『おや、ここは。』
『っとと、
おろ?萃香じゃん、
ひさひぶりぃ~。』
『そう言うあんたは
勇儀か、ひさしぃね。』
『なんだい?この手紙は?』
勇儀がペラペラと振り回すが
もぎ取る
『あ、おい。』
※萃香、
ごめんなさい、
暫く、そっちで過ごしてね
“辛いでしょうけど”
せっかくの“現代”を
少し観光してて頂戴な
『・・・そうか。』
『萃香、おい。』
・・・何百年振りだろうか?
涙が数滴流れ出す
『はは、歳は取りたくないね。』
『・・・もぅ、千年も前の事になるのか。』
『勇儀、
手、繋いでくれるか?』
『・・・あいよ、
相棒、行くんだろ?』
『あぁ、
残っているかは、
この手紙に書いてる地図頼りだ。』
▽
『え?別行動?』
『あぁ、さとり、
お前らはここを拠点とするんだろ?
アタシと萃香で、
ちょいと用事があるんだよ。』
三つ目の目(サードアイ)で、
心を読もうとするが
『おい、
たとえ地霊殿の主でも、
“踏み込まれたくは無いんだ”
読もうなんて止めろよな?』
本気だ、
彼女は殺気を“私のみ”に向けている
『・・・わかりました、
連絡だけは取れるようにして下さい。』
スマホだけは押し渡す
『・・・萃香、持っててくれや。』
『あぁ。』
▽
『ありゃ?鬼様達はどちらに?』
『別行動、だ、そうよ?』
『まぁ、負けは付かないですね。』
▽
都会の真ん中にある駅から、
とある方面へ向かう
“新幹線”なる乗り物に乗る。
『かぁ~、
空もダメなのかい。』
『仕方ないだろ、勇儀、
ここは“幻想郷じゃない”
ここでのルールで、
“ちょっと大人しく”してれば
大丈夫さ。』
『・・・そか、
先ずは飯だな、
駅弁とやら買っとくか。』
『あぁ、どうせなら
楽しもうじゃないか。』
墓参りなのにな
『そんな顔すんなよ。』
『勇儀こそ。』
▽
『おっと、
動き出したな。』
『何とも言えない感覚だねぇ。』
紫からの知識改変が無ければ
“理解できない”
まぁ、少し“見れば”
複製品程度出来るだろう
『千年もあると、
こうも“東の京”は、
建物だらけになるんだねぇ。』
『あぁ、“西の京”は、
昔ながらの建物やら
道が残ってるそうだ、
ほれ、これに書いてある。』
座席の裏にある、
京都観光のパンフレットを渡されるが
『いらないよ、
さて、どんな味なのかな?』
『あ、先に喰うなよ、
それは私んのだ。』
『いいや、私のだ。』
幼女と長身の金髪の二人が
姉妹のように弁当を取り合う
▽
『うまかったけど。』
『うん、量が足らないね。』
確かに旅費は持たされているが
往復を考えると
おいそれと使えない
『まぁ、味は覚えたから、
再現できるよ。』
『ずりぃよね、萃香のその特技、
私にも頂戴よ?』
『いや、
あげられるモノでもないし、
長年積み重ねて来たモノだから、
どうこう出来ないよ。』
『・・・そだな。』
『あぁ。』
▽
途中駅で乗り換え
たたんたたん
リズムよく列車は音を立て
走り続ける
既に周りは
農村が似合う景色になり
『冷えて来たね。』
『ほれ、上着。』
まだ、雪が残る山へ列車はひた走る
ぎぎぎ、と、音を立て、列車は
目的地に着く
『さて、
ここからは。』
『はは、歩きだね。』
山の中で
人間がいなければよかったのだが、
“原則、人間が空を飛ばない”ので
飛んでいけないし、
私らの能力を使おうにも
少なからず、周囲に影響が出る
『・・・はぁ、はぁ。』
『萃香、
やっぱ止めないか?』
顔色がどんどん悪くなっていく。
『い、いや、
大丈夫、大丈夫。』
虚勢だ、正直、
墓参りなんて行きたくない
でも、千年も引きずったままじゃ
正直、気持ち悪いし
吹っ切らなきゃ・・・
『萃香っ!?』
あれ?あ、足が進まない
『なぁ、相棒、
今じゃないんだよ、
また、別な時に来ようよ。』
『勇儀に心配されるようじゃ、
この萃香様、
老いたねぇ。』
『ふざけんな、
そんな事聞きたくない。』
身体を抱えられ、
歩って来た道を戻り出す
『まて・・・待てってば。』
『駄目だ、
こんな今にも
泣きだしそうな鬼を、
ほっとけるか。』
あぁ、コーナーミラーに映る私は
『・・・どうして、
こんな顔なんだい?』
もぅ、ぐしゃぐしゃに泣きながら、
震えている私は
泣き出しそうな鬼?
否、泣いているではないか
『ゆうぎぃ。』
『萃香、
今じゃないんだよ、
きっとそうだ。』
あぁ、お前も泣いてるじゃないか
『・・・勇儀、
降ろしてくれ、
歩ける。』
『嫌だ。』
千年も前の筈なのに
長年連れ添った
友人を失ったような感覚が
私達を包み込む
『なぁ、降ろしてくれぇ。』
『いやだっていってるだろぉ。』
『すすんでないんだよぉ。』
『わかっているぅ。』
見ている
見えている
そう
“なにも書いていない墓標が
目と鼻の先にあるんだから”
『大丈夫ですかっ!?』
え?人間?こんな山奥に?
▽
ほっそりしているのに、
がっしりしている
あぁ、こんな奴だったな
『珍しいですね、
“源頼光と藤原保昌”の、
名無し墓標に来られる方なんて。』
『あんたは?』
『俺ですか?
俺はこの近辺出身なんですよ、
季節変わりに、
あの墓標を掃除に来ている者です。』
『そうか、墓守さんかい。』
『でもあぶなかったですよ?
季節は変わりましたけど、
この辺りは急激に温度が下がり、
“低体温症”で、亡くなられる方が
後を絶たないので。』
『おっと、
それじゃぁ?』
『はい、お二人の防寒着では、
間違いなくなっていたでしょう。』
『・・・そのまま、
死ねればよかったのかな?』
『萃香!!』
『・・・萃香?
失礼ですが
“お名前”は?』
名を教える事は、
支配される事を許す事に等しい
『・・・伊吹、萃香。』
『おぃ。』
『・・・すると、
貴女は“星熊童子”ですね?』
『・・・バレてるのか、
なら言っておこう、
私は“星熊 勇儀”だ、
間違えんな。』
『そうでしたか、
私は
・・・私は、
物好きが講じて
この地区の役場から
“史跡の保守”をしています、
まさか、
“幻想郷”の鬼に会えるとは
人生、
なにが起こるかわかりませんね。』
▽
囲炉裏を囲い、
鍋をつつく
『た、食べますねぇ。』
『あ?
あぁ、駅弁程度じゃ
全然足りなくてね。』
『・・・(ズズッ)。』
『萃香さん、
大丈夫ですか?』
『・・・萃香、
後で腹ごなしに付き合え。』
『・・・いいよ。』
『いやいや、
やめてくださいよ、
雪崩とか、山崩れとか
溜まった物じゃないので。』
『なら、酒だ、
酒よこせ。』
『・・・いらない。』
『勇儀さん、落ち着いて下さい、
萃香さん、
兎に角お休みになってください。』
▽
布団に潜りこみ、
横になったまま膝を抱える
『・・・っぐ。』
当たり前、そう、当たり前なのだ
千年も前の事
人間は精々50~60年の頃だ
『わかってた・・・わかってたけど。』
拭っても拭い切れない
止まる事を辞めた涙は
未だ枯れ知らずだ
『え?萃香さんを?』
〈えぇ、
連絡が取れないの
そちらで探して貰えるかしら?
文屋なんだから
出来るのでしょう?〉
『いやいや、さとりさん?
ここ“現代”ですよ?
幻想郷じゃないんです、
はいそうですね、と
やれないのが今の私達なんです、
用事がありますので
またにして下さい。』