典が受け持ったが、闘技場の事前安全確認には紫黒聖典が駆り出されていた。

 彼女達は飛竜(ワイバーン)を当てがわれている為三色聖典の中でも最も動きが早い。

 四人は前日から前乗りし、アーウィンタールで三騎士と合同訓練も行った。

 余談だがティトとマッティはたまに神都に行き紫黒聖典付きの飛竜(ワイバーン)達のメンテナンスを行っていて、その度に姦しい四人衆に振り回されている。当時十四歳だったティトは十八歳を迎えた。マッティは嫁を取ったし、兄弟は益々逞しくなった。ナインズとアルメリアの誕生祭で久々に謁見したとき、アインズは「お前達を見ていると私の貧弱さが情けなくなるな」と言い、すっかり大きくなったティトはいつもの神の冗談だと昔と同じ人懐こい顔で笑った。ブロッコリーのようだった髪の毛は今では一本の三つ編み状に結ばれていて、マッティと随分似てきたようだ。

 

 ナインズは跪く紫黒聖典を見ると、少し早すぎやしないかと言うタイミングで声をかけた。

「紫黒聖典の皆さん、楽にして下さい!」

 ナインズに促されたが、四人はアインズとフラミーに確認の視線を送ってから立ち上がった。

 番外席次が扉を開き、先にシャルティアが中へ進み、最後のチェックを済ませるとアインズも中へ進んだ。

「ありがとうございます、番外席次さん。ほら、ナイ君も。」

「ありがとうございます!らん外席次さん!」

 フラミーは番外席次に微笑み、ナインズを連れて中へ進んだ。

「はぁ…フラミー様…。」

 番外席次はうっとりとこぼしてから共に中へ進んだ。

 部屋の中は手狭ではあるが、調度品はどれも超一級品ばかりだ。

 壁の一面は大きく開いており、闘技場中を一望できる。

 ナインズが近寄り、外を覗き込むと――競技場を取り囲んでいる満員の観客から割れんばかりの大歓声が上がり、ナインズは肩を震わせた。

「お、お母さま。ゴーレムじゃなくて人がたくさんいる!こんなに!」

 誕生祭などは選ばれた者達が来ていたので、一般観衆を始めて前にしたナインズは驚いたように目を丸くしていた。それに、ナザリックの闘技場の客席にはゴーレムが並んでいるのだ。

「そうだね。皆ナイ君が大好きだから嬉しそう。」

「そ、そうなのかな?」

「きっとそうだよ。お手手振ってごらん?」

 ナインズはそろりそろりと再び窓辺に近づき、手を振った。会場中がドカンと盛り上がり、ナインズは再び肩を震わせた。

 その声に、アルメリアは「ぅ………」と声を漏らすとフラミーは慌てて抱き上げて背を叩いた。

「怖くないよー、怖くない。皆リアちゃんの事も大好きなんだから。」

「お、お母さま。ぼくも!ナイ君も!」

 フラミーが膝をトントン、と叩くとナインズは横向きに膝に乗った。百レベルの力の前ではナインズ程度軽いものだ。

 ナインズはそっとアルメリアをフラミーから受け取り、アインズがするようにその翼を撫でた。

「リアちゃん、にいにがいるからね。」

「にぃにぃ。」

 アルメリアがナインズの服を掴むとフラミーは二人をいっぺんに翼で覆い、アインズはフラミーの翼を撫でた。

 

 その様子を眺めていたレイナースは小さな声で呟く。

「…美しい光景だわ…。」

「本当ですね…。それにしても、アルメリア様の翼は黒いんですね?」

 ネイアが疑問を漏らすと、紫黒聖典と別段近くもない所に控えていた地獄耳のアルベドが「くふっ」と声を漏らした。

「私とお揃いっ!あっ、不遜ですわね。私がアルメリア様とお揃いなのだわ。」

「あーうっさいでありんす。本当にうっさいでありんす。」

「なぁに?シャルティア。あなた、私がアルメリア様とお・そ・ろ・いだからって嫉妬しないでくれるかしら?くふふ。」

 アルベドが勝ち誇った顔をすると、シャルティアはその手を一気に闇の中に突っ込んだ。ズズズ…と引き抜かれ始めたものは伝説級(レジェンド)アイテムの真紅の鎧だ。

「はぁ?こっちはこれを着ればフラミー様とお揃いの白い翼がありんすわけでありんすが?」

「ふぅん?付けたり外したりできて、随分便利ねぇ。街の子供達と同レベルでなくて?」

「…………大口ゴリラ。」

「…………ヤツメウナギ。」

 両者が静かに睨み合うと、アルメリアの目にはどんどん涙が溜まっていき、ナインズすらぶるる…と震え――番外席次すら立っている事が難しくなるほどの圧倒的な力が押し寄せる。

 

「――お前達、児戯はやめよ。」

 アインズはアルメリアが決壊する最後の一押しにならないように、静かに告げた。

 ここで「やめんか!!」と言っていればアルメリアは劇どころではない。

 瞬間、二人は即座に美しい笑顔を見せた。先程までの一億年の恋も冷めてしまいそうな顔の二人はどこにもいない。

「申し訳ございません。」

「失礼いたしんした。」

 部屋の中の緊張が解けると、廊下から赤ん坊の泣き声が響いた。

 フラミーは、目を見開いて引火直前のアルメリアに顔を寄せ微笑んだ。

『リアちゃん、泣かないで?頑張れるかな?』

 優しすぎる口調で告げられた言葉はアルメリアの心の奥に触れた。

「ラギエ、ドラクロワ。廊下に誰がいるんだ?」

 腰を抜かしてしまっていた闇の神官長と光の神官長はなんとか立ち上がり、息を整えると告げた。

「――し、失礼いたしました。陛下方、本日隣の貴賓室にはエル=ニクス州知事が来る予定で、ご挨拶にと廊下で待っております。」

「む、そうか。ではこの泣き声はサラトニクだったか。」

「恐らく。」

 話していると廊下から聞こえていた泣き声は次第に収まっていき、アインズは入れてもいいかとフラミーに視線で確認をとる。

「入れてあげてください。」

 フラミーが言うと、アインズは顎をしゃくった。

「エル=ニクスを入れてやれ。」

 足腰が言う事を聞いている番外席次が扉を開けると、ジルクニフとロクシー、そしてサラトニクを抱いた執事と乳母がいた。周りには三騎士もいる。

 ナインズはアルメリアをフラミーに返すと、見覚えのある男の子に駆け寄った。

「サラ?」

 去年の夏に産まれたサラトニクは九ヶ月を迎え、初めて見た時よりはよほどちゃんとしていた。

「殿下、よく覚えておいでで。」

 ジルクニフは微笑むと、サラトニクを抱く執事の肩を叩いた。

「エンデカ、私はご挨拶してくるからここにいろ。」

「かしこまりました。――さぁ、殿下。こちらがサラトニク様でございます。」

 執事はナインズの前に膝をつきナインズにサラトニクを見せた。

 サラトニクはふるふると震える足を地面に下ろし、エンデカに捕まりながら立ち――すぐに地面にお尻を下ろした。

「あんなんなんなんなん、ぱ。」

「わ、サラは可愛いね。」

 ナインズは優しくその頭を撫で、サラトニクはキャイキャイと笑い声を上げた。

「リアちゃんみたいに、ぼくの事にいにって言ってもいいよ?一太はいつも二の丸と一緒で、弟は良いものですって言ってるから。」

「ぱ?」

 サラトニクが首を傾げると、執事がナインズの前に膝をついた。

「殿下、サラトニク様はありがとうございますと言っております。」

「おじさん、サラの言葉わかるの?」

「分かりますとも。どうか末長く仲良くしやってくださいませ。」

「うん!いいよぉ。」

 ナインズが嬉しそうに笑うと、大人達がぞろぞろと入り口に戻ってきた。

「――では、我々はこれで。」

「はぁい。じゃあね、サラ。」

 ナインズはもう一度サラトニクを撫でるとフラミーの下へ戻った。

 フラミーの隣に座り直すと、アインズが手元に視線を落として何かを読んでいた。

 ナインズが何が書かれているのかと手元を覗こうとすると、アインズは立ち上がり難しい話を外に向かって聞かせた。

 それが終わると、フラミーも何か話をし、手を振った。

 ナインズはアインズの言っていた事は難しかったが、フラミーが言ったことは分かった。

 演劇に誘ってくれて嬉しい。素敵なお芝居を楽しみにしていますね。だ。

 次は自分が何かを言う番かとナインズは一生懸命考えた。

 お出掛けが嬉しいと言おうか、アルメリアが可愛いと言おうか、サラトニクに会ったと言おうか。

 ソワソワしていると、色とりどりの絨毯が敷き詰められた劇場の中心に人が出てきた。

 それは先程までここにいたはずの神官達だ。

 神官達はナインズ達のいる貴賓席に向けて深く頭を下げると、歌を歌った。

 それに合わせ、貴賓室にいる聖典達も歌った。

「これがゲキ?」

 ナインズがフラミーを見上げると、フラミーはふるふると首を振った。

「ナイ君、これはまだ劇じゃないよ。劇をします、見てくださいねってお歌を歌ってるの。」

「むつかしいね。」

「ふふ、そうだね。お母さんもそう思う。でも、聞いてごらん?――皆の声、綺麗だねぇ。」

 透き通った歌声にしばし耳を済ませ、歌が終わると神官達は頭を下げはけて行った。

 フラミーは部屋の中で一緒に歌った聖典達に小さく拍手を送った。

「皆さん、ありがとうございます。」

 ナインズも慌てて拍手をした。

「あ、ありがとうございます。」

 聖典達は皆誇らしげだった。特にニグンの顔はドヤ顔と言っても過言ではない。

「――九太、始まるみたいだぞ。」

 アインズはそう言うと、遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)を取り出して浮かべた。

 下の様子がアップになって見える。

 ナインズはそれを見つめていたが、現れた者達が声を張ると、身を乗り出すように下を覗き込んだ。

『おぉ!世界が闇へ落ちようとせん!光の神よ、再び地へ降りる時が来たようだ!』『あぁ!闇の神よ、あなたが五百年前に遣わせた一人の使徒はどうしたのですか!』

 それを聞くとアインズは目頭を押さえ、フラミーは両手で顔を覆った。

 ナインズはこれは何なんだろうと食い入るように劇を見た。

 

+

 

「………疲れた。」

「疲れましたねぇ…。」

 アインズとフラミーはフラミーの寝室でぐったりと転がっていた。二人の間には相変わらずアルメリアが丸まって寝ていて、フラミーの翼が掛けられている。

「アインズさぁん…何だったんですかぁ、あれ。」

「えぇ…俺に聞かれても…。」

 それは大まかに言えばニグンと出会った時から、建国までの話だった。

 それの前に、下界を心配する慈悲深き神々の話や、生命の糸を編む光の神の話、死んだ者の魂を洗う闇の神の話などがあり、アインズは途中で精神抑制をフル活用した。

 歌の奉納の際にニグンが誇らしげな顔をしていた理由もよく分かる。建国までの話はニグンが神都で信者達に聞かせて来た話であり、大神殿と約束の地に建つ神殿にニグンが納めた聖書の内容でもある。そして、講演で吟遊詩人(バード)竪琴師(ハーパー)に聞かせてきた話でもある。

 神様本人達以外は割と気に入ったようで、ナインズなどはかなり楽しんでいた。

 アルベドとシャルティアも「下等生物にしては上出来」と高評価を下した。

「…せめて、ニグンさんを裸に剥いてなければ良かったのに…。」

 フラミーが呟くと、アインズは精神抑制を切っているせいで悶えた。

「…うぅぅ…本当ですねぇ…。アルベドなんかよく普通に見てられたよな…。あいつ、自分がルーインを追い剥ぎした時のシーンがあんなに超絶に美化されてて何も思わないのか…?」

 劇中のアルベドは「そなたに洗礼の儀式を行う。生まれたままの身になりて、全ての命は神の前では等しい事を知れ」と言ったが、何をどう考えても当時のアルベドはそんなことを言わなかっただろう。

「皆鋼の精神です…。私なんか命を生み出すって事になってたけど、自分の子供しか産んだ事ないのに…。」

「俺も死んだ魂なんか浄化してないのに…。あぁ…何かもうクレマンティーヌの顔見れなかったです…。」

 アインズはかつて邪神教団が脱ごうとした時、クレマンティーヌに言った言葉が頭の中を何度も過った。

(――もし邪神教団(こいつら)のせいで神聖魔導国に変な風習が根付いたら街ごと消す!!それを忘れるな!!)

「あぁ…!邪神教団どころか…信者第一号のせいでおかしな風習が根付く…!!」

 アインズが頭を抱えていると、寝室の扉が叩かれた。

「――誰か?」

 扉はそのまま開かれ、ナインズが顔を出した。

「九太か。入っていいぞ。」

 ナインズはいそいそと部屋に入り扉を閉めると、瞳を輝かせた。

「へーか方は神様なの!!」

 アインズはアルメリアのいるフラミーの翼の下に潜り込んだ。

「俺は神様じゃない。でもフラミーさんは女神で聖母だから。よろしく。」

「え!?よ、よろしく!?」

「へーか!」

「な、ナイ君?お母さんもね、本当は普通の人なんだよ?」

「でも命の神様なのに!」

 

 アインズはフラミーの翼の下で、アルメリアの翼をめくって現実から目を逸らす。中のアルメリアはどう見ても小さなフラミーだ。

「花ちゃん可愛いね〜。」

 白い翼の世界の外からは、神様だとか神様じゃないとか、陛下だとか陛下じゃないとか。

 フラミーとナインズは暫く同じ問答を繰り返した。




そろそろ世界征服にいかないと……
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