「ちょっと待てよ」と太田が言った。「『波動砲でガミラスを撃つ』と言うけど、しかし、あれは欠陥が……」
「そうよ」と森も、「〈ワープ・波動砲・またワープ〉と連続してできないのなら星は撃てない。冥王星を撃てなかったのと同じ問題があるんじゃないの?」
「はい、もちろん」
と新見が応えて言う。
「ですが、それは〈ヤマト〉が護衛なしの一隻だけで敵に向かわねばならないときです。〈スタンレー〉ではそうでした。けれどももしガミラスの母星に我々が向かうとして、イスカンダルの艦隊が護衛に就けばどうですか? その場合は波動砲が撃てる。〈ヤマト〉がワープできるようになるまでイスカンダルが護ってくれればいいのです」
「って、いや……」
と島。新見に対して二の句が継げないようだった。けれども南部が、
「ははは、そりゃいい!」笑って言った。「それなら、『なんで』と言われてたことに説明がつくじゃないか! 一体なんで『波動エンジンの技術は渡すがコスモクリーナーは渡さない。マゼランまで取りに来い』だったのか。それだよ、それ! イスカンガルはガミラスを波動砲で消し飛ばしたいんだ!」
相原が言う。「南部さん、撃ちたいの?」
「撃ちたいに決まってるだろう」
「けど……」
「なんだ。あいつらは敵だぞ」
「うん」
「遊星を地球に投げてきたんだぞ」
「そうだけどさ」
「『そうだけどさ』じゃないだろう。やつらのせいでこっちは絶滅寸前なんだぞ。女子供が放射能の水を飲んでいるんだぞ。この状況でイスカンダルがやつらの母星の位置を教えてくれるなら、撃ちに行って何が悪い」
「そりゃ……そうかも……しれないけどさ……」
「なんだなんだなんだなんだ。相原、お前な」
と南部が言う。それを制して島が言った。
「しかしな、南部。それをやったらおれ達もやつらと同じになるんじゃないか」
「おいおい、テレビドラマのセリフか?」
「いや、そんなつもりはないが……」
「いや、そんなつもりがあるよ。くだらんドラマの主役だけが主役だから言うセリフだよ。だから状況を考えろって。今の地球はそんなことが言える状況じゃないでしょつーの。だいたいやつらは宇宙人だぞ。共存がまったくできない生物かもしれないんだぞ。それが地球を狙ってくるなら、もう滅ぼすしかないじゃないかよ」
「それはそうかもしれないけれど」
「だからなんだよ、『かもしれない』って。もしもやつらが何万シーボルトだかの放射線を浴びていなけりゃならないような
「そりゃ確かにその通りだが」
「だろう? ガミラスがブラックバスでこっちがタナゴなんだったら、波動砲を撃つしかない。それが四の五の言えたことか」
「南部さんの言うことは、間違っていないと思います」と新見が言った。「ですがそれはそれとして……」
「なんだ。まだ何かあるのか」
「はい。ガミラスは〈ヤマト〉がワープと波動砲発射を連続してできないのを知りませんでした。同様にイスカンダルもガミラスを消し飛ばしてしまいたいが〈ヤマト〉に護衛を就けられない、ということも考えられます。その場合はどうするか……」
「そんなこと今から心配することか?」
「そう言われると困るのですが、ガミラスがたとえブラックバスだとしても波動砲で全土を焼くというのはちょっとわたしはどうかという気がして……」
森が横から口を挟んで、「どういうこと?」
「いえつまり、〈ガミラス星〉にはガミラス人の他にやっぱり別の生物がいると思うんですよね。ガミラス犬とかガミラス猫とかガミラス羊みたいなのが。それをまとめて波動砲で殺すのか……」
一同がちょっと黙って考え込む顔をした。それから島が南部を向いた。
「南部、どう思う」
「またそういう話かよ」イヤな顔して、「しかしだなあ……」
言ったが、しかしその先は言葉を続けられないらしい。電子メモパッドにタッチペンでデタラメな線を引き出す。
「罪のない生物までは滅ぼせない」新見が言った。「だが地球の生物のためにもガミラスを撃たねばならないとしたら……」
相原が、「何か考えがあるの?」
「まあ『考え』と言うほどでは……それにやっぱりこんなこと、今から心配することでもないかもしれませんが……」
「とにかく言ってみろよ」
「はい」と言った。「たとえばガミラスを、波動砲充填120でなく100パーセントで撃つ、というのはどうでしょう」