眠る前にも夢を見て   作:ジッキンゲン男爵

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#65 眠る前にも夢を見て ≪最終話?≫

「君はこの世界でも神になると言うのか………………」

 

「……あぁ。なってみせるさ」

 神様だった事は一度もないし、これからも本当にそれになるかなんて解らない。

 しかしもうこの際原始人には神と呼ばせたままでいい。

(いや、スルシャーナとかいうプレイヤーのせいで最初から俺は神さま呼ばわりだったか。)

 アインズは苦笑した。

 

「ツァインドルクス=ヴァイシオン、世界の決定に協力しろ。世界はお前が思うより複雑だ」

 

「……アインズ、君は本当にこの先現れるぷれいやーと戦ってくれるのか……」

「戦うとも。俺たちの概念で世界を汚す者だと認めたらな。あぁ。後はアインズ・ウール・ゴウンに手を出す者もだが」

 ツアーは悩んだ。

 今このぷれいやーと血で血を洗う戦いを始めるのが正解なのか。

 一度はこの者のやりたいようにやってみせてから次の揺り返しに備えるのが正解なのか。

 

 ツアーは拒むように組んでいた手を下ろした。

「君達はぷれいやーを殺してまともでいられるんだろうか……」

「俺は別に何も感じない。フラミーさんは……辛いですか……?フラミーさんが嫌なら、別に戦いに参加する事はないんですからね」

「知ってる人達だったら思うところもあります。だけど、世界を美しく残す事よりは後から現れるプレイヤーの命の優先度は低いですよ!」

 ツアーは気付いた。

 この二人は既に精神に大きく変容を迎えていると。

 それでも尚落ち着いているこの二人なら――

 

「ツァインドルクス=ヴァイシオン」

 ツアーが思考に没頭しかけると、アインズに呼び戻された。

「ツアーでいいよ」

「そうか。ツアー。俺は世界を守るためにも、お前にあの日聞きそびれた事を聞きたい」

「……構わないとも」

 

 アインズは頷くと手を伸ばした。

「ギルド武器はどこにある」

 

 ツアーは何故それを知っているんだと竜の体に冷や汗をかく。

 このぷれいやーは流石にぷれいやーに崇められるだけあって智謀も力もインフルエンスも何もかもがこれまでの者達に比べて飛び抜けている。

 最初から自分の名前を知っていたり、おかしい事はたくさんあった。

 だからこそ、一体いつからこの世界にいたんだと疑い続けた。

 ――ツアーは聞かなければいけない大切な事を思い出した。

「アインズ。その前に君はあの魔樹――ザイトルクワエを知っていたのかい」

 

「なぜ今ザイトルクワエなんだ…………?」

「……あれは君が起こしたのか?」

 眼前の死はなんで?とフラミーと首を傾げ合っていた。

「いや、あれはユグドラシルの物だったが、初めて見るボスだった……。どこに居たのかも知らん。お前あれが欲しかったのか?」

 ツアーのドラゴンとしての鋭敏な感覚が嘘をついていないことを見抜いた。

 “リーダー”達と共に討伐したあれの枝を思い出す。

 

「そうか……。偶然だったのか……」

「似たものなら出してやる。さあ、ギルド武器の場所を教えろ」

「いや。あんなものいらないよ。それと、ぎるど武器はぷれいやーには渡せないし、場所も言えない。それが誰であっても」

「……そうか」

 アインズはわずかに苛立った。

「あれは僕が持っておく。君の言い分はよくわかったけれど、力を持ち過ぎればそれを行使したくなる」

 

「仕方ないやつだ。ギルド武器の破壊は世界征服のためにもプレイヤーとの戦いのためにもなると言うのに。知識と技術を早急に制限しなければすでにミノタウロスが余計な真似をしているんだ」

「……僕はまだそれが正解なのかわからない」

「お前は何もわかっていないんだ。安心しろ。百年後に解らせてやるさ」

 

 アインズはため息を吐くと、ここからが本題だと言わんばかりに眼窩の炎を燃やした。

「さて、次はお前が俺に仲間を傷つけさせた罪についての話をしよう。お前はそれを償う必要がある。わかるな」

 その瞳はこれまでの穏やかなものではなかった。

「よく解らないけど……悪かったね……」

 ツアーは鎧越しのはずのその瞳に一瞬背筋が凍るような思いがした。

 もはやその瞳からは炎が上がっているかとすら思えるほどの激しい緋だ。

 

「いや。謝罪はもはや意味を成さない。償いとして俺はお前達ドラゴンから始原の魔法を取り上げる。これから現れるプレイヤー達と戦うためにもな」

 

 突然の宣言にツアーは一瞬言われている意味がわからなかった。

 

「なに?まさか!待て!!それは明らかに世界を汚す行為だ!それは世界を蹂躙することと同義じゃないか!今までの話はなんだったんだ!!それにそんな事をされたらぎるど武器も国も……世界だって守れなくなる!」

「ツアーよ。国は我が神聖魔導国に降ればいいだけの話だ。ギルド武器も持て余したら俺に寄越せばいい。だから今は取り上げないでやろう。……お前は俺が"仲間と子供という領域を侵されなければ(・・・・・・・)世界を蹂躙しない"と言ったことを忘れたか。俺はこんな真似をするつもりはなかったんだ。お前があんな事をするまではな」

「そんな…………まさか…………」

「俺が責任を持って働くさ。PKには自信がある。しかし……ちゃんと理解できたようだな。ご褒美だ。選ばせてやろう。一つ目を言うぞ。よく聞け。この国の滅亡とギルド武器の破壊、ドラゴン種の絶滅、つまりお前の命もここで終わるという選択肢。二つ目は今大人しく始原の魔法を手放す。以上だ。俺は慈悲深いと有名な神だからな。どちらがいい」

「君はその体に精神を引き寄せられ過ぎているんじゃないか!」

「いいや。俺は元から仲間のために全てを捧げる男だよ。ツアー」

 どちらも選べない。

 ツアーはアインズ・ウール・ゴウンに手を出した事を心底後悔した。

 

「頼む……僕が悪かった……。君達の事をよく知りもしないで……心から謝るよ……」

「ダメだ。お前は俺……いや、私と交わした"世界を蹂躙しなければ手を出さない"という約束を破った。私達は世界を守るために平和的に統治を行なっていただけなのに。神と交わす約束の重さを思い知るんだ。ツァインドルクス=ヴァイシオン」

「アインズ!!!」

 壊された鎧よりも劣るこれで果たしてどれだけの事ができるか。

 それでも時間を稼いで自分の中を流れる始原の力を呼び出し、集め始める。

それは詠唱に似ていた。

 掴みかかろうと駆け出す鎧とアインズの間にすかさず守護者が立ちはだかり侵攻を止めた。

「アインズ!!話せばわかる!!頼む!!」

 なんでもいい、時間が必要だ。

 良いぷれいやーかもしれないと解ったが、それを奪われるくらいならやはり倒さなければならない。

 

「選択は成ったな。お前はどうやら生きたいように見える!」

 アインズは空いていた左手薬指に指輪をはめた。

「アインズさん、それを使うんですか!」

「大丈夫です。今後現れるプレイヤーくらいこれが無くてもなんとかなりますよ。なんせ知ってる魔法を使う相手ですから。俺を信じてください。貴女はどうか、なにも心配しないで」

 その瞳はいつものモモンガの物だった。

俺は願う(I WISH)!!」

 そして青白い魔法陣が回りだす――。

 

「やめろ!!!やめてくれ!!!」

 ツアーは鎧の体で絶叫するが、もう分かっている。

 ――間に合わない。

「ドラゴン達の始原の魔法を取り上げ俺の物にしろ!!」

 願いが口にされると指輪は封じられていた力を解放し――

 アインズは目の前が真っ白になった。

 

 始原の魔法。

 世界が生まれた訳。

 この世の全ての理。

 生きとし生ける者達の太古の記憶。

 鈴木悟は頭を駆け巡る激しい情報の中、ふと遠くに小さなトカゲがいるのが見えた。

『君、なぁに?』

『君こそなぁに?』

『僕は鈴木悟!君は?』

『僕はツァインドルクス=ヴァイシオンだよ。君は変わったドラゴンだね。』

『はは!ドラゴンだって!おかしいの!』

『な、なんだよ!僕だって立派なドラゴンになるんだ!』

『じゃあ、僕は、僕はね――――――――――』

 

 激しい耳鳴りの中、目を開けるとフラミーが心配そうに何かを言っているのが見えるがなにも解らない。

「俺は……神になるのか……」

 その言葉と同時に鎧はガシャン!!と音を立てて崩れた。

 アインズはこの世界に来て初めて眠った。

 

+

 

 見たこともない巨大な黒竜が怒りに荒れ狂っている姿が見える。

 逃げるか?戦えるか?

 いや…………あれは一人では――――。

 

+

 

 アインズが目を覚ますと、そこは第九階層の自室のベッドの上だった。

 その身に迸る激しい力に頭がクラクラする。

「ふ、ふらみーさん……」

 碌に動かない体で友の名を呼んだ。

 慌てて誰か――おそらくアインズ当番だろう――が何かを言いながら走っていった。

 その音に意識が研ぎ澄まされていく。

「うぅ……信じられん……アンデッドなのに眠ったのか……」

 なんとか片手を動かし額にあてると扉がバタンと開く音がする。

「アインズさん!アインズさん!!」

 慌てて掛けてくる気配はベッドに乗って這ってくるとアインズを覗き込んだ。

「――ふらみーさん……。俺眠りました……?」

「ね、眠ってました…………。骨だから呼吸もしないし、最初は本当に死んだかと思いました。私、私……ごめんなさい、本当にごめんなさい……」

 言い切る前から泣き出すフラミーを前に、確かに呼吸も脈もない骨が眠れば生きているか死んでるか解らないよな、と薄い笑いが漏れた。

 涙が止まらない様子のフラミーの頭を撫でながら、死ななくてよかったとアインズは思った。

 自分が死んだらこの風変わりな女神の相手を誰が――デミウルゴスか?

(いや、あいつには荷が重いな。)

「はは、なんですか起き抜けに……。あぁ……埋葬されなくてよかったな……。何か……眠る前にも夢を見た気がするんですけど……なんだっけな……全部忘れちゃいました……」

 一生懸命話すアインズにフラミーは笑いかけてむき出しの頭蓋骨を撫でた。

「夢なんて覚めれば忘れるものですよ……。アインズさん、お願いですからもう二度と眠らないでください」

「はぁ……眠るのって気持ちいいと思ってたんだけどなぁ。思ったより気持ち悪かったです……はは。もう眠りませんよ。安心してください」

 フラミーに抱き起こされると、開いている扉の枠を叩く鎧が目に入った。

 

「アインズが目を覚ましたって?」

「ツアーさん」

「全く。人の力を奪って倒れるなんてどんな神様だ君は」

 鎧は開いていた扉から無作法にも部屋に入ってくる。

 

「……ツアー……何故ナザリックに……。それに、始原の魔法を持たないはずが何で……」

「これかい。フラミーに教えられた位階魔法で動かしてるよ。フラミーを僕の家に招いたせいで家の場所がバレた。だというのに僕は昔と違ってこれが今どこにあるのかまるで感じられない。お陰様でね」

 不愉快そうなツアーにふふふとアインズは笑った。やっぱり奪えたんだと。

「そうかツアー……。位階魔法も悪くないだろう。始原の魔法はもう本当……最悪だ……」

 ガンガン痛む頭を押さえながら、フラミーに肩を貸され何とか立ち上がった。

 いつのまにか最強装備は装飾の少ないただのガウンとズボンに着せ替えられていた。

 自分の体と、肩の下で嬉しそうにするフラミーを交互に見る。

「……俺おじいさんみたいですね……」

「おじいちゃん一週間も眠ってたんですからね。さぁ、ボケないうちに子供達に会いに行きましょうね」

「一週間…………おばあさん、今後は俺の許可なく勝手にこの鎧をナザリックに入れちゃいけませんからね……。……ツアーよ、お前はずっとここに居たのか?」

 アインズは笑うフラミーから鎧へ視線を移す。

 鎧はチラリと肩の下のフラミーに顔を向けてから話し出した。

「――いいや。評議国の属国化案をお宅の邪悪極まりないデミウルゴス君とアルベド君と、それから無垢そうな君の息子と話し合いに来たところだよ。今日ようやく招かれてね」

「そうか。はぁ。一週間もあったらそうなるな……。あー仕事溜まってるだろうなぁ……フラミーさん、俺やっぱりもう少し寝たいです……」

「だ、ダメです!お願いします!ここで寝たら何でもやり放題だってアルベドさんとシャルティア呼びますから!」

 フラミーの妙に鬼気迫る様子にアインズはくすりと笑った。

「それはこわいや」

 

+

 

 寝室を出ると、そこには泣いている守護者達が跪いていた。

「あぁ、お前達……心配をかけたな」

 アインズはフラミーに掴まりながらゆっくりとソファに座った。

「アァインズ様!!ああ……もしお目覚めにならないような事があったら、私達は手始めにこの邪悪な竜の持つ国を滅ぼし、その後に世界を破壊しなければいけないところでしたわ。本当に良かった……私の愛しいお方……」

 アルベドが泣きながら言った恐ろしい言葉を鎧は頭をかきながら聞いた。

「ふふ、そうだな……。あー俺生きてますよ……タブラさん……ペロさん……建御雷さん……茶釜さん……ウルベルトさん……」

 アインズはNPCの向こうの親達に生還を伝えた。

「アインズ様、お加減はいかがでありんしょう」

「あぁ、シャルティア。良くはないな……。力が漲りすぎている感じがする。でもお前達の顔をみたからな、すぐに良くなるとも」

 

「アインズ様ガオ眠リニナルトイウ事ガコレ程マデニ恐ロシイ事ダトハ思イモシマセンデシタ」

「コキュートス、お前にも心配をかけたな……」

「このデミウルゴスは、必ずやアインズ様は再び目を覚まされると確信しておりました」

「アインズ様が眠ってらっしゃる間、あたし達たっくさんフラミー様のお手伝いをしたんですよ!」

「そ、そうなんです!僕たちそれで、その、アインズ様が起きてからのお仕事を少しでも減らすんだって!た、たくさん、その、頑張りました!」

 

「そうか、そうかそうか。皆よく自分達の役割を果たしてくれたな」

 外から何かが激しく走ってくる音がすると、扉がバンと開かれた。

 

「父上!!!」

 アインズは鎮静された。

 

「パンドラズ・アクターよ。なぜそのように私を呼ぶ」

「ん?彼は君の息子なんだろう?これが普通じゃないか」

 鎧が首をかしげる姿からその理由がわかった。

「ツアー、息子は息子だが別に腹を痛めて産んだんじゃない息子だぞ……」

「息子は息子だろう、アインズ」

 

 アルベドが心底不愉快だという具合にツアーを睨む。

「ツァインドルクス=ヴァイシオン。あなたの話し方は不敬よ。従属する国の王、それも神を前にその態度はないのではなくて」

 パンドラズ・アクターは滑り込むようにアインズの前に跪くと父の手を取って顔をスリスリとなすりつけていた。

 いつもは鬱陶しいと思う息子だが、アインズは今日ばかりはと帽子の上から頭を撫でた。

「アインズ、僕の話し方はダメかな?」

「……いや、構わない。許してやるさ。始原の魔法を取り上げる事でお前の罪は許された。俺の中ではな」

「そうかい。それは良かったよ。フラミーも僕を許してくれるかな。悪い事をしたね」

「いいえ、私は何も。アインズさんが良いなら、私も良いですよ」

 フラミーは笑ったが、瞳の奥にはどこにもぶつけられない怒りが宿っていた。

 ツアーはそれが自分に向けられたものではなく、フラミー自身に向けられたものだとわかっていた。

「……それは良かったよ」

 

「ふぅ、それにしてもセバスはどうした?」

 ぷりぷり怒るアルベドから目をそらしてデミウルゴスに視線を投げた。

「は。セバスには国の者達にアインズ様が目を覚まされた事を報告に行かせました」

「よし。的確な判断だ。では私は着替えるとしよう。お前達は…………」

 守護者達は立ち去りたくないという瞳でアインズを見つめていた。

 

「全く仕方のない子供達だな。いいだろう、好きなだけここにいなさい」

 

 優しい神は一週間ぶりの笑顔を見せた。




次回 #66 閑話 だってだって女の子だもん

ふぅ、そろそろ気の抜けたラッキースケベが読みたい頃ですよね?
読みたいですよね!!!
閑話なので12:00更新です!

一応1話を書いた時から想定していたストーリーの着地点には来てしまいました。
1日1話から多い日は4話という猛烈な勢いで上げ続けたこのお話はたった一月半で65話にて着地しました。
あまり自分でお話を考える力がないので原作ありきのネームド救済作品でしたが、毎日読んでくださる皆様のおかげで本当に楽しく書けました!

と、最終回っぽいことを言いましたが、ビーストマン蹴散らして、都市国家連合も行かなきゃならないし、八欲王の空中都市も行かなきゃいけませんね。
後はミノタウロスに会いに行くのと…とにかくやる事はたくさん。
それに、皆のおバカ可愛いラッキースケベも足りてないですし、何よりアンケートの結果をちゃんと書かないといけませんぜ。
二人が寄り添うようになるまでまだもう少しやきもきさせてから、ゴールインですね!(やきもきしたがり
蛇足になるのが心配ですが、パパもっと続けちゃうぞぉ!
最終話の概念が壊れていますが今後もよろしくお願いいたしますm(_ _)m

そしてアンケート締め切りました。
皆さまご回答ありがとうございました!
結果は以下でした。アインズさまの圧倒的パワーですよ!

フラミーさんの運命やいかに…!!

  • アインズ様とプレイヤー同士愛し合え!!
  • デミデミの恋を成就してくれ!!
  • 二人の間をのらりくらりで決着つけるな!
  • ハーレムこそ正義!二人をくっつけ!
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