9mm弾を使用する、UMP-45の派生型サブマシンガン
MP5と比べて安値で購入できるため、予算の少ない国家でも採用されている
主人公、望月寛二の愛銃
ようやく罰が終わった寛二はヘリフォードに戻り、気分きままに散歩を楽しむ。しかし、見える光景に仲睦まじい男女が多く映り、苛立ちを見せていた。
(なんかイベントあったっけ?そのカップル共が一件の店の前に集合してるな)
どうやら家電量販店のカップル限定割引セールがある。開店と同時に一斉になだれ込み、寛二も巻き込まれてしまう。人の波に揉まれながらも流れに逆らいながらも脱出、衣服も大きく乱れ、息が切れ気味になった。
「もうやだこれ、なんで俺がカップルの波に飲まれないとイカンのだ!はぁ、隊長やシーボルト曹長が羨ましい」
「・・・寛二兄ちゃん?」
「誰だ俺に妹なんて・・・」
後ろを振り返ると、背中を覆う長い髪に青を基調にしたコーデの女性がいた。女性と言ってもまだ少女の面影のあるこの人物に、寛二には見覚えがあった。母の妹の娘で、年齢も少し離れた従妹。世間一般的には765プロの歌姫と呼ばれた、トップアイドル如月千早がそこにいた。
「ち、ちいちゃん、どうしてヘリフォードに!?」
「イギリスのポップスの祭典にゲストとして呼ばれたの。寛二兄ちゃんは観光に来てるの?」
「今はこの町で仕事してんだ。ひっさびさの休みなのに人混みに巻き込まれて衣服ボロッボロさ、最悪だよ全く」
「兄ちゃん、運悪いところあるから気をつけてね」
「あぁ。・・・そういや、今年は墓に花手向けるの無理っぽいな。代わりにやっといてくれ」
千早には弟の優がいたのだが、幼いころ交通事故で亡くしている。その事件がきっかけで如月家は崩壊し、ほとんど連絡を取れなかった。しかし、来英前に遭った際、とても爽やかな顔をして仕事の話をしていたのを覚えている。
「そう・・・今何してるの?広告会社の出張?」
「外資系の広報担当だ。まぁ勤務地が違うだけで、内容は変わらん」
「・・・」
「なんだよ黙りこんで」
「兄ちゃんは変わんないなぁって。いつでも温厚で表情豊かな、でも熱い心の男性」
「ちいちゃん。人間ってのは案外根っこは変わらんのさ、それが見えてるか否か、それだけさ」
寛二の懐から煙草に似てるが大きく違う駄菓子、シュガーシガレットを取り出し、それを口に咥える。
「いる?」
「結構よ。それよりもまだかな、だいぶ待ったと思うんだけど」
「待ち合わせしてたの?」
「346プロの子なんだけど、一日限りのユニットを組むことになったの。迷子になってなきゃいいけど」
途端、家電量販店の方から日本語で助けを求めている少女の声が聞こえる。気になった寛二は声のする方向へ歩き出し、人の波を再びくぐり抜ける。
「掴まれ」
相手を見つけ、その手を握り危機を脱した。前をキレイに切り揃え、後髪を団子のようにまとめた、とても可愛らしい少女だった。
「いや~助かりました。忍の術で人混みを脱出しようと思ったのですが、大失敗しまして・・・」
「お、おぅ・・・(せっかくかわいいのに、なんかなぁ)」
「浜口さんが人さらいにあってなくてよかった。あ、紹介するわね。この人は望月寛二、従兄なんだけど雰囲気大きく違うでしょ?」
「おぉ千早殿の従兄殿でしたか。わたくしは浜口あやめ、忍ドルをしております」
「望月寛二だ。よろしくね、あやめちゃん」
あやめは寛二の手の感触に何か親近感を覚えた。以前、クルーザーから救出してくれた黒髭の男性のそれに似ていたからだ。それだけではない、尊敬するレインボーオペレーター、ルークとも雰囲気がそっくりとまでもいかないが、非常に近いものを感じ取れる。
(初対面なのに、何度かあったことあるような)
「?何か粗相をしたかな」
「い、いえそんなことは」
「ならいいけど。君らこれからどうするの、時間あるなら行きつけの店に案内してあげる」
寛二は二人を引き連れて、寡黙なマスターのいる喫茶店に足を運ぶ。基本的に誰もいないと思いドアを開けると、このタイミングで一番会いたくない夫婦の姿を見つけた。
「おぉ寛二か、奇遇だな」
「久しぶりですねアヤメ」
「さ、真田隊長にアナスタシアさん・・・」
真実を知らない千早は頭を傾げる。
「隊長?」
「あぁ・・・あ、あだ名だよあだ名。すっごいリーダーシップ発揮してその・・・」
浮足立ってる部下を優しく諫める。源太は彼が嘘が苦手なのを知った。
「寛二。マスターは元MI5の職員で口の堅い方だ、それに盗聴器もない。あやめちゃんも俺の正体を知ってるから、他言無用の条件付きで彼女に明かしてもいいぞ」
マスターは玄関の看板を閉店に替え、誰も入れさせないようにしてくれた。
「その・・・ごめん、嘘ついた。実はさ」
従兄から語られる驚愕の真実の数々に驚きを隠せず、柄にもなく開いた口が塞がらなかった。自分の知っている彼が、想像もつかない場所で身を危険に晒しながら、今日という日を生きていたことに。
「そんな、じょ、冗談だよね。だって小さい頃から歌ったり踊ったりするのが好きな兄ちゃんが、銃持って世界を飛び回ってその・・・」
「本当だ。この前も脇腹撃たれて」
裾をまくって弾痕を見せる。とても生々しく、今にも弾が出てきそうだった。千早の目に涙が浮かぶ。
「怖くないの?もし頭とか心臓に当たったら、もう私にも伯母さんにも会えなくなるんだよ?私はとてもじゃないけど・・・」
「ちぃちゃん。怖いよ確かに、でもね」
「でもなに!」
源太は千早の肩を優しく叩いた。上司の言いたいことを察し、しばらく喋らないことにする。
「どの時代でも危険に身を晒して人知れずに守ってくれる人達はいる。コイツは昔、多くの仲間を失った経験がある。非常に辛い体験をしたのに、まだこの世界にいるのは何故だと思う?」
「それは・・・」
「簡単さ。大事な人を守りたい、って気持ちで動いているからさ。俺も愛妻の側にずっといたい、でもそれだけじゃ守れないこともあるんだ。自らの死と正面に向かいあって、当たり前の平凡を、無差別な殺戮行為から守らなければならない。それが俺達の任務だ」
アナスタシアも続く。
「アーニャも、源太さんとずっと一緒にいたいです。本当は行ってほしくありません。でも、無事に帰ってくるとわかったなら、悲しくないです。帰ってきたら、ぎゅっと抱きしめます」
あやめもまた、自分の言葉で思いを伝える。
「千早殿。源太殿は死んでもいいとは思ってません。生きて、その任務を果たそうとしています」
「誰も好き好んで死にたいって思わないし怖い思いはしたくない。だが、俺達は使命を果たすため普通の人達よりも危険な場所にいる、それだけさ」
男二人の顔がどこか優しかった。先ほど、人の根本は変わらないという寛二の言葉の意味をようやく理解したような気もした。それは昂った気持ちが静まったことを意味していた。
「・・・取り乱したりしてごめんなさい。弟を事故で失ったから、寛二兄ちゃんもいなくなったりしてほしくなくって」
「ちぃちゃん。俺も優のことは今でも残念に思う、おっ母と飯食ってる時でも時々話題に出るほどだ。優のような悲劇を生みださないためにも、俺らのやってることに理解してほしい」
「まぁそう言うことだ。それとちょっとコイツ借りるよ」
喫茶店の外に出た源太と寛二。
「気になってることなんだが、あの千早って子は弟を亡くしてんだよな。知ってることを教えてくれ」
「はい。如月優、生きていれば高校生になるかそのくらいの歳になります。交通事故で亡くなり、その後両親は離婚、ちいちゃんは母親のもとに引き取られました。一時期、黒井崇男の工作によりアイドルの道すら閉ざされようとしましたが、仲間達のおかげで立ち直り、今は765の歌姫と呼ばれています」
「あのクズ野郎は少女の心を壊そうとしてたのか・・・ところで情報源は?」
「菊地真っていう、ちいちゃんの事務所の仲間の子です。これが写真です」
スマホの画面にはベリーショートのボーイッシュな少女が映っている。
「会ったことあるな。以前、素性隠して番組出てた時に・・・そうか、良い友人に会えたな」
「えぇ。それはそれとして、俺は管轄署の資料課にいた同期と一緒に探ったんです。姉弟仲良かったし、ちいちゃんが見捨てたとは思えなかったので・・・」
「なんだ、もったいぶるな」
「事故はある男の差し金でした。東豪寺財閥の総帥、東豪寺隆信」
「財閥が?」
「叔父貴、産業スパイだったんです。叔父貴は離婚後姿を眩ませてから4年経ったある日、富士山の麓の樹海で首吊りを」
「なるほど、小さい子を殺してボロボロになった相手を心神喪失にしてさらに追い込んで・・・だが、決め手がない」
顎を触り、考えをまとめる。
「産業スパイだとどうしてわかったんだ」
「実家に暑中見舞いのナシ箱の中にUSBと梱包材に扮した紙の資料が」
「まさか、それを置いてきたんじゃ」
「いえいえ、先祖の墓の下に隠しました。おっ母も俺も、騒動に巻き込まれて殺し屋に殺されたくないので」
「・・・ここだけの話にしよう。千早ちゃんには特に」
ちょうど話を終えたその時、女3人が店から出てきた。様子からして話を聞かれていないようだ。
「?どうしましたか?」
「なんでもない。さて、そろそろ帰ろうか」
翌日。真田夫婦と寛二はヘリフォードで開かれるポップスの祭典に招待され、最前列の特等席へ移動する。イギリスやフランス、イタリア等で人気のある歌手達が自分達の曲を歌い、大いに盛り上がっていく。テンションも最高潮になっていくなか、スタッフ達が慌ただしく動いているのが見えた。寛二はトイレに行くフリをしてスタッフの一人に事情を聴くことにした。
「ちょっといいか?」
「なんだよこっちは忙しいのに!」
「時間は取らせない、頼むからさ」
「ゲストが来てないんだよ。だから今どうするかって揉めてんだ!」
不安になり、スマホで昨日電話番号を交換したあやめに電話を入れる。
「どうした、まだ会場に来てないって聞いたが」
「よかったです寛二殿!非常事態でして」
「ゆっくり話せる?」
「千早殿のプロデューサーが、ホテルで何者かに襲われて・・・」
「それは本当か。容態は?」
「今現在、ヘリフォードで一番大きい病院の集中治療室に・・・あやめも千早殿も無事・・・いえ、千早殿はショックのあまりに倒れてしまいました」
「わかった。そっちに行く」
源太に電話の事を報告する。調査は任せろと源太に言われ病院へ急行した寛二は、死んでるかのようにベッドで眠る千早を見て額の汗を拭った。
「俺が側にいれば・・・」
「寛二殿。あやめはどうすれば」
「いろいろと聞きたい。どんな連中が襲ってきた」
「最初はホテルのルームサービスの方だと思ったのです。ですが、プロデューサー殿を見た途端、隠し持っていた銃で数発撃ち込んでわたくし達にも向けて・・・私をバカにした報いだと、そう言って静かに立ち去りました」
「そうか。ちいちゃんもあやめちゃんもここにいたらまずいな、追っ手が来るかもしれない。とんだ甘ちゃんかと思ったが、もしかしたら」
寛二のスマホが鳴る。源太からだった。
「早速だが聞いてくれ、ジャンにも頼んで事件のあった部屋の監視カメラを解析してもらった。背格好や肉声から、黒井崇男本人による攻撃と判明した。現在市街地にあるカメラを調査し、居場所が判明次第、アルファチーム及びブラボーチームに連絡が入る手筈だ」
「了解しました。しかし・・・」
「気持ちはわかる。お前が焦ったら彼女達はもっと不安になるぞ、いいな」
通話が切れ、あやめの方を向く。
「俺が君らを守る。だから、もう安心していい」
「寛二殿・・・」
泣きそうな彼女を優しく抱きしめる。甘い香りに胸をときめかせるが、その感情を出さずに。
「怖くない、怖くない。な?・・・ごめん、慣れないことしちゃった」
「・・・(なんだが、魅かれるものを感じます。暖かい焚火のような)」
途端、看護師がプロデューサーの無事を伝えに来た。そして、その主治医から容態を聞くことにする。寛二は医師の顔を見て、非常に安心した。
「ドク、あなたがどうして?」
レインボーオペレーターでもあり、軍医でもあるドクことギュスターヴ・カテブが診てくれたためだ。彼は世界でも指折りの外科医でもある。
「ちょっとした勉強会に招かれてな。脚と腹部に9mmを合計10発撃たれていたがどれも急所を外している。数発身体に残っていたものの無事摘出は完了してるから最低2週間は安静に」
「実はドク、ちょっと」
源太から聞いた話をドクにも伝える。
「わかった。ヘリフォード基地内の病室に運ぼう、あそこにわざわざ攻撃するテロリストはおるまい。手配する」
これが、望月寛二と浜口あやめの最初の出会いであり、後に交際し結婚まで発展するとは誰も予想してはいなかった。
夕方、千早とプロデューサーは秘密裏にヘリフォード基地内にある病室へと運ばれた。いるハズであろうベッドにマネキンを置き、カーテンを隔てた隣のベッドにUMP-9を武装した寛二が待ち伏せする。日付が変わる頃、ほとんど物音をさせずにドアが開く。その人物は迷いなくマネキンのいるベッドに移動し、サプレッサーを取りつけ脳天に向かって発砲した。手ごたえのなさに布団を捲り、動揺したその束の間、鉛の雨が背中に降り注ぐ。
「動くな。今度は脳みそぶちまけるぞ」
電気がつき、襲撃者の姿があらわになる。やや背の低い中年のとても似合っていないナース服を纏った日本人男性だった。
「くっ・・・黒井の奴め、楽な仕事だと言ってたくせに・・・」
「こいつは驚いたな。黒井の腰巾着、悪徳記者じゃないか」
「こ、腰巾着じゃねぇ!元お得意様だ・・・いてぇよぉ・・・」
「治療してほしけりゃ、黒井の居場所と目的、背後の組織の事を話してもらおうか。それとも鉛玉をもっと味わいたいか?今なら残り20発を足と腕に撃ち込んでやるから」
「は、話すから頼む!アイツならもうニューポートに逃げて潜水艇でメキシコに逃げた。俺それ以上知らねぇから!」
「よし。ちょっとばかり眠っといてくれ」
ボディーブローを決め気絶させると、病院の医師に治療を任せ源太に報告した。
事件後の朝。千早は目を覚ますと、全く見慣れない場所にいることに気がついた。隣のベッドには撃たれたプロデューサーが寝息を立てて眠っている。
(ここは・・・病院?かしら)
ドアが開き、白衣を着た白人の男が彼女に近づく。
「目を覚ましたか。私はギュスターヴ・カテブ、彼の執刀医だ」
「あっ!?」
「彼なら大丈夫だ、回復に向かってる。2週間は安静し、仕事はさせないように」
「はぁ。私はどうしていたのですか?」
「君はショックのあまりに気を失っていたんだ。私のオフィスでもあるここに運んで、目を覚まし次第、護衛をつけて帰国させようと思ってた」
「帰国、オフィス?ここはいったい・・・」
「ここはヘリフォード基地の医務室。命の危険を察知したカンジの提案でここに運び込んだんだ、彼に感謝してくれ」
「寛二兄ちゃんが、助けてくれた。じゃああなたも」
「私もレインボーの一員、ここの事はヒミツにしてほしい」
数時間後、彼も目を覚ました。ドクの話を聞き、無事に東京の事務所まで帰ることが出来た。後にこう語っている、海外で仕事をしたことがあるが、ここまで過激なものはなかったし、ましてや殺されそうになったことはない。しかし、自分の事を顧みず命を救ってくれたレインボー部隊に感謝の念を込めて礼を言いたい。と
モジーのうわさ
嫁と子供がいると言っても信じてもらえないらしい