テロにも負けず経営を続ける大手肝っ玉芸能プロダクション
シンデレラプロジェクト、プロジェクト・クローネの成功により他のプロダクションに圧倒的差をつけ、ODTにも屈さずライブやフェスを行い、日本国民を勇気づけた
最近レインボー部隊に救出されることが多いが、決してやらせではない
千夜が見たのは焼き尽くす夢だった。自分が大事にしていた人や物が荒れ狂う大火によって焼き尽くされ、何もできずただ嘆く。ここ最近は火を見るのも恐ろしく感じていた。たとえそれがテレビの向こうであっても、発作のように恐怖に震えてしまう。
「・・・焼き尽くす、か」
カウンセラーとして彼女を診ることになった短いモヒカン刈りの男、ジャックことパルスは冷静に彼女の夢の内容を聞いていた。
「ちとせお嬢様が亡くなられた日から頻繁に」
「そうか。これがしたい、あれが欲しいといった夢は見るか?」
「全く見ません。そんな夢なんて、恵まれている人しか見ないんじゃないです?」
「・・・チヨ、ストレートに言うぞ。君は誰かに頼りたいんじゃないのか?」
「!?」
「図星だな。つっけんどんな態度とは裏腹に孤独があった、信じていた人が原因不明の死を遂げ、空回りの自分を止めて欲しかった」
千夜はパルスを睨む。
「だが、黒埼家はほとんど協力してくれず、良くしてくれた事務所に迷惑を掛けまいと去り、孤軍奮闘の道を選んだ。たとえ死んでも誰も泣かないと思って・・・本当にそうか、お前のクラスメイトや仲の良かった事務所の子が君の死を知ったら、ショックで仕事が手につかなくなるぞ」
「うるさい!何もわからないくせに!」
「言っとくが、俺はネゴシエーターもやってるから嘘や隠し事は通じんぞ。さみしかったんだな、気づいてないかもしれんが泣いてる」
ハッと驚き涙を拭う。
「今はここが君の家だ、ハリーの家族はみんな気持ちの良い人達ばかりだから悩んだり困ったりしたら見返り無しで助けてくれる。無論、俺をはじめとした仲間達も手を差し伸べる。一人じゃない」
「・・・約束して、お嬢様の死の真相を探ってほしい。たとえどんな結果でも受け入れるから」
「わかった。今日明日ってできる話じゃないけど、必ず突き止める」
カウンセリングの結果をハリーに伝えた。
「PTSDの疑いか。これは確かに手強いな」
「ハリー、彼女のために火を使う家事やアウトドアは控えた方がいい。無論、テレビも番組を選ぶべきだ」
「だよね。またルールが増えちゃった、女房はナイフが嫌いでチヨは火が怖い。幸い、電子調理器だから炎は見えないのは救いだよ」
「居候ができて楽しそうだな」
「グレースが遊びに来たりドミニクがドッキリを仕掛けに来たりね」
あまりに平和すぎて呆れた顔をする。
「・・・なぁ俺達ハイドラと戦ってんだよな?」
「まぁそう硬くならない。よくわかってるでしょ?」
「・・・っで、内科検診の結果は?」
「ドクの話だとストレスによる体調不良って言ってたからパルスと同じ診断と受け取るよ。彼も定期健診に来るって言ってたから大丈夫」
「何かあったらまた言ってくれ。それじゃあ」
アルファチームはバンコクで見つけた資料から、トリノから西にある国境に近い2階建てペンションに訓練場があることを突き止めた。午後6時、フランス側から徒歩で接近し、目的地まで数百メートルのところに移動する。あまり慣れていないからか寛二は息を切らし始めている。
「遅れるなよ新人。ここからが本番だ」
「ちょっと、キツイっす。もう少し時間を・・・」
「・・・時間が惜しいんだが」
源太は呆れた顔で双眼鏡を手に取りペンション周辺を見る。アサルトライフルやサブマシンを装備した連中が巡回している。室内を見ようとするが完全に遮断してあり見ることが出来ない。狙撃を警戒しているのがわかった。
「すまんが外の連中の頭数を減らしてくれ。俺が観測手をやる」
MSG90A2を構えると、源太の合図で躊躇なく引き金を引く。スコープから覗かれた人間は肉塊へと変わり、20分で8人全員の見張りを倒した。
「そろそろいいだろう・・・お前またスコープ変えたか?シンプルになってる」
「燃費悪いしグラズと被る。だから別のガジェットをジャンに作ってもらった」
「元に戻したってか。お前らしい」
(先輩たちのスタミナがオバケすぎる・・・)
ドローンで索敵後、3人は突入を開始する。寛二のお守をすることになったヨハンは、アクティブカメラに似たポータブルレーダーを取り出し、それを廊下の隅に投げつけ起動させる。このレーダーはEE-ONEドローンと比べると建物全域を索敵出来ないが、半径9メートル以内の場所なら動いていない状態でも探知できる。起動時間も5秒と長めに設定されている。
「壁は薄い。よく狙って撃て」
「了解」
敵の位置は仲間達と共有でき、別行動している源太にもわかるため、的確な位置にグレネードランチャーを撃ち込み、射線をうまくコントロールしていきながら順調に制圧していく。7時前には殲滅し、ペンション内に残されていると思われる証拠品を探すことにした。
武器発注の伝票や弾薬の在庫、CQB訓練目録などが手に入ったが、それ以外の証拠品は見つからなかった。諦めて帰投しようと思ったその時、クローゼットから物音が聞こえる。不審に思った源太は、観音開きのそれの片側だけを開け、中を確かめようとしたその時、勢い余ったのか入っていた人物が飛び出てきた。
「おい、無事か?」
二の腕ほどの長さがある黒髪に三つ編みという、今頃珍しい大人しめな日本人の美少女だった。彼女は作戦服姿の彼らに驚き、部屋の隅に逃げる。
「俺達は何もしない、大丈夫だから。君の名前を教えてくれる?」
「・・・え、日本語?」
「言えるか?」
「う、氏家むつみです」
「ここは物騒な連中のいた場所だ、どうしてここに?」
「実は」
トリノで旅番組収録中にはぐれてしまい、親切なイタリア人について行ったら人質となってしまった。イタリア語で何を言っているのかわからず、慣れない異国に疲れて寝ていたらいつの間にかクローゼットに閉じ込められていたらしい。少しして銃声が様子見していたら源太が開けてくれて今に至るらしい。
「犯行声明は聞いてないぞ。ってことは、人質交渉前に突入したのか」
「こりゃよくできた偶然だことで・・・今から俺らも帰投するから一緒に帰ろうな」
帰りのヘリの中で彼女の身元を聞く。346プロのアイドルで、いつかは冒険に出ることを夢見ているらしく、事務所の先輩である岡崎泰葉から聞いた冒険家、サナー・エル・マクトーブに会うことが今の目標らしい。
(本人がもしいたら、喜んで自分の冒険談を語っただろうな・・・)
サナーは源太達の先輩にあたり、今でもどこかで旅を続けながら与えられた任務を遂行する日々を送っているため、レインボーで一番、ヘリフォードにいないことが多い。
「そういえばあなた達は?」
「そうだったな。俺達は多国籍特殊部隊レインボー、ちょっと前に話題になってなかった?」
「・・・え、あのレインボーですか!多くの子達が救われたって」
「まあね。旅先で何があるかわからないから、もう二度と起こらないように気をつけて・・・ところでどうして迷子になったの?」
「実は珍しいものがあったからつい・・・」
「あぁ~。好奇心は猫をも殺す、特にヨーロッパではさっきのようなことがあるから自重するように。それと俺達と会ったことは言わないでくれ、機密事項だからね」
「はい、わかりました!」
3人を不安にさせる元気の良い返事が返ってきた。無事、トリノまで送り届けると帰還命令を受け、彼らを乗せたヘリは夜の闇へと消えていったのだった。
アリバイのうわさ
プライベートでもアリバイはあるかと言われると、思わず返事をしそうになるらしい