アイドルグループ・魔王エンジェルのリーダーにしてプロデューサー
実力に比例してプライドが高く、ライバル達を蹴落とす策謀を実施することが多かったが、ある事件を機にお茶の間にバレてやや墜落気味
現在は地道に営業を続けながら再び返り咲くために努力を続けている
某所。グレーの髪の中年男は首に下げたペンダントにしまってある写真を見ていた。自分のイメージとはかけ離れた白い衣装に緑の髪の少女が映った写真。
(詩花・・・私はもう戻れない。お前を人質に取られFXやマネーロンダリング、果てはペーパーカンパニー経営と東豪寺の犬のような役をやらされている。くそっ、千川ちひろに手を貸したがためにレインボー部隊に狙われ、しかもサム・フィッシャーにも追われてる。ここまで逃げた人生は初めてだ)
黒井崇男。芸能大手961プロの社長だったが、765の赤羽根Pの手腕と人望によりジュピターに愛想尽かされ敗北、当時業界2位だった346プロに追い抜かれ賄賂や妨害行為が露呈されどん底に落とされた。ある日、ODT首謀者の一人、千川ちひろが346プロの社外秘密を手土産に資金提供を懇願、それを受託するもレインボー部隊にバレ逮捕、国家反逆罪に問われ終身刑になるはずだった。が、謎の武装組織、ハイドラが護送車を襲撃、一度は協力を拒むも愛娘の詩花を人質に取られ、一緒に乗っていた悪徳記者も巻き込んで背中に多頭の蛇のタトゥーを入れる。
「そんな顔をするなよ兄弟。仮にもセレブ様なんだろ?」
「貴様のようなのと同じにするな。私は一代で築き上げ、お前はボンボンだろ東豪寺」
「同じ穴のムジナって奴だろ、娘がいて女房に愛想尽かされた身なんだしよ」
野武士のような口髭を生やし、黒井よりも大柄で骨格の良い中年男、東豪寺隆信。有名ユニット魔王エンジェルのリーダー、東豪寺麗華の父にして東豪寺財閥の統帥。娘に気づかれないように根回しや賄賂はもちろん、果てはライバル暗殺まで行う、黒井以上の外道だ。
「まぁ俺は気づかれてないがな」
「・・・」
「別にそれはいい。仕事があるんだが」
「さっさと言え」
「カンボジアの遺跡に財宝が発見された。お前はそれの盗掘し高値で売りさばけ」
「ふん。詩花に何かあったら許さないからな」
「今まで少女を食い物にしてきた男のセリフとは思えんな」
日本・東京。詩花はというと特に事件は起きていなかった。暴漢に襲われたことも、スキャンダルで記者に追われることも、以前源太に助けられて以来テロリストにも遭遇していない。今日は友人であり、ライバルともいえる存在、浜口あやめとともに伊賀に行くため、東京駅にて待ち合わせしていた。
「お待たせしました詩花殿。さぁ、伊賀に行きましょう」
乗り継いでいき、最初の目的地である忍者資料館に到着した。あやめの案内のもと、時間が流れるように過ぎ去っていく。
「・・・っていう術なのです」
「すごいですね。ライブの時にやったらファンの皆さんも喜んでくれるかな?」
「はい!わたくしもホログラムを使った分身で大成功したことがありますので!」
大いに盛り上がっていると、70中盤ぐらいの落ち着いた雰囲気をした白人男性が声を掛けてきた。
「君達。元気が良いのはわかったが、公共の場所だってことを忘れてないかな?これじゃ全く忍べていないね」
「あっごめんな・・・え、日本語?」
「仕事で日本に来たことがあってね・・・まぁいい、この年寄りで良ければ旅の供をさせてくれ」
「えっと、その・・・」
「確かにこのご時世だ、心配なのはわかる。大丈夫、何もしないから」
歳を取っているとは思えないほど背筋がまっすぐで衰えを感じさせない空気が流れている。
「いいですよ。わたくしに街やいろんなものを案内させてください」
「そちらの子もいいかな?」
「わかりました。一緒に行きましょう」
「ありがとうお嬢さん達。私はクラーク、今は人材育成やコンサルタントの仕事をしているジジイだ」
あやめ達は知らないだろうが、彼はかの美城専務や桐生つかさを短期間で人間的に成長させた実績に、企業向けテロ対策講習を執り行っている。それでも十分だが、彼がホワイトハウスや首相官邸を訪れればアポなしで優先的に会うことができる。何故なら彼こそがレインボー部隊を発案、創立した初代シックスであり世界を救った英雄、ジョン・クラークだからだ。
「ところで君達は?」
「私は黒井詩花。この子は浜口あやめちゃんといって、アイドルやってます」
「ほぅ、駅のポスターに貼ってあった子に似てると思ったら・・・なんて幸運だろう」
「ありがとうございます。外国にもあやめのファンがいるのは存じておりましたが、まさか目の前に現れて声を掛けてくださるとは思いもしませんでした!」
「良い笑顔だ。忍者の里を訪れた甲斐があったな」
クラークが旅行に加わり、より楽しく伊賀の街を回ることができた。特に印象に残ったのは忍者屋敷を模ったアトラクションで、クラークの実年齢とはかけ離れた高い運動神経に驚いて二人そろって開いた口が塞がらなかったことだ。暗くなり、二人を宿泊先まで送り届ける。
「クラークさん、明日も一緒に行きませんか?私、とても楽しかったです」
「すまないがそれはできない、明日は大事な用事があるから同行出来ないんだ」
「そうですか・・・また、どこかで会いましょう!おやすみなさい」
「あぁおやすみ」
誰の姿も見えない通りで、クラークは気配を感じ足を止める。
(3人・・・殺気を持っていないが全員訓練されており銃を持っている。他の尾行とは違うようだ)
一息つき、出て来いと言うと普段着を来た国籍の違う若い男3人が姿を現す。
「すげぇじいさんだぜ、俺達の気配に気づくなんてさ」
ブラジル人の男が驚いた顔をする。
「でもこの方、どこかで見たことが・・・」
日本人が思い出すようなしぐさをする。
「知らないのかよ。この方はレインボーの創立者だ、全員敬礼」
リーダー格のイギリス人の命令で全員クラークの前で敬礼する。チームシュバリエ・ブラボーチームのメンツだった。
「やはり、か。ディングといいハリーといい、随分心配性なんだな」
「あなたの護衛ではありません。伊賀にハイドラの工作員が潜伏していると情報が入ったため、特定し連行するためです」
「特定か。ならこれならどうかね?」
クラークは自分のスマホを取り出し、画面を3人に見せる。地図に座標が指定されていた。
「ここに敵の工作員がいる。忍者資料館にいた工作員とすれ違った際、靴下に発信機をつけた。いろいろと化けていたが、靴下まで履き替えたりは滅多にしない。・・・彼らは私の後輩達だ、安心して出てきなさい」
白い壁と同化していた布がはがれ、お団子頭の少女、あやめが姿を現す。ただ者ではない空気を醸し出すクラークに興味が湧き尾行したは良いが、いつ気づかれるかヒヤヒヤしていたらしい。
「ところで、この子が尾行してたのを知ってたのです?」
五郎がクラークに聴く。
「最初からわかってたさ、彼女は奴らの仲間とは思えないほど気配を殺しきれていないからね」
あやめは独学で忍者を学び、事務所内では全く気付かれることなく隠れたり、唐突に現れ驚かすことができる。完璧だと思われた尾行がまさか最初から気づかれており、あえて追わせていたクラークの技量と経験に開いた口が塞がらない。
「靴音が丸聞こえかつ距離が近すぎる。これではターゲットに巻かれてもおかしくないよアヤメ」
「うぅ・・・完敗です」
「さて、ブラボーチームは急ぎ襲撃の準備を始めろ、そろそろ発信機に気づいて移動するだろう。アヤメはちゃんと送り届ける、任務に集中せよ」
「「「はっ!」」」
翌朝、速報でハイドラ工作員のアジトにブラボーチームが突入しメンバー18人のうち4人を逮捕、他全員は射殺という結果に終わった。通信記録や化学兵器であろう物質と起爆装置を押収、化学兵器はスモークとドクの研究チームに解析されることになった。
秘密裏に進めていた詩花暗殺の失敗を聞いた東豪寺隆信は、ある人物に目を向ける。写真に写っているその明るい表情とは裏腹に、一度海外留学を果たし優秀な成績を収めた少女。
「こんな小生意気なガキがギフテッドねぇ。まずはそいつのPを篭絡するかね」
隆信のおぞましい顔がより一層磨きがかかるぐらい笑う。途端、ドアをノックする音が聞こえる。招き入れた人物は赤いロングヘアで、前髪を額が見えるくらいに切りそろえられた女性、東豪寺隆信の娘、麗華だった。
「パパ仕事中ゴメンね、今日何の日か覚えてる?」
「・・・おおっと悪かった。今日は一緒にディナーの約束だった、支度するから待っててくれ(招き入れた俺が言うのもアレだが、すごい危なかったぜ・・・)」
写真を懐に仕舞い、娘にしか見せない人の良い笑みを見せる。
(さて、どう動くかねぇ。若い騎士様達)
イエーガーのうわさ
パニック映画は苦手らしい