スヤスヤと寝息を立てるソラ。
息子と並んで寝ているこねこにんをちらりと見ながら、コゼットはふぅ…と息を漏らす。
「アクセルさん、ありがとうございます。
ふーちゃんを助けてくださって…」
コゼットは、テーブルに座っている知人にコーヒーを出すとお礼を言う。
ソラが、どこかの意地悪い子どもに傷つけられそうになった
…それを聞いた瞬間、コゼットはフライパンを落としそうになった。
幸い、迎えに行ったアクセルが途中で諌めた事でソラは『物理的』には傷つかずに済んだ。
けれども、精神的には怖い思いをした所為で、帰ってきてコゼットを見るや、再び大泣きしだして抱き付いたまま、一時間離れようとしなかった。
『ままー…ふーちゃん、だいじょぶ?
ふーちゃん、なにあったん?』
一人息子…月華が、おろおろと不安そうにソラと自分を交互に見て言った。
ソラをあやしながら、「大丈夫、大丈夫よ」と月華を安心させる口調で元気づけ、
そっと頭を撫でた。
その後…二人とも今は落ち着いて、一緒に仲良く寝ているのだ。
「まあ、今回は俺が途中で間に入ったからなんとかなったが…
次は気をつけねぇといけない」
アクセルは、コーヒーに砂糖とミルクを入れながら、冷静にそう言った。
コゼットはええ…と真剣な面持ちで彼の言葉に相槌する。
「ふーちゃんに少しの間、その世界に行かないように言い聞かせましょうか…」
「いや…フーの奴、あそこの世界をやけに気に入ってるぜ。
『行くな』って言っても多分行くだろうな」
仲良くなった奴もいるみたいだし…と付け加えると、コゼットは額に手を押し当てる。
「でも、心配です。ふーちゃんはまだ月華と一歳しか違わない幼児なんですよ。
今日みたいに悪い子に苛められたりしたら…」
「まぁ…アレはちょいと巻き込まれた感があるって感じだったがな」
あのディオという少年は、エリナという少女によからぬ事を企んでいた。
ソラは、事前にそれを察して(エクレシア仲間のカナンのような『超直感』だったら
凄いものだ)、ディオの蛮行を阻止したのだ。
その事もコゼットに伝えると、彼女は眉根を寄せた。
「そう、あの子も“能力”が…」
あまり嬉しくなさそうだ。
アクセルもまた、その気持ちに共感できる所もある。
人とは異なる能力に目覚める事が、必ずしもいい事ばかりに繋がるとは限らない。
デメリットもついてくるのだ。
特に、子どもの時期にその兆候があられると負の面が大きくなるケースが多いのだ。
「一生とはいいません。せめて、あの子がもう少し成長して、物事をきちんと理解できるようになるまで…普通の子どもの生活をさせてあげたいんです」
コゼットの表情に切実さを感じた。
同じエクレシアという立場であるゆえに、ソラがこれから成長していく過程で、
一般の子ども以上に試練が待ち構えている事を知っている。
だから、子どもの時期は少しでも平穏で楽しい時間を過ごさせてあげたいのだ。
実母であるアンナの願いをくみ取ったのか…いやもうソラを実の子どものように思っているのだろう。ソラをあまり危険な目にあわせたくない親心がヒシヒシと伝わってきた。
「……まあ、暫く様子見た方がいいな。
俺も出来る限り、フーの事面倒見てやるからよ」
「ありがとう…アクセルさん」
【それでも、もう一人のお母さんは心配でたまらない】
ソラはむくっ…と起きたのは、まだ太陽が昇りだした時間だ。
ふぁ~と欠伸をすると、きょろきょろと辺りを見回す。
「にーたん…?」
「あら、ふーちゃん起きちゃった?」
丁度、様子を見に来たコゼットが、ぽけぇ~としているソラに優しく声をかける。
「ふーちゃん、今日はゆっくりお家で過ごそうね。
私もお店お休みだから、一緒にくーちゃんと遊びましょう」
「あい!」
コゼットの提案に、ソラは嬉しそうに頷いた。
暫く、あの世界から遠ざけないと…という、母親代わりの女性の隠された意図を、
幼いこねこにんは知る由もない。
【To Be Continued… ⇒】