敵中横断二九六千光年   作:島田イスケ

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親誘導

「魚雷接近! まずい、こいつは(おや)誘導だ!」

 

〈デロイデル〉の発令所内でソナー士が叫ぶ。ゾールマンはそれを聞いて血が凍るような恐怖を覚えた。

 

「なんだと!」

 

と叫ぶ。〈親誘導〉――それはこの状況で、もっとも聞きたくない言葉だった。

 

次元魚雷の誘導方には、魚雷自身が標的を捉えて進む自己誘導と、射った母艦が後ろから操る親誘導がある。

 

親誘導は標的まで近づかないとできないが、人が眼で見て手で操縦するために命中率をより高めることが可能だ。つまり狙われる側からすれば(かわ)すのはより難しいことになる。

 

ほぼ不可能に近いほどに――しかし〈ヤマト〉は、今まさに、もう確かにそれができる距離までここに近づいていた。艦首からアクティブ・ピンを放ちつつなおも迫ってきている。

 

そして、今やこの戦隊は、〈海面上〉にその姿を(さら)していた。魚雷を操る人間が眼で見て追える通常空間。

 

「いかん! 潜れ! 潜るんだ!」

 

「はい!」とガレル。「しかし今――」

 

そうだ、と思った。この船は、たった今あの銀色の戦闘機のロケット弾を喰らってしまった。致命傷でないと言え、損傷を受けてしまっている。

 

なのにここで潜航すれば、下手(へた)をすると二度と浮き上がれないことに――。

 

しかし、「魚雷を躱すにはそれしかない!」

 

「はい!」とまたガレルが叫んだ。「急速潜航!」

 

「急速潜航!」

 

操舵士が叫ぶ。通信士が他の船にも命令を伝え、六匹の〈ワニ〉はまた〈水中〉に潜り始めた。

 

だが間に合うのか? 魚雷はもう、すぐ近くまで迫っている。〈ヤマト〉の雷撃手が見る照準装置には、次元フィルターが掛けられてもいるだろう。そしてあの銀色の戦闘機――。

 

あいつだ。あいつは磁気でもってこの六隻の姿を捉え、データを〈ヤマト〉に送っているに違いない。魚雷はいくつもの〈眼〉と〈耳〉と、そして〈鼻〉まで頼りにしてこちらへと進んでいるのだ。全艦が(のが)れるなど有り得ぬこと――。

 

そう思った。そのときだった。

 

「〈バーズ〉に命中!」ソナー士が叫んだ。「〈エグゼダー〉にも!」

 

「くっ」

 

と言った。ソナー画面の中で爆発の波紋が広がり、この船にまで届いて内壁をビリビリと震わせるのが感じられる。床も下から千本の棒で突かれたように揺れた。

 

続いて〈ギャワ〉、〈ビューズドン〉、と僚艦が魚雷に殺られていく。この〈デロイデル〉にも敵の魚雷が自身もアクティブ・ピンを打ちながら迫りくるのが感じられた。

 

だが――と思った。躱せる。この魚雷は躱せる。

 

爆発に次ぐ爆発で、この辺りの〈水中〉は乱れ、もう魚雷どものソナーも〈ヤマト〉のそれも、磁気探知も効かなくなっているはずだ。そして次元フィルターを掛けた照準器も役に立たない。

 

僚艦の犠牲のおかげで今この船は敵から見えない。そのはずだとゾールマンは思った。操舵士に叫ぶ。

 

面舵(おもかじ)だ! 舵を右へ! 一杯に切れ!」

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