敵中横断二九六千光年   作:島田イスケ

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相身互い

ギョウザを焼く古代の前に青コードの服を着たクルーがひとり近づいてきた。そして言う。

 

「古代一尉」

 

「ん?」と言った。それから、「やあ」

 

〈ゼロ〉の整備士の大山田だった。笑って言う。「ギョウザご馳走様です」

 

「いやいや。大変だったんでしょ」

 

「ええまあ。〈ゼロ〉はまだちょっと軽くいじっただけですけど、船の修理の手伝いをずっと……」

 

「そうか」

 

と言った。ギョウザのタネを作りながら、結城その他の者達からいろいろ話は聞かされていた。冥王星の戦いでいちばん働かされたのは古代ら戦闘機乗りかもしれない。それから、何百人と出たケガ人の手当に追われた医務員など。

 

その間、〈ゼロ〉の整備士などというのは特にできることもなく、輸血用の血を抜かれていたのであるが、しかし作戦の終了後こそ出番だったと。血まみれの床を掃除し、船体に開いた穴を塞ぐ。それなしには重傷者の治療もできぬし、大ワープも始められない。

 

戦闘中に役に立たないからといって、彼らから多量の血を抜くわけにはいかなかったと古代は聞いた。今、パーティができているのは彼らの働きがあってこそだ。それがなければ二日の遅れがさらなる遅れを生んで帰還を一ヶ月も遅らすことになりかねなかったのだと。

 

この二日間、最も働かされたのが大山田のような者達であるのなら、その苦労をねぎらってパーティのホストになるのが古代の務め。そうでなければ一日も早い帰還など望めはしない。

 

だから『料理を作る係になれ』というのはわかるけれど、

 

「でも、なんでギョウザなんです?」

 

「そりゃあ、おれでも作れるだろうからだってよ」

 

「ははあ」

 

「もう家族とは交信したの?」

 

「それが」と言った。「ダメでした」

 

「え?」

 

「内戦のせいですよ。家族の誰とも連絡がつけられない状況で……」

 

「そんな」

 

と言った。大山田は力のない声で笑った。

 

「無理もないですよ。向こうは今日の交信のことなんか全然知りもしないわけだし」

 

「いや、でも、それって……今日、連絡つかないってことは……」

 

「旅の間じゅう安否不明」

 

大山田は言った。そうだ、と古代は思った。クルーの中にはそんな者もいるはずだとやはり話に聞いていたのだ。今日に連絡がつかなければ、それは家族が内戦の巻き添えで死んでしまった可能性があることになる。

 

だが、連絡がつかないだけで、無事に生きている可能性も。しかし、それがどちらなのか、確かめることはできないのだ。〈ヤマト〉は赤道を越えたのだから。次のワープで完全に地球と交信不能になる。家族の安否を知るチャンスは今が最後なのだ。

 

明日に家族が見つかっても、無事の(しら)せは受け取れない。地球の家族がいま生きてるか死んでるか、大山田はわからぬままにこの旅をすることになる。

 

それがどんな気持ちのものか、古代にはわかりようもなかった。

 

「まあ、しょうがないですよ。そんなのおれだけじゃないし。みんな多かれ少なかれ……」

 

「うん」と言った。「そうだろうけど……」

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