翌朝、アインズはツヤツヤしていた。
「おっす、陛下。おはようございます。」
ゼンベルの挨拶にうむと応えると、フラミーの下へズンズン進んでいく。
「おはようございます、フラミーさん。」
「あ、アインズさん、おはようございます。」
フラミーは考えたら負けだと必死にえっちな想像を追い払いいつも通りに返した――が、続くアインズの言葉に限界を迎えそうになる。
「いやー昨日すごく良かったんですよ。」
紫黒聖典の二人は驚きに振り返ったが、立ち聞きするのは不敬かとそそくさとテントの撤去に取り掛かった。耳を象のように大きくしながら。
「そ、そうですか。」
フラミーはまだ平静だ、いつも通りの返事をできた自分を褒める。
「流石にシャルティア、ペロロンチーノさんに創造されただけありますよ。だって――」
早くも限界だった。
「だぁー!!やっぱり!……カカロット。お前が、ナンバーワンだ。」
ビッとフラミーはアインズへ指をさすと立ち去っていった。
フラミーは歩きながら思った。
昨日の夜、あの中で一番エッチなやつが決まると思ったが、まさか翌朝に試練が待つとは、と。
(な、なんだ……?)
小さくなる背にアインズは数度瞬いた。
昨晩、とりあえずシャルティアと二人でテントに入ると、迫るシャルティアを何とか正座させ、女子としてのなんたるかを説教した。
決してフラミーのように追い剥ぎ行為を行なってはいけないと。
気付けばアインズはシャルティアと、一晩中ペロロンチーノを筆頭としたギルドメンバーについて語り合っていた。
それはとても楽しく、幸せな時間だったのだ。
フラミーとも散々昔話をしたが、守護者目線から見る皆の話は新鮮だった。
シャルティアの部屋でギルメンが話したことの多くを覚えていた彼女は、アインズの知らない話は勿論、自分が忘れかけていた話も覚えていたし、フラミーの知らないペロロンチーノとの内緒話も知っていた。
そして普通の会話をしている中でたまにヤラシイ事を言う姿はペロロンチーノそのもののようだった。
(そう、楽しかったんだ…。)
アインズは昨日の晩を思い出すように目を閉じると、シャルティアが髪を結び終わったようでテントから出てきた。
「アインズ様、素晴らしいお時間をありがとうございんした。このシャルティア・ブラッドフォールン、この日のことは決して忘れんせん。」
「あぁ、シャルティア。私も決して忘れないだろう。」
二人は仲睦まじく笑い合った。
フラミーはモヤモヤしながら一度ナザリックに帰還した。
(私にNPCは断れないんだから慎重に接してあげろみたいなこと言ったのに…。)
アルベドに言いつけてやろうと少しワクワクしながらアインズの執務室にノックもせずに入っていくと――そこではアルベドとデミウルゴスが
バッとデミウルゴスがそれを伏せたが、音が出るようにスクロールを消費したのか木々のざわめきや朝食の用意をするレイナース達の声が聞こえてくる。
「こ、こ、これはフラミー様!!」
「フラミー様!シャルティアがついにやったようで――」
ゲインとアルベドの頭をデミウルゴスが殴った。思い切り振りかぶられた拳だったが、最強の防御力を誇るアルベドを傷付けるにはまだまだ足りない。
「な!あなた何か勘違いしてるんじゃないの!?」
アルベドは頭を押さえながら可愛らしく頬を膨らませ、口を尖らせながら小声でブーブー言っていた。
フラミーはアインズを覚醒させるものの台頭を望んでいるはずだし、現に昨日も二人を激励してひとりのテントに潜っただろう、と。
デミウルゴスが本当にそうなのだろうかと考えようとしていると、鏡から音声が流れてきた。
『アインズ様、素晴らしいお時間をありがとうございんした。このシャルティア・ブラッドフォールン、この日のことは決して忘れんせん。』
『あぁ。シャルティア。私も忘れないだろう。』
フラミーはそれを聞くや否や、ドアからどんどん二人に進み――
「行け!アルベドさん!」
何もない空間を指をさすとアルベドの前に無詠唱化された
アルベドはピンと背筋を伸ばすと、今こそ自分の出番だと敬礼をしてみせた。
「かしこまりました!!フラミー様のご期待に私も見事応えてみせますわ!!えいっ!」
恋する乙女は
朝食の準備が進む傍で、フラミーとバトンタッチしたと言って現れたアルベドにシャルティアがドヤ顔をしていた。
「ア、ル、べ、ド〜!最初にアインズ様と一夜を共にしたのはこのシャルティア・ブラッドフォールンでありんしたねぇ?」
「ふん、順番など関係ないわ。私はあなたよりも数多くその時を迎えるのみよ。ねぇアインズ様?」
アインズは昨日のシャルティアとの楽しかったひと時を思い出していた。
「ん?あぁ、そうだな。皆を呼んで会を開くか。」
「み!!みんな!!アインズ様は大人数がお好きでいらっしゃるんですね!!」
「好き?まぁ、その方が多くのものが楽しめるだろう。」
「ななんて慈悲深い!!シャルティア、あなたよくやったわ!!」
シャルティアとアルベドが手をにぎり合うのを尻目にレイナースとクレマンティーヌは勘づき始めていた。
この方たちは多分噛み合ってない。
思い出話をしたがる可愛い娘二人にアインズは顔をほころばせる。
近いうちにナザリック大お泊まり会を開こうと心のメモに書き留めたのだった。
「アインズ様!モグラどもはここには王はいないと言っておりんす!」
シャルティアは大量に殺したクアゴアを放り投げた。ゴンドと目指して来た都市は
「なんでもフェオ・ベルカナとかいう都市でドラゴンと共に下賤の王は暮らしているそうです。そちらに半分は残っているようなので、ここの者達は皆殺しで如何でしょうか。」
アルベドは流石に聞き出す情報が細かかった。
「そうか、よくやったぞお前達。大裂け目の下にはドワーフの死体があるらしいからこいつらの死体は捨てるな。後でフラミーさんを呼ぶときにデミウルゴスも呼べ。毛皮が特殊だから何かにして売ったら良い税収になる可能性もある。見極めさせろ。」
アルベドとシャルティアは頭を下げ、残党狩りに向かった。
女子二人の仕事の早さにアインズはすっかり感心した。
皆殺しが済むと、アルベドの提案なのかサイズに分けて――更に頚動脈を切られ血抜きしながら積まれていくクアゴアをアインズは興味深げに見ていた。
どの個体も心臓は止まっているが、血は滴り落ちず、重力に逆らってシャルティアの頭上にぐんぐん溜まっていく。
ゼンベルはその圧倒的な殺戮を前に神は怒らせたら怖いと胸に刻んだ。
ゴンドは本当にこの王についていって大丈夫かと少し不安になった。
「アインズ様。これで以上でございます。全て整いました。」
アルベドの声に頷くと、アインズはナザリックへ
アルベドは一礼するとフラミーとデミウルゴスを呼ぶために入っていった。
フラミーとデミウルゴスは鏡を覗き込んでいた。
「アルベドさんは本当お利口ですねぇ!」
ソファに座るフラミーは後ろに立って鏡を覗くデミウルゴスと笑い合った。
「全くです。血抜きをしなければ皮には汚らしい血の斑点が出ることがありますし、瞬時にシャルティアのスキルを応用させるのは流石統括と言わざるを得ません。」
二人はアルベドの的確な働きに舌を巻いていた。
そして紫黒聖典の二人と同じく、ここの二人もなんとなくアインズと女子が噛み合っていない事を鏡越しに察していた。
つまり一番すけべだったのはやはりフラミーなのだが。
「じゃあ、そろそろ準備しますか?あー骨が折れそうだな!」
そう言って立ち上がり、うーんと伸びをするフラミーにデミウルゴスはずっと疑問だったことを口にした。
「フラミー様は疲労無効のアイテムをお持ちではないのですか?」
「ふー…いえ、有りますけど、ずっと疲労を感じないと時間感覚なくしちゃいそうで。それに夜眠れなそうですし。」
フラミーがはははと笑うと、デミウルゴスはその様子をわずかな時間見つめ、ゴクリと唾を飲み込み空中に手を突っ込んだ。
「…実は、このデミウルゴス。そうではないかと思いある物を作ってみました。」
取り出したのは真っ白な――長い茎を持つ蕾が朝露に濡れてそのまま時間から切り離されたように見える不思議なものだった。
綺麗…と呟くフラミーにデミウルゴスは安心してそのアイテムのなんたるかを語り出した。
「フラミー様の白い杖が珊瑚の骨ですので、聖王国の向こうの海から
ソファの前に回り込み、片膝をついてその蕾を恭しくフラミーの前に捧げる。
フラミーの瞳の中に花とデミウルゴスが浮かんだ。
「デミウルゴス、全くあなたのその図太い神経が羨ましいわ…。フラミー様、お分かりかとは思いますがアインズ様がお待ちです。」
アルベドの声にデミウルゴスは宝石の目を開き口をヒクつかせていた。
「あ、はい!デミウルゴスさん、ありがとうございます。私がこういうの欲しいってよく分かりましたね、嬉しい!」
フラミーはデミウルゴスから蕾を受け取ると、頭のお団子にプツリと挿した。
「い、いえ。こう見えて、私はフラミー様のお心の洞察には自信がございます。」
デミウルゴスはさっと頭を下げてから立ち上がりそそくさと闇を潜った。
「デミウルゴス、御身の前に。」
アインズの前に出ると悪魔は再び跪いた。
「来たか、向こうで見ていたとアルベドに聞いたぞ。さぁ、事情はわかっているかな?あれをどうするのがいいと思う。」
そう言ってアインズは背後に積まれたクアゴアの山を親指で指し示した。
「は。毛皮としてそのまま使用すると、国に招き入れたクアゴアと身に付ける者の間で諍いが発生しかねないので皮はスクロールに、硬い毛は撚って染めて絨毯にでもするのが宜しいかと。ふふ、是非それはクアゴアの暮らす建物に敷きたいものですね。」
上機嫌に残酷なことを言いながらも的確な判断にアインズは満足した。
「よし。それで良いだろう。お前とシャルティアにあれのナザリックへの運搬を頼んでもいいか?」
「もちろんでございます。この忠臣に何なりとお申し付けください。」
アインズはいい子だなぁと思いながら、血抜きを言いつけられ、手持ち無沙汰にクアゴアの前に立っている愛らしい吸血鬼を呼んだ。
「シャルティア。」
出番かと意気込んだシャルティアはクアゴアの運搬を頼まれると、ガクリと肩を落とした。
その後フラミーとデミウルゴスのスキルで呼び出された最低位の大量の悪魔達によって、裂け目下のドワーフ達が拾われた。
「…やりますか…。」
フラミーは次々と広い上げられてくる死体を前に呟いた。
すると、すぐに手が差し伸ばされた。
「お願いします、俺も手伝いますから。」
白い骨の手の上に手を重ねるとフラミーは杖を死の山に向けた。
アインズと手を繋いで魔力を借用しながら、フラミーは十人ずつドワーフを生き返らせ――やっぱりもう嫌だと嘆くのだった。
シャルティア!よくやった!!
ローブの背中がこうだと可愛いですよね!
このリボンをひっぱるとピラリってなったりしたらと思うとヤバイ笑いが込み上げてきます。
→https://twitter.com/dreamnemri/status/1131205852373774336?s=21
次回 #49 動き出す邪神教団