レインボーシックス346  セカンドシーズン   作:MP5

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 ナイトヘイブン

 ジャイミニ・カリモハン・シャーが設立した、インドに本拠地を置くPMC

 レインボーと契約することで知名度を上げた


11話  破壊の女神に天敵を

 東京・346プロ内応接室。武内の上司、今西はプロダクションの未来を左右する相手と交渉を臨んでいた。相手の名はジャイミニ・カリモハン・シャー、ナイトヘイブンというPMCの創設者でホワイトマスク事件の際、レインボーと契約を交わした女傑である。

「アンタ達はアタシと話すんのにトップが出ないのかい?肝っ玉の小さすぎること」

 ジャイミニはコードネームにインドの破壊の女神、カーリーの名を使っている。名前の通り、非常に残忍かつ傲慢な振る舞いに、多くの人間が彼女を恐れており、人生経験豊富でかつ気さくな今西でさえ、彼女に対しての態度には細心の注意を払っている。

「本来なら美城が出る予定だったのですが、いかんせん、持病の心臓病で今朝救急搬送されました」

「ふーん・・・嘘じゃなさそうね。監視の目もないし、盗聴器もない。無防備すぎじゃない?」

「何も武器を持たず話し合うのがよろしいかと思いまして。これが報酬です、受け取ってください」

 側に置かれてあった2つのアタッシュケースの中身、合計10億円を見せた。

「円ねぇ。そのまま持ち歩くのもアレだし、指定の口座に入金次第、仕事に移らせてもらう」

 口座番号を記した紙を机に叩きつけ、席を立つ。

「ありがとうございます。上も喜びます」

 低姿勢のまま応接室のドアを開け、ジャイミニは傲慢な態度で去って行った。

(あの今西って男、ゲンそっくり。本当は上のことなんて考えてないし、所属する子達のために動いてる。そのうえ腹が見えん。同期じゃないのが残念)

 スマホが鳴り、入金を確認すると急いでエレベーターに乗り込む。

(交渉成立。ウチの社員を日本に回すか)

 背後からゆっくり喋る少女の声が聞こえる。

「あの~そなた~」

 その特徴的な声に、ジャイミニには聞き覚えがあった。インド洋上で起きた豪華客船ハイジャック事件で見た人質だった少女の声に似ていた。恐る恐る振り向くと、浅葱色の着物を着た、150センチ代の小柄な少女。彼女の名は依田芳乃、数少ないODT事件に巻き込まれていなかったアイドルだ。

「あ、アンタ・・・」

「はい~御姿を見かけまして~声をかけまして~」

「ここの人間、だったの?」

「はい~」

 前述通り、ジャイミニは怖いものはないような人間だ。しかし、芳乃の姿を見た彼女の額に、冷や汗が流れている。

(忘れるものか、テロリスト共が撃ってくるなか堂々と歩き、かつ全く被弾しなかった。それだけではない、その中で歌と踊りを披露すると敵が勝手に武器を捨て、降伏を選んで芳乃を拝み始めたんだ・・・今までそんな現象は見たことない・・・こいつは何者だ?)

「?なにか悩みがありまして~」

「なんでもない、仕事があるからまたな」

 速足で346プロを去り、車の中で汗を拭う。

(あのミステリーガールに関わったらアタシは驚きで死ねる。まぁ、今度こそ顔を合わせなくっても)

「ね~ね~そなた~」

「なんだま・・・って、どうしてお前ここにいるんだ!ワマイ、説明しろ!」

 運転手であり、ジャイミニが最も信頼するアフリカ系の部下、グギ・マチョキ・フラハ、通称ワマイは落ち着いた口調で事情を説明した。

「ボスの背中についていき、隙をついて前へと移動、芳乃がドアを開け一緒に入りました。彼女は非常に有能かつ不思議な力を持っていると思われます。ボス、彼女には事情があるものと思われますので叶えてあげた方が得策かと」

「・・・その通りだな。芳乃、用件を言え」

「はい~。ばらえてぃーで気になる人の仕事を追跡するというものでして~困っていたところに~そなたを見かけた次第でして~」

「(マジで怖いんだけど・・・まさかワマイと通じるものがあるのか?・・・そうだとしたら恐ろしすぎる)わかってると思うけど、ウチはPMCだ。場合によっては殺し合いもあって死ぬかもだ、それでいいなら取材を受けてやる」

「ほ~。でしたら~そなたの腕を信じて付いて行きまして~」

(逆効果だった!?)

 こうして、ジャイミニことカーリーは三日間の条件付きで仕事の一部を見せてもらうことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 日本・京都。最初は芳乃の握手会。ファンの中には厚かましく長い握手をしようとしたり、変なプレゼントを贈ったりすることが多いため、そういった連中を連行し注意するのが仕事なのだが。

(・・・なに、この異様さ・・・)

 彼女のファン全員がぴっちり決めた正装をして礼儀正しく握手を交わしている。カーリーが聞いた話では芋っぽく汚い輩が勘違いで言い寄ったり襲ったりするイメージが強くあった。

(この子ホントにジャパニーズアイドル?本当は神の化身ってわけじゃないよね)

 握手会後、プレゼントの検品が始まる。専用の金属探知機でおかっぱの市松人形やぬいぐるみ、ほら貝などに入っているかもしれない盗聴器や爆発物を探すが、どれも反応しないため芳乃に報告しに行こうとすると、ドアが開き、芳乃が入ってくる。

「・・・ほ~。なにやらー不穏な空気がしまして~」

「おいおいアタシはちゃんと危険物が無いか調べたし、アンタに危害加えないからな」

「違いまして~この人形から感じまして~」

 芳乃は市松人形に指を差す。カーリーは眉間に皺を寄せ確かめようとするが、あることに気がついた。

(か・・・髪が・・・伸びてる!?)

「これは~本物の髪の毛・・・人形の製作時にズレたかもしれませぬ~」

「え?」

 芳乃によれば本物の髪を使って作る際、一本の毛をUの字にして埋め込むことで二本に見せているらしく、いじっている最中にUの字のバランスが崩れていって伸びてるように見えるらしい。

「な・・・なんだよかった、はぁ(てっきり生きてるのかと思った)」

「ですが~よからぬ気を発してますので~お払いにいきまして~」

 

 

 

 

 

 

 

 近くの寺でお祓いを済ませ、カーリー、芳乃、ワマイは帰路につく。

「あれが~からくり人形だったとは~とても面白いことでして~」

「面白くない!急に動き出してビビったし、電気無しで動く人形なんて見たことなかったわ!」

「日本に伝わるものでして~仕組みを知ればー興味わきまして~」

 珍しく取り乱しているカーリーを、いつもの落ち着いた口調でなだめるワマイ。

「敵が見ていたら絶好の的ですよボス。この町は地元民以外もたくさんいらっしゃいます」

「・・・すまない。今日ほどウチに居てくれて嬉しい日はないぞ」

「ボス、お疲れのようでしたら他のメンツに代わっても」

「へーきだ。ここで芳乃耐性つけとかないと驚きまくって大変なことになるからな」

(そうは言いつつ周囲の警戒を怠っていないのが、ボスの優秀な点。ハリーが敵に回したくないと言ったのも頷ける)

 青信号にもかかわらず渡ろうとしない芳乃。どうしたのか尋ねると、指差す方向からスポーツカーがこちらに向かって猛スピードで走ってきた。とっさに信号機の柱を盾にするような位置に移動し、身を低くする。柱に勢いよくぶつかり停止した車から芳乃を離すと、カーリーとワマイはハンドガンを抜き、周囲を警戒する。車から頭から血を流した男が降りてくる。その右手にはソードオフショットガンが握られており、二人は肩に発砲、怯んだ隙に取り押さえることに成功する。

「ワマイ、コイツを見とけ。芳乃は私が見る」

 この日は無事、芳乃を護衛できた。襲撃者は地元の警察に突き出し、今は病院で入院中。傷がひどく聞き出すのは当分できないらしい。尋問は後回しにし、再び自分達の任務に戻ることにした。その後は特に大きな変化は無く、一部カットした内容が全国のお茶の間に流れ、緊迫した映像が好評され瞬間視聴率17%という数字を叩き出したという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 襲撃から数日後、犯人は隠し持っていた自決薬を飲み死亡したと情報が入った。検死中に右腕にあるヒドラの刺青を見つけ、ハイドラの工作員と判明する。自分達を攻撃したとし、元ビジネスパートナーでもあるレインボーに電話を入れた。

「ハリーかい?アイツらがウチに喧嘩振ってきたからさ、共闘って形で組まないか?金はホワイトマスクの時と同じ金額を振り込んで・・・交渉成立、こっちもこっちで料金分の仕事をさせてもらうよ。・・・それと、イライザの派遣だけはなるべく勘弁してほしい。前に大げんかして同士討ちになりかけたんで・・・じゃあまた」

 電話を切り、一息つく。

(イライザと仕事するのは嫌だが、実力は認めざる得ないし・・・あとは)

「そなた~」

(芳乃をどうやってレインボーになすりつけるか。このミステリーガールはどうしても苦手なんだよな)

 こうして、カーリーの頭を悩ませることが一つ増えたのだった。




 ワマイのうわさ

 肌で水質を計れるらしい
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