「おぉ、豪華に仕上がったな」
まだ雪も降るような新春。アインズはたっぷりと積まれた共和国への贈り物を見ると唸った。
「如何でしょうか。どの魔法道具も、酒も、食材も、絹一つすら全てが神聖魔導国の一級品!」
共に出かけるアルベドが胸を張る。今回のお供は実務を担うアルベド、デミウルゴスの知恵者二名と、キャンプにいると盛り上がる――もとい、最強の護衛のシャルティアだ。何をするにしてもこの三人がいれば完璧な布陣だ。もし何かわからない事があればシャルティアが知恵者に尋ねるだろうと言ういつもの打算もある。
「ご挨拶の品はこうでなくてはな。これらはもちろん、輸出もできるんだろうな?」
「もちろんでございます!この先特産品として輸出を続けられる品々だと言うことは、エ・ランテルと神都の魔術師組合、手工業者組合、商人組合に確認済みです。今後は他の都市から輸出を行う商人も職人も増えていく見込みなので、ラクゴダール共和国は神聖魔導国と同じように大いに栄えていきますわ!」
「よくやった。我々の印象を悪い方に傾けないように、最大限注意を払え」
「かしこまりました」
アインズは満足げに頷くと、荷の最終チェックを行うアルベドから離れた。
悪印象を持たれないようにその身には肉がついている。
肩が凝るような豪華な服は、一歩進むごとにジャラジャラと装飾が鳴って煩い。
アインズは赤ん坊が履くぴよぴよと音が鳴るサンダルを思い出し、自らの姿を見下ろした。
濃紺を基調としたローブの袖と裾には細かい魔法石がたくさん縫い付けられ、ネックレスも着用制限個数がないため幾重にも重なっている。
指輪は自分で着けているものだが、ドラウディロンの腕輪もあるのでいつも通りの装飾過多だ。
フラミーは尖った耳にイヤーカフとピアスを付け、額には額冠が輝いているので顔まで重そうだ。
共に行く神官団がフラミーに頭を下げ、デミウルゴスと漆黒聖典の指示に従って馬車に乗り込んでいく。
友好のために使節交換を行うので、あちらで布教を担う神官達は、本国との連絡を取り、軽い外務作業までこなす。
「さぁ、そろそろフラミー様も馬車へどうぞ」
デミウルゴスが示し、馬車の隣で控えていたシャルティアが扉を開く。
「はぁい。――シャルちゃんお願いね」
「はい!お任せくださいまし。妾が快適な旅をお約束いたしんすぇ!」
シャルティアはここ、神都から沈黙都市まで
馬車は総数十台で、神官二十四名が六台使い、三台の幌馬車にはごまんと友好の証である品が積まれている。
最後の一台にはアインズらナザリックの者が乗り、漆黒聖典十二名がゴーレムの馬で警護につく。
アインズもフラミーが馬車に乗ったことを確認すると、アルベド、デミウルゴスを連れて馬車に乗り込んだ。
御者台には愛らしいボウルガウンを着込んでいるシャルティアが乗る。
「――<
ゴオッと普段の何倍もの大きな闇が開くと、「行きなんし!」と言うシャルティアの言葉と共に馬車を引く
一行の短い旅は始まった。
馬車の中、アインズとアルベドは一つの気掛かりな事を相談していた。
「橋は依然として掛かっていないので、
「仕方がないな。時間短縮のために、<
飛び切れる距離でなければ、最悪着水することになる。荷が濡れることは避けたかった。
「はい。申し訳ありませんが、その手筈でよろしくお願いいたします」
「気にするな」
鷹揚に手を振り、窓の外へ視線を投げる。
まだ冬の寒さが残る沈黙都市は、以前来た時と違って木々も枯れて項垂れている。
硬く閉じられた蕾は、まだ春の訪れに気付いていない。
「向こう、共和国ってことは王様とかはいないんですよね」
フラミーの問いにデミウルゴスが頷いた。
「えぇ。議員が国の方針を決めて舵取りをしているそうです。多くの種族が暮らしている国のようで、全ての種族から代表が一人は出ているとか」
「評議国に似てますね。あそこは全種族から代表は出てなかったですけど。どんな種族がいるんです?」
「主な種族は
「
「恐らく近しい生き物でしょう。
フラミーはエントマを連れてきてあげれば良かったと思った。
すると、馬車の扉が叩かれた。
「――シャルティアだろう。入れてやれ」
アインズが顎をしゃくると、扉に近かったデミウルゴスが扉を開いた。馬車は依然として動き続けている。
「失礼いたしんす」
「ご苦労だったな。ここから瀬までは結構あるそうだ。ゆっくり馬車旅を楽しむが良い」
「アインズ様が居てくだされば、たとえ向かう先が虫けらの巣であっても道中が輝くようでありんす!」
「シャルティア、相手は友好国だ。あまりそう言う言い方はしないように謹め」
デミウルゴスが詰め、馬車のシートに座ったシャルティアは深々と頭を下げた。
馬車の中は一瞬静寂に包まれが、何気ない日常の会話が始まった。
最初はフラミーの今日のお昼ご飯は何かな〜から始まり、この辺には何が住んでるんだっけと話は展開して行った。
気兼ねのない会話は次第に秋に手に入ったインテリジェンス・ソードの話題になった。
「――それで、ミイラ男は魔剣の声を聞いたことがないそうよ。フールーダ・パラダインもまだ魔剣と会話できていないとか」
「それでは研究も進まないのでは?全く魔剣もどう言うつもりなんだか。一度痛い目に合わせないと理解できないんでしょうか」
「へし折ってやれば良いんじゃありんせんこと?研究に協力する為に来たのだから、そのまま黙秘を続けるなら破壊しんすぇと言えば、きっとすぐに話したくもなりんしょう」
「そうね。力関係を理解していない犬を躾けるのも骨が折れるわ」
アルベドがため息を吐く。
アインズは折られる前に話をしに行くべきかと心のメモに書き留めた。
その後馬車は三時間ほど走ると昼食の休憩のために止まった。
今日の昼は作らず、弁当だ。
二十四名の神官と十二名の聖典、五名のナザリック勢。
小学校のクラスひとつ分。これだけの人数の昼食を外で用意するのは大変なので弁当となった。
神官達は大神殿の持ち物であるお尻の痛くなる馬車から降りると皆体をほぐしていた。
昼食を取ると、再び隊は出発し、夕暮れ時に止まった。
アインズ達は一度ナザリックに戻り、子供達を呼び寄せた。
ナインズとアルメリアの姿を久しぶりに見た神官達は二人をとてもありがたがっていて、拝まれることになれていないナインズは少し緊張したようにして過ごした。
一方アルメリアは一切無視だ。赤ん坊の頃から愛想のいいナインズとは違い、我が道を行く彼女はフラミーの腹に掴まり、フラミーの翼が自分から少しでも離れるとすぐに手繰り寄せて自らを隠させた。
いつもは絶好調のお喋りも、今日は「にぃに」と「やんや」くらいしか言わなかった。
一行は和やかなキャンプをし、さぁ寝よう――と言うところでアルベドがずずいと身を乗り出した。
せめて要塞を出して、外で寝るようなことは謹んでほしいとの事だった。
渋々要塞を生み、神官や聖典達も中に入れて、野営ではなく宿の素泊まり状態で過ごした。
翌日、軽い朝食を取り、子供達はナザリックに帰された。
一行は再び瀬を目指して進み、その日の昼前に瀬に辿り着いた。
「こぉんにぃちはぁ!」
間延びしたような声を上げたのは、二足歩行の青蛙だった。
アインズは馬車を降りてこの種族と話してみたかったが、守護者達は下等な者と話す必要はないと進んで降りて行き、外で聖典を含めて渡守の
「………やっぱり守護者と来るとつまんないですね」
「つまんないです。神様だって降りたいです」
二人の神様はぶー垂れていた。
窓の外の
象くらいの大きさだと思ったが、象の倍あるかもしれない。
見上げる感覚から行くと三階建ての天井くらいはありそうだ。ざっと九メートルと言ったところか。足の太さも強烈だ。
窓から覗いていると、話がついてしまったようでアルベドとシャルティアが戻った。
「お待たせいたしました。今日我々が通ることを国から聞かされているそうで、一番大きな
「それは良かった。かなり大きい
アインズが尋ねると、シャルティアがあちら――と示す。
「あちらのリフトで
その説明が終わると、御者台の方から出発を知らせるようにノックが響いた。デミウルゴスが御者席にいるのだ。
連絡窓から「いいわ、出してちょうだい」とアルベドが告げると、馬車は再び動き出し、リフトに乗り込んだ。
「じゃあ〜、あげてぇ〜」
共にリフトに乗った
アインズとフラミーは慌ててそれの原動力を探すべく馬車から降りた。
「あ、アインズ様!?フラミー様!?」
守護者が心配するような声をあげる。
二人は無言でリフトを上げる機械を見ると――ほっと息を吐いた。
巨大な二足歩行の鼠たちが歯車を押していたのだ。
このエレベーターはトブの地下洞穴に住んでいる
「――一瞬焦りましたね」
「はひ。てっきり電気かガソリンだと思いました」
「俺も」
二人とも少しづつリフトが上がる中、穏やかに笑った。
リフトと巨大
馬車はゆっくりと
もっと小さな、象くらいの大きさの
「しゅっぱぁ〜つ!」
掛け声と共に、法螺貝をブォーっと吹く。
潮の満ちている海へ、何の恐れも抱かず進んでいく。
ざぶざぶと最初は歩いていたが、途中からはその大きな尾鰭を使って器用に泳いで進んだ。
「うわぁー!ナイ君達やアウラ達も呼んであげれば良かったなぁ!」
馬車から再び降りたフラミーは、馬車を乗せた巨大
海は澄んでいて、魚の群れが水の中で太陽をキラキラと反射していた。
小島を避けて進み、
歩いていた時はまだしも、泳ぎ出した
大陸の続きを発見した冒険者達はたまたま潮が引いた時に渡ったと言う話だったが、よくぞ見つけ出してきてくれたと褒めたい気分でいっぱいになる。
潮が再び満ちて戻って来ようとした時、早くどこかしらに辿り着かなければ溺れ死ぬと怖い思いをしただろう。
海上都市に行った時に見たツヴェークとは違って、少しも邪悪さはない。
隣の大陸――いや、地続きの向こう側にたどり着くと、
再び御者席からノックが来ると、
ゴウンゴウンゴウン…と音をあげ、リフトはゆっくりと地面に降ろされた。
「聖典達と神官達が来るのを少し待ちましょう」
「そうだな。――ふふ、神官達も楽しんでいるようだ」
窓から軽く外を確認すると、神官達は馬車を降りて
全員がこちらの岸にたどり着くと、一行はラクゴダール共和国へ向けて最後の移動を始めた。
まだ切り開かれたばかりの道は土がむき出しだ。しかし、真っ直ぐ一本道になっている。
「あの手紙のやり取りをしてから二ヶ月でよくぞここまで完成させたものだな」
アインズが呟くと、アルベドはどこか影のある笑顔で頷いた。
「――まったくです。必死でやったのでしょうね。我々の手を借りないで済むよう」
「あぁ。そうだろうな」
アンデッドもなく道を作り、あんなリフトを設置し――天晴れと言っていいだろう。
その後昼休憩をとり、日が高くなる頃に一行はその国に辿り着いた。
城壁のようなものはないが、水の張られた深く広い掘りに囲まれた国だった。
堀の中には
堀のすぐ横に立つ家には糸を垂らす
堀を渡る橋の入り口には猫のような耳を生やしたオレンジ色の髪の男性達が立っていて、
王の到着を告げるのだ。
いくつかの情報を交換し合うと、
「神聖アインズ・ウール・ゴウン魔導国が神王陛下と、光神陛下!!並びに神官団の皆様のご到着なり!!」
猫耳男は声を張り上げると、御者台のデミウルゴスの下へ走った。
「私は
「よろしく頼みます。私は神王陛下の側近の一人、デミウルゴスと申します」
「デミウルゴス様。アルベド様と並んで名を伺っております。さぁ、どうぞこちらへ」
その後を十台の馬車が追う。
パレードのような状態になり、街道に人々が出てきては初めて見る人間種達を眺めた。
漆黒聖典が必要以上に人々が馬車に近付いてこないように見張る。
しかし、街道にはたくさんの警護が立たされており、何か問題が起こる様子ではなかった。
「神聖アインズ・ウール・ゴウン魔導国より、闇の神アインズ・ウール・ゴウン陛下と、光の神フラミー陛下のおなりです!!」
道案内をしてくれた
開かれた扉の先――まるでダンスホールのような煌びやかな大広間には亜人の見本市かと思うほどに多くの亜人達が所狭しと並び、入ってくるアインズ達を注視した。
警戒、歓迎、不安、期待、畏怖、羨望――。
瞳の色は全ての感情が入り混じっているようだった。
「………あれがいることは知っていたか」
ホールへ足を進める前にアインズが低い声で尋ねる。
あれ。
アインズの視線の先には、赤く燃え上がるような竜と、透き通るガラスのような鱗を持つ竜、黒い体に金の亀裂が脈打つ竜がいた。
人の身で来たのは失敗だったか。アインズの視線は無意識のうちに鋭くなっていた。
「――存じ上げませんでした」
「――申し訳ありません。宗教を必要としないことから絶対者がいるとは思っておりましたが……」
アルベドとデミウルゴスが耳打ちをする。
「「<
その呪文はアインズとフラミーが同時に発したものだ。
三体の竜はじっとその様を見ていた。
中の亜人たちは何故入って来ないのかと、次第にざわめきだす。
アインズとフラミーは忘れていない。竜王という存在の恐ろしさを。
常闇の竜王ほどの存在はもういないと言うが、ツアーと近しいレベルの竜が三体束になってかかってくれば、命を賭けなければいけない戦いになることは間違いがなかった。
防御力、回避率、攻撃力から始まり、属性系のバフまで網羅していく。
アインズとフラミーの体が何度も交互に発光する様を見て、漆黒聖典達は何かを思ったのか、空気が張り詰める。
二人は互いのバフをかけ終わると、次はナザリックから来ている全員にバフをかけた。
五分ほどはそうしていただろうか。
「――沈黙とは、時に言葉を交わすよりも力を持つ」
しんと静まり返った中、アインズの声はホールの中を響き渡った。
「まずは迎えてくれた議員皆様へ感謝を述べよう。この沈黙の間に、皆様が如何なる人々なのか、私にはもうよくわかった。新しい友情に感謝し、今同じ場所へ踏み出そうではないか」
アインズは能書きを垂れるとようやくホールの中へ進み出した。
あれだけのバフを掛けるというのは、言わば友好国の議員が集まるホールに、完全武装で銃を持って行くようなものだ。だから、入らなかった言い訳が欲しかった。
竜達は置いておいて、亜人達はまさか戦闘準備をしていたなどと思いもしないはずなのだから。
アインズは骨になりたい、骨になりたいと、心の中で何度も呟いた。
相手がただの竜ではなく、竜王の場合、こんな小心者丸出しのことを考えていては悟られる。――分かっているが、アインズの頭の中には骨になりたいという言葉が響き続けた。
「――神王陛下、光神陛下。我らがラクゴダール共和国へようこそ。私達は神聖魔導国の皆様を心より歓迎し、双方の国の末長い友好を祈ります」
赤い竜が語る。敵意がなさそうな事に安堵すると、アインズはゆっくりと頷いた。
「歓迎に感謝しよう。まずは皆様へ紹介を。――アルベド」
「はい」アルベドが一歩前へ進む。「神聖アインズ・ウール・ゴウン魔導国が神、アインズ・ウール・ゴウン様とフラミー様でございます」
アインズは軽く手を挙げ、フラミーは三方向へ丁寧に頭を下げた。
「そして、神々の座す地、ナザリック地下大墳墓より、第一階層から第三階層守護者――シャルティア・ブラッドフォールン」
「よろしくお願いいたしんすぇ」
「側近、第七階層守護者――デミウルゴス」
「お見知り置きを」
「使節としてラクゴダール共和国に駐在する神官団」
神官達はゆっくりと頭を下げた。
「その使節の護衛を担う漆黒聖典。及び、
「――<
アルベドの紹介に合わせ、シャルティアがナザリックへの道を開く。
待機していた
「最後に、宰相。アルベドでございます」
丁寧な紹介が終わる。
議員達は頷きあい、一人づつ自己紹介を始めた。
「
それは女性だった。数本の長い髭と、可愛らしさすら感じる三角形の耳がオレンジ色の髪からのぞいている。
「
巨大な体躯故、竜達の横に並んでいる。
「
まだ若い青年だが、瞳の奥には知性が宿っている。
「
しわがれた老人の声。黒いローブに全身を包み、覗き見える瞳は八つ。口の端からは牙がチラついていた。
「
他にも次々と議員達が名乗りを上げていく。
アインズの興味は、この竜達が竜王なのか、それともただの竜なのかだけだ。
ついに全員の自己紹介が終わり、黒い体に金の線が入る竜が口を開いた。
「――
やはり竜王。アインズは顔色を変えない事に集中した。
続いて透き通るような鱗の竜が口を開く。
「
この順番でいけば、この竜王達の身分で一番上の存在は――
「ダイオリアー=ヴァインギブロス、
最後に名乗った竜王はゆっくりと頭を下げた。
アインズの中で一気に警戒レベルが上がる。
竜王とは、尊大であり、自らを最強の存在であると認識している者達の代名詞ではなかったのか。
この三体の竜王で、気を付けなければならないのはこの
「まさか竜王がラクゴダール共和国にいるとは存じ上げなかったな。私には竜王の友人がいるんだ。これからよろしく頼む」
アインズが告げると、
「ツァインドルクス=ヴァイシオン。
「――ほう。ツアーと知り合いだったか。あれが貴君に私のどんな話をしているだろうかと思うと恐ろしいな」
「この世界最強の存在。あらゆる力を持ち、奪い、君臨する絶対のぷれいやー」
「……全てを知っているようだな」
「恐らく知っております。あぁ、
「故のこの歓迎かな。貫かれないための」
「概ね正解です」
二人はまるで腹の中を探るように、じっくりと言葉を交わした。
議員達も、神官達も、聖典達も、今この時、何かとてつもない力に押さえつけられるようだった。
「――どうかお手柔らかに。我々は神聖魔導国の親友となれるよう、努めて参りますので」
「――嬉しい限りだ。友とは何よりも大切にしなければいけないもの。我々もラクゴダール共和国を特別な存在であると胸に刻もう」
「さぁ!歓迎の宴といきましょう!数日の長旅でしたからお疲でしょう!」
そう言って空気をガラリと変えたのは
その後ろから何人も
位置につくと、全員が目くばせをし、ホールは一気に音楽に溢れた。
控えていた者達がテーブルや椅子を次々に運び出して、アインズ達に席を勧めた。
料理も運ばれ、歓迎の宴は何時間も続いた。
宴の終わりに、アインズ達は国から持ってきた友好の品々を議員達に渡した。
「それで、どうだったんだい」
ツアーが尋ねると、
「アインズ・ウール・ゴウン、話に聞くほどのぷれいやーではなかった――と、思わされそうになりました」
「思わされそうになった?」
「えぇ。竜王の姿を見て戸惑い、驚き、逃げ出したいと思っているように見せかけられました。弱い存在ならばここで命を奪ってしまおうと、こちらに思わせるつもりだったのかもしれません」
「そういうことかい。アインズは評議国に集まった名だたる竜王達の前で恐れなど微塵も感じていなかったようだからね。おおかた何か策があったんだろう。アインズは人の身でいたかな?」
「えぇ、聞いていた通り人の身で訪れました。……侮れば何が起こったか等分かりきったこと。一筋縄ではいかない存在です」
「そうだね。しかもアインズは骨の身になれば全く違う一面を見せるだろう」
「それを見た時が共和国の終わりの時でしょうか」
「もしかしたら、ね」
ツアーは苦笑し、ゆっくりと天井を仰いだ。
「アインズは僕らが思いもしない知識を持っている。気を付けてかからないと、共和国の命は三年だ」
「三年――。何故です?」
「一年目で周辺諸国が飲み込まれる。二年目にここがやや孤立するように動き始める。緩やかな締め付けに、徐々に国民が周辺諸国へ移住を始める。三年目には事実上の属国化へと動き出す」
「いくら諸外国が取り込まれ、看板を掛け替えたとしても、友好関係を築いてきた国々の民の心が丸っと変わるわけではありません。友好国を無理に取り込むのは、そういう場所に住んでいる人々の反感を買うでしょう」
「僕もそう思うよ。だから、きっと時間をかけて来るはずだ。どこから何が起こるかわからない。注意しないといけないね、ダイ」
ダイオリアーは頭を下げると、先日の会合を頭の中でなぞった。