【三次創作】HITMAN『世界線を超えて』-Alternative Edition-   作:◆xXUOeG5OIg

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 まず最初に、令和元年おめでとうございます。そして、平成にさよならを。皆さま、令和でもどうかよろしくお願いいたします。皆様のご多幸をお祈り申し上げます。
 ご本家様をはじめ、読者の方に期待していただけているようなので、続きを書いてみました。
 今回のお話はHITMAN「湯煙に紛れて」の別アプローチとなります。


HITMAN『湯煙にまぎれて』Alternative

『おはよう、47』

 

『今回の目的地は日本の道後温泉よ』

 

『最近は忙しかったから、温泉につかってゆっくりしてもらいたいところだけど、残念ながら今回は仕事で向かってもらうわ』

 

『ターゲットは加木屋源次郎。日本の裏社会の一角を取り仕切る山田組の経理担当で、いわゆる極道の一員の男よ。山田組が日本で行っている犯罪はいくつもあるけれど、その一つが日本国内での大麻を筆頭とした麻薬取引があるわ』

 

『アメリカの一部の州では合法化されたところも出てきているけど、薬物に対しては厳しい法を施行している日本ではまだ先のこと、いえ、アメリカのような自由で合法なものとなるのはあり得ないかもしれないわね。でも、禁じられているからこそ需要が大きいし、大きなビジネスになる。そんなわけだから、日本の裏社会においては大麻をはじめとした薬物というのは非常に高値で取引されているわ。山田組の大きな収入源の一つとも言えるわね』

 

『今回のクライアントは、その大麻の輸入先であるメキシコの“シナロイ・カルテル”のメンバーのロン・ジョリス。カルテルが持っていたアジア圏への密売ルートの一つを山田組が横取りしたらしいわ。その報復と警告を兼ねて、組の重要ポストにいる彼を暗殺してほしいとの依頼よ。彼ら自身で手を下せないこともないんでしょうけど、日本の警察が優秀なこともあって暗躍できないようね』

 

『今回ターゲットはこの道後温泉に単独で訪れているらしいわ。護衛もおらず、慰安旅行みたいだから仕事としては楽な部類かもしれないわね』

 

『準備は一任するわ』

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『道後温泉へようこそ』

 

『ここ道後は日本でも有名な温泉地の一つだから観光客は平日でもとても多い様で、まして休日ともなればとても混んでいるわ。どこのホテルも観光施設も人の目が多い分、騒ぎになった時にパニックが起きて不測の事態が起こりかねないわね。暗殺やアプローチを仕掛ける時は慎重にお願い』

 

『それと観光地ということもあって、警察も私服警官を配置しているようだし、何か起きればすぐさま警察が駆けつけてくることは間違いないでしょう。こと殺人において日本の警察の検挙率は90%近くにも及ぶから、これにも注意をお願いするわ』

 

『現地のインフォーマントによれば、ターゲットの加木屋源次郎は山の麓にあるベルツリーリゾート道後というホテルに滞在中と確認がとれているわ。ホテル内かその近辺の観光施設で接触できるはず』

 

『身辺警護の人員を連れていないようだけど、彼自身は何らかの武装を持っている可能性があるわ。念のためだけど注意して頂戴』

 

『良い狩りを、47』

 

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 駅近くのバス停にバスから降り立った私は、観光客に紛れて街を歩く。ブリーフィングでもあったように、有名な観光地なためか多くの観光客でにぎわい、そういった客向けの屋台やら商店が立ち並んでおり非常に活気にあふれていた。客寄せの声や観光客同士の喋り声、雑踏を歩く人々の足音など、とても賑やかだ。

 今回私の格好はそんな周囲に溶け込めるラフなカジュアルスーツを着ている。傍目には外国人観光客のように映ることだろう。実際、日本人だけでなくそれ以外の国の人間もちらほらみられているので、そう目立ちはしないだろう。まずはターゲットを確認することにして、私は「ベルツリーリゾート道後」に向かった。

 5分ほど歩くと「ベルツリーリゾート道後」という看板とホテルが見えてきた。ホテルの中に入ってターゲットを探すか、それとも周辺の観光施設を探すのか。どちらを選ぶのか歩きながら考えていた私は、視界に飛び込んできた人物を見て咄嗟に人ごみに紛れ、道の片隅に止まっていた移動販売車の影に身を潜めた。

 

「あ、あそこじゃない?」

「ベルツリーリゾート道後ってあるからあそこだね、蘭姉ちゃん」

 

 危ないところだった。以前米花町での任務で要注意人物として挙げられていた毛利小五郎と江戸川コナン、いや、高校生探偵の工藤新一が歩いていたのだ。幸運にもこちらが先に発見できたのでこちらの存在には気が付いていないようだ。どうやら目的地はターゲットのいると思われるベルツリーリゾート道後らしい。他に同伴者と思われる女性二人がいるということは、旅行で訪れているようだ。これは正直困ったことになった。ただでさえ暗殺に慎重を期す必要があるロケーションでの任務だというのに、ここにきて要注意人物とかちあうとは。私は予定を変更し、ひとまずホテルの周辺でターゲットを探すことにした。

 

「いらっしゃーい!名物、土産物、何でもそろっているよー!」

「温泉といえば温泉まんじゅうは如何?土産にも丁度いいよ!」

 

 温泉街にお決まりとされる光景、土産物や名物を売る店が並ぶ通りを歩きながら、私はターゲットを探す。勿論要注意人物の二人を警戒しながら、ではあったが。そしてあちらこちらに目を配りながら歩いていくと、やがて髭面の体躯の大きな男がいた。

 

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『いたわ、加木屋源次郎よ。厄介な状況になる前に手早く片付けてしまいましょう』

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 ターゲットは顎に手を当てながら、何やらポスターを前にして店の店員と話し込んでいた。

 

「じゃあ、ここにいけばいいんだな?」

「はい。と言っても開催までまだ時間がありますし、うちで時間を潰していかれては?」

「いや、他の連中に先越されちゃ堪らないからな、さっさと列に並んでおきたい。俺の好みの奴が売り切れてたら困る」

 

 ターゲットは店員に見送られると足早にどこかへと向かっていく。

 それを目で追いかけていると、店員が声をかけてきた。

 

「お客さんも気になりますか?道後スイーツフェスタ」

「ああ、教えてくれるか?」

「勿論ですよ。この道後温泉近辺のスイーツ店からパティシエが集まって、共同で今日限りの店を開くんです。ここでしか食べられないスイーツを沢山ご用意しておりますよ!」

 

 差し出された広告を見ると、ここから少し離れた場所が会場に指定されているようだった。

 

「ふむ、会場には少し距離があるようだが…」

「もしよろしければあっちにあるレンタル自転車を借りてはどうでしょうか?電動アシスト付きなので坂道でもすいすい登れますから」

「それは助かる」

「いえいえ。先程のお客様も電動自転車をレンタルするそうなので、丁度いいかと思ったので」

 

####アプローチを発見####

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『外見にあわず、加木屋源次郎は大の甘党みたいね。入念に確認をしている上に急いで向かうくらいだから相当かも。でもこれは好機ね。貴方は接客に自信があるかしら、47?うまくやれば、おいしいお菓子でもてなしてあげることができるわよ』

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 時計で開催されるまでの時間を見れば、およそ1時間余りといったところか。移動の時間を差し引きしても、それだけの時間があれば色々と準備をすることができるだろう。まずはスイーツフェスタの会場になっている店に行かなくてはならない。情報を教えてくれた店員に礼を言って、私はその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会場につくと、そこでは開催に向けた準備で忙しく従業員が動き回っているのが見えた。ターゲットをはじめとした気の早い観光客達はすでに列をなして並んでおり、従業員が声を張り上げて誘導をしている。だが、生憎と私は客として入るつもりはない。このスイーツフェスタは近隣に開催が知らされているようで、下手に動かずにいると江戸川コナンに発見されてしまう可能性がある。出来れば姿をさらさなくて済む従業員に変装しなくてはならない。内部の様子を窺えば、かなりの修羅場となっているようだ。

 

「おい、椅子と食器が予定より足りていないぞ!どうなってる!」

「今運んでます!もう少し待ってください!」

「配膳はきちんとやれよ!」

「人手がちょっと足りないので応援お願いします!」

 

 侵入経路を探して店の横手に回ると、丁度良く空いている窓があった。そっと中を覗いてみればどうやら倉庫のようで、あまり人気が無い。私は周囲の状況を少し確認してから内部へと躍り込んだ。いくつもの棚や箱、ロッカーが整然と並べられ、雑多なものが段ボールに詰め込まれている。厨房や会場で使われる備品が保管されているようである。ということはうかうかしていると誰かがここに来るかもしれないので、素早く窓を閉め、入り口からは見えにくい位置に移動して周囲を改めて確認する。暫く周囲を探した私は予備品らしきエプロンと制服一式をロッカーの中に発見した。これを着れば内部でもよほど注意をされなければ紛れ込んでも問題なく行動できるはずだ。

 さて、問題はどのようにターゲットを始末するかだ。一服毒を盛るか、どこかにおびき出すか。出来ることならば事故に見せかけて暗殺した方が色々と面倒が少なくて済むだろう。店の中は人の目が多すぎるので、注意しなければ。ひとまず私は厨房に向かい、何かしらの毒物かそれに代わるものを探すことにした。

 

「急げ!時間が迫ってるぞ!」

「チョコレートはこっちに!おいこら、冷蔵庫はしっかり閉じておけよ!」

「通ります!」

「ああ、こいつも出しておいてくれ!場所は指示通りにな!」

 

 厨房はまさに修羅場真っ盛りといったところだ。トッピングなども終えて配膳を待つスイーツがトレーの上に整然と並べられ最後の仕上げを受けていたり、あるいは客に出すためのドリンクの準備に追われたり、補充用のスイーツが冷蔵庫の中に保存されたりとさまざまにパティシエ達や調理師たちが忙しく動き回っている。

 ひとまず殺鼠剤などを探したが、生憎と見当たらない。ここの衛生管理はきちんとしているのか、それとも別な場所で保存しているようだ。果物ナイフや包丁など殺傷に使えそうなものはいくつかあったが、これに頼るのは最後の手段にしたいところだ。とりあえず、手近なところに放置されていた果物ナイフを一つ拝借しエプロンのポケットの中へと忍ばせておく。

 

「ああ、接客係のか。すまんが倉庫の方からこのリストにあるもの持ってきてくれないか?地下の貯蔵庫と冷蔵庫の中にある筈だ」

 

 忙しげに働いていたパティシエの一人が私を見止めると、紙を差し出してきた。中身を見ると確かに食品が数種書きこまれている。

 

「わかりました。地下の貯蔵庫ですね」

 

 ここはひとまず接客係兼臨時の助手として仕事を果たしておくべきか。ひょっとすると何か地下に使えるものがあるかもしれないので合法的に降りるチャンスを得たと考えよう。地下1階はそのほとんどの空間が倉庫や食糧庫として使われているらしく、通路はほぼ一本道で狭かった。取り合えずリストにある通りの品を探して貯蔵庫に入った。貯蔵庫には長期保存が効く食品がかなり保管されており、またいくつもの調味料や香辛料などがまとめて保存されていた。

 

####情報を入手####

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『あら、いろいろな種類のスパイスまであるのね。47、ひょっとすると使えるものがあるかもしれない。スパイスは薬としても使われたらしいけど、使い方次第で毒にもなるらしいわ』

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 ダイアナからのアドバイスに従い、貼り付けられているラベルなどに着目して調査すると、香辛料の一つとしてナツメグがそれなりの量あることが分かった。調理で使うことを前提にしているのか、瓶詰されたものが複数用意されている。なるほど、これならば使えるだろう。ダイアナに礼を言いつつ、ナツメグの瓶をポケットに複数忍ばせ、パティシエに注文された品を持って私は厨房へと戻ることにした。

 

「お、すまんな!じゃあ、接客の方に戻っていいぞ。もうすぐ開店の時間だ!」

「わかりました」

 

 パティシエに送り出された私は、計量スプーンをさりげなく拝借してから店内へと向かう。

 店内は厨房に負けず劣らず、といったところだった。既に最終チェックに取り掛かっているのか、テーブルの磨き残しがないかを調べたり、テーブルや椅子の位置を調整したり、会計機の釣銭を用意したりとそれぞれが忙しげに働いていた。表から覗けている以上に忙しいようで、見慣れぬスタッフが一人紛れ込んでいることに誰も気に留めていない。私は部屋の隅に置かれていたモップを手に取ると掃除をするふりをしながら店内の配置を確認していく。

 今回のスイーツフェスタでは一定額を支払って食べ放題ができるプランと好みのスイーツを適宜注文して食べることができるプランの二つが用意されているようだ。出来れば甘党であるターゲットには前者のプランを選んでもらいたいものだ。そうでなければ、必要な量を盛ることが出来ないかもしれない。予防策としてターゲットの電動自転車に細工することも考えたが、流石に人目が多く、細工をすればそれを咎められかねない。ともあれ、あとはターゲットがここに来るのを待つだけだ。

 

「それでは、道後スイーツフェスタ、開催です!どうぞ!」

 

 開催を告げる声と共にドアが開かれ、最初の客が入店して来る。やはり女性客が多いが、ちらほらと男性も見られる。ターゲットはと見ればまだ店の外で並んでいるようだ。焦る必要はないので、他の従業員に混じって私も働くことにした。

 そして、十人近くの客の相手を済ませた時、ついにターゲットが入店してきた。丁度良く私がターゲットの応対に出ることが出来た。

 

「いらっしゃいませ、お客様。おひとり様でよろしかったでしょうか?」

「ああ、俺一人だ。楽しみにしていたんでな、今日はたっぷり食べていくぜ」

「かしこまりました。どうぞこちらへ」

 

 私はターゲットをあいている席へと案内し、用意されていたメニュー表を手渡した。ついでに水と布巾もテーブルの上に並べて応対の準備をする。

 

 

####アプローチ完了####

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『さあ、ターゲットが来たわ。スイーツ・パーティーを始めましょう。きっと忘れられないものになるわね』

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「お客さま、ご注文はお決まりでしょうか?」

「ああ、悪いね。バイキングコースを頼む」

「バイキングコースですね、分かりました。では何から召し上がりますか?」

「じゃあ……こいつとこいつとこいつ、あとこれも一緒に。ドリンクはこれで頼む」

「かしこまりました」

 

 甘党というのは本当なようで、最初から大量に注文してくれた。オーダーを受けた私はそれに合わせてスイーツをとりわけ、皿に盛りつけていく。その時に、地下で調達したナツメグを少しずつ混ぜていく。あまり派手に盛ることはできないが、どのスイーツにも目立たないように、しかししっかりとふりかけ、あるいは混ぜていく。

 

「お待たせしました、ご注文の品になります」

「おお、待ってたぜ」

 

 早速食べ始めるターゲットだが、密かに盛られたナツメグには気が付いていないようだった。まあ、スパイスはほんの香りづけ程度に使われるので他の味や香りに紛れてしまって分からなくなるのも当然だ。よほど注意をしなければわかりはしないだろう。

 私は他の客からのオーダーにも応じながらも、ターゲットのスイーツにナツメグを盛り続ける。ほんの微量だが着実にターゲットは摂取を続けている。いい具合だ。この調子ならば目標の量にたどり着くのはそう遠くないはず。

 何度目かのオーダーを受けてルーチンのように盛ったスイーツを運んでいくと、なにやらターゲットがカメラマンのような恰好をした人間と言い争っているのが見えた。

 

「知らんな、さっさと失せろ!お前に構っている時間はないんだ!」

「いえいえ、そんなことおっしゃらずに。あまり大きな声を出さないでくださいよ。ほらみんな見てますよ?」

「クソ……てめえ!」

「あなたがお泊りのホテルでこの後お会いしましょう。そうですねぇ…午後3時にホテルの屋上の露天風呂に来てくださいよ。裸同士なら下手なこと出来ないから安心でしょ?」

「……わかったよ。じゃ、とっとと消えな」

「物分かりが良くて助かりますよ、ふふふ」

 

 どうやらターゲットに用事があったのは私だけではないようだ。というか、あのカメラマン風の男はわざわざターゲットを探してここまで来たというのか。なにやら余裕の表情で男は周囲の目を気にすることなく店から出て行った。だが、余計な詮索をしている暇はなかった。苛立ちを隠せない声のターゲットに呼ばれて、注文の品を配膳するしかなかった。まあ、あの男に関しては放置でいいだろう。

 

「御馳走さん、うまかったぜ」

 

 ターゲットは苛立ってはいたが、スイーツをやけ食いのように大量に食べることで苛立ちを発散したようだった。そのおかげでたっぷりと混ぜて提供することが出来たのでよしとすべきか。そのままターゲットは席を立ち、会計を済ませて出ていく。

 私も彼が使った食器類をまとめて片づける。本来使われる以上のナツメグが付着しているこれは万が一のことを考えると他殺の根拠となるかもしれない。だから、すぐに洗ってもらわなくては。回収した食器が流し台に運ばれたのを確認すると、私は店の倉庫に戻り元の服装に戻ると窓から外に出てターゲットの様子を見守ることにする。

 あとは結果を待つだけだ。これでもし狙ったタイミングで効果が出なければ、別な手段でターゲットを暗殺するしかない。

 まあ、不確実ではあるがあれだけナツメグを盛った菓子を食べたならば確実に中毒症状が出るはずだ。たかがスパイスの一種と思われがちであるが、ナツメグを一度に過剰に摂取すると目眩・幻覚・多幸感・興奮といった精神的な反応に加えてショック症状まで引き起こすというある種の劇物だ。それだけの量を一度に取るのは非常に難しいのだが。ともあれ、すぐには効果を示さないが、時間が経てばやがて症状として現れる。そんな状態で坂道もある道を電動自転車でスピードをだして走行したらどうなるのか。

 

 

「ううぅ、なんだってんだ……?目眩が……体、うごか……」

 

 

 

ガシャーン!

 

 

 

 派手な音共に、ターゲットの乗った電動自転車がカーブを曲がり切れずに電柱へとターゲットの体もろとも激突し、そのまま勢いのままに吹っ飛ばされる。ターゲットは受け身をとることもできないままに坂道に叩きつけられ、転がっていき、坂道の終わりでようやく止まった。手足があらぬ方向に折れ曲がり、首も明らかに異常な角度に曲がっている。坂道を血で彩ったターゲットは倒れたままピクリとも動かない。一瞬の沈黙の後に、大きな悲鳴が上がった。

 

 

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『ターゲットの死亡を確認。欲望に任せて暴食に走った結果ね。さあ、そこから脱出して』

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「皆さん、落ち着いて!騒がずに!大丈夫です!おい、本部に連絡入れろ!」

「はい!」

 

 私服警官らしき人物が応援を呼ぶのをしり目に、私はパニックで逃げ出す観光客に紛れて現場を離れた。人が多くパニックであることがこれほど助かったことはないだろう。私はそのまま道後温泉を後にした。

 

 

 

 

 

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---1時間後

 

 

 

 

 蘭と園子に誘われて訪れた道後スイーツフェスタを訪れた俺達は、だいぶ並んでやっと入店することができた。だが、生憎とスイーツを楽しむことはできなかった。事故が近くで起きたのだ。この店でスイーツを食べて、ホテルに帰るために自転車を運転していた男が事故を起こしてしまったのだ。

 

(あれは本当に事故なのか…?ハンドル操作を誤っただけ?レンタル自転車に細工がしてあったとか、アルコールを知らずに摂取していたとか、そういう原因があってもいいはずだ)

 

 すぐに警察が駆け付け、小五郎のおっちゃんも加わって捜査が始められたが、結論としてはハンドル操作を誤ったことによる自転車事故であるとされた。事故に遭ったのが暴力団の山田組の構成員ということで殺人の可能性も考えられてはいたのだが、乗っていた自転車に妙な細工の形跡は見られず、提供されていたスイーツに洋酒は少しばかり使われていたが酔っ払うほどの量が含まれてはいなかったという。第一、そんなにアルコールが含まれていれば他の客も酔っ払うし、提供する側もすぐに気がついたはずだ。事実食べた客は他にもいたが特段酔った様子は見られていないし、残ったスイーツが即座に調べられたが毒物などは特に含まれてはいなかった。

 だが、俺は納得できていなかった。確たる証拠は何一つないのだが、おかしいと勘のような何かが訴えている。

 

(なんか引っかかる……遅効性の毒?それとも、なにかアレルギーでも引き起こしたのか…いや、その程度なら事故を起こす確率は低い。被害者だけをハンドル操作が出来なくなるくらい具合を悪くさせる方法があったのか?被害者のスイーツにだけ何かを盛った?くそ、もう食器なんかは下げられて洗浄されて見分けがつかなくなっちまってる!)

 

 唯一の証拠となりそうな被害者が使っていた食器は洗われてしまっており、他の客が使っていた食器と混じってもう見分けがつかなくなっている。あとは司法解剖で何かが発見されるのを期待するしかないが、殆どただの事故として結論がついてる状態なので行われるかどうかさえ怪しいところだ。

 

(唯一の容疑者は被害者と言い争っていたあの記者くらいだけど、別に殺意まで抱いてはいないようだし…くそっ)

 

 一応任意同行を求められたが、あの様子だと事故を起こしたことに本気で戸惑っていたようだった。曰く、取材のために止まっているホテルで会う約束を取り付けたらしく、それはほかの客の証言が保証している。邪険に対応されたがちゃんと約束は取り付けられたわけで、それをふいにするかのような行動はつじつまが合わず、殺す理由にはならないだろう。もし被害者が記者で容疑者が暴力団の男だったら話は別だが、そうではない。

 他殺を示す証拠は何一つなく、事故だという証拠ばかりが詰み上がっていく。これが本当に真実なのか?ホームズが言っていた通り、あらゆる可能性を排除して残ったものが如何に奇妙でもそれが真実、つまり単なる事故だというのか?

 釈然としない思いを抱えたまま、俺は蘭たちと一緒に現場を立ち去ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミッションコンプリート

評価:☆ ☆ ☆ ☆ ☆:サイレントアサシン

 

・見事な接客     +1000 『接客係に変装して10人以上の客のオーダーに応える』

・刺激的なスパイス  +3000 『ターゲットのスイーツにナツメグを過剰に入れて食べさせる』

・ハンドルを手放すな +5000 『自転車で移動中のターゲットを事故死させる』

・種も仕掛けもなし  +2000 『江戸川コナンに発見されず、且つ他殺の証拠をつかませない』

 

 




 今回のクロスオーバー先は名探偵コナンでした。コナン君の目の前で完全犯罪をさせてみました。最も彼自身は他殺ではないかと考えていますけどね。

 今回暗殺に使ったナツメグですが過剰摂取しますと本当に中毒が起こります。成人でも5g~10g(ナツメグ1,2個分)を一度に摂取すれば症状が現れてしまうとか。ただ、作中でも言及していますが5gを一度に取るのは案外大変ですし、よほどのことが無ければ、あるいは47が行ったように意図的に混ぜられていなければ一回の食事で中毒になったりすることはありません。あくまでも過剰に摂取した場合は危険があるということです。成人よりも体が小さい子供が過剰に摂取して中毒死したというケースもあるそうで、また妊婦が過剰に摂取した場合には胎児への影響が出ることもあるそうです。しかも怖いことに中毒になっても血液検査などでは異常が見られないという特徴もあります。
 ここまで聞くと危険なスパイスと受け取られかねませんが、ペッパー(胡椒)、クローブ、シナモンとともに世界4大スパイスのひとつに数えられる有名なスパイスで、カレーに使われたり、肉料理や魚料理の臭みを消すために使われることもあります。また作中にも登場したようにスイーツに使われることもあるのだとか。他にも洋の東西を問わず薬として利用されているようです。

 あらかじめ言っておきますが、この小説は殺人やドラッグとしての乱用などの法を犯す行為を推奨するものではありません。購入すればできるからと言って下手に真似をしますととんでもない事態を引き起こしてしまうかもしれません。もし面白半分で真似て事故などが起こったとしても、私は一切の責任を負いません。

 次回はまた筆がのりましたら投稿しようと思います。
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