モモンガとフラミーが円卓の間で話していると、不意にノックが響いた。
顔を見合わせ、二人は高速で身なりを確認し――「入れ」と命じるのはモモンガだ。
「失礼いたします。モモンガ様。フラミー様。」
そう言って入室したセバスに続き、数十種類の紅茶の茶葉が乗せられたサービスワゴンを押すメイド、手の平より小さなプチガトーとプチサンドイッチが乗せられているサービスワゴンを押すキノコ頭の副料理長が入ってくる。
そして、続くは料理長。料理長の背には巨大な中華鍋が背負い込まれており、締まりのない上半身は裸だ。そして、そこには大きく「新鮮な肉!」と入れ墨が彫り込まれていた。オークによく似た顔立ちだが、彼はより野獣的なオークスという種族だ。
モモンガはワゴンの上に乗る美食であるに違いないものたちを前に、ないはずの唾を飲み込んだ。
この見た目の料理長が作ったとは思えない、実に繊細なガトーの数々だ。
「モ、モモンガさん!見て!見て下さい!すっごく美味しそう!」
犬なら尻尾を振ってハッハッと息を荒くするんじゃないかと思うようなフラミーの様子に羨ましくなる。
「見てますよ。はは……うまそうだなー……」
モモンガは苦笑していた。この骨の体では食事なんてとても出来そうにはない。この体が憎かった。
料理長――その名も、シホウツ・トキツ。
シホウツ・トキツは一見二足歩行の猪にも見えるほどにでっぷりとした体からは想像もつかない機敏さでモモンガとフラミーの下へ駆け寄り、即座に片膝をついた。
「モモンガ様!フラミー様!お疲れかと思い軽食をご用意いたしました!副料理長のピッキーがお取りしますので、まずはこの私よりメニューの説明をさせていただきます!」
シホウツ・トキツに紹介され、ピッキーは一歩前に出ると紹介するであろうプレートへ恭しく手を添えた。
美味しそうだと自慢の料理を早速至高の存在達に褒められ、シホウツ・トキツのテンションは相当上がっていた。
セバスはなんと幸せなんだろうか、と仕えることを許された今という時間を噛みしめた。
「それでは――」ごほん、と咳払いをしたシホウツ・トキツの背には気迫が炎となって立ち上がっている。――ように見えるほどだった。
それはまさしく、俺はやるぜ!俺はやるぜ!だ。
しかし、シホウツ・トキツの丁寧かつやる気満点だった説明はまるで呪文のようで、モモンガはもちろんの事、フラミーの頭の中にも何一つ残らなかった。
二人はリアルでは液状食料と呼ばれるパウチに入った物ばかり食べていたのだ。ちゃんとした料理の説明など受けたこともないし、下手をすれば食べたこともないかもしれない。
フラミーは欲張りすぎかと思いつつも、「とりあえず一つずつ」と言い、ピッキーはメイドと揃ってせっせと配膳をした。
「モモンガ様はいかがなさいますか!!」
「……うん、私もとりあえず一つずつ頼む」
「畏まりました!」
シホウツ・トキツはニッと男臭い満面の笑み――だと思われる――を浮かべ、ピッキーとメイドは流れる動きでモモンガの分も取り分けた。
食事はできないと思われるモモンガの前にも同じものが並んでいく。
いくつもカトラリーが並び、フラミーは一瞬目を白黒させた。大きなフォーク、小さなフォーク、二股のフォーク、小さなスプーン。とにかく大量だ。
どうしたものかと思っていると、ピッキーから「どうぞお召し上がり下さいませ」と小さく一声掛かった。
フラミーは恐る恐る一番小さいフォークを手に取った。
間違ってる!と言われない様子に内心安堵の息を吐き、桜色のスポンジケーキにフォークを入れ、口に運んだ。サンドイッチより先に甘いものに手を出してしまうのは女子のサガだろう。
「はわ〜!こ、こんなの……初めて食べました!」
瞳をキラキラさせる横で、モモンガは同じものをつまみ、くんくんと匂いを嗅いでみた。
ほのかに花の香りがする上品そうなものだが――液状食料ばかりを口にしていたので味の想像は難しい。
「いかがでございましょう!味のみならず、目、鼻、食感、触感で楽しめるラインナップにいたしました!!」
「そ、そうか。うん。そうだな。素晴らしいぞ。うん、すごく、こう、良い香りだ。感謝する」
「ははぁ!しかし、感謝など!私めにはもったいのうございます!!」
モモンガは「そういう感じなの……?」と心の中で呟く。もはやNPCが敵対するのなんのと、馬鹿らしい疑いのようにすら思えた。
男二人のやりとりをよそに、続いてフラミーが口にしたのは抹茶味の緑色のつるりとしたドーム状のケーキだった。
モモンガがフォークで切ってみると、中がババロアだったため蕩けるように簡単に二つに割れた。
「モモンガさん!これも美味しいですよ!」
「うん、美味しそうです」
「フラミー様、ありがとうございます!モモンガ様もいかがでございましょう!!見て飽きぬ一品ではございませんか!」
シホウツ・トキツは少し暑苦しかった。しかし、まさしく見ていて飽きない品揃えだ。
なので、モモンガは素直に頷いた。
「まさしくその通りだな」
フラミーはペロリと一つを食べてしまうと、紅茶を一口含み、幸せな唸り声を上げ次に手を伸ばした。
縦に細長いガラスの器に入ったフランボワーズのムースは白いパンナコッタと層を成していて、甘酸っぱい香りだ。
「これ!液食に近いですね!」
「なるほど、確かに」
モモンガは器にチョイと指を入れる。行儀が悪いことはわかっているが、こればかりは舌触りのイメージが付きやすい。
そして、戯れにムースを口元に運んでみた。
(……ま、無理だよな)
当然のように舐めることもできずに手を戻した。
後ろからセバスにそっとナプキンを差し出され、ちょちょいと指先を拭いた。
先程のシホウツ・トキツとのやり取りから言って、ありがとう、と言うべきなのか少し迷い、モモンガは口を開いた。
「セバス。助かった」
「いえ。当然のことでございます」
応えたセバスは満面の笑みを浮かべていた。
続いてフラミーは小さなレーズンの入ったパウンドケーキを直接指先でつまむと、ほいっと口に放り込んだ。
素朴ながらパサパサせず、たっぷりのバターでしっとりと焼きあがっている。
うっとりと両頬を包む様子を見ていたモモンガは己の口元を撫でた。
(ある種の拷問だなぁ……)
続いてクルミの乗ったプチタルトはフラミーの口の中からクリスピーな音を立てた。
持って鼻に近づけずとも、香ばしい香りが漂っている。シホウツ・トキツが食べずとも楽しめると言っていた意味がよくわかる。
こくんっと飲み込むと、フラミーはフォークを持ち直した。
「んふふ〜」
実に楽しげだった。
取ってもらったデザートは次で終わりだ。
最後に残ったミルフィーユはいちごと生クリームが重なっていて、てっぺんに乗るいちごにはさらりとかかった粉糖がまるで雪のようだ。
フォークで押すと、挟まっているクリームがわずかにくにゅっとはみ出し、パリパリと小気味良い音を立てて割れていった。
モモンガはその様子をまじまじと見ると、自分の分もフォークで崩してみた。気持ちがよかった。
(こんな食べ物があるんだな……)
簡単に小さな口に吸い込まれていき、フラミーはほふっと息を吐いた。
「わたし……しあわせです……」
しみじみと漏れ出た声にモモンガは軽く笑った。
「それは何よりです」
ギルドメンバーの幸せを見られる幸せに心が軽くなる。
しかし、あまりにも羨ましい様子だった。
「フラミー様、よろしければこちらもお召し上がり下さい。こちらは私めから料理長へ提案したものでございます」
そう言ってピッキーが差し出したのは乙女の夢のように色とりどりのフィナンシェやマドレーヌのアソートが入ったカゴだった。
フラミーはやはりひとつずつ口にした。
「どれもおいしいです!シホウツ・トキツさんは天才です!」
手放しの賛辞に料理長の腹以外に生えている赤毛がピンと逆立ち、フンスー!と長い鼻息が出た。
「ははぁ!!ありがとうございます!フラミー様!!この私、シホウツ・トキツに料理長を任せてくださった至高の御方であられる――あまのまひとつ様もフラミー様のお言葉にお喜びのことと存じ上げます!!」
「そ、そうですね。ピッキーさんもすごいセンスいいです!ありがとうございます!」
ピッキーはキノコ頭の赤いプルプルとした部分からルビー色の滴を軽く垂らし掛け、すぐに拭いた。
「と、とんでございません。身に余るお言葉」
深々と頭を下げながらそう言う。
フラミーとモモンガは目を見合わせ、やはり「NPCはこういう感じなの?」と心の中でつぶやいた。
空気を変えようと、フラミーは紅茶で口の中をさっぱりさせてから口を開く。
「ふー……っと、どれをとっても美味しかったです。サンドイッチも後でいただきます。ね、モモンガさん」
NPC達がクワッと目を見開いた気がした。
が――モモンガのその赤い瞳は悲しく揺れたような気がした。
「あ……でも……も、モモンガさ――ま……の……前では食べるの……やめようかしら……」
わざと様付けで呼ぶフラミーに、モモンガは慌てた。
「あ、いえいえ。気にしないでください。シホウツ・トキツの言う通り、匂いや食べてる姿を楽しんでいますから!」
そうは言われたが、なるべく食事はモモンガの前では控えようと思ったフラミーだった。
が――そんな事を許すシホウツ・トキツではない。
「フラミー様!モモンガ様!分かっております!!」
何が?とモモンガは思った。
「この私がモモンガ様とフラミー様――至高の御方々に相応しいお料理をご用意いたします!それも、一週間かけても終わることのない宴でございます!!これより我が守護領域たる食堂は死地!!素晴らしい宴と――」
NPC達から「おぉー!」と賛成一色の感嘆と拍手が上がる。
「――いや、いやいやいやいや」
フラミーが即座に言い始めると同時に、モモンガも全く似たような反応をした。
「――お、おいおいおいおい。待て、待て待て待て!」
「ははぁ!」
猛烈な気迫だった。
「そ、それは流石にやりすぎだ。第一私は食べられない。フラミーさんが欲する分を作ることは全く構わないが、私にまでその料理を用意することはない。勿体無いだろう」
「何をおっしゃいますか!!フラミー様はもちろんのこと、モモンガ様のために使用する食材に無駄などあるはずがありません!なぁ!」
そうだろ、皆と振り返ったシホウツ・トキツに、全員が拍手をすることで意思を示した。あのナイスミドルなセバスもだ。
モモンガとフラミーはとんでもない宴を始めないように、フラミーが食べる分だけを通常の想定される量で用意するよう、シホウツ・トキツ達を説得した。
それはとてもとても長い時間がかかり、二人はユグドラシル終了から最も疲れる時間を過ごしたのだった。
シホウツ・トキツ達が立ち去り、サンドイッチまで食べ終わったフラミーもトイレへ立ったところで、モモンガはセバスとメイドへ振り返った。
「セバスよ。今日はもう休んでいいぞ。私は睡眠を必要としない体だが、フラミーさんは流石に休みたいだろうしな」
フラミーも睡眠や疲労無効アイテムを装備しているだろうが、夜は寝るものだ。
「では、フラミー様のお休みのお支度をするように別のメイドへ伝えてまいります」
え?寝るのに支度がいるの?と、小学生の頃に亡くした母親しか女性を殆ど知らないモモンガは少しだけ驚いた。
セバスの背中を見送り、部屋の隅に立つ一般メイド六人に視線を送る。
(ホワイトブリムさん、ヘロヘロさん、ク・ドゥ・グラースさん達の愛娘かー。フラミーさんは女性だし、一般メイド達ともしかしたら仲良くなるかもな)
そんな事を考えていると、扉がバン!と音を立てて開けられた。
驚いて振り向けば、そこには紫の顔を青く――すっかり血相を変えたフラミーが立っていた。
「も、も、も、モモンガさん……!大変です!!」
メイド達と、表に立っていたコキュートス配下のクワガタのような蟲型モンスター達がひどく慌てた様にオロオロしている。
モモンガもただならぬ様子に慌てて立ち上がりフラミーの元へ駆け寄った。
「どうしたんですか!?侵入者ですか!?」
一レベルに過ぎない一般メイド達は怯え始めていた。――が、戦ってみせる!と謎の気合を入れている。
「ち、ち、ちがいます。違いますけど――あのっ……私の部屋に来てください!!」
フラミーの自室へ向かって廊下を翔ける二人の姿を、全てのしもべ達が驚きを持って目で追った。
この二人でなければ、第九階層の廊下を駆けるなど許される所業ではない。
部屋に着けばセバスの指示のもと、ベッドを美しく整え、シーツでアートを作り、花をそこら中にまいているメイド達の姿があった。
それは新婚旅行で海外ホテルに泊まるとよく見る演出のようだった。
フラミーは未だ落ち着かぬ様子で通達する。
「皆さん、あの!色々して下さってるのに申し訳ないんですけど、お部屋を出てください!」
押し出す様に全てのNPCを外へ追い出し、無理矢理扉を閉め、何やら魔法をかけた。
「<
モモンガはハラハラしすぎて鎮静と昂りを繰り返していた。
「そ、それでフラミーさん、何がどうしたって言うんですか!?」
「モモンガさん、お願い!笑わないで聞いてください!!」
「何ですか!?笑いませんよ!!」
フラミーは青くなっていた顔を赤紫にするとローブのスカートを握り締めて言った。
「今、今おトイレに行ったら何もかもが正常なのに、茶釜さんみたいなのがお股についてたんです!!」
叫ぶフラミーの金色の瞳の端には涙が浮かび、螺鈿細工のように光を反射させた。
(……は?)
モモンガはパカリと骨の口を開けた。
ただただその言葉を頭の中で繰り返す。
茶釜さん――ぶくぶく茶釜と言えば、怪しいピンク色の男根姿のアバターだった。
男根アバターが付いているということは、この人は男なのかと数度瞬いた。
しかし、フラミーの顔はどう見ても女だったし、胸の膨らみもあった。何もかもが正常なのに、ということは蛇足のようにそれだけが付いているのだろう。
「こんなのあんまりです。私、女の子なのに男の子にもなって……こんな……こんな……」
両手両膝を床につけ、崩れた様に座り込むフラミーに、モモンガはそっと肩に手を置いた。
「すみません。なんか、想像したことと全然違った分良かったというか、良くなかったと言うか……。いや、その、なんて言うか、二つあれば、何かと便利なこともあるかもしれませんよ……?」
と言いつつ、どちらから排尿するのだろうとモモンガは益体も無い事を考えていた。
「便利って何が便利なもんですか!これじゃもう私お嫁に行けませんよぉー!」
翼をペタリと床に落とし、心底落ち込んでいる様子のフラミーの背をさすり、なんとか慰めていると、扉が強く叩かれる音が鳴った。
「ん……?」「はぇ……?」
二人で何事かとそちらを見ると、どんどん音が強くなっていく。
このままでは扉が壊されてしまうんじゃないかと思うほどに、音は衝撃へと変わっていった。
フラミーは立ち上がり、扉にかけた無駄に高度な魔法を解除し、観音開きの扉の片方を開けると、シャルティアとコキュートスがもつれる様に部屋に転がり込んできた。
「フ、フラミー様、何があったんでありんすか!?」
「扉モ開カズ、中ノ音モセズ、不敬カトハ思イマシタガ、我ラ守護者、御身ニ降リ掛カル物ヲ薙ギニ参リマシタ!!」
どうやら力自慢のこの二人と、セバス、アルベドでドアを開けようと必死になっていたようだ。だが、
外にもズラッと守護者だけでなくしもべ達がおり、皆戦々恐々といった雰囲気だ。
フラミーはなんで集まってるの!と心の中で叫んだ。
「あの……ごめんなさい、ちょっと皆には言えない重大な事実が判明してしまったもので……」
NPC達は自分達には言えない重大な事実というものに必死に考えを巡らせ、最後は全員が自分たちの無力さを呪うように重く暗い雰囲気をまとって足下に視線を落とした。
「えーと……皆の者。私の口から説明しよう」
モモンガの威厳のある声に全員が顔を上げる。
「え!?そんな!嫌ですよ!やめて下さいよ!」
フラミーはモモンガのローブのフードから垂れている紫の帯のような部分を握り両手でビンビン引っ張りだした。
そっとモモンガはフラミーの頭に手を置くと――「俺に任せてください」と、小さな小さな、ユグドラシルでよく聞いていた優しい声でフラミーの瞳を覗き込んだ。
もうどうにでもなれ!と投げやりになったフラミーは背中を向けてモモンガの斜め後ろへ立った。
NPCの顔を少しでも見ずに済むようにしているようだ。
逆にモモンガはNPC全員の顔を滑らかに見回し、口を開く。
「フラミーさんは実は、リアル世界へ渡る力を失ってしまった事に気がついたのだ」
ざわりと場が揺らぐ。
「今確認したところ、世界を渡る力を私も失ったようだ。いつか取り戻せるかも分からないが、私とフラミーさんの世界へ与える力が弱まったことをフラミーさんは皆には伝えたくないと、このような状況になってしまったわけだ」
NPC全員が真剣に耳を傾ける中、フラミーも肩越しにモモンガの語りに耳を傾けた。
「だが、私は敢えてそれを皆に伝えよう。私たちの不出来や弱い力を皆で補ってほしい」
守護者の視線は火がつくような温度を感じるものになった。
「皆の望む、"至高の存在"というものでいられずに申し訳ない。そして、皆、頼む」
そうモモンガが頭を下げると、フラミーも振り返り、並んで頭を下げた。
すると、アルベドが真っ先に叫んだ。
「そ、そんな!滅相も無い!お二人は、ただここにいて下さるだけで十分でございます!」
「そうです!!おやめ下さい!セバス!お二人の頭をおあげしろ!」
「そんな!デミウルゴス様!至高のお二方にそのような……!」
『っく――頭をお上げ下さい!』
「あわわわ!ぼ、ぼ、僕たちがきっと、きっと!その!お二人をお守りしますから!」
「そうですよ!マーレの言う通りです!それに世界を渡る力がなくったって、お二人は至高の存在に変わりないんですから!」
「ソノ通リデス!ドウカ、オ戻リ下サイ!」
「ど、どうしたらいいでありんすかー!!」
大パニックだった。
想像を絶するパニックに二人は頭を上げる気持ちが重くなった。
シホウツ・トキツがあまりにも暑苦しかったため、NPC達の暑苦しさをこれで払拭できると思ったのだ。
うまい言い訳を思いついたと閃いたはずだった。
ペロリと発言してさっと頭を下げ、なおかつ自分達は皆の言う"至高なる存在"とかいうものじゃないという事を軽く告げるだけのはずが、想定とは違う事になってしまった。
ようやく二人が頭をあげると、全員の顔には凄まじい疲労が見えた。
アルベドはほっと息を吐くと、軽く咳払いをした。
守護者達から始まり、集まってしまったしもべも早急に綺麗に並び、アルベドが代表して口を開いた。
「ご命令、承りました。我ら守護者、しもべ一同、全ての力をもって御方々の欠けたお力を補うよう努めます」
「「「「「「努めます」」」」」」
その直後から大量の護衛がついた二人は、わずか三十分で音を上げ、
「ま、まぁ欠けたとは言え世界を渡る力だけだからな?」
そう言ってなんとか今まで通りの護衛に戻してもらったのだった。
この話を書いたのは随分前ですが、男爵は最新刊を(現在2022/08/12)読み始めました!
料理長がついに出てきたので、こちら大幅加筆修正しました!