魔法の勇者も成り上がり   作:叶麻直

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今回はあの女性が登場です。


偽物の烙印

この日、ボクにとってとても危機的な事件が起きた。

 

 

「王様のお呼びです。今すぐ同行願いたい」

「はあ…」

 

まだ夜の大体3時くらい?

ドアをノックされてメイドさんかと思って出てきたら何故か3人の騎士が立っていた。

訳がわからないまま騎士に連れられて謁見の間に行くことになった。

 

「魔法の勇者を名乗る者よ…貴様は一体何者だ?」

「はあ…?」

 

王様の元に着いた途端、意味のわからない質問をされた。どこか怒っているような…

というか『貴様』…?

困っていると隣にいた大臣が口を開いた。

 

「今までの書物を見たところ、少なくとも我が城の書物には歴代の勇者の中に魔法の勇者という者は存在しなかったのです。」

「そうなんですかじゃあ、ボクが初代魔法の勇者ってことになるのかな」

 

初代になるってなんか嬉しいような心細いような…

え?何で心細いかって?

だって、先代がいないってことはどんなことができるか自分で手探りで探していくんだよね?

 

今なら何をやるにも先にやった人がいるし、例えば、ゲームとかだったら初めてのものでわからないとこがあったら友達に聞くことできる…とか?

それが無いからね…

 

「いえ、そうではなく…」

 

え?そうじゃないの?

 

「貴女は存在しない魔法の勇者を名乗る偽物の勇者、ということになりますわ」

 

後ろを見てみると開かれた扉に1人の女性が立っていた。

見たところあの服は城の人じゃない…呼ばれた冒険者かな?

…いやいや!そうじゃなくって!

偽物ってどういうこと!?

 

「過去に1度も存在したことのなかったものが突然現れる…そこで怪しむのは正解かもしれないけど…それだけで偽物と決めるのはちょっと…」

「それだけではありませんわ」

 

なに!何があるんだ!

 

「これを見なさい!」

 

そう言って彼女が取り出したのは1つの黄金の首飾りだった。

 

「…それがどうしたんだ?」

「しらばっくれるな!気付かなかったとでも思ったのか!」

「だからなんの話…」

「これが、どこからでてきたのか…貴女の部屋を調べたそこの兵が答えてくれるわ」

 

兵士が彼女の隣に立った。

…って勝手に女子の部屋漁ったんかい!

いや、別にタンスに自分の服が入ってたとかは無いけど

 

「…この他にも袋のなかに詰め込まれて勇者様の部屋のタンスの中に入っておりました…」

「………」

 

絶句した。

 

「つまり、貴方はこう言いたいわけ?『魔法の勇者は存在しない、偽物で城内で盗みを働いた』と…」

「ええ、私は貴方が何かが入った袋を持って部屋に入ったのを見たのです。魔法の勇者を名乗るほどです。この城の宝物庫の鍵くらい魔法でどうにか出来るのでしょう。ほら、見なさい」

 

彼女は水晶を取り出す。そこには袋を抱えて部屋に入るボクの姿があった。

 

「そ、そんな!ボクは…あれから1度も部屋から出ていない!」

「いいえ、決定的な証拠ですわ。」

 

彼女は玉座へと歩いて行く。

そのとき一瞬目を合わせ…それだけで背筋が凍った。

なんだこれ…人を平気で、躊躇なく奈落へ蹴落としそうな目をしてる…

 

まさか…これは…彼女がボクを嵌めようと…!

 

「流石は我が娘マルティ。お前が気付かなかったら多大な被害を被るところであった」

 

いやいや王様、さっき貴方が気づいたみたいな言い方していましたけど…?

 

「待ってください!ボクは盗みなんて働いていません!大体宝物庫の場所なんて知りませんし、まだ魔法なんて使えないですよ!」

「黙りなさい!コソ泥が!そこの兵、そこの者は勇者でなどない、偽物ですわ!牢へ連れていきなさい」

 

マルティの突然の一喝に怯む。

そこへ周りに立っていた兵士がボクの腕を取る。

 

ちょっ!ボクの話くらい聞かないのか!?

まだ連れていかれないように必死に抵抗する。

っというか!

 

「おいっ!そこは触るな!」

「罪人の言葉は聞かなくて良い。『自称』魔法の勇者よ、貴様の処分は次の波が来る1ヶ月前に決める。それまでは牢で待っているが良い」

「待て!話は終わっていない!だからそこは…!」

 

扉が閉まる直前、マルティの口が僅かに上がるのが見えた。

それを見たボクは思わず叫んだ。

 

「くっそおおおおおおおおお!!」

 

今までこんなに大きな声を出したことはなかった。

今までこんなに誰かを絶望を感じたことはなかった。

今までこんなに悔しく思ったことはなかった。

 

今までこんなに誰かを強く憎んだことはなかった。

 

 

 

「さあ、こっちだ!入れ!」

 

ボクが連れていかれたのは地下牢だった。

 

「じきに処分がか決まるだろう。それまではおとなしくここで待っていろ!」

 

そして牢の扉が閉ざされ、上へ続く扉も閉ざされた。

扉の閉まる音が響くなか、ボクは1人残された。

牢がこんなにも暗いなんて思っても見なかった。

 

「なんでこんなことになったんだろ…」

 

暗い牢の中で1人、ボクは膝を抱えてうずくまった。

 

 

かなりの時間が経って上の扉が開く音がした。

恐らく兵士だろうか。罪人への尋問ってところ…かな?

 

「……様…勇者様!」

「…誰だ?」

「私です。昨日あの部屋へ案内したメイドです。」

 

降りてきたのは何故か兵士の格好をしたメイドさんだった。手には鍵を持っている。

 

「勇者様をここから出すためです。今開けますね…申し訳ありません…マルティ様が…」

「知ってる。そのマルティって人はこの国の王女様…なんだよね?」

「ええ…他人を陥れることがお好きな方なのです。今日、勇者様と共に冒険に出るらしく城内の一部の者はマルティ様が城からいなくなると喜んでいる者が…あら?この鍵じゃない…」

 

城の人に嫌がられてるってどんだけ…

やっぱりそうか……ん?

嫌な予感がまたする……

他人を陥れることが好き…

冒険者として勇者と共に行く…

本物か疑わしいとは言え勇者として召喚されたボクを…

流石にないかもしれないけど…

 

「ねえ、今何時?」

「勇者様がここに入られてから6時間経っておりますので…9時ですね。あっ、これです!」

「勇者が旅立つのは?」

「さあ、開きましたよ。勇者様方が旅立つのはもうそろそろですかね?」

 

不味いな…

知らせないと誰かがマルティの犠牲になる…

 

「メイドさん、誰かにこう伝えられる?『マルティをに気を付けろ』って間に合わなかったら間に合わなかったでしょうがないけど、出来るだけ早急に伝えて」

「はい、承知しました。勇者様は秘密の通路からお逃げください。」

「わかった。」

「こちらです。」

 

牢を出るとメイドさんが奥へ進む。

ここでボクは一番気になっていたことを聞く。

 

「…メイドさんはなんでボクを助けてくれたの?王と王女を敵にまわすようなことを…」

「貴女様は盗みを働いてなんていないことを知っているからです。」

 

聞けば彼女はボクが連れていかれた後、マルティが何かを持って部屋にこっそり入って行くのを廊下の曲がり角から見えていたらしい。

 

出てきたときには何も持っていなかったことから部屋に置いてきたことがわかり、マルティが何を考えているのかが想像がついてとりに行こうとした。

 

けれど、そのタイミングで兵士がやって来て取りに行けず、罪は確定し、せめてボクを逃がそうと兵士の着ている服を借りてここへきたらしい。

 

兵士は恐らく何も知らなく、マルティに頼まれたのだろう。

 

「…本当に借りたの?」

「……」

 

まあ、そこは追及しないでおこう。

と…話している内に秘密の通路とやらに着いたらしい。

この国で何かあった時に素早く逃げられるようにつくった幾つもの通路の内の1つがここらしい。

 

床にあるマンホールみたいな蓋を開け、そこから顔を覗かせると確かに通路があった。

 

「この通路の先は城下町の外の森に繋がっております。そこからは城を背にゆけば、私の出身地のリユートという村があります。」

 

とにかくボクはいいとして、このメイドさんはどうするのか…

聞くとメイドさんは悲しそうな笑みをボクに見せた。

 

「私は本当に罪人でないとはいえ、牢にいる者を逃がしてしまったのでその分の罪を負うことになるでしょうね…」

「っ!そ、そんなことはダメだ!」

「!!しっ!」

「…!」

 

ハッとして息を潜めて辺りを見回す。

あぶない、あぶない…つい大声をだしちゃった…

深呼吸、深呼吸…

 

「…とにかく、ボクのために罪を背負う必要なんてないんだ。ボクに脅されたとか言えばいい。」

「で、でも…そんなこと言えないですし、このような事をしていつも通り城で働くことなんて出来ないですよ…」

「ならば、一緒にここから抜け出せばいい。」

「え?そしたら貴女様の伝言は…」

「それはもう諦めるしかない。今後ボクがうまく他の勇者たちに接触出来ればいいけど…それは難しいかもね…でも、考えがある。」

 

ボクの案を言うとメイドさんは成る程と頷く。

 

「ボクが何もやっていないことを、偽物の勇者でないことを証明することが出来れば貴女の行動は間違っていないことが証明される。だから、行こう。」

 

ボクがそういい終え、手を伸ばすとメイドさんは目を潤ませた。

えっ?ボク、なんか泣かせちゃった?

 

「ありがとうございます、ありがとうございます…」

 

そう言ってボクの手をとった。

泣きながら感謝されるって、照れ臭いな…

 

「ところで、貴女の名前は?」

「はい…ぐすっ…ヴェネラと申します。ぐすっ…」

「じゃあ、いくよ。ヴェネラ」

「はい、勇者様!」

「あー…その勇者様って言うのは外に出たら無しね。ボクのことは歩夢って呼んでくれる?」

「わかりました、アユム様。」

「…様付けも無しで…」

 

こうしてボクとヴェネラは城からの脱出と他の勇者たちへのメッセージを伝えるミッションを開始した。

 

ちなみに、少々長い口論の末ヴェネラのボクの呼び方は『アユムさん』ということになった。






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