名探偵コナンVSフルメタルパニック   作:リューイ

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 翌日、かなめはごく普通に登校していた。

 

 いつもの通学路を何時もの時間、かなめが歩いていると。途中で宗介が立っている。かなめを待っていたのか神妙な顔をしてかなめを見つめている。

 

「あっ、ソースケ、おはよ。」

 

 宗介は挨拶も返さず、いつもと様子が少し違い、かなめは珍しいなと思った。

 

「千鳥、実は悪い知らせがある。あの痴漢の件だ。」と宗介は前置きしてから「昨晩、毛利が襲われた。」と言う。

 

「うそっ、蘭が」

 

 かなめはショックのあまり足下から崩れ落ちそうになる。

 

 しかし今は自分がたじろいでる場合じゃない。何より蘭の事が心配だ。かなめは宗介に詰め寄る。

 

「それで蘭はっ、蘭は無事なの?」

 

「命には別状ない、だが残念だ、どう説明していいのか、俺には分からない。」と一瞬顔をそらすが生来の真面目な気質からかすぐにかなめときちんと向き合い説明を始めた。

 

「下校時、通学路付近の公園で毛利は異様な扮装の変質者に出会い。抵抗する間もなく麻酔薬の類のものをかがされ昏倒させられ……」

 

「ひどい。」一体どんなひどい目に合ったのか、かなめは蘭の今を想像し、息をのみ、涙ぐむ。

 

 だがその間にも宗介の説明は続いて行く。

 

「ポニーテールにさせられてしまった。」

 

 一瞬の沈黙が生まれる。

 

「……は、いまなんて?」

 

 かなめは一瞬自分の耳が馬鹿になってしまったのではないかと疑った。

 

「ポニーテールにされてしまった。」

 

 しかし宗介から帰って着た言葉は先ほど聞こえたものと一緒だった。

 

 一体何の冗談なのだとかなめが宗介を怒鳴りつけようとした時、かなめを呼ぶ声がした。

 

「かなめちゃん、おはよう。」

 

 声の主は蘭だった。彼女は手を振りながら何時もどおり天真爛漫な笑顔でやって来た。違うのは髪型がポニーテールになっている事だけだ。赤いリボンで結ばれたポニーテールは蘭が小走りで着ていることもあり本当に馬の尻尾の様にゆらゆらと揺れていた。

 

 蘭が傍までやって来ると蘭のポニーテールを指し、「何よ、これ?」と盛大に気が抜けたかなめはおざなりに訊く。

 

「見てわからんか?」

 

「ポニーテールよ。」

 

 宗介と蘭がまるでコントの様にポンポンと答えを返した後、蘭が「針金と接着剤で固められてるみたいで一晩たっても戻らなかったのよ。」とあまり気にしたようなそぶりもなくあっけらかんと言った。

 

「それだけ?」

 

「うん、怖かったけど、髪を結ばれただけで、眠ってたのも数分程度でお医者さまも体にも全く影響ないって。」

 

 その言葉と様子に蘭の無事を実感したかなめは胸をなでおろす……が宗介にふつふつと怒りがわいてきた。彼に悪気が無い事は分かる。しかし心配が大きかった分、落差がある。

 

「ソースケ。」

 

「あぁ、君も不可解だろう。かつて怪獣の着ぐるみを着た殺人犯が居たそうだが、それとも違う。犯罪の発生率が異様に高いこの米花町でおいてもこんな事件説明できん。」

 

 宗介は然もかなめも同意見であるかのように宣うが全然違う。彼女は怒っていたのだ。

 

 バチン、とかなめは通学鞄からハリセンを取り出し宗介の頭を思い切りはたく。

 

「痛いじゃないか。」

 

「うっさい‼バカ‼ 伝えかたっていうものがあるでしょうが!! マジで心配したんだから!!」

 

 理不尽な怒りとわかりつつも、かなめは怒鳴らずにはいられなかった。

 

 それからかなめは半ば宗介を無視するように蘭に話しかける。

 

「それにしても蘭、ほんとに大丈夫なの? 今日ぐらい休んだ方がよかったんじゃない?」

 

「髪型が戻らないこと以外、体は何ともないから大丈夫。」

 

「けど、蘭の家のお父さんとお母さんも心配してるんじゃない?」

 

「うん、そうなんだけど、家に居ても家事ぐらいしかやることないし……」

 

 蘭は「それに」と思い出したように苦笑する。

 

「家で預かってるコナン君が物凄く心配してて、私が家にいるとあの子も家に居るってきかなそうだったから。」

 

「そう、蘭は大変ね。けど辛くなったら、ちゃんと休むんだよ。」

 

 かなめは蘭を気遣いながら以前合った眼鏡に蝶ネクタイの少年の顔を思い出すのだった。

 

 

 2

 

 

 昼休みの帝丹小学校、一年生の教室でコナンは周りの一年生が近づきがたくなるぐらい機嫌が悪かった。

 

 原因は昨日、蘭が痴漢に襲われたことだ。

 

 コナンにとって蘭はただの居候先の優しいお姉さんではない。なぜならばコナンはある犯罪組織に薬物で体を小さくされた蘭の幼なじみで高校生探偵の工藤新一だからだ。

 

 彼にとって蘭は幼馴染と言うだけではなく、とても大切に思っている女性だ。

 

 故に今回の事件はまさに掌中の珠を傷つけられそうになったようなものなのである。

 

 なのにこうして学校でじっとしてないといけない現状がコナンに苛立ちを募らさせていた。

 

「クソ‼」

 

 コナンは本日何度目に成るか分からない悪態をつく。

 

「ちょっと、江戸川君、何があったのか知らないけど、いい加減にしなさいよ。子供たちも怖がってるわよ。」

 

 もと犯罪組織の一員で処刑されそうになりコナン同様、薬で小さくなって組織から逃げてきた女、宮野志保。現在灰原哀と名乗っている少しウェーブがかかった茶髪の中々な美少女がコナンにそっと耳打ちする。

 

「えっ。」

 

 コナンははっと正気に返ったかのように周りを見回す。すると同級生のおにぎり頭の元太、ソバカス顔の光彦、おかっぱ頭の歩美がコナンの様子を遠巻きに見ていた。

 

「あっ、わりぃ、ちょっと気がかりなことがあってな。」

 

 コナンが謝ると子供は現金な物すぐにコナンの周りに集まって来た。

 

「もう、コナン君、ほんとに怖かったんだから。」

 

「ほんと、ほんと、鬼みてーに目つき悪かったぜ。」

 

「ええ、全くです。」

 

「わりぃ、わりぃ。」

 

「で、何があったの? どうせあなたの事だからまた事件なんでしょうけど。」

 

 子供たちに責められるコナンに哀はけだるげに理由(わけ)をとう。

 

「……」

 

「そうですよ、理由(わけ)を聴かせてください。」

 

 子供たちからも催促されると口が重かったコナンも理由を語りだす。

 

「蘭姉ちゃんが昨日変質者に襲われたんだ。」

 

「蘭お姉さんが!?」

 

「ウソだろ!?」

 

「無事なんですか?」

 

 子供たちにも動揺が走る。

 

「麻酔で眠らされて……」

 

 皆息をのみ嫌な沈黙が生まれた。

 

「ポニーテールにされちまったんだ!!」

 

「…………はっ!?」

 

 それは誰が言ったのか、あるいは全員だったのか、とりあえずコナン以外は全員同じ気持ちだった。

 

「それ、何かのギャグ?」

 

 哀が代表して訊いた。

 

「こんなギャグ言うかよ。」

 

 取りあえず哀はコナンの言う事を信じ、話を進める事にした。

 

「それで他に怪我とかは?」

 

「いや、怪我とかはしてねぇ、ほんとにポニーテールにされただけみてぇだ。」

 

 子供たちと哀は取りあえず蘭の無事に安堵した。

 

「そう、良かったっていうのも変だけど、怪我が無くて安心したわ。」

 

「あぁ。」

 

 コナンが少し落ち着きを取り戻すと今度は子供たちが義憤に駆られたのか騒ぎ始めた。

 

「なぁその犯人俺たち少年探偵団で捕まえてやろうぜ。」

 

「いいですねぇ。」

 

「歩美もサンセー。」

 

「ダメだ! 遊びじゃねぇんだぞ。」

 

 コナンは子供たちを停めるがそう簡単に納得しない。

 

「遊びなんて思ってねぇよ。」

 

「歩美も蘭お姉さんの事心配なんだもん。」

 

「僕だってそうです。」

 

「灰原、お前からもなんとか言ってやってくれ。」

 

 コナンはたまらず哀に助けを求める。

 

「別にいいんじゃない。こう言う類の変質者って夜に出るって相場は決まってるから早めに家に帰せば問題ないんじゃない。」

 

 哀の思わぬ援護に少年探偵団の子供たちは嬉しそうに笑い、期待の眼差しをコナンに向ける。

 

「たくっ、しゃあねぇなぁ、明るいうちだけだぞ。」

 

 根負けしたコナンは頭をかきながら少年探偵団の活動を了承した。

 

「おい灰原、おめぇも来いよ。責任とって子供たちの面倒見るの手伝ってもらうからな。」

 

「分かってるわよ。けど捜査するにも人手が増えるのはあなたにとっても良い事でしょう。髪型を変えられただけなら傷害罪には当たらないだろうし、警察もあまり人員を割けないでしょうし。」

 

「バーロー、例え髪の事はそうでも蘭は麻酔で眠らされてんだ、少なくとも暴行罪、事に寄っちゃあ傷害罪、犯罪だよ。警察もちゃんと捜査してくれるさ。」

 

 そう言うとコナンは子供たちを如何捜査するか作戦を練り始めた。哀はその背中を見ながら「あたながそれ、言っちゃうんだ。」といつも蘭の父、毛利小五郎にバンバン時計型麻酔銃を撃ちまくっているコナンにツッコミを入れるのだった。

 

 

 3

 

 

 放課後の帝丹高校、かなめは授業が終わるとすぐ帰ってしまった蘭の事を思う。

 

 今日の彼女はいつもと違った。本人は大丈夫、元気だと言っていたが物音に反応したり、死角から来たクラスメイトのお調子者、オノDこと小野寺孝太郎の側頭部に回し蹴りを当てたりと言う事があった。

 

 この時、謝る蘭にオノDは回し蹴りで翻ったスカートの影から下着を見られたからゼンゼンオッケーとサムズアップして見せていた。もしかしたら蘭に変に罪悪感を持たせない様にと言う気遣いなのかも知れなかったが、余にも下品だったので園子とかなめでしこたまハリセンでしばきたおされていた。

 

 やはり蘭はいろんなことに少しだけ過敏になっていた。しかし彼女が嘘を吐いているわけではない。元気なのもそれほど気にしていないのも本当なのだろう。だがやはり心のどこかに少しの傷を残しているのだ。

 

 (やっぱり、許せない。)

 

 髪をポニーテールにするだけ言葉にしてしまえばそれだけの取るに足らないバカげた変態だが、確かに蘭の心に傷を残したのだ。かなめの心に怒りがわいてくる。

 

 

 「ソースケ、何とか犯人捕まえられないかな?」

 

 かなめは帰りの道すがら宗介に相談することにした。普段何かと騒動を起こすがそれでもやはりかなめにとっては頼りになる男なのだ。

 

 「うむ、俺も同じことを考えていた。他校の生徒だけでなく本校の生徒にまで手を出したのだ。安全保障問題担当・生徒会長補佐官として見過ごすわけにはいかないと考えていた。」

 

 宗介は林水会長が雑用をさせる為に作った適当な肩書きを持ち出しかなめに同意した。

 

 「今はまだ無害なレベルだが犯行がエスカレートして行き一般市民にも被害が出るかもしれん、野放しにしておくのは危険だ。ここは早急に犯人を捕らえ、厳しく拷問した末に、真の目的を吐かせるべきだ。」

 

 「ソースケの意見に同意するのも癪だけど、前半は賛成。被害が拡大する前に捕まえたいわ。だけど後半は却下よ、却下! 変態の目的なんて知りたくもない!!」

 

 「だが今後の事を考えれば、やはり拷問して真の目的を……」

 

 かなめに一度否定されたが宗介はこれからの為にもと食い下がるがかなめに膠も無く否定される。

 

 「だから却下だっていてるでしょうが!! それよりも作戦立てるわよ。」

 

 「分かった君がそこまで言うのなら今回は拷問は無しにしよう。それでどんな作戦で行くんだ。」

 

 やっと話が進みかなめは待ってましたとばかりに作戦を開帳する。

 

 「作戦は単純。私がおとりになるから、犯人が近づいて来たらソースケが捕まえて。」

 

 「ダメだ、危険すぎる。」

 

 かなめは簡単でしょと可愛ウインクするが宗介にとってかなめは護衛対象でもあるのだ、危険にさらすことは避けるべきなのは基本なのだ。宗介は了承しかねた。

 

 「……心配してくれてありがとう、でも、あんたの本業の敵に比べたら痴漢なんってどうってことないでしょ、ソースケの事信じてるから頼んでるんだよ。」

 

 しばし逡巡した宗介もかなめの意思が固い事を悟ると了承するしかなかった。

 

 「……分かった。常に傍にいて俺が何としても君をまもろう。」

 

 「ありがとう、ソースケ、けど常に傍にいるのはダメ。ソースケが近くで睨みを効かせてたら流石に犯人も襲って来ないわ。」

 

 「そうか、解った。ならばクルツほどの腕は無いが離れた位置からライフルで犯人を狙撃して息の根を止めよう。」

 

 宗介は第二のプランを提示するがそれもかなめは「殺しちゃダメ!! 狙撃もなしよ!」と却下する。あれもダメこれもダメでは流石の宗介も打つ手がない。しかしかなめの言っている事も間違いではない。故に色々難しいのだ。

 

 宗介はかなめの要望に応えるために必死に頭をひねる。そしてある装備を思い出す。最近新作した特殊装備だ。

 

 「千鳥、俺が近くに居てはダメなのではなく、近くにいると気づかれてはダメと言う事だな。」

 

 「まぁ、そうね。」

 

 「それならいいものが在る。最近入手した物品に改良を施したものでな顔は勿論体型も隠せるうえ、各種センサーにデジタル通信機を内蔵しライフル弾もストップする防弾性を与えた一種の強化服だ。うまくすれば現代戦の様相を一変させる都市迷彩装備となるだろう。」

 

 「へぇ、そうなんだ。」

 

 「あぁ、丁度実践テストがしたかったんだ。部屋に置いてあるから取りに行こう。」

 

 「うん。」

 

 宗介の自信ありげな態度にかなめは一抹の、いや、大変な不安を感じたが、今日は宗介の提案を何度も没にしていたので止める事が出来なかったのだった。

 





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