「もしかしたらここに隠れているかも知れない!徹底的に探せ!」
あーあ、また当たっちゃった…
さっき行った先にボクを探す人がいませんようにって祈ったのに無効に終わったよ
「さて、どうしよっか…蹴散らそうと思えばできるけど後々面倒になりそうだし」
と、茂みに隠れて悶々と悩んでいると
「どうですか、見つかりそうですか?」
「こ、この声は…」
「彼女は強盗未遂に脱獄、挙げ句の果てに1人のメイドを拐った誘拐犯、まさに悪そのものです。女性とはいえ、僕達の正義の前には容赦は無用です。必ず捕まえて見せましょう!」
「はい、イツキ様!我らの正義のために必ずやあの悪を捕らえてみせます!」
うわぁ……面倒くさそうな集団がやって来たな。
よりにもよって勇者が探しに来るなんて。
彼ら、正義を連呼してて凄く執念深そう。
見つかったら地の果てまで追いかけてきそうな感じ。
あの感じから見て、大分連携とかできそうだし、レベルも結構上がってそうだ。
ボクじゃきっと対処出来ない、ホントどうしよ。
ってか、脱獄は認めるけど強盗と──何か誘拐まで加わってる!?それはやってないからね?
「どうしよっか、魔法の勇者さん?このままじゃ、見つかるわよ」
うーん、わかってはいるんだけどね。
そうしてる間も確実に彼ら、近づいて来てる、ヤバいヤバい!
考えろ、考えろ…この状況を抜け出せる策を。
「…ねぇ、ルーシーさん、姿を隠す魔法ってある?」
「あるわ。でも通じないかもしれないわね。どれだけの強さかわからないけど、もし向こうが魔力の感知に優れていたらバレるわよ」
なら──
「なら、相手の視界を奪う魔法は?」
「貴女、逃げること前提なのね」
そう、逃げる前提だ。
勇者だからって何でもかんでも戦いに挑む訳ではない。ダメなの?
「だって、こっちは魔法使いと魔法をまだちゃんと使ったことが魔法使い。加えて連携もレベルも向こうより劣っている。戦う前から負ける確率が高いってわかってるのにわざわざ挑む気なんてないよ」
「わかっているじゃないか」
思わず叫んでしまうところだった。
だって、いつの間にか後ろにメルガがいたのだから。
「…何時からいたの?」
「お前が悶々と悩んでいるときから」
そんな前からいたの!?
本当、心臓に悪い…見つかったかと思った。
「というより、何しにきたのよ」
「ヴェネラに頼まれて。お前の逃走を手助けに来た」
ここでボクは気になっていたことを、今一番心配していることを聞いた。
「村は、ヴェネラは大丈夫なの?」
メルガは何も答えずほんの僅か─しっかり見ていないと気づかないくらい─に目を逸らした。
その無言とその目が意味することは…
「捕まったの!?」
「! その声…歩夢さん…ですか?」
「流石イツキ様!もう見つけたのですか!」
しまった、つい大声を出してしまった。
樹達はその声に気づいてこちらに歩みを進めてきた。
しかもボクだって気づかれた。
…一応さん付けなんだね。
と、ちょっと場違いな考えをしてしまった。
「…ごめん、ボクの逃走を助けてくれるかな?」
「俺はお前を助ける訳じゃない、手助けだ。そこを間違えるな」
無言で頷くのを見たメルガはすぐに詠唱を始める。
『力の根元たる我が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者を水の刃で切り伏せよ』
「ファスト・ウォーターカッター」
「樹様!」
「っ!!」
すると水の玉が樹へ向かう。
樹に飛んでいった水の刃は樹に避けられ近くの木に当たり、木はスパッという音が聞こえそうなほどよく切れた。
成る程、そうやって魔法を発動させるのか。
というか、いきなり攻撃しちゃうんだ…。
今の当たったら結構危ないよ。
「イツキ様に何て卑劣な真似を…。その愚行、赦せぬ…姿を現せ!」
鎧の男が叫ぶ。声デカイ。
樹達は次の攻撃を警戒しているのか一ヶ所に固まっている。
今なら相手の視界を奪えば逃げられるかもしれない。
そう思ったらボクの脳裏に詠唱の言葉が浮かび上がってきた。
『力の根元たる魔法の勇者が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者達を深き闇で惑え』
「…ごめん、樹。ここで捕まる訳にはいかないんだ…ファスト・ダークネスプリズン!」
「この声、やはり…あゆ…!」
「うわっ!」
「なんだ!?」
「お、おそらく敵の魔法です!」
樹達のいた所だけ暗くなった。
どうやらプリズンというだけあって対象者は出ることは出来ないらしい。
「…まさかとは思ったが、見ただけで出来るとは」
「凄いわ、アユムちゃん、天才じゃない」
「……」
「アユムちゃん?どうしたの?」
突然無言になったボクを心配したのかルーシーさんが顔を覗き込んできた。
「…何でもない。さて、逃げるけど…何処に逃げればいい?」
「恐らくこれ以上はリユートにはいられないだろうな」
「うん、今バレたし」
あゆ、までしか聞こえなかったけど、絶対気づかれた。
「これだけでまだリユートの関連性はわからないだろうが、留まれば危険だろうな」
「だからって外に出ても人相が割れてるから…」
「とりあえず俺に付いてこい。一時的にだが身を隠せる所がある」
足止めした樹達から逃げ、メルガに付いていくとその先には洞窟があった。
そこは鉱石がよく採れる鉱山の洞窟だが、人はいない。
何でも、最近魔物が凶暴化したために人があまり来なくなったという。
「ここなら暫くは見つからないだろう」
「今更だけど、何もいきなり攻撃することなかったんじゃないの?相手は勇者一行で反撃でもされたら─」
「避けられる位で放ったがな。しかし、あんなのが勇者だったのか?」
「─どうなるか…え?『あんなの』?」
メルガ、今何て言った?
ボクの耳には『あんなの』って聞こえた気がするんだけど…
「ああ、あんなのだろ。その勇者とやらは正義悪を連呼しててうるさいし、その仲間たちはどう見てもあのイツキって奴の信者の集まりだろ」
確かに…正義っていうよりはとにかく樹を奉ってるような感じがしてたな。
「と、とにかく!顔を見られてなかったから良かったけど、勇者を下手に敵に回したら危険なんだから」
「そうよ。あのイツキっていう勇者…というよりお仲間さん達は根に持つタイプよきっと」
「それ、お前達に言われたくないのだか…」
イラッ
確かにボクは既に四聖勇者含めるメルロマルクと敵対というか逃走しているけどそれとこれとは別!
旅人とはいえ、一般人が一国を敵に回すのはかなり不味いよ!?危険だよ!?
「旅に危険はいつでも付き物だ」
いやいや!そんな一言で済むような軽いものじゃないから!
「まあ一回この話は置いておいて、この村にはこれ以上留まれないとしたらこのあと、どうするのかしら?」
「そこなんだけど…旅に出るしかないよねー…出ないといけないって思ってるし」
この世界は1ヶ月ごとに波が来るみたいだから強くならないといけない。
そのためにもここにどちらにしろ留まることは出来ないと思っている。
「ボクはこの世界を全く知らない。この世界を守るためにもこの世界を知らないといけない。そして知るためには旅に出ないと」
「覚悟はあるのか?」
突然聞かれる
「あるかと言われたら無いかもしれないし、無いかと言われたらあるかもしれない。中途半端な覚悟じゃこの先生きていけないかもしれない。」
そう、自分でも覚悟があるのかよくわかっていない。
「でも、ボクを信じてくれている人がいる。だからこの世界を守りたいんだ」
ここまで言うとメルガはフッと顔を綻ばせた。
「なんだ、覚悟、できているじゃないか」
「アユムちゃん、カッコいいわぁ」
これが覚悟っていうのかな?
「お前は暫くはここにいろ。村にいた騎士達がいなくなったのを確認したら後で迎えに来る」
「あたしも戻ってアユムちゃんの旅の用意しておくわ」
「え、ルーシーさん、それは自分でやりますよ」
この事にルーシーさんは譲らなかった。
何でも渡したい物があるらしい。
それを兼ねて用意をしておきたいとのこと。
そして2人は村へ戻り、洞窟は静かになった。
初魔法出しました!
ダークネスプリズン
闇魔法
対象を暗闇の檻に閉じ込める
中はめっちゃ真っ暗
攻撃魔法にするか迷ったんですけど、今回は逃げることであって戦う訳ではないので拘束魔法っていうのかな?それにしました。