敵中横断二九六千光年   作:島田イスケ

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打診

「これがその文面だ」

 

と相原は言う。〈ヤマト〉第二艦橋。主だった士官が急ぎ集められ、スクリーンに表示される文を囲むことになった。古代もその中にいる。

 

ガミラスが送ってきたという短い文章。

 

《我はガミラスである。和平について話し合いたい。当方には放射能除去装置を提供する用意がある》

 

「ただこれだけを繰り返している」

 

と相原が続けて言った。皆が顔を見合わせる。

 

誰からともなく、「放射能除去装置?」

 

「そう。コスモクリーナー……イスカンダルが持っているなら、ガミラスが持っていても別に不思議はないことになるな」

 

確かにそうだと古代は思った。しかし……。

 

「嘘に決まってる」島が言った。「と言うより、罠だな。もしそんなもの、持っていてもやつらが自分からくれるもんか。それもこんなタイミングで」

 

そうだよなあ、と思った。あまりに単純な結論なので言うと周りの者達にまた、『こいつ、やっぱりボンクラじゃないのか』という眼で見られるような気がしたけれど、言って良かったのか。「うん」「もちろん」と皆が言うので、古代も横に立つ加藤に頷いてみせた。

 

島は続けて、「おおかた、呼びかけに応えたらこっちの居場所を突き止められてワーッと襲ってくる手はずじゃないんですか? 無視無視、ほっといて行きましょう」

 

そこで新見も、「ええ、やはり潜宙艦……発進のときドリルミサイルで狙われたみたいに、八方から魚雷がやって来たりしたら、とても(かわ)し切れませんからね。一発でも喰らったら、たとえ沈められなくても……」

 

「日程に大きな遅れを出すことになる」森が言った。「ケガ人を出すと手当てできない状況はまだ続いています。やっと全部の負傷者の処置を終えたとこなんですから」

 

「潜宙艦」と加藤が言う。「やつらがここで使うとしたらそれなんですか?」

 

「その見込みが高そうだな」沖田が応える。「今はどうやらやつらにとって、潜宙艦でこちらを襲える最後のチャンスらしい。この〈ヤマト〉が戦わず、〈逃げるが勝ち〉を決め込む船とやつらは知ってる。このタイミングでこんなものを送って寄越すというからには……」

 

「でしたら、ぼくらで哨戒(しょうかい)して……」

 

と加藤が続けようとするのに南部が、

 

「いや、だからさ。とにかく無視して行きましょうよ。何も応答しなければ、やつらは何もできないんじゃないですか?」

 

「うん。だけど……」と太田が言う。「これ、どこから送ってきてんだ?」

 

「ん?」と相原。「『どこから』って?」

 

「だからどの方角の、どのくらいの距離からってことさ。ひょっとして同じものが地球に届いているのかも……」

 

「ああ。わからんが、そうかもしれない」

 

「ん? それはどういうことだ?」

 

と徳川。相原はそれに応えて、

 

「超光速通信技術は、やつらの方が我々より数段上です。ぼくらがたったの一光日離れたらもう地球と話せないのに、やつらはその何倍も遠くの相手と交信している。どこから送ってきてるにしても、地球の人もこれを読んでる見込みはあるね」

 

「え?」と森。「どういうこと? あたし達じゃなく、地球に送っている文なの?」

 

「いや、それはないだろうな。だったら木星辺りにでも近づいて(じか)に呼びかけるはずだよ。こいつはぼくらに送りながら、同時に地球の人達にも届くようなやり方だ」

 

「ってことは、つまり……」

 

島が言って、南部と顔を見合わせる。彼らを見ながら相原は言った。

 

「そうだ。ぼくらが無視して行けば、地球の市民にもそれがわかる――やつらはそれがぼく達にわかるようにこの電文を送ってきたのだと思う」

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