本名:アスセス・ロシオ・キスペ
反盗掘機関APCA出身、レインボー初の民間人オペレーター
ガラフックと呼ばれるフックショットを使って窓から奇襲をかけるのが得意
日本・東京。346プロ・アイドル部門は大きな混乱に陥っていた。人気アイドルであり、頭の回転と化学のギフテッドの少女、一ノ瀬志希が担当Pと共に連絡がつかなくなってしまったのだ。部長である今西は武内に岩手の自宅まで向かうよう指示、武内は万が一に備えてP226ハンドガンをショルダーホルスターにしまい、車を走らせる。また、彼一人では怪しまれる可能性を踏まえ、志希の友人でもあり同じユニットの塩見周子も連れて行くことにした。
「なぁプロデューサーさん。ほんまに志希ちゃん行方不明になったと思う?」
「それはわかりませんが、彼女の才能が欲しい製薬会社やその他組織は多いでしょう。私の友人のポーターも気に入るほどですから」
「・・・ポーター?」
「こっちの話です。長旅になりそうですから、寝ていてもいいですよ」
「ええの?プロデューサーさん、疲れない?」
「こんなもの、重武装してヨーロッパ中走り回るより楽です」
レインボー解散の切っ掛けになったラスベガス事件より前、西ヨーロッパで連続爆破テロが発生し、全く休みなしで東西南北派遣され、最終的にスウェーデンの本部で銃撃戦の最中、足を撃たれそのまま冬の川に落ちて死にかけた経験がある。ちなみに彼を救ったのはサッチャーで、帰還後にスコッチを数本奢ったことがある。そのため、今でも彼には頭が上がらない。
「ふーん・・・プロデューサーいくつ?」
「想像よりずっと年齢を重ねています」
一方、ブラボーチームは重要参考人である東豪寺麗華の身柄を確保するべく、ソロライブ会場がある大阪へと向かっていた。会場スタッフに扮して関係者用勝手口に入り、彼女がいるであろう楽屋へと進む。
「なぁ娘にテロ手伝わす親っていんのか?」
五郎の質問に、レイモンドはため息をつく。
「マヌケなこと言うな。いるかもしれないだろ」
「信じたいのはわかるがな、意外にノリノリでやってるかも」
今回ばっかりはカルロスも真面目に返答する。
「俺らは慈善団体じゃない。忘れるな、敵とわかれば引き金を引け、じゃなきゃ死ぬ」
楽屋前に到着し、五郎がドアをノックする。声を掛けてみたが反応がない。カルロスはPRB92を抜き、勢いよくドアを開け、一人突入する。
「おいうごグハァ!?」
高速で目の前に迫る何かが顔面にヒットし、思わず仰け反るが銃口はブレなかった。
「てめぇ何しやがる!」
「こっちのセリフよ!銃持って女の部屋に入る奴がいる!?」
「おいおい心配して突入して損したぜ。このヒステリック赤頭!」
「な、なんですって~!」
収集がつかないため、とりあえずカルロスをぶん殴り大人しくさせ、レイモンドが相手をすることにした。
「ウチのブラジル人が申し訳ない。あなたにお話がありまして参上した次第です」
二人は頭を下げ非礼を詫びた。
「・・・まっいいわ。あなたたちはスタッフじゃないわね、何者?」
「俺達は多国籍特殊部隊レインボー。東豪寺麗華さん、あなたを重要参考人としてヘリフォード基地へ保護しに参りました」
エムブレムを見せ、自分達が本物であると証明する。
「なんで私が重要参考人なのよ?」
「まずはこれを」
変装した黒井崇男が東豪寺グループのビルに出入りする姿を映した監視カメラの映像を見せる。それでもまだ信じられないという顔をしたので、今度はイール社との自爆ベストの取引記録を見せた。
「ふーん・・・アンタ達の捏造ってわけじゃなさそうね。でも信じられないわ、お父様がテロリスト?バカも休み休み言ってくださる?」
「肉親がこのようなことを企んでいるとは信じがたいのはわかります。・・・またお迎えに上がりますので、良い返事を待ってます」
レイモンドは自分の恋人の前では決して見せない、背筋どころか全身が凍り付く目付きを麗華に向け、大人しく引き上げることにした。彼の行動に疑問を抱く五郎は道中、その理由を問い質す。
「あのタカビーには現実を知ってもらわねばな。それに、ああ見えて非常に臆病で強気な皮を被って部屋の隅で震えてるタイプだろう」
「おいおいアイツのもとに帰す気か?」
「確かに危険だ。だが、策もなく帰ると思うか?」
ポケットから超小型記憶媒体ぐらいの機械を取り出して見せる。
「スカートの裾を狙ってコイツと同じやつを投げてつけておいた。ジャンに頼んで盗聴器作ってもらった」
「・・・それってさ、ミスターウォーデンの仕事じゃない?衛生兵の仕事じゃないんじゃ」
「お前それ、言っちゃダメだって」
スマホを取り出し、専用アプリを起動する。麗華の独り言らしいそれが聞こえてくる。
『・・・あぁともみ、明日のことだけどさ、りんも交えて今後のことを話したいと思うの。電話越しじゃ離せない事だから○×ホテルで会いましょ』
通話が切れたのを確認すると、アプリを閉じ、ユーリに電話を掛ける。
「大佐。明日○×ホテルで麗華達が今後の事を話し合うそうです、彼女達の行動次第で隆信も動くやもしれません。アルファチームを応援に回せませんか?」
「わかった、ジョーダンと話してみよう」
数分後。
「レイモンド、深夜には合流できるそうだ。作戦に備え情報を集め、いつでも動ける状態にしておけ」
○×ホテル前。清掃員に扮したアルファ・ブラボーの合同チームは怪しまれないように立ち回り、無事麗華の部屋前まで到達する。使用済みシーツを入れる袋からそれぞれの得物を手にし、突入準備は完了した。アプリを起動したレイモンドは会話内容を注意して聞き取ろうとする。
『みんな心して聞いて、魔王エンジェルは解散するわ。あなた達を家族騒動に巻き込まないためよ、パパが最近海外出張でいないこと知ってるよね。もしかしたらテロに加担してるかもしれないの』
『麗華さん、そんなこと言うために集めたの?バカバカしい』
クールな声の女性が麗華の言葉を否定する。
『そうだよ。麗華パパがそんなことしてるわけないじゃん』
どこかあざとさのある女性の声も聞こえる。
『黒井社長のこと忘れたかしら、権力を持っている人間が経済に混乱を招いて悪銭を手に入れるなんてよくあること。それに、私達も規模が違えど多くの子の夢を潰してきた・・・ライブ終わって楽屋にレインボーが来たわ、パパがテロに加担している証拠を手に』
『うそでしょ!』
『りん、声大きい。私はそこで知らないフリしてパパの事を調べて止めようと思うの、協力してくれる?』
『危険よ。麗華じゃなくってその人達に』
『今までのツケが来たのよ、お願い』
話が聞こえなくなったのを確認すると、レイモンドは呼び鈴を鳴らした。麗華が少し開け、様子を見ると相手が彼だったため大きく開いた。
「聞いてたんでしょ。彼女達を安全なところに」
「承知しました。しかし、スパイ行為をさせるなんて我々としても賛成いたしかねます」
「父を止める義務があります、どうか・・・」
「・・・わかりました。屋上に迎えを待たせてありますので」
屋上まで護衛し、イエーガーの操る輸送ヘリに順番に乗せる。麗華は一人、仲間を乗せたヘリを見送ると建物の中へ戻っていった。
「いいのかそんなことさせて、ハリーが聞いたら驚くじゃ済まされんぞ」
操縦しているイエーガーが呆れた声でレイモンドに問う。
「麗華は父親の所業に違和感があったようです。ジャンの話によると、隆信の情報を質云々は別としてリークしていたのは彼女なんだそうです」
ホントの事を知ってたのなら自分達にも教えて欲しいと言わんばかりのカルロス。
「な!?」
「彼女は彼女なりに止めたかったのかもしれません・・・俺達は見逃すかもしれなかったのです」
保護された魔王エンジェルのメンバー、三条ともみと朝比奈りんはポーランドにある、ゾフィアとエラの実家であるボサック家にお世話になることになった。理由はハリー家ではもう居候を引き取れないためと、軍人一家のボサック家なら自分達が動けなくても守ってくれる可能性が高いためだ。
某所。黒いクセ毛の少女が、試験管に薬品を入れて新薬の製作をしていた。
「いや~驚いちゃったにゃ~。仮死薬作ってくれって頼まれてやったったけど、うまくいっちゃったね~」
「志希ちゃんやっぱ天才だね、体の弱いわたしでも負担のないもの作るなんてさ。おかげで千夜ちゃんに迷惑かけたけどパパとママが無事でよかった」
志希と呼ばれた少女が手を止めて金髪の少女に身体を向ける。
「あとで千夜っちに謝ってね~。でもよかったの?先祖代々が守ってきた劇薬のレシピもらっても」
「あれは一族禁忌の書。志希ちゃんなら特効薬作れそうだと思って渡したの、だからお願い、世界が終わる前に作って」
「目を通してすごいと思ったよ。だってあれ、人間の動物的本能をむき出しにする麻薬だったからね。アイツらに持ってかれたらフレちゃんや美嘉ちゃん達にも会えなくなると思ってさ。だからちとせちゃん、この天才に任せてね」
アマルのうわさ
突然訪問してくることはないらしい