レインボーシックス346  セカンドシーズン   作:MP5

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 シークレットサービスは大統領や訪米してきた高位の外国人の警護を担当していることが広く知られているが、通貨偽造のなどの経済犯を取り締まっていることはあまり知られていない

 


5話  私のヒーロー

 日本・山梨。この地に仕事で来ていた茶色のカールの掛かった長い髪に、怒っているように見えなくもない目つき、チャームポイントともいえる大きく見せるおでこのアイドル、関裕美がプロデューサーと仕事の打ち合わせをしていた。このプロデューサーは若く地味で温厚であるが、かのODT事件で千川ちひろの誘惑に打ち勝ち、彼女を守り抜いた大人の鑑ともいえる男だった。銃撃戦に巻き込まれたことによる後遺症で左手があまり動かなくなっている。

「今日は歴史紹介番組で町娘役を演じることになっている。主役ではないけど精一杯頑張るんだよ」

「うん・・・」

「あの事件をまた、思い出してしまうか?」

「うん。実はね、あの人を探してしまうの・・・砂煙の中から鬼みたいな顔で現れたと思ったら、ゆっくり手を引いて、安全な場所まで護衛してくれて・・・でも、お礼言えなかった・・・」

「あの人って、救出部隊の人?」

 彼女は縦に首を振る。

「顔といってもバラクバラ越しだったし、交番とかに勤務してるとは思えないよ」

「・・・」

 とても残念そうにする。

「でも、最後とは言い切れないしさ、気長に探そうよ」

 裕美はその部隊員のある特徴を覚えていた。声だ。いくら顔を隠そうとも、声だけは隠せない。自分達を励ましてくれた勇ましい声だけが手がかりだった。

(あなたはどうしているの?お礼が言いたいだけなのに)

 ディレクターに呼ばれ、番組撮影に挑む。真面目な彼女は恩人のことが原因でNGを連発してしまうも、なんとか終わらせることに成功した。

 

 

 

 

 

 

 

 アルファチームを乗せたアメリカンサイズの黒いバン型軍用輸送車は高速道路に乗って山梨を目指していた。理由はひとつ、薬学博士関教授の娘が狙われているとの情報がNSAのエージェントから知らされてたからだ。寛二は敵から鹵獲しアリバイに改造してもらったショットガン、ストライカー12の確認をしていた。取り外し不可能なドラム式マガジンのそれは、ショットガンとは思えないコンパクトで特異的な形をしていたが、アメリカの市場ではそれなりに人気のある銃だ。

「おいおいあんまり振り回すなよ。暴発したら危険だから」

「あ、あぁすいません。でも俺、新しい武器なんてもらったことないですから」

「うれしくて振り回していいのは玩具だけだ。落ち着け」

 ヨハンは呆れた顔でシートを倒し仮眠を取る。

「気合十分なのはわかったから落ち着け。ツツジ旅館の場所は?」

「インター降りて甲府駅の付近っす。詳細は俺が後で言うっすよ」

 道案内通りにハンドルを切り、昼前には旅館に到着する。寛二は作戦服から普段着に着替え、一般人に紛れて旅館内に入る。フロントで関教授の娘に取り次いでもらおうと思ったが、重大なミスを犯してしまった。

(あ、そういえば名前聞いてない)

 名前を聞こうと思ったその時、背広を着た男が慌てた様子で電話に出るのが見えた。

「ハイ、担当Pです。・・・え、裕美が危ないですか!?ですがその、今のところ危険な目に遭ってませんし、この場で厳戒態勢って言うのも・・・迎えが来てる?いやいや早すぎません!?」

 その声には聞き覚えがあった。SIT時代、最初で最後の強行突破した時の人質に。

「あのぅさすがに目立つと思うのですが」

「あっ・・・すいません掛け直します。・・・これは失礼しました」

「いやいいんですけど、何か悩み事で?」

「あぁ。実は僕、アイドルのプロデューサーをしてまして」

 寛二は名刺を渡される。肩書に、関裕美の担当プロデューサーと書かれていた。

「へぇ関裕美ちゃんの・・・ん?」

「なにか」

「ちょっと失礼」

 フロントで関の苗字の人間が他に泊まっているか確認してもらう。偶然にも彼女しかいない。

「裕美ちゃんのお父様が何をされてるかご存知で?」

「確かえっと、大学の先生で薬学を専門としてる方・・・」

「やっぱり。俺はあなた達をお迎えに上がった者です」

「ハハハ何ご冗談を」

 P以外に見えないようにレインボーのエムブレムを見せる。ことの重大さを感じたのか真面目な顔になった。

「あの子のお父様に危機が迫っています。連中は娘を誘拐して化学兵器でも作らせる算段でしょう、薬品を扱うテロは解毒剤を作る前に使用する傾向があり非常に厄介なことになります、なんとしてでも阻止しなくてはなりません。教授は他のメンバーが保護に向かっていますのでご安心を」

「わ、わかりました。撮影終わって事務所に帰る予定だったので、急いで荷物を持っていきます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 寛二に運転を任せ、代表として今後の対応を話す源太。思った以上に落ち着いて話を聞いてくれている。

「俺からは以上です」

「東京から出ないってことはしばらく仕事が制限されるってことですよね、地方での営業ができないじゃないですか!」

「それに関しては至極残念です。ですが、もし開発が成功し用済みになってしまったらどうなるか、想像もつくはずです」

「・・・消される、ってことですね」

「そう。君のためにも、世界のためにも安全な場所で隠れて暮らしてほしい。ヘリフォードから優秀なオペレーターを派遣しますので、ご安心ください」

「あ、あぁ・・・」

 バックミラーに急激に迫り来る複数台のスポーツカーが見える。

「!?背後から急速に追ってきます、撃ってきました!」

「頭を下げ、窓から見えないように。寛二、運転は任せた。ヨハンと俺で迎え撃つ」

 荷台に移り、自分達の得物を構え、荷台のドアを開けた。最初から最大火力でこちらを襲うハイドラのテロリスト達に負けじと反撃に出た。ヨハンの狙撃は徹甲弾を用い、強化ガラスに守られたドライバーの脳天を確実に射抜き、M320グレネードランチャーから放たれる炸裂弾は車ごと火だるまに変え、HK416A5の射撃はタイヤを撃ち抜き走行不能にしていった。そして、八王子から府中に入るまでにすでに20を超える追っ手を排除していた。ハイウェイでは多くの場所で火の手が上がり、それはハイドラにとって大きな痛手であると教えられることになる。

(すごい・・・弾が飛び交っているのに、それを恐れないなんて・・・)

 二人の戦いを座席の隙間から覗く裕美。同じ年頃の男の子とは一線も、二線をも画したその姿勢は、雄姿を通り越し恐怖にも似た感覚を覚えた。

「裕美、危ないから頭もうちょっと下げて」

 プロデューサーが優しく彼女の頭を下げさせ、地べたに這わせる風にする。始まりから40分ぐらい経ち、銃声が止んだ。

「よし、いいぞ。追っ手は来ない」

 頭を上げ、後方から紅蓮の風景を見て驚愕する。

「アメリカのアクション映画みたいだが、見ない方が身のためだ」

 源太はそう言って注意を自分に引かせる。

「まぁ滅多にあんな派手な戦闘はしないけど、敵がそうしたいって言うのならそうするだけさ」

「あんなに激しかったのに、どうして平気なんですか?」

「どうしてって・・・日々の訓練?」

 CQBの訓練の際専用のVRを使い、ほとんど実戦とも言える環境で判断力と適応力を身に着け、軍用ブーツを履いて1マイルをオリンピックランナーと50秒差で走るといった、基礎トレーニングも非常にハードなメニューをこなす。

「言いたいことは多いと思うけど、俺らと君じゃ鍛え方も考え方も違う。驚くのも無理ないさ」

「・・・」

「隊長、そろそろ目的地っす!」

「そうか。長旅お疲れさん、今日は疲れたと思うからゆっくり休んでくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 目的地に到着すると、綺麗に着こなしたスーツとアイウェアの似合う、50代のヨーロッパ系アメリカ人の紳士が迎えてくれた。元シークレットサービスである彼の名はコリン・マッキンリー、コードネームはウォーデンという。

「あなたが来てくれるなんて、なんと心強い」

「見ない間に成長したね。立派な隊長だよ」

「護衛対象の保護に成功しました。あとは任せても?」

「このお嬢さんかい?コリンです、よろしく」

 源太とも違う落ち着いた雰囲気に、裕美は思わずかしこまってしまう。

「とても真面目で愛らしいんですね。346プロには個性派がたくさんいるって聞いてたから覚悟していたんですよ」

 他のメンバーからの話で様々なシミュレーションを想定していたウォーデンだったが、彼女が個性派とは遠い存在であったことに胸をなでおろしていた。イレギュラーな対応ほど警護を難しくする要素はないからだ。

「せ、関裕美です・・・日本語、お上手なんですね?」

「ちょっと苦労しましたけど、日本人の仲間に助けられまして」

 挨拶のタイミングを逃したプロデューサーも、ようやく声をあげる。

「は、初めまして、関の担当Pです」

「話は伺ってるよ。あの千川ちひろの勧誘を断って守り抜いたってね。ふむ、良い目をしてる青年だ」

 恥ずかしさのあまりに顔を真っ赤にする。

「さあ世間話はここまで、次の任務に支障が出ないように。新人の指導も適度にね」

「そこは大丈夫です、では」

「俺らはこれで失礼するっすよ」

 寛二の声に裕美が反応する。

「あのっ!・・・この前は、ありがとうございました・・・」

 足を止め、あえて振り返らず。

「?・・・思い出した、あの時の子か。今回も無事でよかったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 3人を見送った後、ウォーデンは思わず微笑んだ。

「若さですな。私にもありましたよ、甘酸っぱい空気の青春時代」

「そ、そんなんじゃ」

「冗談です。しかし、今のうちにその空気を味わうべきです。歳を取るとなかなか味わえません」

「・・・」

「君の歳ぐらいの場合、大人の男性に憧れる傾向があるもの。決して可笑しいことではないですが、焦ってはいけません。男という生き物は、牙を隠し持っていますからね」

「え?」

「ですから、どんなに親密でも一度距離感を間違えると大惨事になりかねません、覚えておいてください。中でご両親がお待ちです、ささどうぞ」




 バンディットのうわさ

 実は付け髭らしい
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