NSAに所属する伝説的エージェントで数々の脅威からアメリカを守ってきた男
一人娘のサラのことは国よりも大事で彼女の幸せを最重要視しているものの、結婚には大反対している親バカな一面も持っている
最近、バンダナをした同業者が引退したことに残念がっていた
アメリカ・ラスベガス、20時頃。かつて大規模なテロがあった街は夜になっても眠らない。そんな街にブラボーチームは派遣された。ハイドラの幹部でもあるボリビア麻薬カルテルのボス、ゲオルグ・カーンがラスベガスに潜伏しているという情報を入手したためだ。宿泊先のホテルに協力を要請し、3人は清掃員として訪れることになった。
「ちゃんと仕事しろよカルロス、シャワー室の水滴残ってんじゃねーか」
「うっせーな。そう言って壁の向こうの情事に耳澄ますんじゃねーぞ」
「俺は涼ちゃん一筋だ。でも今は任務に集中!」
手慣れた様子でシーツカバーや使用済みバスタオル、ゲノム情報が書かれた書類、カーンの荷物が入ったトランクなどをカーゴに放り込み、バレないように備品交換を終え、誰にも気づかれないようにその場を立ち去っていく。地下の洗濯場にてカーゴ内の証拠品を取り出し、中身を確認する。
「なになに・・・ポルトガル語か?」
「ポルトガル語ね、どれどれ・・・俺はベガスから一度ハバナに飛んでリオに向かう。隠してあるゴールドを回収してからじゃないとまずい、アイツに嗅ぎつけられたら速やかに離れないといけない」
「ゴールドを回収だと?」
「誰かに追われてるようだ。俺らはここでくすぶってるわけにはいかんな」
「自分もそう思う、でも誰だろう追われてる相手って・・・」
「それを確かめるためにもハバナに行こう。さぁ出発だ」
作業着から普段着に着替えたその時、銃声と悲鳴が1階のエントランスから聞こえる。危機的状況を察知した3人は得物を手に取り、一旦様子を見る。
「敵は6人。AKにショットガン、M60を持ってる。だが頭部は無防備だ」
「だったらこれしかない」
ヨーカイドローンに比べ、やや大きめな4基プロペラのマルチコプタータイプドローン、アサルトドローンを展開し、スマホを使って操縦する。Vz61サブマシンと40発マガジンが取りつけられており、広い場所では大いに能力を発揮する。ドローンの立体的な動きに機敏な飛行速度で翻弄していき、注意を逸らすことが出来た。
「次はこれ」
「やめろ、ホテルを焼く気か。その隙に前進だ」
焼夷グレネードによる攻撃を静止し、大きく出て攻撃する。ドローンに注意が向いていた敵は成す術なく倒れていき、あっという間に制圧に成功した。
「クリア!さて、ハバナへ行くぞ」
7時間かけてハバナ郊外に到着したブラボーチーム。ラスベガスが深夜1時なら4時、あと少しすれば夜が明ける。野戦向けの服装に着替え、座標を目指して進んでいくと不思議な光景に出会う。見張りの人間が例外なく気絶して倒れているのだ。カルテルのボスの隠れ家であろう場所で倒れているということは、先客がいたということになる。
「ここまで無表情に気絶してると、追われてるっていうのはNSAかな?」
「何故そう言い切れる?」
「あぁもちろん、ウチのオペレーターも考えたさ、でもノックやカベイラなら、なりふり構わず殺すだろうし、ゴースト部隊なら単身で向かわない。違う靴跡が一つしかないし」
五郎の懐中電灯が地面を照らし、大きく違う靴跡が見える。
「ホントだ。俺らがこのように悠長にしてても見張りが来ないのは?」
「気絶させた奴がまだここにいるってことだ。つまり、1,2時間前だろうな」
ボスの隠れ家という割に小規模なここは、ハイドラの刺青を入れた精鋭と思われる護衛達が警護していたことがわかる。つまり、限られた人間が出入りしていたということだ。
「この護衛見たことあるぞ、BOPE時代の同僚だ」
「・・・潜入に来た人間が搾れたぞ」
ドアの隙間から見える光が気になり、そこから覗いて見る。黒のスニーキングスーツに三つ目の暗視ゴーグル、アメリカ人にしては小柄な白髪の目立つ男がPCをいじっていた。
「そろそろ来ると思ってたぜ。先にゲオルグを縛っておいた、あとは好きにしろ」
恐る恐る入り、PCの置いてある机の下に焼けた肌と関取のような体をした男が所狭しと収まっていた。彼が殴って気絶させたのだろう。男はこちらに振り向く。
「最近のレインボーは若手だけに仕事させるのか?だが、ここを見つけ出すとは少しはできるみたいだな」
「やっぱり、アンタだったんだな。伝説のエージェント、サム・フィッシャーさんよぉ。あの置手紙はアンタなんだろう?スペルが微妙に違ったぜ、アメリカ人の間違え方だ」
「頭の悪そうなブラジル人に言われたか、俺もヤキが回ったな」
「んだとぅ!!」
「バカ落ち着け。俺らは味方だ、奴の回収と手紙にあったゴールドも押収したい、どこにあるか知ってるか?」
「ゴールドねぇ。それだったらコイツに聴けよ」
力づくでゲオルグを引っ張り出すと、カーテンを閉め部屋の灯りをつける。汗の発行した臭いが鼻を刺すが、口に咥えているギャグボールを息を止めながら外す。
「変に騒ぐなよ、騒いだらケツに麻酔ぶっ射して縄で縛って火で炙ってやるからな」
「うまく焼けたら上手に焼けましたって喜んでやるから安心しろ」
口の減らないカルロスに麻酔を撃ち、しばらく寝かしつける。
「聞こえただろ、ゴールドはどこに隠した?」
「そんなもんどこにもねーよ」
「ゴロー、縄と太めの棒、あと肉焼きセット探してこい」
「ホントだ!金属アレルギーなんだよ!」
レイモンドは全身をくまなく調べてみる。確かに金属のアクセサリーはおろか、取り出したコインをチラつかせるだけで拒絶反応が出ている。
「嘘だったら・・・炙るどころか着火してキャンプファイアーにしてやるからな」
「サム・フィッシャーとレインボー相手に嘘つけねぇよ。クソ、アイツの商談に乗るんじゃなかった」
「商談?」
「正直言うと俺は疲れたんだ、生きるか死ぬかの世界にな。引退しようと思った矢先によ、アジア人が大量の紙幣片手にやってきたんだ。自分を追い詰めた連中を食らいたくないかってな」
「どんな奴だった?」
「えらくヨレたスーツでよ、髪もロン毛って程じゃないけど長くて・・・そうだ、サムみたいに白黒だったな髪色。でもどっかで見たことがあるんだよな・・・」
「詳しいことは本部で聴こう。さて、迎えのヘリを呼ぶとしようか」
チヌークが来る頃には日が昇り、地元警察が周辺を囲み大量検挙をしていた。サムは別件でどこかに派遣されるらしく、そこから別行動になった。また、彼から渡されたUSBメモリーには商談先であるリオデジャネイロのホテルの住所が入っていた。その当日、ブラボーチームはBOPE出身のカピタオと組み、待ち伏せして逮捕に成功した。そこで重要な事実を知る。ハイドラの幹部は全員顔を知っているわけではない、ということだった。カベイラが尋問して聞き出した内容なので真実なのは確かだ。報告を済ませたレイモンドはハリーに呼び出される。
「お疲れ様。しかしすごい組織だ、頭を挿げ替えて生き残れるようにしてるなんてね。もしかしたら捕まえたゲオルグも蜥蜴のしっぽって可能性があるってことだね」
「なによりアンクルサムもいたことに驚いた。あのオッサン、引退すんのか?」
「サムは娘のサラが結婚したら引退すると思うよ。婿を監視するためにね」
「・・・なるほど」
「ところでゴールドの正体は?」
「なんのことはない、奴の持ってる麻薬精製工場のこと。謎のアジア人によって最大勢力になって建てまくった施設のことだったよ」
「捕まえたのと違うの?」
「そうみたい。幹部でも下の下かも」
「うーん、偶然にしては恐ろしいな。ちょっと前のニュース見た?」
「確かゲンが殴り飛ばした黒井崇男が千葉プリズンへ護送中に逃亡って・・・!?」
「護送した日はハイドラが名乗り出る1週間前、つまり、誰かが保護し、ハイドラの幹部になってる可能性もある」
「なるほど、俺らに恨みあるし、凍結した資産も別人名義で借りれば手腕でどうにかなるな。マネーで芸能界牛耳ってたって話だし」
「錬金術師の正体が見えてきたね。よし、ブラボーチームは警視庁に行って事件の詳細を調べてくれ。護衛したメンバーのピックアップも忘れずにね」
トッケビのうわさ
独身でいることに喜びを感じているらしい