謁見の間から来客部屋にきたのはいいのだが…
「…えーと、5人で一部屋なの?」
「ええ、そうですが…?」
どうしようまさか全員が一部屋で一泊するとは思わなかった…
「どうした?入らないのか?」
後ろから尚文が声を掛けてきた。
「この部屋、広いんだから遠慮すんなって。」
「ほれ。早くは入れ」
「うわっ!ぶへっ」
ボクは尚文に思いっきり押され、その拍子にそのまま顔から倒れた。
あ、絨毯柔らかい…じゃなくて!
「なあ、これってゲームみたいだな。」
ひどい。ボクには目もくれずに話しだした。
ごめんっていう言葉くらいないの?
尚文を睨むが全く気づかない。
…後ででいいか
いつの間にか話が進んでいって何か皆の話がおかしいことに気づいた。
彼らの言うこの世界に似た有名ゲームの名前を皆知らないどころかVRってゲーム機の種類が全然ちがうよ?
「じゃあ、一般常識の問題だ。今の首相の名前は言えるよな?」
当たり前だ。これ知らなかったら相当ヤバイやつ。
「一斉に言うぞ…せーのっ」
結果、全員の首相の名前は一致しなかった。
他にも色々なことについて質問したが、どれも誰も知らないことばかりだった。
極論をいうと、全員が違う世界の日本から来たということになった。
「このパターンだとみんな色々な理由で来てしまったような気がするのだが」
「確かに…」
こうして各々、ここにくる直前のことを話始めた。
まず、錬は学校の帰り道で殺人事件に遭遇し、幼なじみを助けて犯人を取り押さえた後、自分がやられたらしい。
何だか信用し難いなあ
「幼なじみを助けるなんてかっこいいシチュエーションだな。」
尚文のお世辞にクールを装って笑ってる。
「じゃあ次は俺だな。」
元康はというと、ボクの予想通り彼女を二股三股して刺されたらしい。
「いやあ、女の子って怖いね」
「ガッテム!」
「それは元康も悪い…」
尚文が怒り、ボクは呆れる。
「次は僕ですね。」
樹は塾帰りに車に引かれたらしい。哀れすぎる最期。
「あー………この世界に来た時のエピソードって絶対話さなきゃ駄目か?」
何を今さら、尚文はごめんな、といって話した。
尚文は本を読んでたら来ていたらしい。
うん、確かにそんな内容だったら躊躇うのもわかる。他の人と比べて浮いてるもんね。
3人の視線が冷たい。
「最後はボクだね。ボクは家に入る直前にトラックに積まれた鉄骨の束が頭に降ってきたんだよね。あれはビックリした。」
「「「「……」」」」
…もしかして哀れんでる?
「ところでさ、皆このこの世界ゲームでやったこと、あるんだよね?」
とっさに話題を変えていく。
「ああ」
「やりこんでいたぜ」
「それなりには」
「…いや、やったことないな」
やったことないのは尚文とボクかあー
仲間がいて良かったー
「なあ、これからこの世界で戦うために色々教えてくれないか?俺の世界には似たゲーム無かったんだよ。」
「ボクも同じく」
「よし、元康お兄さんがある程度、常識の範囲を教えてあげよう。」
元康が教えてくれるらしい。
「まず、俺の知るゲームでは、シールダー…盾がメインの職業は、高Lvは全然いない負け組の職業だ。」
「ノオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
びっくりして、思わず耳を押さえる。
し、心臓止まるかと思った…
「ボクは?ステータスを見ると職業が魔法の勇者だったんだけど…」
「ん?ああ、魔法使いは…魔法の威力はかなり高いけど防御力が相当低いからどの職業に比べてもあっという間にやられるからなあ…シールダー程ではないけどほとんどいないな。」
えぇぇ…
ほぼ負け組のようなもんじゃん。
「地形とかどうよ」
「名前こそ違うがほとんど変わらない。これなら効率の良い魔物の分布も同じである可能性も高いな」
「武器ごとの狩場が多少異なるので同じ場所には行かないようにしましょう。」
すごい。効率の良い狩場ってのがあるんだ。
この世界凄く熟知してる。
「よーし!頑張るぞ!」
お、尚文が立ち直った。
ボクもいつまでもショック受けてる場合じゃないな。
「この世界のことはこれから知っていけばいい。頑張るぞー!」
「勇者様、お食事の用意が出来ました。」
食事かあ、そういえばお腹すいたな。
この世界の食べ物ってどんなものなんだろう。
あっ…そういえば…
「すみません!ボクだけちっちゃくても良いんで個室にできますか?あと、お風呂、入れますか?」
「え、ええ。できますが…この部屋に何かご不満でもありましたでしょうか…?」
「いや…部屋自体に不満はないんだけど…」
チラリと4人の勇者に目を向ける。
「「「「????」」」」
4人は疑問に思い、互いを見る。
突然の質問に戸惑いながら頷くとメイドさん。
ごめんなさい、4人が悪いわけではないけど…
これだけは譲れなくって…
「僕達がなにか…?」
「なんだ?俺達と同じ部屋は駄目なのか?」
「多人数で寝るのは初めてじゃないだろ?修学旅行行ったときとか」
騙していた訳じゃないけどそろそろ正直に言わないと…
「えーと…」
「なんだ?言いづらいことでもあるのか?」
うん、ホントに言いづらい。
言いそびれたとはいえ自分から言うことしなかったボクの方が悪かったかも…
「ボクは男じゃなくって女なんだ」
「「「「……え?」」」」
この告白にメイドを含める6人の間に暫くの静寂が流れる。
「だから個室の方がいいんだけど…」
元の世界でも話した人家族以外だったら誰1人一発で自分が女だってこと見破った人いなかったけどその程度ならいい。
ボクは女なんだから流石に4人の男に囲まれてやったことないのは寝るのはかなりの抵抗あるよ!
「し、失礼致しました!至急個室を用意します。それから、ご入浴されるならばお食事が終わり次第ご案内致します」
「ありがとうございます」
よし、個室確保。
「…知らなかったとは言え、すまない…」
「いいよいいよ。」
結果として個室オッケーだったしお風呂も入れるみたいだし
「…まさかその容姿で女だったとは」
「今思えば引っかかるところがあったのに何故気付かなかったんだ!」
「見た目に騙されてしまいました」
「…騙していたつもりはなかったけどね」
なんか皆気まずそうに目を逸らしてるなあ。元康、何であんたは悔やんでる?
怒ってないよ?よくあることだし。
「で、では食堂へご案内致します」
メイドさんに促され冒険らは食堂で食事をした。
元の世界とは違って味が薄いけれど食べられない程ではなかった。
オムレツに似た物はあったけど…味がオレンジ?っぽい感じだった。
食事が終わって次は入浴。
通された浴場はものとても広く、泳げそうだった。
泳いでないからね?泳げそうだったけどそんな行儀悪いことしないからね?
「魔法の勇者様のお部屋はこちらになります」
「ありがとうございます。ごめんなさい、こんないきなり色々と要求してしまって…」
「いえ、勇者様のお役に立てるのならば何よりです」
勇者…か。
小さい頃憧れてたな。世界を救う人っていうのに。
「うわあ~」
部屋は思ったより広かった
ホテルのベッドより大きいのでは?
と思いながらメイドさんがいなくなったのを確認してベッドにダイブした
フワフワしてて気持ちいい
大きな窓からは城下町が見えている。そこは自分が今まで見ていた景色とは全く違うものだった。
明日は王様たちが用意した仲間と冒険に出るんだ!
ああ、明日が待ち遠しい。
きっと大部屋にいる4人も口には出さないものの同じ気持ちだろうな。
お腹いっぱい食べてお風呂に入ったら段々眠くなってきたのでボクはベッドに入って寝ることにした。
四聖武器の中で好きな武器は槍です。