「どうだ。地球人どものようすは」
シュルツが言うと、通信士が「はい」と応えて、
「電文を流してすぐに反応がありました。『それは本当ですか』とか、『ガミラス万歳。あなた方を信じていました』などといったものがいくつも……」
「やつらの中の〈降伏論者〉とか〈ガミラス教徒〉なんていうやつらだな」
「まあそうでしょうね」ガンツが言う。「『本当だ』とでも言おうものなら、ピースボートがまた飛び出してくるんでしょうか」
「来るでしょう。言わなくても自分らの方で、『呼ばれている』と勝手に感じて出てくるのじゃないですか」
とヴィリップスも言う。そうだ。これまで一千隻も、軍や政府の制止を振って宇宙に飛び出してくる船がいた。それらは大抵、準惑星エリスのエリサとか、ハウメアのハウサとか、マケマケのマケサといった知性体のメッセージを受け取ったなんてなことを
無論、カルトの集団が揃って頭のネジを飛ばしただけに違いない。もちろん全部スペースデブリに変えてやったが、何よりも沈めなければ宇宙に電波を流し続けてうるさくてかなわなかったからだ。しかしどれだけそうしても、次から次に沸いて出てきた。
同じような〈愛の戦士たち〉の船が、また何隻も出るであろう。まあ今度は酸素その他が尽きるまで、〈愛〉を叫んでいればよい。
「ともかく、一般市民の耳にも入る」シュルツは言った。「それが肝心ということだ。〈ヤマト〉の乗員どもにもそれがわからんわけがない。無視して行けばどうなるか……」
「どうなるでしょうね」
「わからんが、それも我らの知ったことではないわけだ。何しろ誰もイスカンダルを信じてるわけじゃないのだろう。なんで波動エンジンでなく、コスモクリーナーをくれんのか。〈ヤマト〉が旅をするあいだ、老人や女子供が放射能の混ざった水を飲むというのに……そう言っている。マトモなやつはな。ここで我らが代わりにそれをやると言えば、黙っていられるやつはいない……」
*
「と、そういう考えなのか」ゾールマンは言った。「しかしこれで、司令はどうされるつもりなのだ」
「こちらには何も言ってきません」
と通信士。ゾールマン戦隊は〈ヤマト〉の行く手の〈大陸棚〉の縁に身を潜めたところだった。宇宙海図にはその先で〈大陸斜面〉が深く落ちているのが描かれているが、今は次元アクティブ・ソナーのピンを打つわけにいかぬのでそれを確かめることはできない。
「〈ヤマト〉が転進していきます」
次元パッシプ・ソナーが聴き取る〈音〉に耳を傾けていたソナー士が言った。
「どんどん遠ざかっていく……」
ソナーの画面を見ればなるほど、ついさっきまでまっすぐにゾールマン戦隊の潜むところに進んできていた〈ヤマト〉が急に向きを変え、
「ちっ」と言った。「やつめ。ここにおれ達がいると見当をつけたな」
「でしょうね。司令が余計なことをしなければ……」
魚雷を〈真下〉から、喰らわせてやることができた――ゾールマンもそう思ったが、
「いや、まあ、そううまくはいくまい。どっちにしてもあの辺で、〈ヤマト〉は向きを変える見込みは高かった。こうなることは計算の内だ」
「はい。もちろんそれはそうです」
「獲物は決して自分から腹を晒したりしない――それでこそ、こちらにしても仕留め甲斐があるというもの。それより司令だ。本当に、一体何を考えている?」
「さあ……今は通信で聞くわけにはいきませんし、司令にしても……」
〈ヤマト〉に知られないように、こちらに何も言うことができない。たとえ聞かれてもやつらはどうせ何を話しているかわかりはしないだろうけれども、しかしこの戦隊がどこにいるかは知られてしまう。
潜宙艦は見つかったらおしまいだ。潜宙艦同士であれば敵に知らないようにヒソヒソ通信を交わすことができるのだが、それも近距離に限られる。
どこか遠くにいるシュルツ司令には、今、〈ヤマト〉に知られぬように必要な情報をこちらに送ることはできない。こちらから聞いてみることもできない。
「まさか……」とガレルが言った。「ほんとに地球と和平を結ぶ考えなのじゃないでしょうね」
「まさかな。〈ヤマト〉を引き留めるだけのつもりだろうとは思うが」
「それにしても……ならば空母でも寄越して、〈上〉から同時に〈ヤマト〉を攻撃してくれればいいのに……」