元346プロのトップアイドルで、現在は真田源太の妻
純粋で優しい性格をしており、英語とロシア語、日本語を話せる才女でもある
しかし、時々日本で覚えた変わった日本語を話してしまうことも
源太の留守中に伯父、今西から手紙が送られていた。今の仕事のことやアナスタシアの後輩アイドル達がシンデレラプロジェクトに参加したこと、日本は今のところ大きな騒ぎがないことが記されていた。しかし、源太は追伸に書かれていた346プロ内での自分の評価に目がいく。
「ねぇアーニャちゃん、これ見て」
「??源太は社内ではアイドル達に負けないぐらい人気らしいよ、容姿と前の活躍からアイドルの子達に人気がある・・・なんだが、複雑ですね」
「複雑?」
「みんなが源太さんのこと、素敵と言ってくれるのは嬉しいです。でも、言葉にできないことがあります」
「なるほどね。逆の立場でも同じこと思ってる、だって俺の大事な妻だから」
「源太さん・・・」
顔を真っ赤にして互いの顔を見つめ合っていると呼び鈴が鳴る。源太は覗き窓から確認すると、二人の共通の友人である本田未央がいた。特に問題なさそうだったためドアを開ける。
「おっはよー!時差ぼけってしないもんだね」
「適応力高すぎだろお前。っつか俺んちの場所、よくわかったな?」
「実はね、アーニャに教えてもらったんだ!」
「はぁ・・・まぁ上がれ」
「いいってさ~しゅーこは・・・あれ?」
「どうした、キツネに摘ままれたか?」
「おっかしーなぁ。さっきまでいたハズなのに」
「街に不慣れなのにどっかふらついたか。仕方ない、探しにいこうか。どんな感じの人物か教えてくれ」
未央によると名は塩見周子といい、黒髪をブリーチした薄い灰色の髪、背丈が162センチほどの女性でキツネのように気まぐれな性格が顔に出ている美人らしい。一緒に通った道をたどりながら三人は捜索を始める。しかし、始めてからたった10分で屋台のフィッシュアンドチップスの会計に困っているところを発見。呆れた顔で源太は屋台の主人に金を払い事情を説明、どうにか最悪の事態は回避できた。
「いや~ごめんごめん、つい気になる屋台があったからつい、ね」
明らかに反省色の見えない周子。彼女によると腹が減ったらしく日本にいるノリで買い食いしようとしたらポンドを持ってなくてモメていたらしい。しかもネイティブの英語がサッパリわからなかったらしく、どうしようか困っていたそうだ。
「俺がいなかったら危うかった。警察沙汰になるところだったんだ」
「え、マジなん?ホンマありがと」
「両替はどうした?ちゃんと現地の金を用意しておけ」
「実は忘れてて」
財布から多額のポンド札を取り出し、彼女に握らせる。
「ここに1万円相当のポンドがある。返さなくていいから、大事に持っておけ」
「い、いや、エエの?初対面なのにそんなポンと大金渡して」
「構うな。結構稼いでるし」
「そうだよね、アーニャちゃんの旦那さんだし給料多いのは当たり前か」
一瞬の陰りに気づいた未央が口を開いた。
「しゅーこはん、他に何かあった?」
「・・・親父から見合いの写真渡されて会ってみたんだけど、どーも気が乗らなくって。ソイツね、被服系ベンチャー企業の社長やってて人が良さげに見えるんだよね。でも、紗枝はん彼を知ってて、話だと多くの女を金づるにして絞り取ったらポイするクソだってさ。紗枝はんの友人の一人が犠牲になったって話も聞いた」
「ひどい人ですね・・・」
彼女の表情から嘘はないことがわかる。
「ふむ。その紗枝って子のことは俺は知らん。だが、このままだと君の人生を棒に振るうことになる。要は見合いを破綻させればいいわけだ。ところで、ソイツは日本にいるのか?」
「ううん、しばらくオックスフォードにいるって聞いた。見合いの時にたしか、イール社っていう似たような企業とビジネスの話をするって」
「イール社か」
聞き覚えがあった。イール社はアウトドアに着てそうなベストや帽子はもちろん、PBの釣り竿や着火剤まで販売する中堅企業だ。創業者のクロウ・イールは趣味のアウトドアを仕事にした、ある意味勝ち組ともいえる40代の経営者。無論、そんな彼にも黒い噂がある。最近、営業マンにしては屈強そうな連中が出入りしており、よからぬことを企てているというものだ。その手の噂にしては珍しく、情報源が元社員であることが特定されている。
「とにかく、オックスフォードに行くしかない。直接会って丁寧に断るしか」
「えぇーなんでなーん」
「席を設けての話だったら直接断る以外にない、面と向かってね。もし危ない奴だったら君がスケープゴートになる、もう二度と普通には暮らせなくなる」
「えっじゃあダラけて暮らせなくなるってこと」
「そう。そのためにも君は面と向かってノーを言いに行くしかない、俺はその手伝いをする。悪い話じゃないだろ?」
そうと決まれば源太は行動を起こした。ジャンにハッキングを依頼し、ハリーにその一件を相談するためオックスフォードの自宅を訪ねた。
「ハリー、休息中しつ」
「あぁ丁度いい。イール社にあの男が現れたんだ」
「は?」
「黒井崇男だよ。彼を拘束するためアルファチームをここに集結させようと連絡しようと思ったんだ、偶然って怖いね。ヨハンもここに来てるんだ」
ロビーにヨハンと寛二がいた。
「・・・なにこの偶然」
「君達の主な目的は、陽動。ウチの秘密兵器に忍び込んでもらうためのね」
「秘密兵器・・・あぁ彼女ね」
NATOの極秘情報のため素顔と本名はレインボーでも極少数しか知らない、デンマーク出身オペレーターがいる。彼女はヌック、またはノックと呼ばれており、プライベートはもちろん任務も単独で行うものばかりなので、他のオペレーターとの交流はガジェットを開発したミラと彼女に救われたマーベリックしかない。無論、二人とも彼女の事はほとんど知らない。
「まず君達には清掃業者として入ってもらう。途中で装備を着替え敵警備兵と交戦して敵の注意を引く。その隙に秘密の通路を使って逃げようとする黒井をヌックが先回りしてって作戦だ。決行は午後5時だけど、一応民間人の誤射には気をつけて」
まさかの休日出勤にもかかわらず顔色変えずに作戦実行するアルファチーム。5階建てのそのビルは一見すれば普通の仕事場で、時間が時間だけに帰宅する社員もいた。掃除をするフリをして時間を稼ぎ、誰もいなくなったことを確認すると、隠し持ってきた戦闘服に着替え黒井のいる最上階の社長室に向かう。
道中、誰とも交戦することなく社長室前まで来たまではよかった。しかし、不自然すぎるぐらい静かな場合、必ず罠があり、こちらの動きをコントロールするものだ。例えば、ドアに爆発物が設置してあったり、フラッシュバンが括り付けてあったりなど、言いだせばキリがない。寛二にブリーチングチャージ設置、全員に大きく離れるよう指示する。ハンドサインで発破を合図すると、案の定、爆薬が誘爆しヒートチャージで壁を破壊するのと同じぐらいに口が開いた。源太はフラッシュバンを投げ込み先陣を切って突入する。中には武装した敵7人と20代ぐらいのスーツの日本男がいた。敵を全員素早く仕留め、辺りをクリアリングする。
「オールクリア。寛二はデータ回収、ヨハンは出口を見張ってくれ。俺はコイツを尋問する」
ソファに座らせ、源太は関連キーワードを言ってみる。
「黒井崇男、クロウ・イール・・・塩見周子」
男の驚いた表情に、彼が周子の言っていたお見合い相手だとわかった。
「周子を知ってるんですか!?もし会えたらお伝えできませんか、愛していると」
「テロリストに会ってビジネスの話をしているお前が愛?笑わせるな、この事は塩見家及び本人に伝えておく」
「俺は被害者だ、まさかイール氏がアイツに会ってるなんて知らなくって」
驚いている男をよそに、寛二は源太に、あるデータを見せる。
「ほぅ。この3Dデータは言い逃れできないだろう」
一見するとただのベストだが、生地の中にプラスチックの小さな球がびっしりと詰まっている。
「金属探知機に反応しない自決用爆弾ベストか。輸出するにはうってつけだ、しかも添付ファイル付きメールの送り主はお前の名前になっている」
顔が醜悪なまでに歪む。
「悪あがきはよせ、俺らの情報収集力は世界トップだ。諦めろ」
「くっ・・・」
社長室にある情報を全て手に入れた直後、ハリーから連絡が入る。隠しエレベーターで地下まで移動し逃げているところを先回りし、隠れていたヌックが確保したが、黒井崇男の方はよく似た顔の影武者だったらしい。ほとんど空振りに終わったが、それなりに戦果を挙げたアルファチームは休日が2日延長された。作戦を終え、私服に着替えてから自宅に戻り、そこで待っている周子に婚約者がテロに加担していた事実を話した。
「あぁ~よかった。おやじもこれで納得すると思うと、なんかスッキリした。じゃっ何か奢ってくれへん?」
「その流れでそれ?・・・まぁいっか。時には外で食べるのも」
「はい。アーニャもミオとシューコに会えてうれしいです」
4人は馴染みのレストランで食事を取る。この時、未央は源太の横顔を見ると、そこにはレインボー部隊の真田源太ではなく、人の良い近所のお兄ちゃんの真田源太だった。彼は変わっていないことに安心感を覚えるのだった。
ヌックのうわさ
気配を殺すのが得意だが、ある一般人の少女に見つけられたことがあるらしい