宇宙戦艦ヤマト2202外伝 波動実験艦武蔵 後日譚   作:朱鳥洵

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 皆さまお久しぶりです!
 今回から前後編で前作の続き、そして「波動実験艦武蔵 遥か遠き起源の惑星」の前の時系列となる本編最終決戦にあたる部分を語っていきたいと思います。
 なんか注意書き多いなと思いましたか? 僕は思いました。
 それでは、短いですがよろしくお願いします。


前章 「母なる大地」

 縁の力――大いなる和。

 地球宙域に浮上したヤマトは、眼前に迫る白色彗星を睨み、エネルギーを溜め始める。

 ヤマトを包み込んだノイ・デウスーラが現出してくると、青き誇りをも巻き込んで力と化す。

『――我がノイ・デウスーラが、ヤマトを守ってくれよう』

 崩壊する艦は力となり、ヤマトを包むようなエネルギー体が稲妻を纏う。

 白色彗星の赤い帯が現れ、彗星の中から数多の艦が現れてくる。

「トランジット波動砲……発射!」

 ヤマトから解き放たれた赤き矢は、白き盾を打ち破り、その余波は多くの艦を、都市帝国が飲み込んだ惑星を粉砕していく。

 地球にまで届くそれは、宇宙に轟く希望の光。

「――ヤマトの、光……」

 地下都市のモニターでその光を目撃した有賀の呟きは、宇宙に霧散する彗星のガスへと消えていった。

 波動砲口がオーバーヒートしたヤマト。

 地球を背に立ちはだかるその艦の背後に無数の光が瞬くと、宇宙が割れる。

 氷を砕き、艦体を回して現れるいくつもの艦。

 オレンジに光らせた目、飛行甲板から飛び立つ艦載機、赤い船体の艦をもつガミラス艦隊と肩を並べるのは、船体の所々を黒いパーツへと換装されたアンドロメダ級――アキレス、アンタレス、アルデバラン。

 三艦が率いるドレッドノート級と、それを直掩する護衛艦、パトロール艦の群れはヤマトを守るように展開する。

「艦隊より入電。『地球、ガミラス連合艦隊は、これよりヤマトを援護する』」

 相原の声の直後、ヤマト艦橋のパネルにある人物の姿が映った。

『よう、古代』

「バーガー……!」

 地球式敬礼を向けるガミラス軍人、フォムト・バーガー。

『また、肩を並べる日が来るなんて思わなかったぜ』

「ああ……だが、これ以上に心強い援軍はないさ」

『そいつは良かった。俺たちの任務は、ヤマトを敵のど真ん中に送り届けること。そして地球を守り抜くことだ』

「……」

『まあそう気負うなよ古代。何もヤマトだけでやってこいって言う訳じゃねぇ。俺たちは地球防衛を任されたが、地球艦隊は違う。前線で、ヤマトの道を切り開くはずだ』

「ヤマトの、道を……」

『地球も、ガミラスも一度はヤマトに救われた。そのヤマトに、ヤマトだけにまたいい格好はさせらんねぇよ』

「すまない、バーガー」

『これで貸し借りは無しだ。行ってこい、古代。地球は、地球にいるヤツらと俺たちに任せとけ』

 通信が切れると、微細レーダーが次元の狭間から浮上する反応を捉えた。

 ヤマトの四方に浮上した次元潜航艦が牽引ビームを接続し、ヤマトを異次元の狭間へと引き込む。

 その前方ではアキレスとアルデバランがそれぞれカラーリングの異なるドレッドノート級と接続して宇宙に消えた。

「義弥さん」

 有賀の側に立つ柑奈が袖を引っ張る。

「……行きましょう、武蔵へ」

 彼女の言葉に頷いた有賀は、人混みの中を駆け出した。

「がんばれ……お兄……」

 兄の背中を見届けた美佳は、再びモニターに映る艦隊へと目を向ける。

 漆黒の艦への砲撃も虚しく、次々と突破されていく地球艦隊、ドレッドノート級。

 無人艦の制御を一手に引き受けるアンタレスは後方で断続的な砲撃を繰り返すばかり。

 ドレッドノートの壁の中から抜け出た真紅の艦は回避行動による降下を利用して甲板に乗せた攻撃機を発艦させた。

「いいか、古代が……ヤマトが帰る場所を守るのが俺たち使命だ。一歩も退くな、押し込め!」

 バーガーの号令と共に速度を上げたデストリア級とケルカピア級は、ドメル艦隊が小マゼランで見せた高機動戦闘を開始した。

 その隙間を縫ってガミラス艦の討ち漏らしを的確に沈めていくのは、アンタレスから発艦したコスモファルコン隊とノイ・バルグレイから発艦した艦載機たち。

 飛来した火焔直撃砲はそれを事前に察知した艦隊によって回避され、宇宙に霧散した。

 

 

地球

 電気の消えた宇宙港を進み、2人はタラップを駆け上がる。

「艦長!」

 艦橋に入ると、先程艦を降りたはずの顔が見えた。

「遅かったな、戦術長」

「お待たせしました、艦長」

 頷いた2人が席につく。

 ゆっくりと上を向く砲身から放たれる三条の陽電子が艦体を閉じ込める屋根を跡形もなく吹き飛ばし、青き星を蹂躙する艦を海へと堕とす。

 まとわりつく固定具を吹き飛ばし、抑え付けられた宇宙へと上昇するそれは、艦首にペイントされた「武蔵」の文字を輝かせる。

 灼かれる街へと突き進む武蔵は、母なる星の空を征く。

 再び平和を、自由な空を取り戻すために。

 

 

彗星帝国内部

 ヤマト到達座標にワープアウトしたアキレスとアルデバランは、ブースターとして使用したドレッドノート級を切り離して制御下に置き、迫りくる漆黒の艦隊を押しとどめる。

 無人艦のパーツを利用して急ごしらえの修理を終えたとはいえ、万全の体制ではない。

 隙の増える拡散波動砲の使用はできず、パーツを共有しているというだけで付け替えられた区画は同じ艦とは思えないほどに言うことを聞かない。

 それでも無人艦へ制御信号を送り、迫る艦隊の攻撃に耐えながら撃ち続けるのは平和への象徴として造られた旗印故か、それとも。

 ――希望の力か。

 水しぶきをあげ、異次元から浮き上がったヤマトを中心に輪形陣を組む。

「全システムを自動航法装置とリンクさせろ」

 古代の号令の後、ヤマトの微細レーダーが光を帯びる。

 防御陣形を取るアキレス、アルデバラン艦隊の更に外側、全周に造成し切れていないカラクルム級を従えたヤマトは一層速度を上げ始めた。

 

 

地球

「後部デッキに被弾あり、ダメージコントロール作動中!」

「上方よりミサイル接近!」

 船体から煙を引きながらもエンジンを強く噴かす武蔵の後方では、どこからともなく飛来したミサイルによって爆発が起こる。

「なんだ⁉︎」

「地上から……航空機……?」

 丹生の言葉の直後、白煙を引いて19機の機体が飛び去った。

「所属確認……アルタイル航空隊。本艦から下された機体のようです」

 折り返して武蔵と歩幅を合わせたファルコンは、武蔵を中心にデルタ陣形を組む。

 先頭に立つ隊長機がバンクを振ると、ファルコン隊は上方に逃れた。

「心強いな。転舵反転! ヤツらを地球から放り出す!」

 ビーム砲撃で安定翼を貫通されながらも敵を見据える武蔵は、艦首にエネルギーを蓄え始めるアポカリクス級めがけて急上昇をかけた。

 空を貫いた蒼い光の中に轟く爆音、輝く爆発。

 消え去った安定翼を切り離し、溶けた両舷を晒すようにバレルロールを仕掛けながら、長大な飛行甲板を陽電子で溶かし、抉りとる。

 燃え落ちる漆黒の空母を過ぎ去った武蔵は、その背後に展開するカラクルム級へと砲撃を始める。

「ダメです、カラクルム船体の装甲が抜けていません!」

「目的は撃破じゃない、地球から撤退させる事だ。装甲が抜けなくても撃ち続ければ抑止力にはなる。敵艦の標的を武蔵に集めるんだ!」

「義弥さん、でもそれじゃあ武蔵が持ちません……どうやってもこの戦力差は……」

「それでもやるしかないんだ、柑奈。折角建て直した街だ……もう失わせちゃいけない。帰る場所も、大切な家族も」

 砲火の雨の中を突き進む武蔵の火は、誰かの目に触れることはない。

 たとえそうだとしても、彼らは――。

 

 

都市帝国内部

 ヤマトへ迫る攻撃を一手に受けていたアキレスとアルデバランは既に満身創痍、速度も落ち始めてその進路をヤマトに譲りはじめていた。

「アキレス、アルデバラン、無人艦とともに落伍していきます」

 西条の声に頷いた古代は、振り返って相原を見る。

「相原、アキレスとアルデバランに打電しろ。貴艦らはトランスワープを用いて現宙域を離脱せよ」

「了解」

 表層の彗星を排除したとは言え、重力源は健在であった。

 BBB戦隊では突発的状況に対応し切れないと判断してのアキレス、アルデバランの派遣であったが、重力源の最中へ行き、離脱するにはトランスワープを用いるほかはない。

 黒煙と共に振り向いた両艦は、ヤマトに希望を託してドレッドノート級と共にワープした。

「『ヤマトの健闘と、無事の帰還を心より願う。地球で待つ』以上です」

「彼らの切り拓いた道を無駄にするな。両舷全速!」

 土方艦長の号令で更に速度を上げたヤマトは、艦首から青い波動防壁を纏わせて迎え撃つ敵艦隊へと向かっていく。

 迫り来るイーターl、デスバテーターの群れを主砲とパルスレーザーで葬り、ニードルスレイブを爆雷で沈める。

 波動防壁は次第に貫かれ、船体が爆炎に包まれた。

 数多の思い出、無二の仲間を犠牲にしても突き進まなければならない。

 守られるべき未来のために。愛する人が生きる明日のために。

「これがせめてもの償いだ」

 漆黒の翼、ブラックバードを駆る加藤は、ヤマトへ迫る旗艦を睨む。

「翼、見ててくれ。父ちゃん、お前のために戦って……必ず、勝ってやる。ごめんな、真琴……でも、俺はもう」

 ありったけのミサイルを叩き込み、残された機銃を叩きつける。

「もう、真琴には会えない。俺は、一度ヤマトを裏切った男だ」

 力強く突き進むヤマトの背を敬礼で見送る彼はなおもヤマトを狙う赤き剣へと向かう。

「古代、未来を頼んだ……!」

 

 

地球

「敵艦隊、本艦に砲撃を集めています!」

「損傷は気にするな、地球を離れる!」

 第三砲塔は跡形もなく、エンジンの推力も残された火砲の威力も満足なものではない。

 しかし、武蔵はまだ生きていた。

 地球を占拠した艦隊のおよそ2割を沈め、武蔵は敵艦を引きつけたまま青き星を後にせんとする。

「機関推力低下、このままじゃ重力圏すら抜けられないぞ……」

 泰平の呟きと共に、艦体が大きく揺れる。

 光が遮られた艦橋からは武蔵を抜き去るアポカリクス級の飛行甲板が見えていた。

「……なんだ……一体、何が……」

 武蔵を襲っていた砲撃は止み、ガトランティス艦隊は地球を離れていく。

「ヤマトの作戦が成功したって事なのか……?」

「多分な。そうでもなきゃ突然撤退したりしないさ」

 地球圏に留まる武蔵は、観測装置を用いて状況をモニターに映し出した。

 そこには、目覚めた滅びの方舟と離脱してくるヤマト、そして地球を脱した後コントロールを失って自滅するガトランティス艦隊の姿があった。

「……なんだよアレ……」

 有賀が息を呑む。

 何が起こっているのか、ヤマトの作戦内容を知らされていなかった武蔵のクルーには分かるまい。

 滅びの方舟が放つ一撃が月を抉る。

「――⁉︎」

 地球防衛を担っていた地球、ガミラス連合軍は既に満身創痍。

 武蔵には宇宙に出る力すら残されておらず、単艦で突撃を敢行したヤマトにすら、アレを倒す力はない。

 もしも第二射が地球に当たれば――いや、掠めただけでも地上は滅びかねない。

「……あれ? 都市帝国、移動を開始しました……予測進路は、土星です」

「土星?」

 丹生に聞き返した近藤に、次いで柑奈が報告を入れた。

「恐らく、第二射の用意でしょう。土星の核を取り込んで今度こそ地球を……」

「ヤマトの周りに、駆逐艦ふゆづき、戦艦わだつみ他数隻が集まっています」

「通信が来てる……『ヤマトは機関が臨界に達し、艦の存続も困難。乗員を退艦させ、地球へと帰投する』との事です」

 パネルに映される映像には、ヤマトから脱出するシーガルと、離れていく艦艇の姿が見えていた。

「ヤマトは、あそこで放棄するのか?」

「さあな……」

 泰平に答えた有賀は、ただモニターに映るヤマトを見つめていた。

「……動いた……」

 来島が立ち上がり指をさす先では、回頭したヤマトが遠ざかる都市帝国へと向かい始める。

「なんだよ、全員退艦したんじゃなかったのか……?」

「わだつみより報告、古代戦術長と森船務長の所在確認できず。ヤマトに残っている可能性大!」

 次第に輝きを帯びるヤマト。

 古代の意思を、人々の希望を一身に背負って立つその姿には、不思議と哀愁すら感じる。

「ヤマト……」

 席を立つ有賀の目に映ったのは、黄金の希望に敬礼を送る艦長の姿だった。

 深呼吸をして呼吸を整えた有賀もまた、ヤマトを敬礼をもって見送る。

 彼らに続いてヤマトを見送る武蔵のクルー達が抱く気持ちは、きっと同じであろう。

 宇宙に、ひとときの眩い光に消える希望の艦。

 涙ぐむ人、絶望感に打ちひしがれる人。

 様々な想いとともにヤマトは旅立ったのである。

 ヤマトが取り戻した空、夕暮れの空に佇む武蔵は、地球に帰還する友軍を迎えながら戻らない艦を待ち続けた。

 滅びの未来は変わった。

 だがこの未来は、人々が望んだものだったのだろうか――。

 

 ――前章 「母なる大地」――




 ありがとうございました。
 本編では地球侵攻の時、地球で戦っていた艦はいたのでしょうか……いたとすれば恐らくは時間断層で作られたドレッドノート級でしょうね。
 後編は第26話「地球よ、ヤマトは…」をベースにして物語が進んでいきます。これが終わるとまた「波動実験艦武蔵 遥か遠き起源の惑星」の更新を再開しますので、どうかよろしくお願いします。
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