レインボーシックス346  セカンドシーズン   作:MP5

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 黒埼ちとせ

 明るくて病弱な今作のキーマン。どうやら何か特殊な能力があるようだ


14話 ピースが一つになっていく

 ルーマニア・ブカレスト。アルファチームは地元で有名な老婆の占い師のもとを訪ねていた。なにも運勢を占うわけではない、まだ少女だった黒埼ちとせを占い的中させ、数日前にちとせが彼女のもとを訪れていたという情報を得ていたためだ。

「婆さん、この写真の女を見たか?」

「・・・あぁ人を魅了する麗しい娘じゃな。連れの娘も似た雰囲気だったのぅ」

「見たんだな。どこに行くか聞いたか?」

 老婆は静かに語りかける。

「あの娘が何者かご存知か?」

「・・・え?」

「あれはツェペシュ公の子孫だ、魅了の力や美しさがあって当然じゃ、あんまり無礼な振る舞いはやめるのじゃよ」

 ツェペシュ家は断絶したと話では聞いていたアルファチームは目を丸くする。

「あ、あぁそうするよ。それじゃ」

「待て若者達、占っていかないか?」

 3人は特に焦っている事態ではないため、占ってもらうことにした。老婆は一人一人の顔と目を見て、一息つく。

「まずはリーダー格の兄さんや、アンタはまるで物語の騎士だ。誇り高く、しかし決して奢らない力強い魂。だけど家族との付き合いに悩んでいるね、自分の使命のために家族が傷つかないか心配してる、でも安心しなよ、奥様もアンタのことを一途に思っているよ。ドイツ人の兄さんは鷹のように鋭い目で先の先を見ている、家に残してきた家族のためにも手を打ってきている。でも後に遭う緑の死神に注意しなさい」

「で、俺はどうなんです?」

 老婆は頭を掻いて五郎に結果を話す。

「お主は浅葱色の衣を纏った女子に出会ったかの、その女子と結ばれるが、再会は決して良いものではないハズじゃ。水回りに気をつけよ。そして怒られても丁寧に接すれば、より良い相性に恵まれることじゃろう」

 

 

 

 

 

 

 山道の揺れる車内で協力者のアジトに向かっている途中、3人は占いの結果についての話をしていた。

「よかったな寛二、彼女ゲットか。カルロスより見込みがありそうだ」

「まぁアイツより遅いのは、ちょっと心配だがな」

「そう、ですね。でも浅葱色ってどんな色なんです?」

「水色に少し緑が混じった色だ。心当たりないか?」

「うーん、あの子かな?」

 指示された座標前で車を止め、目の前の屋敷を見る。ツタが壁を伝い、木々にはカラスが止まり、森の中には誰かに見張られているような視線を感じていた。門番がいたため、彼に話しかける。

「レインボー部隊の真田曹長だ。ここの主に呼ばれ参上した」

「・・・伺っております。主に無礼がないよう、お願いします。なお、ここからは徒歩でお願いします」

 帽子を深くかぶり、顔を背けて注意を促す彼にわずかな不信感を抱くが、3人は徒歩で屋敷へと入った。

 

 

 

 

 

 

 

 玄関で迎えてくれたのは黒の燕尾服に身を包んだ老年の男性執事だった。名をエルヴィンと名乗り、協力者である館の主の部屋まで案内してくれる。

「ディミトリ様はちとせ様の伯父にあたります。ハーフ故の苦悩があり、大事にされている妹君が単身日本に行って娘が産まれたと聞いてとても喜んでおられました。・・・っと、こちらにございます」

 ドアが開かれ、3人は部屋に入った。エルヴィンが一礼し、その場を去る。

「ようこそ若き騎士達。何も無いところだが、ゆっくりくつろぎたまえ」

 ブロンドの短い髪に緋色の瞳、されど肌は東洋人風の男が歓迎してくれた。

「ディミトリさん、俺達に協力してほしいこととは?」

 不敵な笑みを浮かべたディミトリが一瞬、真面目な顔になる。

「姪と一緒に来てくれた子達を、ヘリフォードまで護衛してほしい」

「!?まさか彼女は」

「わざわざ自身の死を偽装してまでここまで来てくれたんだ。連れの子はあと少しでワクチンを作る段階まで来ている、だがこれ以上の開発は資源的にも設備的にも難しい。だから私はあなた達に頼んで一刻も早く完成させてほしいのだ。あの男の毒牙に掛かる前に」

「あの男とは?」

「東豪寺隆信と彼の協力者、五十嵐章三。ちとせの力が欲しいんだ」

「力?」

「ここ周辺で取れる植物の中に催眠作用の強いものが生えている。我が一族はそれを嗅ぎ薬に精製しツェペシュ家を支えてきたんだ、影としてね。効果を有効に使うには一族に伝わる操心術を使う、蝙蝠のように人間には聞こえない音を発生させるんだ」

「なるほど。吸血鬼伝説はそこから来ており、ちとせはテロを発生させるには必要不可欠な存在だってことか」

「その通り。屋敷に慕える者達は大丈夫だが、周辺の動物たちは薬の影響を受けて我々を守ってくれる、だから今まで君達を必要としなかったのだ」

「犬笛の原理か。ちとせさんが病弱なのはそれが原因では?」

 ディミトリは縦に横を振る。

「昔からさ。体力が平均より下で、外で遊ぶより部屋で籠っている子だった。でも、ある変化が彼女を照らしたんだ」

「東京へ引っ越したことで、使用人である白雪千夜と出会ったのですね」

「事情は妹から聞いてたからね。でも彼女の過去を知って、私は部下に命じて彼女を消そうとしたんだ」

「・・・まさか」

「千夜の実の父親は五十嵐章三だった。彼の事を知った私はちとせに近づいて欲しくないあまりに、彼女の殺害を命じたんだ。だが、まさか放火を選ぶなんて思ってなかった。その部下は目的を果たすと自殺を選んだんだ」

 源太は頭を傾げた。

「催眠術で自殺を命じるのは本能が否定して不可能ですが?」

「それは彼の意志だよ。でもどうして」

「・・・とにかく、彼女には伏せた方がいい真実です。空から迎えが来ますので、お二人を」

 ドアが勢いよく開かれた。そこにはブロンドの長い髪に緋色の瞳の女性、黒埼ちとせが現れた。

「本当なの伯父様、千夜ちゃんを、千夜ちゃんを殺そうとしたって!?」

「!ちとせ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 憤ったかと思えば力無く倒れた。源太は彼女を抱き上げ、寝室のベッドまで運んだ。先ほどまで大きな声を出していたとは思えないほど、穏やかな寝顔を見せている。

「私があんなことしなければ・・・」

「ちとせちゃん無理しちゃダメだって言ったのにニャー」

 軽い口調とは裏腹にその面立ちはとても心配そうな少女。ヨハンは少女に声を掛ける。

「君が一ノ瀬志希か。ポーターから話を聞いている、イギリスではちょっとした有名人だったってな」

 ポーターの名前を聞いてニヤつきが止まり強張ってしまう。

「ぽ、ポーターのおっさんがそんなこと・・・」

「君が大学に属していた時の論文を評価していた。まぁ彼が評価するってことは一般的にはウケないってことだけど」

「それ言っちゃう?」

「まぁそんなことはいい。君はヘリフォード基地内の研究所でワクチン作りの励んでくれ。設備や機材、研究員が要るなら、要請してくれ」

「うーん、ポーターのおっさんの出入りを制限してくれる?絶対茶化すから」

「わかった。・・・ところで、彼とはいったい」

「彼が外部講師として来たときに気に入られちゃって・・・」

「あーカワイソ、アイツに気に入られる=いじり対象だからなぁ」

 空気が徐々に穏やかになっていくと思いきや、今度は別の場所から少女の悲鳴が聞こえた。その叫び声は日本語だったため疑問に思ったが、その疑問は志希が答えてくれた。

「そうだった。あやめちゃんにブカレストの街歩いてた時に見つかって、ここに招待したんだった」

「・・・ヨハン、ここに残ってくれ。俺が行く」

 

 

 

 

 

 

 悲鳴が聞こえた部屋に入ると、バスローブ姿のあやめと、水浸しになって倒れている寛二の姿があった。

「いないと思ったら何してんだ」

「すんません、用を足したくなって彷徨ってたら実は風呂場で・・・結果的に覗きみたいになりました」

 痛々しく額に残っている赤い長方形の痣を見て、思わず頭を抱えてしまう。

「っで、桶投げられて倒れたと・・・ちゃんと謝ったか?」

「いえまだ・・・ごめんなさい、何も知らないとはいえ覗きみたいになってしまって」

 立ち上がり、とても丁寧に頭を下げる。

「わ、私こそいきなり桶投げてお湯かけてしまってごめんなさい。あの、その・・・何故お二人が」

「ちとせちゃんと志希ちゃんを迎えに来たんだ。君も彼女達に関わった以上、このまま日本へ帰しては危険が及ぶ。ヘリフォード基地へ来てほしい。あっ、着替えの際は部屋出るから」

「わかりました。少々お待ちを」

 予定外の事態になったが、無事ターゲットを無傷で確保し、ちとせがハイドラに捕まるという最悪のシナリオは回避できた。ワクチン精製にCBRN部隊のフィンカにドク、邪魔しない程度ならとスモークも加わることになった。なお、ちとせが見つかったと知らされた千夜はハリーと共にヘリフォード基地を訪れ、久方ぶりの再会を心から喜んだ。また、新たに保護されることになったあやめは、基地に近い源太の家で居候することになった。




 フィンカのうわさ

 自分に似た人物と出会ったらしい
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