シュルツの乗る潜宙艇は、次元海底の窪みに潜んでエンジンを止め、じっと動かないでいた。そうしている限り〈ヤマト〉のアクティブ・ソナーの探知にかかるおそれはない。
が、それができるのもここがまだ、〈大陸棚〉の上だからだ。しかしすぐ先でそれは終わり、〈海底〉は急な斜面となって深く落ちていっている。
その上に広がる〈
おまけに、と思う。あの銀色の戦闘機が何やら拾って〈ヤマト〉に持ち帰ったらしいのをいくつかの機器が捉えている。
「何を取っていったのだ?」
シュルツが言うと、
「ひとつはスパイカメラでしょう」ガンツが応えて、「
それはそうだ。これまで地球に無人機を何千機も飛ばしてきたが、自爆装置を掛けずにおいたなんて
けれどもここ――地球人が決して来れるはずのなかった一光年離れた宇宙で、自爆装置に意味があるのか。ない。ないはずだった。やつらは冥王星までの〈五光時間〉の距離を行くにも〈二ヶ月〉かかるようなやつらであったのだ。やつらの単位で言うとそうだ。なのにその一千倍遠く離れたこの宙域で、装備に自爆装置を掛ける意味があるのか。
ない。ないはずだったのだ。しかし、とは言えそれ以前に、それを確認していなかった。確かめていれば自爆装置はちゃんと有効にしておいただろう。
しかしそうしなかった。すべき確認を
なのにそれと同じことをやってしまったのだと言える。なんと迂闊な……。
いいや、迂闊どころではない。思えばあまりに
その結果がこれなのだ。あのオキタという男に軽く
そして、空母だ。〈ヤマト〉がワープできない今なら空母の艦載機でもってあいつを拿捕できるかもしれない。だからすぐに寄越せるように手配しておくべきだったのに、それも怠ってしまっていた。
ここでやつが波動砲を撃つなんて考えてなかったからだ。撃って壊すものなんか何もないのに撃つわけがない。しかし空母をやつの主砲の射程外に置いたなら、『艦載機を出される前に』と言って撃つに違いない。それで殺られてしまうだけのことだから、空母を準備するのは無意味――そう考えてしまっていた。
だが、事がこうなるとは! 〈ヤマト〉から今、黄色と黒の戦闘機どもが飛び立って、船のまわりに陣を展開させているのがわかる。ワープができるようになるまで船を護ろうというわけだろう。どこから空母が来ようとも返り討ちにしてやるわ、と言わんばかりの陣形だ。
こうなるともう、今から空母と巡洋艦隊を来させても遅い。オキタのやつはすべて見越して策を講じていたに違いない。
驚くべき短時間でだ。あらためて思った。なんという恐るべき男。それに対してこの自分は……
なんという失態を。シュルツは己の
この敗北はただ潜宙艦六隻を失ったというだけでない。冥王星の不始末以上の不始末を自分はやってしまったのだ。結果として敗けただけでなく何か〈ヤマト〉に取られてはならないものを
「なんだ」と言った。「もうひとつは何を取られた」
「わかりませんが」と通信手。「ことによると生きた兵士……」
〈ヤマト〉と戦闘機との交信は傍受させてもいたのだが、しかしはっきり聴き取れるようなものではもちろんない。切れ
「まさか」と言った。「そんな――まさかそんな!」
声を上げただけでなく、通信手に掴みかかるところだった。通信手も慌てた顔で、「いえ、はい、まさか」などと言う。
だが全員が
「どうなるんだ?」とヴィリップスが言った。「もしもそんなことになれば……」
「知るか」と言った。「そんなことがあってはいかん……そんなことがあっては決していかんのだ!」
だがそんなことを言い合っていてもしかたがない。〈
第13章はこれで終わりです。〈ヤマト〉はまだ1光年進んだところ。イスカンダルまで残りあと14万7999光年ですが、またしばらく休みをいただきたく思います。投稿再開をお待ちください。
いずれ必ず再開を。そして地球への帰還まで、との考えもありますが、共に果たしていつになるかわかりません。完結は(完結するかどうかさえもわかりませんが)早くとも五年は先、おそらくそれより後になるかと思われます。
白状しますと正直なところ私自身、やっていけない状況ですね。どうやら読者も増えないようでありますので、いっそ中断、もしくはここで一切をやめて別のサイトで別の作を始めようかとの考えもあります。以前、感想の返信欄に書けるなら書いてみたい話として、
『独立に揺れる植民地に「自分には関係ない」と言う日本人がいて、そこに白人のヤな女がやって来て、しかしやがてこのふたりが――』
などといったことを書きましたが、どうやらそういうものになりそうなアイデアを見つけたものですから、それを先に書いてしまうのもアリかな、とか。詳細はブログに書いておりますので、リンクをたどって探して読んでみてください。