眠る前にも夢を見て   作:ジッキンゲン男爵

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#156 お気遣いなく

 黎明。

 マチとナオは今日も大きな背負子を持っていた。

 中には宿屋が用意してくれた弁当とおやつだけが入っている。

「王様達まだかね」

「すぐ来るだろ」

 二人はぷかぷかとタバコをふかした。虫除けのタバコなので、美味しかったりするわけではない。

 

 体に虫除けの匂いがしっかりとつく頃、待ち人はきた。

 

「待たせたな」

 今日の王は昨日会った時よりも一層威厳に満ち溢れていて、昨日はこちらを萎縮させないための演技をしていたのだろうと思えた。

 この姿こそ、支配者としての姿を見せたこの王の真の姿なのだろう。

 銀河の煌めきを宿したローブ、腰に下げられている見たこともないような王笏、歩くたびに靡くマント。

 お互い男だと言うのに、思わず見惚れて「おぉ……」と感嘆が漏れる。

「どうかしました?」

 そう聞く王妃も、妖精が編んだようなレースを身に纏い、もし落としでもすれば取り返しがつかないような宝石の埋め込まれたティアラを着けていた。

 

 手ぶらで森の中を歩いていたように見えたが、どうやらお付きの者達はこれでもかと言うほどに働いていたらしい。

 

 二人に視線を吸い込まれ数秒。

 

「んん、ご挨拶を」

 アルベドに促され、二人は弾かれたように腰を曲げた。正式な挨拶の方法など田舎の里育ちが知るはずもない。

「お、おはようございます!王様!王妃様!」

「おはようございます!!み、見惚れちまってました!!」

「……まぁ、いいでしょう」

 及第点をもらえたことにホッと一息つく。

「うむ」「おはようございまーす」とそれぞれ支配者が返事をする。

 

 そこでようやく、昨日よりもお供がずっと多いことに気が付いた。

 王達は昨日とメンバーが違った。

 銀色の鎧、小人間(ハーフマン)が増えていた。

 察したデミウルゴスがそっと、マチとナオが知らない二人を紹介した。

「こちら、本日の雲探しに同行するツアーと、最初の不老不死の男、トラ吉です」

 ツアーと紹介された全身鎧の男は、組んだ腕をそのままに二本の指を上げることだけで応えた。

 トラ吉は爽やかな笑顔で頭を下げた。

「よろしく。わしゃトラ吉だよ」

「ト、トラ吉さん!もう何百年も生きてるって聞きましたよ!」

「あぁ、わしは二百年を超えて生きとる。おんしらも不老不死になりたいのかい」

「いえ、俺たちはうちの親父に食べさせてやろうと思って。めっきり老いちまって、近頃は病に伏せてんだ」

「そうかい。じゃあ、早く食わしてやりたいな」

「あぁ!今日こそ見つけてみせる!!」

 マチとナオが意気込むと、トラ吉は嬉しそうに目を細めた。

 

「…‥道連れか」

 

 王がふと呟いたような気がした。

 だが、そんな言葉をいう意味が分からない。

 旅は道連れ世は情けの聞き間違えかと二人は気を取り直した。

 

「それで、どうやって探します?アインズさん」

「そうですね。俺はまず、ツアーとトラ吉の記憶を辿ってアイテムが置き去りにされたところに行くのがいい気がします」

 アインズが二人へ振り返る。

 フラミーは「ふむふむ」と応え、しばし思考した。

「……<物体発見(ロケート・オブジェクト)>はやっぱり厳しいですよねぇ」

「厳しいと思います。目星がついていたとしても……具体的にどんなものか分からないですし……」

「ですよねぇ」

 フラミーは苦笑した。

 具体的でなくても物を発見できれば、「この世で一番大きな金塊を探す」や「神の杖を探す」など無制限の探索ができてしまう。

 

「謎のアイテム探し、腕がなりますよね」

 アインズは組んだ手をうんと伸ばして爽快に笑った。

「じゃあ、まずはツアーさんとトラ吉さんの記憶に頼ってみましょっか!」

「そうしましょう!」

 

 一行は門を潜って出た。

 やはりむんと来るような濃い緑の香りに包まれる。足元には朝霧がぼんやりと出ていた。

 

「わしは向こうの崖の方から帰ってきたんだが……沢を越えたり、流されたり、何日もかかったせいで正確な道案内は難しい……。記憶が新しいうちにいってみようとした時も、結局辿り着くことはなかった。一応方角はこっちだと思うが……何せ二百年を超えておる」

 

 トラ吉が遠い目をする中、アインズはツアーへ振り返った。

 

「どうだ。お前は正確にわかるか」

「残念ながら細部までは覚えていないね。だけど、トラ吉が言うように方角は向こうだろう。道はないけど、まっすぐ進んでみよう。近付けば僕も思い出すかもしれない」

 続いて、マチとナオへ確認する。

「お前達は向こうの方角には進んだか?」

 二人は軽く頷いてみせた。

「少しは行ったけど、特に何も。昨日も一昨日も、その前も、霧が出やすそうな雰囲気のところで待ちぼうけてみたりですわ。それより、霧と雲は何かのマジックアイテムによるもんなんすか?」

「あぁ。その通りだ。最初にそのアイテムと接触したのがトラ吉だ。そして、それを最後にアイテムは姿を消している。が、確かにアイテムはどこかに存在して未だに霧を吐き出すことがあるようだ」

 

「な、なるほど……」

「そんな神がかり的なマジックアイテムがあるなんて……」

 

「うむ。そう言うわけで、いくらかアイテム探しの方法を考えながら向かうつもりでいる。アイテムらしきものが見つかったらそれぞれ申告するように。そして、即座にパンドラズ・アクターにアイテムを見せること。私やフラミーさんでも<道具上位鑑定(オール・アプレイザル・マジックアイテム)>と言う鑑定魔法は使えるが、何せパンドラズ・アクターはその道の専門家だ」

 忍者姿のパンドラズ・アクターが頭を下げる。とてもマジックアイテムの専門家には見えないが、王がそう言うならそうなのだろうと二人は納得した。

 

 全員が了承を示すと、一行はいざ森へ進んだ。

 足元を蛇が横切ったり、遠くから鹿が様子を伺ったりしていた。

 ツアーは度々立ち止まって辺りを見渡した後また歩き出した。

始原の魔法(あれ)さえあれば早いんだけどね……」とアインズに聞こえよがしに一度言ったりもした。

 

「……トラ吉がせめてアイテムを見ていればな……」

「ほんとですねぇ。そしたら、記憶を覗いて確認できたのに。ちなみに、アインズさんは元あった場所にまだあると思います?」

 フラミーが尋ねると、アインズは静かに首を振った。

 足元を横切る蟻の行列を無意識に跨ぐ。無意識に踏み潰した者も二名いたが。

「正直、期待はしてないんですよね」

「まぁ……そうですよねぇ」

 獣が持って行ったり、嵐や風で飛ばされたり、地震で転がって行ったり、物が動く要因は無数にある。

 崖に行き当たるとツアーと小人間(ハーフマン)達が同時に足を止めた。

 フラミー、アルベド、デミウルゴスは当たり前のように自前の翼で飛び上がっていた。デミウルゴスの背からはいつの間にか皮膜を持つ羽が出ていた。

「<全体飛行(マス・フライ)>」

 アインズが魔法を発動させ、全員を飛行状態にする。

 

「お、おぉ……!」

「こ、こりゃ……長い人生で初めてじゃ」

 マチとトラ吉が素直な感動を口にする。

「王様は本当に人間なんですか?こんな魔法、森妖精(エルフ)達だって使えやしないように思います」

 ナオの言葉に、崖の上に降り立ったアインズは悩みなく答える。

「私は人間だ」

 

 ツアーはその言葉を聞くと一瞬肩を上げ、また下げた。

 何を言いたいのかはアインズにはよくわかっている。

 

 ――君たちみたいな者達を、この世界では神、乃至は創造主と呼ぶんだよ。

 

 言われずとももう聞き飽きた。

 

 一行は再び森を進んだ。先頭をトラ吉、ツアーが行き、その後をマチとナオが続く。

 

「見つからなかったらどうします?」

 フラミーの問いに、アインズは指を一本持ち上げた。

「ナザリックに保管してあるスケルトンを全部ここに呼び出して、しらみつぶしに一気に歩かせようかなと思ってます」

 その提案に拍手を送ったのはアルベドだ。

 しかしフラミーの顔は浮かない。ついでにツアーの鎧も軽く振り返った。小人間(ハーフマン)達は聞こえていないようだ。

「それだと、虫や生き物も皆踏み潰されちゃいますよぉ」

「恐れながら、私からもひとつ」と、パンドラズ・アクター。「アイテムの見た目がわからない以上、父上のスケルトンであっても正しくアイテムを見つけ出せるかどうかは疑問です。万が一破壊してしまっては困ります」

 

 パンドラズ・アクターも宝物殿にそのアイテムを置く気満々だ。むろん、ナインズやアウラ、マーレに使いたいと言う思いもある。

「すると……どうするか」

 数的に知能のあるアンデッド達をこの広い森全土に行き渡るように投下するのは難しい。アインズが唸る。

 

「私とデミウルゴスさんで低級悪魔を出しましょうか?ライトフィンガード・デーモンならある程度知能がありますし、なるべく飛行形態で探し物をして、生き物も殺さないように言い含めて放てばいいかもしれません!」

 念のため先を行く四人に聞かれないように伝える。悪魔召喚はどこの文化圏でも、当然いい顔はされないためだ。

 アインズはポン、と手を打った。

「さすがフラミーさん!それで行きましょう!」

「やった〜!」

 フラミーの楽しげな返事が返る。

 

 そうこうしながら歩き続けるうち、日は昇りきり、森中を広く明るく照らした。

 

「流石にたまたま霧と遭遇することはできなかったな」

「朝霧は出てましたが、ダメでしたね。俺たちはこれで一週間です」

 マチもため息を吐いた。

 昼頃に沢に行き当たると、良さそうな岩に腰掛けた。ここまでほぼノンストップで進んできたが、疲労無効を持たない三人も割と元気そうだ。

 とはいえ、流石にマチとナオは昨日も持っていた瓢箪の栓を開け、ぐびぐびと水を飲んだ。

 そして沢に近付き、新しい水を入れ足す。こぽこぽと瓢箪の入り口から空気が出てくる。

 あたりはさらさらと流れる沢の音だけで、静けさに満ちいい雰囲気だった。

「お昼にします?」

 フラミーの提案に乗らないものはいなかった。

 

 それぞれが宿屋に持たされた食事を開ける。

 デミウルゴス、アルベド、そしてパンドラズ・アクターも食事を取るように言い付けられているので共に食事にした。

 

 うまいうまいと喜んで食べる小人間(ハーフマン)達と対象に、守護者三名は鉄のような顔で食事をした。

「……あまり口に合わなかったかね」

 その様子を心配しているのは、弁当を持たせたのが自分の子孫達であるトラ吉だ。

 だが、守護者三名が口を開くより先にフラミーが「いえ!」と答えた。

「初めて食べるキノコとかありますし、中々良いですよ!このお肉も初めて食べます!」

 裏表のない様子にトラ吉はホッとして思わず笑顔になった。

「そりゃようございました。光神陛下、その肉は雉の肉です。うちの里では食鳥の王様と呼ばれるほど!我が家で用意できる最高のものをお詰めしました」

「へ〜!これが雉なんですねぇ!トラ吉さんの雉鍋の話聞いて、食べてみたいなって思ってたんです」

「ほっほ、何より何より。雉は鍋はもちろん、軽く霜降りをして刺身で食うてもうまいですよ」

 二人は実に楽しげに弁当を食べた。

 

 そして、ふとアルベドがこめかみに触れた。

「――私よ。……えぇ。……はぁ。わかったわ。御方々がお食事をしているからこれで切るわ。また後で」

 アルベドはサッと食事を済ませると――と言っても荒っぽくはなく、咀嚼音も聞こえないような、上品な様子だった――アインズに向き直った。

「申し訳ありません、アインズ様。御方々護衛の任の途中ではありますが、この後少し<伝言(メッセージ)>にてナザリックとやりとりをする時間をいただけないでしょうか」

「何か問題か?」

「いえ、問題というほどでは」

 アインズは今連れている守護者を見渡した。

 ナザリック一の知恵者、デミウルゴス。

 内政最強、アルベド。

 オールラウンダー、パンドラズ・アクター。

 ナザリックの持つ知能が全て揃っていた。

 しかし、あれだけ人数のいる組織でありながら、人が二、三人休むだけで組織が止まるようなことがあってはまずい。

「いつもお前達に任せきりで悪いとは思っているが……どうだ。今や大陸を二つ手中に収め、組織は大きくなったが、それに釣り合うだけの人材は育っているのか?もしそうなっていないのなら、抜本的な措置をとる必要があるだろう」

「基本的には問題ない、と思っております。いざとなればデミウルゴスとパンドラズ・アクターがおります。それに、ティトゥスをはじめとした最古図書館(アッシュールバニパル)の司書達、テスカやイツァムナー等天空城由来の知者の協力を仰げばまったく問題ありません」

「そうか。さすがはアルベド。私如きの危惧など既に解決済みというわけか。このナザリック最高の知者のうちの一人にして守護者統括。その名に恥じぬ働き。いやはやまったくもって見事。感服したぞ」

 

 アインズは全力でアルベドに賛辞を送った。

 フラミーも拍手と「さすがですね」という言葉を送った。

 支配者二名と違ってきちんと組織を管理しているアルベドを褒め称えずなんとする。

「――まことにありがとうございます」

 深々と頭を下げたアルベドを見る守護者二名の顔はどこか硬い。

「アルベドさん、今ここにデミウルゴスさんとパンドラ君がいるわけですけど」――フラミーはアルメリアがパンドラズ・アクターをズアちゃんと呼ぶことがあるので言い方を直している。つい忘れてズアちゃんと呼ぶこともあるが。

「向こうが混乱しかけてるなら、ナザリックに戻って片付けて来てもいいんですよ?」

「お心遣いいただきありがとうございます。ですが、私やデミウルゴス、パンドラズ・アクターがいない中であっても、ティトゥス達がフラミー様の求めるレベルでの働きを遂行し、現在の穴をきっと塞いでくれていると信じています」

「うーむ……。アルベドよ……。信じている、では無く問題なく出来ているのか正確に答えてはくれないか?今も<伝言(メッセージ)>が来たところだろう。難しいようだと少しでも思うのであれば、余裕がある時に訓練を行い、組織作りに着手しなくては」と偉そうに言ってから、アインズは「いや……まぁ……」と言葉を続けた。「アルベドなら私たち程度の考えていることなど、分かりきっているだろうが……」

 

 アルベドが言葉を選んでいると、フラミーはそっとアルベドの羽を撫でた。

「今日はもう戻って、ね?」

 百パーセント大丈夫ですとこのアルベドが言い切れない状態なのだ。<伝言(メッセージ)>でなんとかできないかと思っているようだが、<伝言(メッセージ)>もかなり時間がかかりそうな様子。

 アルベドは旅に護衛としてついていくことを志願した手前、ナザリックに戻って解決してきますとはいえないだろう。

 フラミーはこの働き者のサキュバスに最大限の優しさを送った。

「……ね?」

「……かしこまりした。申し訳ありません……」

 

 再度深々と頭を下げ、アルベドは立ち上がった。

 アインズが<転移門(ゲート)>を開くと、アルベドは真剣な面持ちで残る守護者二名と視線を合わせた。

 二人は静かに頷き返す。

 アインズとフラミーを任せる、とでも言っているのだろうか。

 

「アインズ様、フラミー様、御前失礼いたします」

 

 小人間(ハーフマン)の中年兄弟が驚異の魔法に目を見開く中、アルベドはナザリックに帰還した。

 

 地表部で、そわりと風が吹く。

 アルベドはその場にうずくまった。

 

「フラミー様……。本当に……申し訳ありません……」

 

 支配者達に安心して欲しいと言ったところ、アインズから返ってきた言葉は皮肉めいた賞賛。さらに、フラミーからは完璧に信頼に応えていないという釘を刺され、送還されてしまった。

 

 実際に、<伝言(メッセージ)>でいくつかのやり取りを行えばナザリックの運営は滞りなく行えただろう。

 テスカは普段はBAR勤務だが、彼とて元は天空城を管理するNPCだったのだ。BARの運営は副料理長ピッキーだけでも行えるし、最古図書館(アッシュールバニパル)の管理もイツァムナー一人が抜けたところで――そこまで考えると、アルベドは思考を中断した。

「……イツァムナーだけでなく、司書達ももし全員が

出払えば……」

 今日は全司書が出ているわけではないが、何かの対応でそうなればどうか。

 最古図書館(アッシュールバニパル)での作業は巻物(スクロール)の作製や神話の新編追加など、かなり重要だ。

 守護者達や僕達に渡す巻物(スクロール)のみならず、時に聖典達にも強力な魔法の巻物(スクロール)を渡すことがある。

 巻物(スクロール)の管理、作製は常闇からの素材収集量に直結する。

 常闇の素材収集は巻物(スクロール)に利用しない部位は始原の魔法によるアイテム作製のための貯蔵、アイテム作製に不要な部位は金貨生産に回される。

 これだけの不要部位が来ているなら、金貨はこれだけできるという当たりをつけるのも、部位をシュレッドすることも、パンドラズ・アクターの役目。

 そのパンドラズ・アクターは旅に同行している。

 金貨の残量の即時の確認はできない。

 もし今強敵が現れ、ナザリックを襲われた場合――。

 

 アルベドは自分の愚かさに額を地面に打ちつけた。

 

 今回の旅に出るまでは完璧な布陣だと思っていた。

 

 知者三名が同時に外に出てしまうという所までは想定していた。

 だが、知者三名が同時に<伝言(メッセージ)>に自在に出ることができない場合まで想定していただろうか。

 竜王(トカゲ)達の襲来はありえないし、三名同時に音信不通など起こりえないと思っていた。

 まさか全員が一堂に介し、至高なる存在の前で自由に<伝言(メッセージ)>のやり取りができないなどのイレギュラーがあったなんて。

 今回の敗因は、万が一敵が襲ってきた時に、守護者達が戻る時間を稼ぐガルガンチュアを地表部に配備せずに出た事。

 続く反省は、信じている、という曖昧な答えを使ってしまった事。要因は、天空城の面々を使うゆえに起こった事だ。

 彼らが至高の四十一人に生み出された存在であれば、アルベドは「ティトゥス達が御してなんとかしてくれると信じている」などという曖昧さを持つことはなかった。

 彼らは引き入れ傘下に収まった知者ではあるが、所詮ナザリックの者ではない。

 緊急時、アルベドは必ずあの二人をネックに思うだろう。

 

「く……!」

 

 また練り直しだ。

 平時にテスカとイツァムナーを使うことは良いが、そうでない時に、一分の不安も抱かないだけの盤石なナザリックにしなくては。

 

 デミウルゴスとパンドラズ・アクターのあの顔。

 二人はアルベドが運営に関わっている者達の名を出した時からすでにここまで結論が出ていた。

 アルベドは確かに優秀だ。

 だが、完璧とはいえない。

 内務は申し分ない彼女だが、調略や謀略、戦略となるとわずかに自信がないこともある。

「……二人が戻ったら、今後のことを話し合ったほうがいいわね」

 

 あの二人も今頃、話し合いを行う必要があると思っている頃だろうし、帰り際その意思疎通もしあった。

 

「……あぁ……だから……だから今回の旅では私達が選ばれたのね……」

 

 知恵者三名を丸ごと連れ出すなど滅多にない。

 それに、アルベドかデミウルゴスを共にするという選択肢を提示されたアインズが、二人も同行させた意味。

 

 アルベドは先ほど地面に叩きつけた額についた土を払った。

 

「……またアインズ様の掌の上だったわけね」

 

 アインズは最初始原の魔法もあるため一人で出かけると言った。だが、あの主人が未知の場所へ行こうというのにそんな真似をするはずがない。

 そう言えば、アルベドとデミウルゴスが立候補すると分かっていたから、わざとそう口にしたのだ。

 思いがけず知恵者三名が出かけることになった時、アルベドがどう対応して出てくるのか様子を見たかったのだろう。

 アインズは決して直接守護者達にダメ出しをしたりはしない。

 婉曲に伝え、本人が間違えに気がつくのを待ってくれる。

 組織力という点を気にするアインズは頭ごなしに何かを是正しようとはしないのだ。自らが考え、正解に辿り着くように導く。

 ――とても恐ろしく、美しい。

 

 アルベドは<伝言(メッセージ)>の巻物(スクロール)を燃やし、転移の指輪を持ってくるようにナーベラルへ連絡した。

 

 到着したナーベラルは、アルベドの額の傷と、地面の抉れ方に驚愕した。




あ〜なるほど。
ナザリックの脆弱な部分をアルベドに教えるためにね……。
なるほどね。はいはい、そういうことね。ははーん。

次回#157 狼人
あ、狼人(ライカンスロープ)なんていましたね!?
明日だってばよ!!!!
本気を出した男爵の速筆っぷりが懐かしい!!
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