外からは真っ赤な夕焼けがさしていた。
くつろぐように言われた部屋のソファセットでアインズとフラミーがババ抜きに精を出している。
真剣な眼差しで相手の手元を見るアインズ、カードを選ぶフラミー。
その様子を、極めて至近距離で眺めるアルベド。
「……アルベド、少し近いんだが」
「はい!」
はい!じゃない。
アルベドの返事の声はまさしく恋する乙女。二人の瞳を覗き込むこんでは「くふふふ!」と幸せそうな笑い声をもらした。
アインズもフラミーも、アルベドだって久しぶりの冒険だし気持ちが多少浮ついても仕方がない、となんとか割り切ろうとした。
「……アルベド、御身は事実を述べたのではなく、もう少し離れて欲しいという要求を口にされたんじゃないのかな」
フラミーの後ろに立つデミウルゴスが頭痛を癒すようにメガネを外し、チーフで軽く拭く。魔法の眼鏡なので無論不要な行為だ。
パンドラズ・アクターはアインズの後ろでじっと影のように過ごしていたが、部屋にノックが響くと動き出した。
アインズは「すぐに開けてやれ」と言ってから再び威厳に満ち溢れた顔をし、パンドラズ・アクターが扉を開いた。
フラミーはアインズからトランプを受け取り、
「――どうぞ」
好意的な表情をする
宿屋の主人、案内してきたコスケ、それから若い男。
「陛下、大変お待たせいたしました。こちらがうちのトラ吉じいさんです」
じいさんと言われていたので、よぼよぼの男をイメージしていたが、案内してきたコスケと同じくらいの歳の男が部屋に入った。
土に汚れたタオルでごしりと額を拭く。柔らかな弧を描く口元は見た目の年齢よりも深い落ち着きを感じさせた。
「こりゃ、どうもどうも。トラ吉です」
物言いは老人くさかった。
「トラ吉、よく来たな。私のことは聞いているな?」
「えぇ、聞いとりますよ。まさか王陛下がこの宿に泊まる日が来るなんて思いもしませんで。何か足りないものはありませんかいね」
その横では宿屋の主人とコスケが部屋に花を飾りつけたり、ベッドに花びらを撒いたり、枕元にワインとグラスを置いたり、本当にできる限りのことをやってくれていた。
「あぁ、十分だ。それで、早速だが雲の話と不老不死の体について聞かせてもらえるだろうか」
老父――には少しも見えないが――は窓辺に立ち、森をその瞳いっぱいに写すと、ゆっくりと口を開いた。
「わしら
トラ吉は土砂降りに見舞われていた。
生まれた時から自在に亘ってきたはずの森で、その日トラ吉は生まれて初めて道に迷った。
「……こんなにたくさん採れたのに……」
籠の背負子には溢れんばかりのキノコ、山菜、それから罠で獲れた雉が入れられていた。
昨日初めての息子が生まれたこともあり、気持ちが浮わついていた。
天の恵みか、あまりしょっちゅうは獲れない雉も罠にかかっていたし、今夜は雉鍋にして、頑張って子を産んだ妻に滋養のつくいいものを食べさせたかった。
たくさん採れた山菜を背負って森を歩いていた時、ポツポツと雨が降り出したのだ。
だから、一刻も早く家に帰ろうと一度も通ったことがない道に入った。
そこでトラ吉は足を滑らせた。
幸いかすり傷程度で済み、荷物も無事だった。
だが、トラ吉は自分がどこにいるのか滅法わからなくなってしまった。
少し歩けば知っているところに出るとあたりを歩いてしまったのが悪かったのかもしれない。土砂降りで辺りの見通しは通らず、ますます森の深みにはまっていった。
見たことのない沢、見たことのない木。
「まいったな……」
どうやら随分遠くまで来てしまった。
トラ吉は沢から離れ、斜面に見つけた洞窟に身を寄せた。
「……雨が止めば帰れるはずだ……」
今頃妻が心配しているだろう。
妻と赤ん坊は訪ねてきてくれている両親が面倒を見てくれているので問題はないだろうが、余計な心労をかけたくはなかった。
大きな溜息を吐き、膝を抱える。
夜に落ちた森の中で、鉄砲水を運んでくるのではないかと思えるほどの土砂降り。
闇が心細さを大きくさせる。
「――グルル」
トラ吉はハッと息を呑んだ。
洞窟の奥から聞こえた声は、決して近付いてはいけない獣の声。
ゆっくりと籠の背負子をその身に寄せる。
背負子を片方の肩にかけた、その時――洞窟の奥からゆらりと巨大な影が姿を見せ、ピシャリと雷が落ちた瞬間に全貌が明らかになった。
ヒグマだ。
「っうわあ!!」
トラ吉は一目散に洞窟を出た。
走る、走る、走る。
途中何度も足を滑らせながら、必死に走った。
もはや雨の音で全てが聞こえなくなると、トラ吉は乳酸が溜まって重く成り果てた足を止めた。
「っはぁーっはあ!!こ、ここまでくれば――」
振り返ったところには、自分の身長の何倍もあるヒグマがいた。
「こ――」
クマが巨大な手を振りかぶり、トラ吉は思わず頭を抱えて小さくうずくまった。
ドッと背に衝撃が走る。
不幸中の幸いにも、背負子が片方の肩から抜けて茂みに吹き飛んだ。
そして、背負子の中からは雉がだらりとこぼれ落ち、血の匂いがしたのか、熊はそちらへ向かった。
トラ吉は熊が雉を口にした瞬間、再び逃げ仰た。
全身泥まみれだが、全ては雨が洗い流してくれる。
トラ吉は寒さに震えながら茂みを歩いた。
何もかもを失った。
「……せめて、山菜だけでも……」
そう思ってしまったのが全ての間違いだったのかもしれない。
雉を食って、きっと熊はあの巣に帰っただろう。
トラ吉は来た道を戻った。注意深く、近くに熊がいないことを確認する。
最後の茂みをかき分けて見てみれば、トラ吉の背負子と山菜が落ちていた。
背負子には爪で穴が空いてしまっているが、蔓を軽く編んで当ててやれば物はこぼれない程度だった。
「よ、良かった。良かった」
早く妻に美味しいものを。
トラ吉はその辺にある蔦を取り、雨の中籠を補修した。
散らばったキノコと山菜を戻し、再び籠を背負って野宿できそうな場所を探しに行った。
岩が斜めに切り立つところにそっと身を寄せ、震える体を抱いた。
「……これでいい。雉は残念だが、命あっての物種だ……」
朝を迎える頃には雨も止み、トラ吉は安堵に息を吐いた。
そして、ふと近くの茂みが揺れた。
背負子を慌てて背負い、逃げ出す準備をすると、ぴょんっと一羽、うさぎが姿を現した。
「こ、これは行幸!」
神はまだトラ吉を見放してはいなかったらしい。雉の代わりに今夜はうさぎだ。トラ吉はうさぎに向かって身を翻す。
次の瞬間、トラ吉の世界は反転した。
何が起こったのか咄嗟に分からなかった。
だが、事態を脳が理解するよりも早くトラ吉の本能がその体を突き動かした。
――逃げろ。
――逃げろ!
――逃げろ!!
痛みが理性を支配するより早く。
だが、全ては遅かった。
トラ吉の背に熱が籠る。
痛みより熱だ。
背中が焼けるように熱くなると、トラ吉は再び転び、泥を噛んだ。
ザンッと巨大な足がトラ吉の前に現れる。
「……ひ」
昨日のヒグマだった。
トラ吉も森のそばに生きる者。熊に取られた物を取り返すというのは御法度だとわかっていた。
だが、熊が手に入れたと認識したのは雉だけだと思ってしまったのだ。捨て置かれていた籠は、熊の物ではないと。
しかし違った。
熊は夜中トラ吉のそばを付け回し、探し、遂に今見つけ出したのだ。
奪われた背負子を取り戻すため、熊は制裁を始めた。
トラ吉は自らの内臓が背から引きずり出される感覚に、怯え、震え、泣き、叫んだ。
「だ、だ、だれかああー!!誰かぁあー!!」
見たことのない景色だ。
里は近くない。
トラ吉の人生はそこで幕を閉じる。
――はずだった。
「<
トラ吉の頭上で「ッゴギャ!!」と熊の声がし、熊は倒れ伏した。
ずずん……と背後で大きな音が鳴る。
トラ吉は涙を流しながら、口から血反吐を吐きながら、声の主を探した。
だが、もはやトラ吉の目は見えていなかった。血を多く失いすぎた瞳は濁り切っていた。
「――大丈夫ですか!大丈夫ですか!!」
声は聞こえた。トラ吉は全てが麻痺し始めた体で、なんとか頷いた。
「たす……け……。お……おととい……こどもが……う……うまれ……て……」
「こ、子供!?一昨日子供が産まれたんですか!?」
「う、うま……れた……」
「そんな……助けてあげたい……。な、なんとか!なんとかしますから!」
来てくれた誰かは悲痛な声で叫んだ。
なんて優しい人なんだろうとトラ吉は涙を流した。
聞いたこともない魔法を操る強い人は、心根まで強いのだと。
トラ吉の意識が遠くなりそうになる中、もう一人、誰かの声がした。
「諦めた方がいい。僕達は回復魔法を持たない。それに、この状態じゃあポーションももはや届かない。無駄遣いはやめるんだ」
「そ、そんな。でも、でも諦められないよ!!今仲間を呼んでくるから!!仲間には大神官もいる!!大丈夫、絶対に治るから!!」
「リク、落ち着くんだ。向こうに呼びに行ったら、戻る頃には夕方だ。その頃には死んでいる」
「っ……そんな薄情な言い方、することないじゃないか!!彼には産まれたばかりの子供だっているんだぞ!!」
「……わかっている。僕だって別に助けたくないわけじゃない。だけど、僕達では力が及ばない」
トラ吉はこの二人の言葉の意味を正確に理解していた。
もう、助からない。
もう一度でいいから我が子を抱いてやれば良かった。
生まれて早々に父親を亡くす、あの不憫な子にもっと多くの物を残してやれば良かった。
「……さ……ね……。ごめ……ごめ……」
産湯の中で心地良さそうに吐いた甘い香りが忘れられない。
「……君は
何かが持ち上げられた音がした。
トラ吉にはもはやそれが何なのかは分からない。
「――だが、君自身の遺体を運ぶことはできない。その熊は雌だ。胸に乳を吸われたあとがある。万が一子熊が君についた母熊の血の匂いを嗅いで復讐のために里に降りれば無駄な殺生を生む。悪いが、ここで朽ちてくれ」
そして、ひとつの足音が遠ざかっていく。
ザク、ザク、ザク、とどんどん音が小さくなっていく。
あぁ、せめて自分が死んだことを告げて貰えるならば、
「……う……。が……とう……」
言葉にならない言葉を紡いで礼を言う。
もはや届きもしていないだろう。
「……諦めないで」
ふと、耳元で声がした。
「……これを置いていくから。もしかしたら、うまくいくかもしれない……」
優しい人の声がする。
「……どうか、諦めないで……。雲が出たら、食べるんだよ……。そうしたらきっと……きっと助かるから……」
トラ吉の体は霧に包まれた。
「く……も……?」
足音が遠ざかっていく。
意味を聞くこともできず、トラ吉は泥の上に転がったまますごした。
痛みすら遠ざかり、音も聞こえなくなる頃、ふと口元にヒヤリとした何かが触れたのを感じた。
雲が出たら食べるのだとあの人は言った。
これがもし雲なら。
トラ吉はなんとか口を開け、大きく息を吸い込んだ。喉の中に何かが張り付き、数度咳込み、痛みが背を、腹を走る。
噛み応えのないものを必死に噛み、飲み込む。
トラ吉の意識はなくなった。
そこからトラ吉が再び目を覚ました時には深い霧の夕暮れだった。
ブンブンと蝿の羽音が当たりを満たす。
起き上がったトラ吉は自分の体のどこにも痛みがないことに目を見開いた。傷すら無くなっている。
「……同じ場所に見えるが……天国か……?」
が、振り返れば大量のウジの卵と蝿のわく熊の死骸。
先ほどの優しい人が大神官を呼びに行って助けてくれたのだろうか。それか、あの人がそうするようにと言ってくれたように、本当に雲を食べられたのだろうか。
思考を巡らせようとしたが、トラ吉はハッと辺りを見渡した。
先ほどの誰かが言った「万が一子熊が君についた母熊の血の匂いを嗅いで復讐のために里に降りれば無駄な殺生を生む」と言う言葉に背筋が凍りつく。
一体何故自分が助かったのか、一体何故傷が塞がっているのか、全ては謎だ。
だが、考えるよりも早くこの熊の死体から離れたほうがいい。
トラ吉は来た道は決して通らなかった。
無我夢中で森を進み、沢を見つければ濁流の沢のそばを歩いた。
沢はいつか海に繋がる。海に出ればいつかは里のそばに行けるはず。
いつしか沢が豪雨の影響の濁流を落ち着かせ、さらさらと流れるようになる頃には沢の中を歩いた。
沢の中を歩けば熊が匂いを追うことも難しくなるはずだ。
夜がくれば沢から上がり、夜が明ければまた沢の中を進んだ。
時に泳ぎ、時に流され、時に魚を取り、必死になって進んだ。
そうして、何日もかけてトラ吉は里に帰り着いた。
当時の里はまだ
森から出てきたトラ吉を見た者達はアンデッドでも見たような顔をして悲鳴をあげた。
だが、誤解もすぐに解け、トラ吉は家に帰った。
痩せてしまったさねは泣いて喜び、子の
腹一杯飯を食い、全てが落ち着いた頃。
「――あんたが熊に腹と背を裂かれているのを見たって。旅の二人組があれを。銀色の鎧の人と、若い人間だったよ」
さねがそう言うと、トラ吉の母親があの日トラ吉が直した背負子を引っ張り寄せた。
「とんだ親不孝もんだと思ったよ……。さねさんにも心配かけて……。皆どれだけ悲しんだか……」
トラ吉は目元を拭い、皆に詫びた。
「すまなかった……。ただ、さねに良いもん食わしてやりたくて……」
「無事に戻ったんならそれでえぇ」
しんみりとすると、トラ吉はハッとした。
「そ、それで、旅のお方達にお礼は」
「そりゃしたよ。旅の途中で食べるもんをたんまりとね。あんたが取ってきてくれたもんも、半分はやったさ」
「そ……そうか……!良かった……良かった……。俺は間違いなくあの人たちに助けられたんだ……」
トラ吉は旅の二人を探しに森の中に何度となく出たが、その後決して旅の二人に会うことはなかった。そして、トラ吉が倒れたあの場所も、必死だったこともあって二度と見つけられなかった。
それから幾年月を重ね、子のあつが二十歳になる頃。
さねが呟いた。
「あんたが生きて帰ってきてくれたのは何よりも嬉しかった……。だけど……不気味でしょうがないんだよ……」
そういうさねはすっかり老いた。無論、人間種たちから見れば子供のようなのだろうが。
「……悪いな」
トラ吉は素直に謝った。トラ吉の顔にはあの日以来、シワひとつ、シミひとつ増えていない。
子のあつと並んで歩けば兄弟だと思われるほどに、トラ吉は若かった。
それからまた更に月日を重ねた。
あつは嫁をもらった。
可愛らしい孫娘と孫息子が生まれた。
しばらく経つと、さねは先に逝ってしまった。
「あんたが皆を見守ってくれると思うと、私は安心して逝けますよ。あの日、不気味だなんて言ってすみませんでした。ただ、あんたを置いて自分ばかりが歳をとって不安だった。ずっと謝りたかったの。どうかいつまでも皆を見守ってくださいな」
その言葉は今でも忘れられない。
そして、孫娘は嫁に行き、孫息子は嫁を取った。
三十の頃には二人とも子を成し、それから十年の時が過ぎると愛し子のあつも逝ってしまった。
「お父さん、どうかあの二人と、ひ孫たちを頼みます」
あつの言葉も忘れられなかった。
さらに十五年の時がすぎ、最初のひ孫が二十五になる頃、またひ孫は嫁を取って玄孫を持った。
ひ孫は三人、玄孫は六人。共に住まない者も含めて、トラ吉はたくさんの家族を得た。
その頃、里のそばに見慣れぬ獣が出るようになった。
玄孫の一人のタエは森に遊びに行ったきり帰ってこなかった。
また違う玄孫のナツは、夜闇に紛れて何者かに攫われた。
それが
そして、同じ頃。里の中には不思議な話をする者が現れていた。
「――霧が雲みたいになったんだ。ふよふよと浮いていて、おかしいな、おかしいなと思ったんだがね。昔トラ吉じいさんが不思議な雲を吸い込んで生きて帰ってきたって話をしてくれたのを思い出したんだよ。俺は必死になって雲を掴んだ。そう、掴めたんだ!!そんで、食ってやった!!」
あれから実に百数年が経っていた。妻を見送り、子を見送り、孫達を見送り、ひ孫達は玄孫達を儲けた。
今になって、あの日の雲に再びまみえるとは。
もしかしたら、あの時の旅人達は長命の種族で、また近くまで来たのかもしれない。
トラ吉は雲を食った者について行き、また森に入った。
だが、霧はとうに晴れ、雲はどこにもなかった。もちろん、旅人の姿もなかった。
雲を食った者はトラ吉と同じように歳をとることはなくなった。それがはっきりと確信に変わったのはそれから二十年余りが経つ頃だ。
その男は確かに歳を重ねていなかった。
その頃には、玄孫は大人になってまた子を儲けた。
それからまた二十年が経つと、ひ孫は皆天寿を全うし、口々に「トラ吉じいさん、うちの血族を頼みます」と笑って逝ってしまった。
トラ吉はまた幾年を生きた。
そのうち、村には霧からできた雲を食べた者が何人も出た。
霧は待ってもなかなか出ないが、ふと森に狩りや採集に行くと立ち込めた。雲を見つけた者は必ず雲を取って食べた。
皆が「今の姿のまま不老不死になっていいのか、絶対にその時になったら迷う!だから、里のために見つけたら必ず食べると約束しよう!それが里を栄えさせる方法だ!」と約束したのだ。
そうして、この里には幾人もの不老不死者が生まれた。
「どうだい。奇妙な話だろう」
トラ吉が笑う。
アインズは今の話をじっと自分の中で反芻した。
そして、確信に近いものがその中に生まれる。
「……まぁ、そうだな。一つ聞きたいのだが、お前は今何歳になるんだ」
「二百二十……何歳かになります。そっちの宿を任せているのはわしの玄孫の孫、コスケは玄孫のひ孫に当たりますな」
想像よりも多くの代替わりがあったらしい。
アインズにそれだけの愛する子供達との別れに耐えられるだろうか。
恐らく無理だ。友人達との別れでさえ耐え難いと言うのに、それが我が子達ともなれば、終いには気が狂ってしまう。
「辛かっただろう……」
「…‥辛くなかったとは言えませんな。だけども、次から次へと愛子達が生まれてくるんじゃ。皆を愛していれば、痛みもじきに治りましょう」
「そういうものか……」
トラ吉は幸せそうに笑った。
アインズはひっかかりを感じながら、ふーむと唸った。
「フラミーさん、この話どう思いました……?」
「……トラ吉さんの話を聞くまでは不老不死の雲なんて怪しいって思ってたんですけど……これは……」
「……ですよね……」
二人は頷き合った。
「……トラ吉、私達はお前を救った旅人のうちの一人を知っているかもしれない」
「な、なんですと」
「恐らくお前に朽ちることを勧めた者は銀色の鎧の方だ。そして、お前を救ったのは若い人間。リクの方だ」
トラ吉と、主人、コスケがごくりと唾を飲んだ。
「会いたいか」
トラ吉は慌てて何度も頷いた。
「あ、会いたい。会って礼を言いたい!!あの日からわしの人生は全て変わった!!会わせてくれ!!」
王に対する口の利き方ではない。
だが、トラ吉にとっては外聞も何も全てを捨てて飛び掛かりたい話だった。
「……良いだろう。だが、お前はその代価に何を支払う」
言葉は悪魔そのもの。だが、何故か優しく聞こえる声だった。
そのせいもあるのか、トラ吉は一瞬の迷いもなく跪いた。
「――この命すら!!」
「良かろう。不老不死の命、この私が預からせていただく。<
アインズは闇を呼び出し、闇の中へ消えた。
戻った時、その背には輝くような銀色の鎧を引き連れていた。
とら吉さん、本物の不老不死ですやん!
って言うか十三英雄なにやっとんねん
次回#155 望まぬ望み
うわぁ!予告書いたの久しぶりぃ!明日です!!