寮父長、グレーグ・アレク・サンディションは朝早くから魔導学院の会議室に来ていた。
魔導省から出向して来ている者も含めて多くの一年教員が呼び出され、皆が騒然としていた。
「わ、私の管理不行き届きで生徒一人がとんでもない目に……」
サンディションは額の汗を拭いた。
リシャールの教室――C組を受け持つミズ・ケラーは頬杖をつくように額を押さえ、顔を上げもせずに答えた。
「……ミスター・サンディションのせいではありません。それをいえば、私の管理が行き届いていなかったのでしょう……。恐らくこれは犯罪集団"欲望の種"。聞き及ぶ話と手口が全く同じです。神都外の学校で少し前にあった話のようですが……よもやここまで来ているとは……」
「……エクスナーには今日は外出をしないように言い含めてまいりました。私はもう神殿へ行きます。もしかしたら、衛士達をまとめる大元帥殿や行政機関長殿、立法機関長殿、司法機関長殿、三色聖典長の前でも話をしなくてはいけないかもしれません。"欲望の種"の根絶のためには、ともすれば陽光聖典などの部隊にお出ましいただく必要もあるかもしれませんから……。それでは、お先に失礼致します」
教師達は皆頭を抱える。生徒の処遇の決定に口を出す権利のないサンディションは現状報告を終えると早々に部屋を後にした。
ここまで話を聞いていた、信仰科A組のミスター・ヴェリンはギシリと音を立てて椅子に深く座った。
「ミズ・ケラー。少し話は逸れますが、以前信仰科全体で注意して見てほしいと仰っていたミス・エップレはもう平気だと仰っていましたが、その後は?まだ外科医院へ行き続けている様ですが」
「ミス・エップレは耳を落とす所まで行きましたが、特進科A組のスズキ君が治癒を行い、本人も説得されました。彼女は幸運なことに、善良な――少し私達とは価値観に相違があるだけの医術師にかかったようです。今は年相応のおしゃれに留めているようなので、行かせています。念の為私も場所を聞いて外科医院の訪問を行いましたのでご安心を。本人の望むことを叶えるつもりはあっても、そうでない場合の無理強いは望まないとの事です。さらに言えば、そこの医術師――ヘレフォード医師は隣町ではミノタウロスの人権問題と同時に、ミノタウロスの危険性について講演されている著名な方でした。賢者食が一般化しつつある今、人間種が信頼していいミノタウロスは国籍を持つ賢者食の者だけであると、大胆な発言が有名なようです」
「その言葉は私も聞いたことがあります。それほど著名な方が子供の耳まで落としてしまうなんて……」
「そこは一重に種族による価値観の違いとしか言いようがありません。ヘレフォード医師の話によると、ミノタウロスの国では毛を赤く染めたり、幼い頃からツノが天に向かって生えるように矯正したりする治療が一般的に流行しているそうです。それに、気に入らなければ頬骨を削って顔の形を少々変えるくらいのことも全く普通だとか」
「待ってください。毛を赤く、ツノを天に向ける?――クレント先生、あなたの所のスズキ君と一緒にいる一郎太君。彼は大丈夫なんですか?万が一スズキ君に悪影響でも出たら……」
クレント教諭は強く頷いた。
「私のところの一郎太は生まれつきのものです。彼は決して道を間違えません。いや、間違える余地すらないのです。スズキ君もいますし、何より本人に強い信念があります」
「かなり信頼が厚いようですね。安心しました。それにしても……今年はある意味少し参りましたな。スズキ君、彼は何もかもあまりにできすぎている。我々教員にも責任はありましょうが、中には強い劣等感を抱いてしまう生徒がいる事も仕方がないと言わざるを得ない。信仰科に来て数日一緒に授業を持ってくれた時、正直に言えば私なんぞより彼はよほど優秀に生徒を導いていた。魔法だって……彼、教員にならないかな……」
「――それでも彼は十六歳の子供にすぎません。ご両親の正しい力の使い方を学んでほしいと言う願いはもっともでしょう。彼は決して潰してはいけない人です。過度な大人の期待を被せてもいけませんし、大人の尺度で彼の立場を決めてもいけません。彼も一人の生徒なんです。私達が教えられることは必ずあります。ミスター・ヴェリン、彼を守られるべき立場に留めてください」
「い、いや。これは失礼。それはそうです。私まで少し弱気になっていました」
ミスター・ヴェリンが深々と頭を下げる。
特進科B組を持つゾフィ・ノイアは向かいにいるミスター・ヴェリンにそっと水を差し出した。ミスター・ヴェリンは一気に飲み干し、口を拭って頭を下げた。
それに頷き、ゾフィは口を開いた。
「私の正直なところを言わせていただきましょうか。私は教員なんかじゃあない。できることは魔法を教えること、それだけ。その私から言わせていただくとすれば、そのエクスナーという生徒は退学でも十分でしょう。"欲望の種"と繋がって芽を出したどころか、もう花も咲いて実を付けている。収穫は間近さ。最初に金を渡さないことで次の日も高額な入場料を払って現れるかどうか、バカの基準を明確に定めてやってる。内容も読まずに書類に母印まで残して、何を請求されるか分かったもんじゃない。金で済めばいいが――師が大切に育ててきた学院の事も口走っているようだし、ここの他の生徒達にまで危険が及ぶのはまっぴらごめんさ。私はB組の奴らを魔導省や魔術師組合に引っ張り上げてやらなきゃならない。エクスナーはその使命の邪魔になる。もう家へ帰してしまったほうが良いんじゃないかい?」
話を聞いていたD組のミズ・ベレズネフの瞳の中に正義の色が浮かんだ。
「――ですが、エクスナー君をここから放り出せば"欲望の種"に何をされるか分かりません。魔導学院は鉄壁なのです。どんな堅牢な城よりもここは安全でしょう。第四位階を操るゾフィ先生やクレント先生をはじめ、パラダイン様もおります」
「"欲望の種"はエクスナーの地元のエ・ナイウルまで追っていくのかねぇ」
ゾフィは足を組むと、キセルを取り出して煙草を詰めた。そして、自らの持つ徒弟がいくつかの書類を抱えて来ると、それを机の上に広げて軽く目を通しはじめた。
彼女の疑問に答えたのはミズ・ケラーだった。
「……追うでしょう。少なくとも、エクスナー君の失くしたという錬金素材の上げるはずだった売り上げ額と、これまで支払った額を取り戻すまでは追います」
ミスター・ヴェリンはミスター・バッティと目を見合わせた。
「それを学院が守ってやるというのは、いささか無理がある話では?三年守れたとして――いえ、最長で魔導学院研究室でさらに三年を過ごしたして、全部で六年です。六年間彼を敷地から出さずに見守るというのは現実的ではないように思います。被害のあったよその学校の生徒はどうしているんですか?謝罪のお金を払わせてなんとかなりませんかね」
「最終的には親が多額の金を支払い、家を引き払ってその後一家がどこへ行ったのかは不明……というのがほとんどの場合です。高額で錬金素材を運ばされ、教員とのやり取りや指導が増える試験期間に入る前に、こうして使い捨てのコマのようにサインを迫られる……。中には最初の時点でおかしいということに気が付いた子供もいて、そういう子は逃げ切っているようですが」
「その話、以前二つ隣の市で聞きましたよ。噂ではミノタウロス王国へ渡らされ、奴隷として過ごしていると。それに応じる書類にサインと母印があり、手の出せない所に消えるそうです」
「……はぁ。あちらは治外法権ですからねぇ……。しかし相手が悪すぎる。エクスナーには最初から騙されていたとまずは分からせないといけません」
キセルから口を離し、ポカリと煙を吐いたゾフィはおかしそうに笑った。
「それを認められる奴は引っかからない――そう思うだろう?自分の優秀さと将来性に相手が投資していると盲信しているうちは難しいねぇ。ははは」
「笑い事ですか!」
「おっと、これは失礼。私も、この引っかかっているのがスズキ君やうちのリッツァーニ君なら本気を出せるかもしれないけれど……この子じゃあ厳しいね」
机の真ん中にシュッと放り出された紙を教員達は覗き込み、ため息を吐いた。それはリシャールの成績や利用できる魔法などが書かれている生徒情報だった。
「……全て不可直前じゃないか……」
「本人にもやる気がないんじゃ仕方がないことさ。それに、ミズ・ケラー、この備考はどういうことなのかな?」
ゾフィはこんこん、とキセルで一番最後の欄をたたいた。
「……彼はミス・ローランという女学生に手を挙げています。学外でのこともありますが、彼女の顔を叩いたり、腕を引っ張ったりしたそうです。顔は治癒を要する傷だったとか……」
「なぜ目をつぶってらっしゃるんです。すでに停学処分が下りていない事が不自然に感じるけれど。――ローラン君のこの時間外校内待機も気になるが、それと差し引いた判断ということかな?」
ゾフィはさらにレオネの生徒情報を放った。
「いえ……。時間外校内待機は事故でした。準備塔内で彼女が作業をしていたことに気が付かなかった生徒が鍵をかけ、可哀想に閉じ込められていたのです。彼女はとても真面目な生徒です」
「では学外だった故に裏が取れないということかな?訓戒もしていないようだけど」
「――彼と、ミス・ローランに関しての話し合いを持つ事は、ミス・ローランのご両親から控えるように言われています。ミス・ローランのお父上は大神殿で"
境の神官団は数年前に生まれた新しい枝葉だ。
闇の神官、光の神官、境の神官。
天と地を司る神々の境――神の子に仕えることを主とした神官団にあたる。
天と地の間に生まれる全ての生を祝福する彼らは大神殿以外に神殿を持たず、普段は仏教や土着信仰の管理とそれを一つの文化として守る――大神殿とその他宗教の境を守る働きもしているらしい。
教員達の温度は次第に下がりはじめていた。
「……可哀想ですが、そのミノタウロス王国への奴隷として売られるという話もどこまでが真実かわかりませんし、今回は一度停学処分か謹慎処分を下して様子を見ますか?」
「神官は生ぬるいんだねぇ。今日の出席停止もどれだけこの問題児に効いているやら。自分が守られるために出席停止になっていると理解しているかすら私にはわからないよ」
「ですが、チャンスは与えるべきです。これが彼の最後のチャンスです。これ程のことを起こせば流石に心を入れ替えるでしょう」
「はぁ。分かった分かった。神官様の大好きなチャンスだね。私は引っ叩かれたローラン君に同情するよ。これだけできる子が怖くなって登校できないなんて事にでもなれば社会的損失になる。親も地位がある人間だっていうのにやり切れないだろうさ。――他の皆さんは?ジーダ、君はどう思う?」
「私は陛下方にチャンスをもらった身だからね。何も思うところはないよ。一点申し上げるならば、謹慎ではなく停学として、親も一度学院に招いた方が良さそうだとは思いますがね」
周りの他の教員達も頷く。
「それでは、リシャール・フラッツ・リイル・エクスナーの最後のチャンスと、彼の身の安全のため、停学処分としましょう。期末考査もあるので、あまり長い期間は――」
教育科の教師が話をまとめようとしていた時、ノックと共に間髪開けずに扉が開いた。
「――失礼、遅くなりましたな。ふぅほぅ、いやぁ暑いのぅ」
入ってきたのは薬学科錬金術担当の
「ああ、ステ=ブル先生。今話がまとまったところでした」
「どのように?場合によっては覆さねばならぬ」
教員達は目を見合わせ、首を傾げた。
「……ちなみに、ステ=ブル先生はこれまでどちらで何を?」
それまでステ=ブルがどこで何をしていたのか知らなかった多くの教員の抱いた疑問だ。
「我は問題のリシャール・フラッツ・リイル・エクスナーが昨日着ていたものを寮父――サンディション殿から一時的に預かり、少しばかり検査をしておった。もし、その失くしたという錬金素材を見付けてやれば件の怪しい者達に返して手を引いてもらえるかもしれんからのぅ」
「あぁ……それは大変でしたね。
場合によっては停学ではなく謹慎で済ませてやれるかもしれないという雰囲気が教員の中に広がった。
ステ=ブルはよいこらせと席に座り、何はともあれ一度机に置いてあるコップとピッチャーを手にした。
「ほぅ……。バロメッツちゃん達の苦労がわかる……。我も毛を減らしたいのぅ……」
ステ=ブルはそんなことを呟いた。周りの教員達は思わず笑いを漏らし、「今年は特に暑いですからねぇ」と、クレント教諭の魔法で涼しくされている部屋で肩の力を抜いた。
「さて、お待たせしましたな。荷物についていい知らせと悪い知らせがありますが……どちらから?」
ミズ・ケラーはせめて「良い方から……」と答えた。
「では、良い報告を。痕跡を辿る薬剤での反応は上々ですぞぇ。これは魔導学院研究室の三年が一昨年の卒業生から引き継いだ研究で、ついに実を結んだ事に皆朝から祝杯モードになっておる。向こうで監督しているラブ=ルル先生も一緒になって酒を持ち込んでどんちゃん騒ぎじゃ。あぁ、もちろん一年の未成年の研究生は飲んでおらん。二年と三年だけぞぇ」
「おぉ!素晴らしい。悪いことばかりではありませんなぁ!」
教員達の中から拍手が上がり、ステ=ブルも満足げに数度頷いた。
「全く全く。乗っていた
「流石魔導学院研究室!きっと皆、卒業後は望む所に勤められるでしょう!魔術師組合の研究所を上回る成果です!」
「ほほ。荷物の場所まで粉が足りることを祈っておってくれ」
和やかな教室の中で、ミズ・ケラーは賞賛が収まるのを待ってから、次の質問をなげかけた。
「それで、悪い知らせと言うのは?これほど良い知らせの後なら、覚悟もできましょう」
「そうであったな。では、申し上げようぞ。悪い知らせと言うのは、この足跡を辿る薬剤――仮称雲路探知属性変化試作八番赤色は、ある一つの物質の痕跡しか辿ることができないようである」
「……と仰ると?」
「そも、仮称雲路探知属性変化試作八番赤色は風に乗って飛ばすことで空気中に僅かに残留する物の気配と匂いに同時に反応を示すのだが――」
「んん、その、仮称雲路……の使い方などはまた後ほど学会で。神官の身には少々難しく思います。要点はなんでしょう」
ステ=ブルは素晴らしい研究の説明ができなかった事に若干の不服感を持ったようだが、すぐに気を取り直して口を開いた。
「雲路八番は、コカの痕跡しか追うことはできぬ。あれは属性的にも毒性的にもピカイチぞ」
しん――と会議室が静まり返る。
それぞれ教員達の胸の中にある魔法の懐中時計や手巻き時計がカチカチカチカチ……と細かな音を上げていることすら聞き取れた。
誰も何も言わない空間で、ゾフィは立ち上がった。
「私はもう行くよ。リシャール・フラッツ・リイル・エクスナーは今この時をもって学院の手を離れたんだ。ここから先は司法と衛士達の仕事さ。コカの所持、密輸は重犯罪だからね」
ローブを掴み、後ろに控えていた徒弟を引き連れてゾフィは部屋を後にした。
苛立ちすら感じるような扉の閉め方だった。
再び静まった会議室内で、あまり関係のない教育科と普通科の教師達も出ていく準備を済ませ、一言挨拶を残して去っていった。
魔導省から出張してきている特進科の教諭三名と、薬学科の教諭四名、錬金術担当のステ=ブル、信仰科の教諭四名がその場に留まった。
そして、クレント教諭が口を開いた。
「雲路八番の量産が可能か魔導省の錬金部隊に確認を取らせていただきます。場合によっては評議州の個人治癒工房にもご協力を仰ぐかもしれませんが。新興犯罪組織"欲望の種"の一斉摘発ができれば、魔導省も魔導学院も大きな功績となりますし、嫌な顔はされないはずです。魔導省出向の我々は午後の魔法実技の授業を自習として魔導省へ戻ります」
残る二名のフールーダの高弟――アンゼルム・テレム・ニス・ルーマンとエッケハルト・リック・サモアも立ち上がった。
「後のことは任せます。――ステ=ブル先生、薬学研究室は祝賀会をしているようですが、ラブ=ルル先生と、場合によっては何名かの生徒を借ります」
「魔導省のお方々が思うようにしていただいて一向にかまわぬぞぇ。ただ、二年と三年はもうベロベロに酔っ払っておるかもしれんなぁ」
「ふふふ、助かります」
「――我々も一緒に行きましょう。一言祝いを言ってやらねば」
ぞろぞろと特進科と薬学科の教師達も部屋を後にしていく。部屋からは一気に七名が減った。
ジーダは扉を閉める前に、部屋の中へもう一度振り返った。
「――裁判に掛けられれば、運んでいた物がコカではないかと思いもしなかったと、真実を口にするでしょう。大丈夫ですよ」
扉はパタリ……と静かに閉じられた。
信仰科四名とステ=ブルだけになった部屋で、ステ=ブルは手近な灰皿を引き寄せ、自ら調合している葉巻を咥えた。
「今、少し"欲望の種"と言う言葉も聞こえておったが、信仰科の生徒はとんでもない事に手を出したようだのぅ」
「……お恥ずかしい限りです」
「いやいや、ここは幼稚舎ではあるまい。生徒の躾なんぞは我らの仕事とは言えぬ。なんと言っても、栄えある魔導学院ぞ。――それはさておき、クレント先生は件の生徒がコカだと思いもしなかったと言うだろうと仰ったが、そこはどうであろうか」
ミズ・ケラーはハンケチで額を拭った。
「……正直なところを申しますと、思いもしなかった、と言うことはなさそうなのです」
「やれやれ。それは本人がそう?」
「ミスター・サンディションが昨夜エクスナー君から話を聞いた所によると……ヘレフォード外科医院が自らの商売のために、よそのミノタウロスがコカをばら撒いていると言いがかりをつけ、自らの仲間のミノタウロスの開業を邪魔していると言う話も出ているようです。一度でも持っている物がコカではないかと疑わなかったか……そう査問によって問われれば、ノーとは言えないのではないかと思います……」
「八方塞がりぞな。もう司法へ引き渡した方が良い。そうすれば、犯罪組織もむしろ手を出せぬ」
「しかし彼の実家も暴かれているのです……。私はどうしたら……」
ミズ・ケラーは泣いてしまいそうだった。美しく老いた女性のそう言う姿は非常に胸が痛かった。
「……我も関係を持ったことがないとは言え、可愛い生徒の一人だと思っておる。助けられるなら助けてやりたいが、何かをすれば犯人隠匿ぞぇ。実家には今日中に到着するように速達を出し、しばし一家で身を隠すように注意をするのが関の山ぞ。後は教育科の先生方ならもう少し司法的に良い手を考えてくださるかもしれぬ。学院からの最後の愛情じゃ。――退学になる犯罪者にここまでしてやる学校も少なかろう」
では、と葉巻を吸い終わったステ=ブルは柔らかな草原の香りを残して部屋を後にした。
信仰科の教師達はその後、最も早く手紙が届くように急いで手配を進めた。
認められた内容は多岐に渡るが、大まかには以下のようになる。
――当該生徒がコカの運び屋として金銭を受け取っていた旨。
――学院で守れる域を超えてしまっている旨。
――停学に留めようと一年の全教員が尽力はしたが、今回は残念ながら退学となる旨。
――家族の安全も保証できず、本日からしばらく一家で身を隠すのか、衛士の詰所に世話になった方が無難だと言う旨。
――本来ならば退学とともに退寮となるが、当該生徒は十分な注意を払った親の引き取りまで学院敷地内にて謹慎とし、安全な学院のもとに残すと言う旨。
――ただし、司法による引き渡しを命じられた場合はこれに則らない旨。
――最後に、迎えの際は頬を打った女子生徒へ速やかに謝罪を行うように、と。
実に書類二十五枚に及ぶ手紙だった。いや、公用文字の物とリ・エスティーゼ文字の物を用意したので、総枚数で言えば五十枚だった。
手紙はその日の夕刻にはエクスナー家に配達された。
リシャールの父、ベリーゼ・フラッツ・リイル・エクスナーは全文を読むとワナワナと手を震わせた。
今日は長男のセラミも忙しい公演の間を縫って実家に来ているし、長女のグレーテもいる。
無論妻のレーシーも、リシャールの祖父にあたるハンフリーもいる。
夕食前、長男のセラミが紺碧の鱗で有名な歌を聞かせてくれていた美しい時間だった。
歌が終わると、祖父ハンフリーは幸せそうに手を叩いた。
「こんな素晴らしいものを間近で見られるなんて幸せだのう」
「ふふふ。ありがとう、お祖父様。今の公演が終わったら次はいよいよ紺碧の鱗なんだ。僕は神官にはなれなかったけど、人々に陛下方の素晴らしさを伝えられる者になれそうだよ」
「お前は本当に……。ありがとう、良い孫を持って私は本当に幸せに思うよ……」
ハンフリーが目元を拭い、長女のグレーテは「大袈裟だなぁ。お祖父様は」と笑った。
「でも、兄さんもリシャールもすっかり立派になっちゃって、私は肩身が狭いよ」
「何を言っているんだ。グレーテだって立派さ。浜の女になるんだろう?僕は結婚はまだ先になりそうだから、君がお祖父様にひ孫を抱かせてやるんだ。一番の孝行者さ」
グレーテは照れくさそうに――いや、幸せそうに笑った。
ああ。この幸福が――。
ベリーゼはぐったりと手を下ろした。
「あら、あなた。娘がお嫁に行くことにそんなに落ち込んで。ふふふ。今時流行らないわよ」
妻がベリーゼの肩をさする。
家族はおかしそうに笑った。
だが、ベリーゼは静かに首を振ると、祖父と妻にはリ・エスティーゼ文字の物を、子ども達には公用文字の物を渡した。
皆何事かと書類を覗き込み、いつしかその顔は青くなった。
平和な世に生まれた子供達はこんな恐ろしい犯罪者達が今なお蠢動しているなんて信じられないという様子で、苦笑していた。
だが、激動の時代を生きた両親と祖父母の様子がただならぬことを見ると、徐々にその認識は変わっていった。
天下の魔導学院すらこれほど心配する、そう言う恐ろしい事態に巻き込まれているのだと。
「こ、困るよ!!身を隠すって言ったって、僕には公演があるんだ!!リシャールの馬鹿野郎!!」
「私だって詰所から出られなくなったら彼に会えないわ!それに、卒業年次なのにテストも受けられない!!これじゃ留年よ!!」
「ああ……なんと言う恥晒しが……。エクスナー家の名に泥をぬりおって……」
三者三様の反応を見せる中、妻だけは――いや、母だけは立ち上がった。
「私、今から神都へ行きます。リシャールを早く連れ帰ってこなきゃなりません」
「い、今から!?着くのは深夜になるぞ!?」
「構いません。戻ってくることは難しくても、一晩私も寮に泊めていただき、朝の便で戻ります。その後は詰所へ行くので、皆は安全な場所へ身を隠しなさい」
「し、しかし……」
「良いですから。平和な治世とはいえ闇は蠢きます。まさかこんな遠くの街へ神都からわざわざ犯罪者集団が来るとは限りませんが、念には念を」
呆然としていた祖父は顔を上げた。
「そうだ。ここは神都から遠い。違法的に入り込んでいるかもしれないミノタウロスがそう簡単に州を跨ぐことはできまい。そう……明日……いや、明後日にでも事情を話し、ナイウーア様にしばらく匿って欲しいとお願いしよう。今日の明日ではあまりに失礼だ。レーシーさんも、明日はここにリシャールを連れて戻っておいでなさい」
身分制度が撤廃されたとはいえ、貴族達の間の序列は当時を生きた者たちの中で今もはっきりと生きている。
妻は「明後日では……」と言葉を濁したが、ベリーゼが肩を叩くと、静かに引き下がった。
祖父の言う通り、神都からここへ来るにはスレイン州を越え、ザイトルクワエ州を越え、リ・エスティーゼ州のいくつもの街を超えて来る他ない。
子供達は嫌がったが、ナイウーアの私兵を貸してもらい、場合によっては冒険者も雇って劇場や学校から送り迎えをすると言うことで決着がついた。
妻のレーシーは大急ぎで支度をすると神都、魔導学院へ発った。
リシャールは二階の自室の窓からシーツを伝って外に出ることに成功した。
(ふふふ、この俺様を閉じ込めようと言っても無駄さ)
窓からシーツが垂れ下がっている様は少しみっともないが、休日には掃除をしている生徒がシーツも布団も何もかも窓からべろりとはみ出させていることも珍しくないので悪目立ちはしていない。
実際、今も四階の部屋の一室のまどからは布団と枕が干されているのが見える。天気のいい日、授業を受けているうちに干してふかふかの布団で夜は眠りたいと思う横着者は少なくない。
寮父達はやめろと言うが、一階の庭まで布団を持って行って干すのがめんどくさい男子学生達がお利口に「はい、わかりました」と言うはずもない。
特進科などは魔法一撃で布団から水分を飛ばせる者が多いので良いご身分だが。
リシャールは夕暮れの神都を走った。
念の為、持っている金は全部持っていくことにした。
まさかこの二十万ウール――から入場料三万ウールを引いた全財産十七万ウール――を取られることもあるまい。
今日はロスボスにいくらか酒を奢ってやった方がいい。必要があれば奴の当面の生活費にいくらか利子をつけて金を貸してやることになるかもしれない。
リシャールは「それはいい考えだな」と自分の天才的な発案に震えた。
(……しかも、これをすればロスボスから俺への評価はまた一段と上がるはずだ。今回荷物は盗まれたが、盗んだ奴が一番悪いし、あの日俺に強めの景気付けを出したロスボスの責任も大きい。今少し揺らいでしまったかもしれない信頼関係を再び強固なものにして、さらに利子まで取れるわけだ!)
まさしく一石二鳥だ。金をもらうと言う形から、金を渡すと言う形になるのもいい。
(素晴らしいほど完璧な計画だ……!ただでは転ばない男、リシャール・フラッツ・リイル・エクスナー!!これほど頭が回るなんて、俺が首席じゃないのが不思議なくらいだ!)
スキップをして劇場に入り、いつもの廊下に行く。
ショーが始まると、リシャールは音楽に合わせて体を揺らした。
(――少し遅いな)
まさか工房に素材を卸せなかったせいで入場料も払えなくなっているだろうか。
一番ショーが盛り上がる所でちらりと中を覗こうとしたとき――目の前の扉は突然開いた。
ふしゅー――と息を吐いたロスボスがリシャールのを見下ろしていた。
「ろ、ロスボス!良かった。遅かったから心配し――」
その時、ふわりとリシャールの体は浮いた。
途端に壁と床に激しく打ち付けられ、脳が揺れる感覚に信じられない程の眩暈を覚えた。
「よぉ〜。やってくれたなぁ〜?ぼっちゃん。ククク」
痛みと混乱で何も言えずにいると、ロスボスはリシャールの前にしゃがみ込み、髪の毛を掴んでリシャールの顔を上げさせた。
――恐怖。
リシャールの中を激しい恐怖が吹き荒れた。
「お前、昨日荷物を持って行かなかったそうじゃあねぇかぁ〜?俺様は仕事先から契約を打ち切られて、保護魔獣のバイトからも追い出されちまったんだよぉ〜。臓物を届けましたって言う証明が無いからよぉ、俺が着服して闇市に流したなんて言われてなぁ〜。どうしてくれんだぁ〜?俺はこの先どうやって食っていけばいいんだよぉ〜?」
リシャールは恐ろしく大きい瞳に射抜かれながら、必死に息を整えた。
「だ、大丈夫。お、俺が生活費を貸してやるから。そ、それで、それでお前は大丈夫」
「なんだとぉ〜?お前よぉ〜着服した魔獣のハラワタを売った金をまずは出せやぁ。それは貸す、じゃなくて返すってぇ言うのが筋じゃあねぇかぁ?えぇ?」
「ち、違う。ぬ、盗まれたんだ。だから、衛士の詰め所にも行って探してくれって頼んである!」
「ほぉ〜?そいつぁ本当かぁ」
「本当だ!だから、そう苛立つな!!俺がお前に金を貸してやらなきゃ、お前は生活だってできないはずだろ!!」
ロスボスは一瞬驚いた顔をした後笑顔になった。
「お前、今までで一番面白ぇやつだなぁ〜?ここまで筋金入りのバカは初めてだぁ」
「な、なんだと!俺を侮辱したらお前は一銭だって――」
そう言った瞬間、リシャールの顔面に熱が襲った。
何が起こったのかわからなかったのも束の間、それが顔を殴られたのだとすぐに理解した。
「う、うわあああ!!」
鼻血がポタポタと赤い床に落ちた。
劇場の中からは憎たらしいほどに場を盛り上げる音楽が鳴り響いた。
「良いからよぉ早く出せやぁ。金をよぉ」
「い、い、痛い!痛い痛い!痛い!!」
「ここかぁ〜?」
ロスボスの手がリシャールのポケットの財布に触れると、リシャールはずるずると尻を引きずって下がった。
「てめぇ、もう一発ぶん殴られるのとどっちがいいんだよぉ。あぁ?」
「ひ、ひぃいいい!」
ロスボスが拳を上げると、リシャールは大人しく財布を奪われた。
中から十七万ウールと、小銭が全て取り出される。
そして、財布は捨てられた。
「随分金は使ったみてぇだなぁ〜?楽しめたようで何よりだぁ。ククク。さぁ、てめぇはここから移動するぜぇ。――その鼻が痛そうで可哀想だからなぁ。悪かったなぁ〜。そんなつもりはなかったんだよぉ〜」
ロスボスは突然猫撫で声になるとリシャールに肩を貸して立たせた。
もしかしたら、こいつはとりあえず十七万で満足したのかもしれない。
そして、今後の生活を考えて突然手のひらを返したか。
「こ、この馬鹿野郎!!今のも貸しだからな!!利子付けて返せよ!!」
「おぉ〜わかったよぼっちゃ〜ん。悪かったなぁ〜。さぁ、鼻を治しに行こうぜぇ〜?」
せっかく入った劇場を出る。チケット売りや店員が「大丈夫ですか?」と声をかけに来ると、リシャールは怒りに叫んだ。
「大丈夫なわけがないだろうが!!治癒に行くんだよ!!」
店員達は目を見合わせたが、それ以上何も言わなかった。
夜に落ちた街に出ると、二人の前にはそっと馬車が止まった。
無能のデフロットが御者をしていた。
ちんけでつまらない荷馬車だった。
「おやぁ〜。リシャールぼっちゃん、大丈夫ですかぁ〜?」
「どいつもこいつも大丈夫か聞きやがって!こんなに血が出てるんだぞ!!早く神殿に連れて行け!!」
ぎしりと荷台に乗ると、「へい、それじゃ」と馬車は動き出した。
向かいに座ったロスボスは荷馬車の中にあった鞄を開けると、ガーゼやピンセットを取り出してリシャールの前に座り直した。正直あんなものは薬学科が使っているのしか見たことがない。
「ぼっちゃんはよぉ〜。どこまで治してほしいんだ〜?」
「とにかく痛みが引くようにだ!!」
「痛み止めは――一回分六万四千ウールだぜぇ?」
ガタゴトと揺れる馬車の中でリシャールは息を詰まらせた。
「だ、だから神殿に行くんだ!!早くしろ!!」
「おめぇ、神殿に行くのかぁ〜!おかしいなぁ〜?なぁ、デフロットよぉ〜」
「本当だなぁ〜?リシャールぼっちゃんよぉ、お前は今からダランドの医院に行くんだぜぇ〜?」
「ダ、ダランド!?なんだそれは!!俺は神殿に行くんだ!!」
「お?ははは。おい、今回の名前はダランドじゃなかったっけかぁ?」
「はははははは!ロスボスだぁ!!」
リシャールは二人が何を言っているのか分からず見開いた目で二人を何度も確認した。
「よぉ、俺様の医院に着く前に、お前とは約束の確認が必要だぁ」
「な、な、なんだ……なんなんだ……」
ロスボスは紙を取り出してリシャールに突き付けた。
リシャールはそこで、初めてその紙を読んだ。
「……委託者は、リシャール・フラッツ・リイル・エクスナーに対し、運送業務を委託し、リシャール・フラッツ・リイル・エクスナーはこれを承諾する。運搬する物品の具体的内容は、嗜好品、薬品、移植用提供臓器などである。物品は性質上大変高額、デリケートであり、人命がかかっていることを十分に理解し……万が一紛失、破損の際には……」
言葉を失う。
続きが読めなかった。
「おい、早く読めよぉ〜?時間は有限だぜぇ〜?」
「……破損の際には……四千八百万ウールの支払い……債務を……負う……」
「あぁ、そうだよなぁ〜!!当たり前だよなぁ〜〜?その下もちゃんと目を通せよぉ〜?もし支払いができない時にはてめぇの親がそれを負担すること。親が負担できなきゃ――生きて行くのに問題がないてめぇの臓器を一つづつ売ること。それでも足りなきゃ親の臓器。まだ足りなきゃ――お前達はミノタウロス王国で働けぇ。飯になったっていいけどなぁ!?ククク」
リシャールは紙を放り出すと馬車から飛び降りようと走った。
だが、走ることもできずにロスボスに足首を掴まれてズルリと引き寄せられた。
「や、やめろ!やめてくれ!!放せ!放せぇ!!」
「ククク、クハハ、ウワァーハッハッハ!!てめぇはどうやって四千八百万ウールを支払うんだぁ!?親が払ってくれそうかぁ!?そうすりゃ臓器もいらねぇ!奴隷になる必要もねぇ!!さぁ、どうすんだよぉ!!」
悪魔の叫び声にリシャールは泣きながら答えた。
「お、俺の家は裕福なんだ!!本当なんだ!!ナイウーア元伯爵閣下とも懇意にしてるんだぁ!!四千八百万くらい、すぐに出せる!!」
「本当だろうなぁ!?嘘だったら、お前は地獄を見るぜえ!?利息は
「ぼっちゃん、今出せるもんは全部だしとけよお!利息にだって、利息はかかんだからよお!!複利ってんだぜぇ!お勉強しろよなぁ!!」
リシャールは泣きながら、新しく買ったばかりの付けている腕輪やネックレスを外した。
新しいシャツも、新しい靴も、全てを差し出し、肌着とパンツ一枚になった。
馬車から蹴られるように外に放り出される。
「こ、ここは……!?」
引きずられながら、裏路地の建物に入った。
そこにはぐったりと横たわる大量の人々がいた。
「な、な、なんだ!?なんなんだ!?」
「グワッハッハッハ!おめぇが荷物運ばなかったせいで、皆調子が悪そうだなぁ〜!?えぇ〜!?」
ずるずると這ってきた女――上半身が裸で、歯も何本もなかった――が、ロスボスの足にまとわりついた。
「せ、先生、先生〜。お、お薬。お薬くださいぃ」
ロスボスは女の顎を掴むと、「金はあるんだろうなぁ」と凄んだ。
女は小さな皮袋を震える手で差し出した。
「おい、デフロット。数えろ」
デフロットが即座に中を確認し、ニッコリと微笑む。
「大丈夫ですぜ。そいつは娼館でもよぉく働いてやがる」
「――おぉ〜!痛みが強いんですかぁ?お薬を打って少し楽になりましょうねぇ〜」
突然優しい声音になると、女は腕を取られ、見たこともない道具を腕に当てられた。
針のついた試験管とでも言うべきか。
「っひ」
リシャールから悲鳴が漏れる。
女は薬を投与されると恍惚の表情になり、「さぁ、回復室へどうぞぉ」とデフロットに連れて行かれ、デフロットだけがすぐに戻った。
「さぁ。――次はてめぇの番だ。そのままじゃあ帰れねぇだろ?こっちはコカより高い七万五千ウールだが、一回はサービスしてやるよ。痛みが止まるぜぇ」
「うははは!もったいねぇー!!ミノタウロス王国のアヘンとライラのミックスなんて滅多に使ってもらえないぜぇ!!」
「な、なんだ!?やめろ!!やめてくれぇー!!」
針が腕に刺さると、リシャールの目の前はぐちゃぐちゃの絵の具がばら撒かれたように変わった。
チカチカと綺麗で、鼻の痛みなどもう一つも感じない。だが、鼻にはペタペタとガーゼが貼られたり、何か治療を施された。
そのまま訳もわからないうちにまた馬車に乗せられた。
そして、「こいつを忘れるな!精々親に頼み込むんだなぁ!!」とパンツの中に紙切れを一枚挟み入れられて道に放り捨てられた。
裸足でよたよたと見知った道を行く。
今のは悪い夢じゃないだろうか。
あんなに具合の悪そうな人々がたくさんいるなんておかしい。
リシャールが素材を無くしたせいであんなにたくさんの人が苦しんでいる?
いや、神殿に行って弱い治癒だけでも受けないあいつらが悪いんだ。
女子寮の前を通り過ぎる時、女子達が叫んだ。
「……れおね」
頭と視界に靄がかかる。
リシャールはレオネを捕まえた。
「何こいつ!?はなしてよ!!」
すぐにレオネは手を振り払い、女子寮からレオネがたくさん出てきた。
「えへ、えへえへ」
笑っていると、頬を叩かれた。痛みはない。
「リシャール!!あなた何をやっているの!!」
「えぇ……?」
母親に見える。でも、母親がこんなところにいるだろうか。
おかしいなぁ、と思っていると寮に引き摺り込まれた。
『早く治癒を!!』『まさか薬物そのものに手を出していたとは――』『中位の――いや、最高位の解毒魔法を使える神官様を呼んでくれ!!』『さぁ手を貸してやる、立てるか!?』『なんという……』『先生!先生方いませんか!!エクスナーが戻りました!』
顔の前でたくさんのじゃが芋がリシャールに何かを言っている。
リシャールはそれがおかしくておかしくて笑った。
次の瞬間には、リシャールの意識はもう闇の中に吸い込まれていた。
きゃー逃げてー!逃げて逃げてー!
いや〜ゾフィさん正論だったなぁ!
次回明日!
Re Lesson#23 こちらとあちらの再出発