#145 孤島の孤独
その日、島には嵐が襲っていた。
ゴウゴウと風が吹き付け、ほんの数メートル先も見えないような激しい雨が降り注ぐ。
「屋根が飛ばされちゃいそうねぇ……」
ラビの母親は食事の手を止め、閉められた窓の鎧戸と屋根がガタガタと音を立てる様子を戦々恐々と眺めた。
「怖いわ。ねぇ、大丈夫かしら」
「ん?このエビ美味しいね」
「……はぁ」
ラビがどこか楽しげに答え、食事を進めようとすると――ガラガラと何かが飛ばされるような音がした。
「どこか瓦が飛ばされたかな。今日の嵐はずいぶん強い」
父親も屋根を心配そうに見上げた。
ラビは突風が吹き付けるたびに笑いが漏れてしまいそうになるのを抑え、急ぎ食事をかき込んだ。
「――っごちそうさま!僕もう寝るから!」
水の溜めてあるタライに慌ただしく食器を入れ、部屋に駆け込んだ。
外から嵐の音が聞こえ続け、時に鎧戸の隙間から迸った稲妻の光が漏れ入る。
落ちた雷はラビの恍惚の表情を照らし出した。鯨の油が入れられている皿に灯心を入れ、マッチを擦って火を灯す。
「ふふふ、明日はどのルートで海岸を回るのがいいかなぁ」
机には簡易ランプの他に島の地図。よく漂流物が溜まっている波の吹き溜りに丸を付けているラビのトレジャーマップだ。
筆学所が始まる前にハントに行くか、終わってから行くか。――筆学所では、字の書き方や読み方、簡単な計算、海と空の天気の読み方、島の歴史などを教わる。一日たった三時間程度の学校だ。
筆学所が終わってから行く方が時間の余裕はあるが、せっかく流れ着いた漂流物が満ち潮で再び波にさらわれるのはいただけない。
それくらいなら、多少時間に追われても早朝、筆学所が始まる前に手早く回った方がいいだろう。
確実な獲物確保を狙うなら浜だ。瓶や小物が流れ着く。
――しかし、大物を狙うなら断然岩礁地帯。
どちらを選ぶべきか。
しばらく地図を眺めると、ラビは「よし」と小さく呟いた。
「これだけの大嵐、もったいないもんね」
明日は大物狙いに決めると、火を吹き消した。地図を畳み、何も入っていないリュックに差し込む。
すぐに布団に潜り、明日の宝探しに思いを馳せた。
その翌日、上がりたての雨が木や屋根から滴る夜明け。
薄紫色の空には雲ひとつなく、水平の彼方には昇りゆく日が輝いていた。
ラビは空っぽのリュックを背負って海へ駆けた。
普段なら漁から帰ってくる舟がいるような時間だが、嵐と風が止んでから出航したのか、はたまた出航しなかったのか、未だ帰航する舟はいない。
浜には波の打ち寄せる音ばかり。
一番近い岩礁地帯へ向かいながら、台所から失敬して来たパンノキの実をチップスにしたものを口に放り込む。
「ん、ん、ん。んまい、んまい。……っふふ」
この後の収穫を期待してつい独り言が口をつく。
何枚も食べ、腹も膨れる頃には目的地に着いた。
黒い岩に凪いだ海がそっと寄せては軽い飛沫を上げる。
岩の間にはたくさんの海藻が引っかかっていて、中には死んだ魚も浮いている。こう言う魚を目当てに肉食の魚たちが集まってくるため、嵐の翌日は魚がよく獲れる。
ラビは草がまばらに生える岩がちの浜に荷物を放り出すと、その辺に落ちていた木の棒を拾った。
慣れた足取りで岩と岩の間を飛び移り、波の行き止まりを覗き込んだ。
「いいものあるかな〜」
鼻歌混じりだが、初っ端からそんなにいいものが見つかるとは思っていない。なんと言っても、ラビが探すものは字が書かれているものなのだから。
ゴミのようなものなら割と手に入る。ここで早速何か見つかればラッキーだ。
だが、目ぼしいものは瓶くらいしかなかった。
「お、割れてない」
これはこれで買い取ってもらえるので小遣い稼ぎには良い。ラッキーなことに側面には「エ・ナイウル名産ホヂノマーレワイン」と書いてあった。それはどこにある国なのだろう。
「エ・ナイウル国……」
ラビはそのラベルの文言を噛み締めると、リュックに瓶を入れて次の場所へ赴いた。ちなみにラベルは帰ったら丁寧に剥がしてとっておく。
次の浜には何も入っていない写真立て、ボール、流木、転がって角がなくなった
シーグラスは拾ったが、そこでは大した収穫はなく、また次でも大したものはなかった。
トレジャーマップの目ぼしいところを次々と回っていると、日はすっかり高くなり、朝の浜仕事に出てくる大人や、手伝いの子供の姿がちらほらと見え始めた。
何人かに挨拶をされながら、ラビは一度家の方へ戻り、今来た方とは反対の岩礁地帯へ向かうことに決めた。
家が見えるあたりに出ると、家の前には母親がいてラビに手を振った。適当に手を振りかえして岩礁地帯へ急ぐ。
「――ラビ!筆学所が始まる前にお父さんのこと手伝ってちょうだい!!」
母親がこれでもかと大声を出すと、ラビはあからさまに鬱陶しそうな顔をした。
「今それどころじゃないの!!」
「昨日の台風で勝手口の軒が飛んじゃってたのよ!口答えしてないで!!さぁ、早く!!」
そういえば昨夜はずいぶん派手な音が鳴っていた。ラビは渋々勝手口へ向かった。
そこには屋根に梯子をかける父がいた。
「――お、お帰りか。今朝は随分早く出たんだな」
「ん。お宝が手に入ると思ったんだよ」
「収穫は?」
「これからあるかも」
「ははは、何もなかったか」
「うるさいな」
父の手伝いをしながら、出かけた時には薄暗くて気が付かず、帰りには急ぎすぎて気付かなかった町の様子にようやく気が付き始めた。
隣家の屋根も一部飛ばされていたり、向かいの家の古い木が斜めになってしまっていたり。昨日の嵐は想像以上に破壊的なものだったようだ。
勝手口の修復も終盤に差し掛かると、ラビはあまりの焦れったさに貧乏ゆすりをした。
「ねぇ、もう行っていい?」
「んー、まぁいいか。行ってこい」
「やった!ありがと!!」
ラビはリュックを背負い直し、石垣を回って玄関へ向かった。
「ラビ、まだ終わってないんじゃないの?」
「あらあら、ラビ君はもうお出かけ?」
落ち葉でめちゃくちゃになった庭を片付けていた母親と、母親より年上の隣家のおばさんが同時に声をかけてくる。
ラビは「終わったよ」とだけ答えた。
「でもまだお父さんのトンカチの音がしてるじゃないの」
「父さんがもういいって」
「ふふ、ラビ君、どこまでお出かけ?」
「ちょっと潮溜まりまで」
「潮溜まり?」
「はい、この島の外の事が書かれたものが着いてないか確かめるんです」
「……あー。ラビ君はそうよねぇ。そうだったわねぇ」
お隣さんがどこか呆れたように言うと、ラビの母親は少し恥ずかしそうに肩をすくめた。
「まぁ、ラビ君。若いうちはなんでも楽しいものよね。でも、嵐の後で今街もあなたのお家も大変なのよ?お父さんもまだ何か修理してるんでしょう?それなのに、ゴミ漁りにいくなんて」
お隣さんが気持ちよさそうに説教を始めると、母親がそれを嗜めた。
「奥さま、主人はもういいと言ったそうですから」
「まぁいけないわ、テランバードさん。ちゃんとこう言うときに言い聞かせなくっちゃ。この間も何かゴミ拾って步いてたらしいじゃない?そろそろビシッと言い聞かせなくちゃ」
「それはそうなんですけどね。でも、やりたい事はやってほしいんです。大人になる前に」
「まぁ〜。テランバードさんは優しいのねぇ。うちの息子――ユラドはやりたい事もたくさんやったけど、やらなきゃいけない事もたくさんやったわよ?なのに、この歳になってまだ"読むごっこ"が終わらないで、空想に耽ってばっかりなんじゃあ……奥さんも大変でしょ?」
「ふ」と軽く鼻で笑われる。
母親はラビを見ると「それはそうなんですけど……ね」と参ったような目をした。
「……僕のは"ごっこ遊び"なんかじゃない。本当に読めるんです」
「あらあらあらあらあらあら。ほら、ね?テランバードさん、そろそろいい加減に作り話をするのはやめなさいって言わなくちゃ大人になってから困るわよ?それが許されるのは子供の頃まで。ラビ君、そりゃあ子供達はそう言うの喜んで聞きますよ?でもね、いけません。大人相手にそんな事で興味を引こうとするなんて許されません。うちのユラドなんて筆学所を出た後は鳥猟師として島の役に立ってるじゃない?それは厳しくもしたからこそなれたのよ?」
おばさんは気持ちよさそうに笑うと、さらに隣の家の向かいに出てきたご近所さんを手招いた。
「ちょっと!レニートンさん!ホームネルさん!来てちょうだいな!テランバードさんが子育てで悩んでるのよ!」
何だ何だとおばさんが二人増えると、隣人は楽しげにラビを小馬鹿にした。
そんな中、母親はそっとラビの背を押した。
「あんまりやりすぎは良くないけど、今日の所はもう行ったら?欲しいもの、流されちゃうかもしれないわよ」
「……せ……つき」
「え?」
「どうせ僕は嘘つきだよ!!」
ラビは悔しい気持ちを握り潰して次の浜へ向かって走った。
その背には合流したおばさん達が「夢見がち」「いつまでも少年」「海の掃除屋さん」「反抗期だわ」などと、悪気もなく貶めていく。
「あれじゃあ、いつまで経っても大人になれないわ」
「いい療育所が島の裏にあるらしいわよ?」
それがラビの耳に聞こえた最後の言葉だった。
悔しかった。
どうすればこの力を信じてもらえるのか、この力を証明できるのか。
ラビは大人達から半ば気狂いのような扱いを受けていた。
母も父も正面切ってラビの言うことを嘘や作り話だと断じた事はないが、内心ではいつになったらこの変な癖が治るのだろうと思っているとしか思えなかった。
「……くそ。くそ……」
ラビに味方はいなかった。たった一人だけ、自分達が井の中の蛙であることを知る、空を飛べない哀れな鳥だ。
目的地に着くも、朝のあのワクワクやドキドキはどこにもなかった。
もう筆学所も今日はさぼって、どこかへ行ってしまいたかった。
そして、あまり期待していないスポットをちらりと見る。
「――え?」
ラビは岩にできた潮溜まりを見て硬直した。
そこには、どこからどうみても本としか思えないものが、まるで自らを手に取れと言うかのごとく鎮座ましましていた。
血が滲むほどに握りしめた拳を解き、思い切り腕を伸ばす。
ぷちゃぷちゃと優しい波の音が近くなる。
夢ではない。本当に本だ。余程大切な書物だったのか、本にはブックバンドが十字にかけられていた。
ラビはブックバンドの端をいとも簡単に掴み取り、革張りの重厚な美しい本を手にした。
そこで、この出来事の違和感に背筋がゾクリと震えた。
本などこれまでひとつも流れ着いた事はない。紙は当然溶けてしまうし、革装丁も海に揉まれて分解されてしまう。
この本は悪魔が生み出したものなのか、はたまたラビを嘲笑うための島民のいたずらか、――これを望みすぎたラビの生み出した幻覚か。
まるで昨日製本されたばかりのようにすら見える美しさ。
ラビはそっとブックバンドをずらしてその本の表紙を見ると、箔押しされた題名に震え上がった。
読める。読めるが、この島の文字ではない。つまり、島民のいたずらではないのだ。
心臓がバクバクと音をあげ、ブックバンドをゆっくりと外す。たったそれだけの動作の時間がこれほど長く感じたことは今まで一度もない。
表紙にはこう綴られていたのだ。
――――魔法学。
ラビは何かに駆られるように本を開いた。
開かれた本の中の紙は水を弾く見たこともない素材だった。一部角がなくなったりはしているが、損傷はそう多くない。
真っ白な紙には見たこともない紋章が大きく刷られていた。
一番下には、手書きの文字も。
「……半水没都市スァン・モーナ第四小学校、ペイシノエー……。名前……?」
小学校とはどれほど高度なことを学ぶ場所なのだろうか。どうしてもこの学校に通いたい。この島を出たい。
紋章の押された次のページをそっとめくる。
――位階魔法とは
――神との接続
――神々の支配域
――位階と力
――生活
――風の位階魔法
――火の位階魔法
――水の位階魔法
――土の位階魔法
――光の位階魔法
――闇の位階魔法
――人智の領域
目次はまさしくラビが求めていた情報ばかり。
早くめくりたいと言う思いがラビを急かすが、その前に他にも同様の本が流れ着いていないか注意深く観察した。が、残るはゴミのようなものばかりだった。
この発見は世紀の大発見になるに違いない。
そして、このどんな文字でも読めると言う魔法の力の正体へ迫れるかもしれない。
「やっぱり、やっぱりあったんだ!魔法はあるんだ!!」
あまりの嬉しさにラビの口からは笑いと、喜びの雄叫が上がった。
では早速。
前書きにはラビの知らない国の名前と、ラビの知らない神の名前と、その尊き力について丁寧に書かれていた。
どこまでも凪いで広がる海。
風がないと言うのにスピードを落とすことなく進み続ける純白の帆船が、まるで花嫁がベールを引きずるかのように航跡波を残す。
その隣にはイルカが跳ね、フラミーは顔にかかった飛沫に笑った。
「きゃー!気持ちいいですねえ!」
学校でとんでもないことが起こっていることなど知る由もなく、母は無邪気にイルカを愛でていた。
シャルティアよりカメラを預かってきたパンドラズ・アクターは何枚かの記録写真を撮り、後ほどこれは一枚を宝物殿に、もう一枚を父に渡そうと決めた。
デッキチェアに鎧を座らせるツアーは小動物達が戯れる様子に「平和」と名付け、いつかは行き着いてしまうであろう国の今後を思って竜の身で溜め息を吐いた。
正直まだ心の準備はできていないのだ。できることなら、いつまでもこの平和な航海を続けたかった。
が、その時は突然訪れた。
「――ズアちゃん!あんなところに島がありますよ!」
「なんと!確かめさせていただきまッす!」
パンドラズ・アクターはすぐさま伸縮式の単眼鏡を取り出し、キチキチと音を立てながらピントを合わせた。
「どうです?」
「少々お待ちください。ただいま確認中でございます。ただ、距離的に考えてツアーの言っていた国ではなさそうかとは思いますが……」
「まぁそれはそうですよね〜」
確かにここはツアーの話した場所ではない。だが、知的生命体がいれば、こんな孤島すらも支配の手からは逃れられまい。
「――んん?」
「ん?」
「……あれは……」
「なんです?」
まだ島は小指の爪程度の大きさだ。パンドラズ・アクターの手にするマジックアイテムでなければとても詳細は見えない。
「浜に人間種がいるように見えます!」
「あら、こんなところでラッキー!観光して行きましょー!」
「かしこまりました!もう少し島に近付いたら索敵を開始いたします!」
「お願いしますね!」
ツアーは予想通りの事態にうんざりした。
「やれやれ。本当に観光だけにしてほしいものだね」
「ふふ、何はともあれ観光ですよ!観光観光!」
フラミーはひょいと浮かび上がると、船長室の上にある操舵輪を思い切り右へ向かって回した。
「面舵いっぱーい!!」
船の進行方向は緩やかに島へ向かい始めた。
そして、くるりと回るとその肌は肌色に、耳は短く、翼は失われた。
顔や髪の色、瞳の色はフラミーのままだが、どこからどうみても人間種だ。
「ふふ、私達は普通の旅人ですよ!」
そんな高価な服を着た旅人なんていない。――ツアーはそう思った。
あれから幾日。
あの日ラビは筆学所には行かなかった。
それどころか、あれ以来トイレ以外で自室を出ることはほぼない。食事も自室でとり、心配する両親もそっちのけだ。ただ、三日に一度は銭湯に行った。流石に自分が臭かった。
昨日も三日に一度の銭湯に行ったが、頭と体を洗い、走るように帰ってきた。銭湯で同級生に声を掛けられたがほとんど無視だった。
ラビは何度も何度も、何かに取り憑かれたかのように魔法学の書を読み続けていた。
今も生活魔法のページを開き、目の前には水の張られたコップ。
「――だから……音を消す魔法は風の属性にあって……
ラビは一度大きく深呼吸をした。
そして、置いてあるペンで水のコップをチーン…‥と鳴らした。
「――<
コップを力一杯指差す。
ちかし、チーンと鳴った音の残響は止まることも、音量が変わることもなかった。
「……はぁ。どうやったら神との接続ができるんだろう。生活魔法の中でもどれが一番簡単か分からないし……。これならできそうだと思うんだけどなあ」
ラビが試している魔法は「生活魔法」の初めの方に載っている。
ざっくばらんに説明すると、魔法をかけた物体の立てる音を少し小さくすると言うものだ。多くは貴族の乗る馬車の車輪に掛け、ガタゴトとうるさくならないようにするものらしい。
昔は道が舗装されていないことが多く、高級な馬車にはこれが掛けられていたとか。
ラビはこの魔法が使いたいわけではないが、まずは簡単そうなものから始める必要があると思っているため、彼なりの解釈で進めていた。
「……<
見た目にも派手だし、これを使いたかった。――もしくは、攻撃魔法。だが、第一位階とゼロ位階ではレベルが全く違うようなのでまだまだ授業が必要だろう。
ラビは顔をパンパンとたたき、気合を入れ直すと袖を捲った。
「いつかは絶対使えるようになるんだ!さ、もう一回――」
と、コップを再び鳴らそうとしたところで部屋にノックが響いた。
「――何」
『ラビ!ねぇ、ラビ!開けて!すごいのよ!!本当にすごいの!!』
興奮した母の声。
この魔法学の書を手に入れるよりもすごいことなどこの島には起こりっこない。
ラビはこれを手に入れた日、日没まで浜で書を読み耽り、帰ってきた時のことを忘れていない。
――「母さん!父さん!すごいよ!すごいんだ!」
――「なぁに?あなた、筆学所もサボって」
――「こんな時間までどこにいたんだ!心配をかけて!!」
――「ご、ごめん!でも、でもこれで本当に僕の言ってることが作り話じゃないって二人にもわかるよ!ねぇ!見てよ!魔法学の書があったんだ!!」
――「……もういい加減にして。昼のことであなたが傷付いたのはわかったわ。でも、あなただってね」
――「でも母さん!本当にこれを読めば」
――「いい加減にして!!母さんがどれだけこれまで……これまで……!!」
ラビはそっと首を振り、コップを鳴らした。
「<
『ラビったら!船が来たのよ!!』
船など毎日港を出入りしている。意味不明だった。
イライラが募るが、邪念はおそらく魔法を使いにくくさせるため必死に自らを落ち着かせる。
『――船には旅人が三人乗ってたんですって!!』
その言葉にラビの手は止まる。
「……旅人?」
開けてと叩かれる扉へ向かい、そっと扉を開けた。
「――ねぇ、この島の船じゃないの……?」
「ラビ!そうよ!その船はね、――神聖魔導国から来たんですって!!」
ラビの脳天を稲妻が駆け抜けた。