”モノ”ガタリ   作:水壁

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二作目になります。お手柔らかにお願いします。


左から昇る太陽

 俺が認識する朝日は大抵左側からやってくる。まあたまに真上から来たり正面からやってくることもあるがそこはご愛敬。朝日だってそんな気分の時もあるだろう。

 

 

 ともかく朝日を迎えることがかなったならまずは髪型をそろえる。自慢の黒髪さ。そんじゃそこらのやつとは黒さが違う。美しい黒だ。唯一気に入らないとすればどんなに固めても午後にはすっかり丸くしなびてしまうことだ。誰かいい方法知らないだろうか。

 

 

 最近お気に入りの電動剃刀できっちり髪を整えたら仕事の時間さ。俺の仕事はとにかく大変だ。素人にゃ厳しい。よく“身を粉にして”だとか“骨の折れる作業”だとか例えるやつがいるがこっちは本当に身は粉になってしまうし、上司がミスれば下手すりゃ全身複雑骨折もざらにある。そういうやつは基本的には復帰できなくなっちまうから気を引き締める。じゃなきゃ次は自分かもしれんからな。

 

 

 まあそんだけ厳しい仕事だが同僚もそれなりにいる。大抵は俺のように黒髪のやつらだがなかなか変わったのもいる。

まずはあいつだろう。赤髪。優遇されているのか自分たちより仕事が少ない。一度直接話を、と思っていたらどうやら担当している部署が違い、そちらはどうももともと仕事が少ないらしい。たまに見かける青髪もそちらの所属らしく仕事が赤髪よりも少ないらしい。うらやましい限りだ。

 次に白髪の角刈り。こいつは俺たち黒髪よりも重労働だ。だいたい黒髪の誰かとセットで仕事をしているがこっちが4,5人、少なくとも3人程度で仕事をしているのにも関わらずあいつはどんな仕事でも大抵1人、職場が物々しくなっているときはどこから来たのやら2人目がいる時もあるが普段通りになればそいつは1人に戻っている。話を聞いてみればそもそも部署に自分しかいないしたまに追加されている2人目は派遣なんだと。

次は帽子だ。普段見かけることは少ないが、ある時間になると俺たちと反対側の扉から出てきて仕事を始める。朝の髪型をばっちりとがらせている俺が言うのもなんだがこいつもかなりとがっている。しかも俺のとは違って午後になってもとがりっぱなし。何かコツはないのかと聞いてみたが、生まれつきの髪質らしく逆に困っているとのこと。仕事はきっちりこなすタイプで、とても丁寧に行う。社内の評判も“仕事は”いい。どうやら髪型で怖がられているようだ。

 最後に黒いの。いや別に俺たちの仲間ってわけではなく頭どころか全身黒いのだ。見た目のわりにフレンドリーなやつで、部署が隣ということで仲良くはさせてもらっている。部署こそ隣なものの毎日忙しい俺らと違い、年の初め、月の初めといったきりのいい日にとてつもなく忙しくなるようで、こいつが忙しいときは俺らの仕事はなぜか激減し、俺らが激務の時は対照的に向こうは暇である。極稀に一緒の仕事になるときもあるが大抵俺らが仕事を終えるころに向こうの仕事が始まるために本来の意味で同じ仕事を持ったことはない。話してみればいいやつなので是非一緒に仕事をしてみたいものだ。

 

 

 こんな個性的な連中とともに午前のお勤めを終えれば昼休憩。この会社は不思議なことに昼は睡眠時間と決まっているようで皆寝始める。いや実際午前中は仕事がきつく合理的なのはわかるが、仕事がなくても昼は寝ろとのお達しで。稀に上司がポカをやらかすとその時は臨時で仕事になってしまう時もある。どうも聞いたところによると同系列の他社の中には昼休憩だというのにフル稼働で働かされるのが当たり前だとかいうところもあるらしい。上司が仕事好きなのだそうだ。巻き込まれた側はたまったものじゃないだろうし、それを考えればうちはそこそこにホワイトなのかもしれん。

 

 

 昼休憩も終われば午後の勤務。午後は午前中に比べて仕事が少なく時間も短い。残業になることはほとんど無いからここを乗り切れば仕事は終わり。帰ってゆっくり眠れる。今日はどうやら珍しいことに黒いのの仕事が多いようだ。おかげさまで俺らの仕事は少なくて助かる。もう流石に髪も丸まってきてしまっているしこれ以上は過労ってものだ。そろそろ引退を考える時期かねえ。

 

 

 一通り仕事を終え、帰宅の時間。世間様の常識ではどうも太陽っていうのは東から昇って西に沈むものらしい。俺の常識だと太陽は大抵左から昇って左に沈むものだ。よしんば昇ってくるのが東だったとしても、俺の常識に当てはめてしまうとそのまま東に戻っていくことになってしまう。ちょいと気になり同僚に聞いてみたが黒髪や黒いのは大抵俺と同じ。帽子や赤髪は右から昇って右に沈むという。どちらにせよこの会社のやつは世間様とはずれているらしい。俺だけではないとわかって一安心。これでゆっくり眠れる。

 

 

 これが俺の日常。明日もまた、仕事が待っている。丸まっちまった頭を剃刀で整えて、眠るとしよう。今日左に沈んだ太陽を、明日も左側から見ることがかないますように。

 

 

fin

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。

今回の作品は短編集形式での物語です。連載というには今後話が繋がっているわけではありませんし、かといって別の作品として投稿するにはテーマが同じ“モノ”ガタリなのでこの形式になりました。


“モノ”ガタリの第一弾となる今回の主役は「鉛筆」です。私のつたない文章から読み取っていただけた方もいると信じたいところですが、何分未だ二作目。これから上達できればと。


今回の舞台は小学校、そして筆箱を自宅と会社に見立てた鉛筆の日常です。今まで私たちがお世話になった鉛筆たちもこんな風に考えていたらと思うと、そしてこの声が聞こえていれば、面白い学校生活を送れたのではと思います。


このシリーズ「“モノ”ガタリ」はこのように普段身の回りにあるモノ、普段は使うことのないモノたちが送る日常をモノの視点で綴る物語です。今後ともお付き合いいただければ幸いです。
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