「皆さん待ってましたよ」
到着後直ぐに生徒たちを迎えたのは災害救助で目覚ましい活躍をしている、スペースヒーロー13号。彼もここ雄英の教師の一人だ。
「早速中に入りましょう」
13号に案内され、生徒たちは大きなドーム内へと入っていく。その先に待っていたのは…
「すっげー!USJかよ!?」
予想を遥かに超えた場所_テーマパークのように幾つものエリアが集結してできた巨大な演習場だった。生徒たちの興奮度は一気に増していく。
「えー、始める前に、お小言を一つ二つ…」
「うわぁ…懐かしい」
13号の前置き話が始まったと同時に、食堂での同じ反応をする空。
目覚めてからしばらくの間、寝てばかりの生活で刺激のなかった毎日。しかし今日は、救助訓練をする舞台を前にして、やっと雄英高校に戻ってきたのだと、実感し、これ以上も無いくらい清々しい気分に変わる。
(初めてここ訓練した時、実際の人を相手にした訓練に焦りすぎてチームを組んだ子たちと連携ができなかったんだよな…。“あの子達”は今三年生になってるのか、成長してるんだろうな…)
(あ、それとそれと、その時も相澤先生が担当で、訓練後こっ酷く改善内容を言い渡されたっけ…ははっ、ほんとに懐かしいや)
「おい柊。思い出に浸るのはいいが、話を聞け」
「す、すみません!」
表情だけで話聞いていないのを見抜かれる空。相変わらず、生徒一人一人の心情を読むのが上手いなぁと、苦笑いしながら感心する空。
「そんじゃまずは…」
開始の合図を相澤が唱えようとしたその時
突如として、USJのいくつかの照明が火花を散らせ、中央地点にある噴水が飛沫をあげて波打ち立つ。
噴水の水が不可思議な流れ方をし始めると中心部分から黒紫色のモヤのようなものが螺旋状にが出現する。
「「「!!」」」
その違和感にいち早く気づいたのは相澤、13号、空の二人。モヤの中に人の顔がはっきり現れたのを視線の端で捉えた瞬間、相澤は完全にそれらを脅威と見なした。
「ひとかたまりになって動くな!」
相澤の突然の命令口調の大声に戸惑いを見せるのは、空以外の生徒全員。空も相澤に遅れはしたものの即座に視線を凝らし、敵の姿を確認する。
「13号、生徒を守れ!」
「なんだアレ?まさか入試の時みたいに、もう始まってるぞパターン?」
「動くな、あれは敵(ヴィラン)だ!」
ゴーグルを掛け、戦闘態勢を取った担任の姿を見て、生徒たちはそれが虚言ではない事実を知る。敵(ヴィラン)その単語ひとつで、生徒たちの緊張感は最大限にまで一気に跳ね上がった。
「敵!!?バカだろ!ヒーローの学校に入り込んで来るなんて!アホすぎるぞ」
「侵入者用センサーが作動していないところを見ると、敵の中にワーブワ系の個性持ちがいるね」
「あぁ」
空の意見に同意を示す轟。
「それに適当にここを選んで現れたわけじゃない。校舎から遠く隔離されてる、すぐに救援が来れない場所…その上私たちがこの時間にここに来ることを知っていた。…切島くん残念だけど彼らはタダのバカじゃないよ。用意周到に準備してる」
空の的確な分析に、生徒の多くが額から汗を流し固唾を飲む。相澤は自分だけ戦場に飛び込み、自分一人が敵全てを相手にしている間に、生徒たちを逃がすつもりのようだ。
「先生私も戦います!」
「お前は来るな。例え大きな戦力だとしても、病み上がりの生徒を戦わす気はない」
「それはそうですけど…でも少しくらい無理し…」
「それで二年前どうなった」
相澤の空を制するための真剣な声。突然の話題転換に彼女は驚く、やはり知っている、と。
「俺たちヒーローはな、あの二年前の事件を今でも悔やんでる。だから、お前は絶対来るな」
二年前の事件、それは空が意識不明となった原因。空が何があったのかを幼馴染二人にすら一切語ろうとしない話だ。
「……わかりました。ご武運を」
空がそう告げた直後、相澤は敵陣へ飛び込んでいった。一見相手の個性を消す個性を持つ相澤は、一対一の戦闘スタイルの方が相性が良いと思われがちだが、大勢対一こそ利点は多く、イレイザーヘッドの得意分野である。
相澤が突っ込んだ敵陣は端から一人残らず叩きのめされ続けている。
「いやだな、プロヒーロー、有象無象じゃ歯が立たない」
生徒たちから一番離れた場所に居る、手を模したマスクをする細身の青年が悔しげも無く呟くが、空たちには当然聞こえない。
次々を敵を戦闘不能にしていく相澤の見事な体術を一目見た後、生徒たちは避難を一刻も早く遂げるため、急いで出口ゲートに向かう。
「させませんよ」
イレイザーヘッドの一瞬の瞬きの間を見計らって、ワープ系個性を持つ
即座に13号が生徒たちを守る為、戦闘姿勢をとる。
「初めまして、我々は敵連合。僭越ながら、この際ヒーローの巣窟_雄英に入らせていただいたのは、平和の象徴_オールマイトに息絶えていただきたいと思ってのことでして」
敵ながら異様に紳士的というか、言葉遣いが非常に丁寧。しかし、その会話の中に聞き流せない内容がある。
(オールマイトを殺す?こいつら、今日の授業にオールマイトが来ることを知っていたのか…。学校側しか知らない情報を知っている、ということは……)
「ですが、わたしの役割はこれ」
黒紫色のモヤが広がる前に、13号は宇宙服の腕についたキャップを取り外し、個性であるブラックホールでモヤを吸い込もうとするが、それよりも前に飛び出した人物が二人居た。
二人の攻撃により、モヤの前には火炎の匂いが漂い、爆風が吹き荒れる。
「その前にやられるってことは考えなかったのか!?」
切島の声。目で見えるのは爆発。前に出たのは切島と爆豪だと、視界で捉える前に理解する空。
二人が前に出る前に、13号が戦闘態勢を取っていたことを知っている空は、直ぐに二人へ向けた大声をかける。
「二人とも早くどいて!」
が、空が13号の個性発動を促すための声も虚しく、その一瞬の遅れがモヤを広範囲に行き渡らせてしまう。
逃げ場は…………ない。