眠る前にも夢を見て   作:ジッキンゲン男爵

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#3 ドラウディロンの来訪

 アインズは飲食が出来ないため一足先に部屋に戻っていた。

 フラミーと守護者二名は漆黒聖典と共に食事を取っている。

 ツアーもどこかで適当に鎧を放置し、竜の体で食事を取るそうだ。

 竜の巨体を維持するのに果たしてどれだけの食事量が必要なのかアインズは少し気になった。

 

 余計な思考を追い払うと、キョロキョロと念の為に誰もいないことを確認してからアインズはノートを取り出した。

 来る途中に二度参加した勉強会の内容は、ツアーやデミウルゴス、シャルティアもいる手前ノートにも取れずに必死に頭に叩き込んでいた。

 今こそ復習の時である。

 ここぞとばかりに、記憶したあらゆる情報を書き込んでいく。

 自分が確実に支配者として成長していく手応えにアインズはほくそ笑んだ。

 

【挿絵表示】

 

 やっと四分の一程まで来たというところでノックが響いた。

 フラミーはまだ食事をしている筈だし、デミウルゴスあたりが気を使って戻ってきたか。

 久しぶりに自分で外の者を確認するために立ち上がり、扉へ向かう。

「どなたかな。」

 メイド達を真似、少しだけ扉を開けて来訪者を確認する。

 そこには、オフショルダーのネグリジェに透けたようなガウンを羽織ったドラウディロンがいた。

 スカート丈はかなり短く、よく見れば胸元、ヘソ、股間のたった三点のリボンでネグリジェは止まっているようだった。

 謁見時もかなり露出のある服を着ていたため、この女王は余程その身に自信があり常に薄着なのだと見えた。

 

「し、神王殿……。その…あの…そのな……。」

 モゴモゴと何かを言う様子に話し忘れたことがあったろうかと考えるが、特に何も思いつかない。

 デミウルゴスに伝言(メッセージ)を送ろうと手を上げると、目の前の女王がびくりと身を震わせた気がした。

 しかし食事中だということにすぐに思い至るとその手を下げ、アインズは世間話で間を持たせることを決意した。

 

「オーリウクルス殿。どうかしたかな。」

 もごもごと聞き取れない何かを言おうとする女王に少し焦れるが、何か大事な話をしようとしている雰囲気は伝わってきた。

「…兎に角入りなさい。」

 アインズは扉を開き、女王を部屋に招き入れた。

 

 妙に緊張した様子の女王に、何故かアインズも少し緊張する。

「あー…ナザリックだったらメイド達に茶ぐらい出させるのだがな。」

 頬をポリと掻きながらソファセットへ座り、未だ扉の前に立ち尽くす女王に手でソファを勧める。

 女王はタタタと走りソファに座った。

 リアルの年齢だったら二つくらい下だろうかと見えるその女王は、短すぎるスカートをもじもじと引っ張り、パンツが見えるのを恐れているようだった。

 それならそんな服着なければいいのにと、女性のファッションは分からんとアインズは内心独りごちてベッドへ向かう。

 妙に視線を感じるが努めて無視し、毛布を一枚取ると女王の膝にかけた。

「あ……。」

 

 それ以外何も言う様子のない女王に、アインズは用がないなら復習の続きをするためにも帰ってほしいと思うが、あることに気が付いた。

「私は執務を行なっていたところなので切りのいいところまで行わせてもらおうかな。 」

 この世界の人間は日本語が読めないので、どんなに愚かな言葉を書いていてもバレないのだ。

 女王が何かを言い出すまでは復習をしよう、そう思った。

 

 アインズが立ち上がると女王は再び怯えたように体を震わせたが、聖王国でそういう反応は慣れっこだ。

 無視して机の上に置いたままにしていたノートとペンを回収すると、再び女王の前に座り、ノートに記憶する事を書き込んでいった。

 わからない事に到達すると、フラミーから借りたノートを取り出して確認した。そこには可愛らしい骨の絵が描かれ、アインズが質問した事と、デミウルゴスが答えた事がメモされていた。

 可愛いなぁ〜と若干脳味噌を溶かすとアインズはフラミーのノートをしまい再び自分のノートの更新を進めた。

 そして、ふと女王がまじまじとその様子を見ている事に気がつく。

 まさかこれが読めるのかとアインズは冷や汗が出る感覚に陥った。

「…んん。君はこれが読めるかね。」

 ハッと視線を上げた女王は首を横に振った。

「い、いや…読めない…。しかし何か難しそうな事を書いている事くらいはわかる…。」

 ようやくまともに言葉を話した事にアインズは少し安堵するが、もう後少しで終わる復習を切り上げる気にはなれなかった。

「そうか。これは国家機密だからな。それでいいとも。」

 アインズは再びノートに視線を落とした。

「…魔導国ではこの文字が使われておるのか?」

「いや、これは魔導国というより私達だけが使う特別な文字だ。読めるものは我がナザリックにしかいない。」

 女王もまたノートに視線を落とし、呟いた。

「私も…読めるようになった方がいいだろうか…。」

 アインズはそれだけはやめてほしいと思った。

「いや。無理をする必要はないとも。君には君の文字がある。」

「そうか…。優しいな…。」

「うん?」

 ちらりと確認した女王は少しだけ笑顔になっていた。

 その後二人は特別言葉を交わさなかった。

 静かな部屋には女王の呼吸とアインズのペンを走らせる音だけが響いた。

 

+

 

「ふー。こんなところか。」

 ノートが完成したアインズはぶくぶく茶釜時計を確認すると、もう少し、と思ったところから随分時間が経っていた事に気が付いた。

「――あ、すまなかったな。すっかり待たせてしまったようだ。」

「あ、いや!気にしないでくれ!じゃあ、その、な。」

 アインズがノートを無限の背負い袋(インフィニティハヴァサック)にしまっていると女王は突然立ち上がった。

 その手には膝にかかっていた毛布が握られている。

「さ、さぁ行こうじゃないか……!」

 はて、どこに?とアインズは思う。まるで行き先に心当たりがないのだ。

 もしどこかに行くなら守護者達かフラミーに行き先を報告しなければ心配するだろう。

 しかし、行き先を訪ねようにも女王は当然どこに行くのか分かっているでしょというような瞳でアインズを見ている。

 こういう時のためにデミウルゴスを連れてきたというのに肝心なタイミングで側にいない忠臣に心の中でSOSを送った。

 しかも考えてみればあと少しで今日の約束の勉強会の時間ではないか。

 フラミーは執務を離れていても勉強はすると毎日二時間励んでいた。

 一度でも欠席すればどんどん置いていかれる。

 アインズは決めた。

 

「んん。オーリウクルス殿。待たせた後でこんな事を言うのは心苦しいが、今宵はもう止そう。さ、部屋に戻りなさい。明日も早い。」

 女王は驚きの表情でアインズを見た。

「君という男は……。」

 流石に待たせられた後に帰れと言われては気分を悪くしたのだろうか。一国の女王相手にあまりにも礼を失していたかと焦りが込み上げ、鎮静された。

 

「ふふ…神王殿。私はこれでもそれなりに覚悟を決めて来たつもりだったんだ…。」

 女王の突然始まった話にアインズはとりあえず耳を傾けた。怒っているようではなく、安堵の息をつきそうになった。

「しかし、私はやはりまだ覚悟を決められてなど…いなかったんだな…。お笑い種だ。貴殿にはすまない事をした…。しかし、私もやはり国を守る女王なんだ。」

 あまりよくわからない話にアインズは頷き、とりあえず返事をした。

「そうか。」

 女王は少し笑うと持っていた毛布を肩にかけた。

「はぁ。ままならんな。私も、貴殿も。」

 

 すると、扉をノックする音が響いた。

 二人は立ったまま扉へ振り返った。

「いいかな?」

 アインズは一応女性に断りを入れた。

「ふふ、もちろんだとも。」

 

「入れ。」

 

 声が響くと扉が開けられた。

「アインズ様。本日の――失礼。友好強化中でしたか。」

 入りかけたデミウルゴスは顔をのぞかせすぐに扉を閉めた。

(――え?)

 アインズはやっと来た助けがすぐに出て行った事に放心した。

 

「君の友人の息子は実によくできてるな。」

「あ?あぁ…いつもはその筈なんだがな…?」

「ふふ、流石にこの展開はどんなに優秀な者でも読めやしないさ。いや、読まれては女として納得行かないとも。」

 ドラウディロンは明るい顔で楽しげに笑った。

 すると廊下がにわかに騒がしくなり、バン!と扉が開かれた。

 

 そこにはいつもは蝋のように白い顔を、すっかり真っ赤にしたシャルティアと、それを止めようとするフラミーとデミウルゴスがいた。

「アインズ様!!」

「落ち着いてシャルティア!どしちゃったの!!」

「や、やめないかシャルティア!御身のご計画の邪魔をするんじゃない!」

 オンミなる者の謎の計画が始まっていることにアインズは鎮静された。

「なんだなんだ…どうしたシャルティア。」

 

「アインズ様!!まさかそんな乳がデカいだけの年増なんかと!?」

 突然シャルティアが女王を貶し始め、アインズは再び鎮静された。

「なに!?いくら魔導国で地位ある身とは言え無礼であろう!」

「うっさいでありんす!おんしには関係のない話でありんしょう!!」

「シャルティア!静かにせよ!!」

 アインズの一喝にシャルティアはしょんぼりと静かになった。

 

 沈黙の訪れた部屋で女王はニヤリと笑った。

「…ブラッドフォールン嬢はどうやら今日は虫の居所が悪いらしい。ふふ。神王殿、貴君の人徳は今夜たっぷり見せてもらったとも。私は今度こそ確かな覚悟を持ってここへ訪れよう。」

 女王は肩にかけていた毛布を軽くたたむとアインズに渡して笑った。

「私は貴君となら歩めると思ったぞ。」

 アインズの肩をポンと叩いて女王は出て行った。

 

 アインズとフラミーはぽかんと扉を見つけ続けた。




次回 #4 大捕獲

アインズ様は本当に紳士だなぁ!

https://twitter.com/dreamnemri/status/1137132304533319680?s=21
twtrでたまに行う予告は10〜30秒の挿絵工程movにする事にしました〜!
予告と言ってもどうせ日々0時ですが、無駄に挿絵が早めに見られます( ̄▽ ̄)はははは
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