ふたつのステラ   作:ねことも

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彼の救済の話。
主人公(ふーちゃん)とデミックスが活躍する回。




善意は分岐を生む

 

ジョナサンは、喧嘩した。

いや、喧嘩と言うのは生温い。

最早、乱闘に近い形だった。

 

遡る事三日前、いつもの川辺へ向かっている最中、ディオの取り巻き三人がこそこそ

話をしているのを目撃した。

何かとんでもない事でも考えているのか…と警戒したジョナサンは木に隠れてこっそり

彼らのひそひそ話に耳を傾けた。

 

 

その内容を聞いたジョナサンは衝撃を受けた。

 

…ディオがエリナに言い寄ろうとした事。

 

…それをぬいぐるみで阻止したステラが、ディオから暴力を加えられようとした事。

 

…危害を加えるのを止めようとしたエリナを殴った事を。

 

血液が逆流する感覚がした。

自分のみならず、大切な人に…幼いステラにまで危害を加えるなんて。

取り巻き達に真偽を問い詰めた上で、ジョナサンは屋敷へ走り出す。

バンッと屋敷の扉を乱暴に開けると、階段に上ろうとしたディオが目に入る。

 

 

「ディオオオオオ! エリナとステラに何をしたぁあああ!!」

 

 

なんだその眼は…と冷ややかな視線を向けるディオに、ジョナサンは叫んだ。

エリナとステラにした事をディオは認めた…だが―――

 

「それがどうした? そもそもあの妖精が余計な真似をしなければ、彼女にそれなりに優しくしてやったんだ。あれこれと手解きをな…」

 

「きっさまぁああああ!!」

 

ジョナサンの右ストレートがディオの頬に直撃した。

 

 

――――ドガッ、バキッ、ドガッ

 

 

ディオは驚いた。

今まで臆してばかりだった、あのジョナサンが感情を爆発させて、己を圧倒している事に。

 

「僕が怒っているのは…幼いステラに怖い思いをさせ、エリナの顔を傷つけた事だ!

二人の心を傷つけた事だ! ディオ…二人に謝るんだ!

さもないと…僕は君を泣くまで殴り続ける!」

 

そう宣言すると、さらにジョナサンは拳を打ち付ける。

 

「この…このきたならしい阿呆がァーッ!!」

 

ディオは涙を流し出し、ジョナサンを目の敵と言わんばかりに睨み付けて叫びだす。

彼の胸倉をつかんで取っ組み合いが始まり、争いは激化するかに見えた。

 

「二人とも一体何事だッ!」

 

二人の争いに終止符を打ったのは、ジョースター卿だった。

父親(育ての親)の怒鳴り声に気づいた二人は、階上にいる彼に目が留まる。

ジョースター卿は、ジョナサンの一方的に殴っていた行為を咎めると、ディオと共に

罰を与えると命じた。

 

二人は部屋に閉じこもるのを見計らうと、ジョースター卿はふぅ…と小さく息を吐いた。

壊れた美術品や倒れた家具などの後片付けを、使用人に命じるとそのまま書斎へ足を運んだ。

 

「……おや?」

 

扉を開けると敷かれているカーペットに、ソラが座っていた。

 

「おじしゃん」

「おぉ、ステラ! 来ていたのかい!」

 

ジョースター卿は嬉しそうに笑い、ソラを抱き上げた。

 

「よしよし、何か玩具でももってこようか…それともお菓子が食べたいかな?」

「じょーちゃん!」

 

ソラは、息子であるジョナサンを探していた。

一緒に遊びたいのだろう。

ジョースター卿は、ぽふぽふとソラの頭を撫でた。

 

「ジョジョは今、反省中なんだ。だから、今日は会う事はできないんだよ」

「ぶぅ~」

 

ジョナサンと遊べないと解るや、ソラは頬を膨らませる。

拗ねていても可愛らしいこねこにんに、ジョースター卿は「すまないね」と苦笑して謝罪する。

 

「そうだ…ジョジョと遊べない代わりに、おじさんがご本を読んであげよう。

この間、ロンドンで購入した絵本があるんだ」

 

ほら、とその絵本の表紙を見せてあげると、ソラは「おぉ~」と目を輝かせる。

さぁ、おいでと膝元にちょほんと座らせると、ジョースター卿は絵本を開いて読み始めた。

 

 

 

 

 

そんなほのぼのした光景を、屋根から見ている二人の人物。

―――13機関のアクセルとデミックス

 

 

「やっぱこうなっちまうのか…」

 

「なぁ、アクセル。早くふーちゃんを連れて帰ろうぜ~。

俺、今日は【ムーンライト】の期間限定ビュッフェへ行ってお腹いっぱい食べたいんだけど…」

 

「7月一杯だろ? 明日でもいけるだろーが、我慢しな」

 

「えええぇえ~」

 

理不尽だぁー、とぶーぶーと頬を膨らませて、不平不満を漏らすデミックス。

そんな同僚の文句を軽く受け流して、アクセルは彼らの動向を見守る。

その時、黒コートのポケットにいれている携帯電話の着信音が鳴り響く。

 

「はい、もしもし…ああ、ロクサスか」

 

仲間からの連絡に耳を傾けるアクセル。

はぁーと退屈そうに、溜息を漏らすデミックスは気晴らしに屋根の上から風景を

眺める事にした。

 

「あー、のどかな風景だぁー。昼寝したいな~」

 

田舎ののんびりした風景は、どこか懐かしさを感じさせる。

ぼぉーと胡坐をかいてみている最中、デミックスの耳元にきゃんっと何かの呻き声が

聴こえた。

 

「へっ…? ねぇ、今なんか言った?」

 

アクセルに訊いてみるが、彼は連絡に集中していてこっちの声が聴こえていない。

はて…と首を傾げるデミックスの耳元にまだ何か聞こえてきた。

 

「きゃうんっ!」

 

「あっ、また…ってこれ犬の声か…」

 

キョロキョロと辺りを見回して、どこから犬の声がしているのか探す。

慎重な足取りで屋根を伝っていくと、焼却炉に辿りついた。

中央にある木箱が少しカタッと飛び跳ねた。

 

「あの木箱…まさか…ッ!」

 

視線をずらすと使用人が近づいて、今まさに火をおこそうとしているところ。

 

やばい…!

その気持ちが高まり、デミックスは咄嗟に愛用の武器、シタールを取り出して

弦を鳴らした。

 

「舞い踊れ、水達!」

 

自らと同じ姿を象った水分身が複数出現して、焼却炉へ落ちていく。

 

「な、なんだ…水!?」

 

バシャッ! といきなり上空から大量の水が落下してきて、使用人は持っていた火は

消えてしまい、全身ずぶ濡れになる。

何事だと、混乱している使用人をよそに、デミックスはフードを深々と被って

シュッと下に降りてきた。

 

「あっ…な、何者…!」

「おっさん、ペンチか何かもってこい! この中に犬がいるんだ!」

 

如何にも怪しい出で立ちの男が叫んだ事に、信じられないと訝しげに見つめる使用人。

しかし、カタカタッと揺れるガチガチに鉄鎖で縛られた木箱を目にして、ハッとして

急いで別の使用人を呼びよせる。

 

持ってきた器具で、木箱を開けると…

 

「なっ…だ、ダニー…!」

「キューン…」

 

身体に傷を負って、弱弱しく鳴く、ジョナサンの愛犬ダニーがいた。

ゴミを燃やそうとした使用人はさぁーと顔色が青く染まってしまう。

もし、あのまま焼却炉へ火をおこしていたら…ダニーは焼死していたかもしれない。

 

「何の騒ぎだ?」

 

騒ぎを駆けつけたジョースター卿が、ソラを抱きかかえてやってきた。

 

「い、いえ…こちらの男性が…あ、あれ?」

 

ダニーのピンチを救った黒いコートの男性は、あたかも最初からいなかったように

姿を消していた。

 

 

 

【善意は分岐を生む】

 

 

 

ジョースター卿は使用人達の手で、負傷したダニーを部屋まで運ばせた。

全身に痣ができ、身体を起こせない状態の愛犬の痛々しい姿に胸が痛くなる。

これを息子がみてしまったら、号泣していただろう。

 

「だにー」

 

全身に痣ができたダニーのもとに、ソラは駆け寄った。

 

「いたいん…?」

「きゅーん…」

 

よしよし、と身体を触るソラ。

 

(一体、誰がこのような非道な事をしたんだ…?)

 

ジョースター卿は、ダニーに起こった災難に怒りと戸惑いの気持ちと共に、胸にある疑問が生まれた。この屋敷の者達が、そんな酷い仕打ちを行うなんてありえない。

 

外部の人間だろうか?

犬が嫌いか、それとも…この家に恨みを持つ者の仕業かもしれない。

 

「早く、獣医を呼ぶんだ」

「は、承知しました」

 

使用人に指示したその直後、光が視界に入る。

 

「なっ…この光は…?」

 

ジョースター卿は目を疑った。

傷ついたダニーに触れているソラの手から淡い緑色の光の粒子がこぼれていた。

 

すると、どうだろう…。

ダニーの身体の痣が消え、みるみる内に傷を癒していくではないか。

 

「だにー、へーき?」

「ワンッ!」

 

さっきの弱弱しさが嘘のように、ダニーは元気にしっぽを振って、ソラの頬をぺろぺろ舐める。

ありがとう、と感謝しているようだ。

 

「おおっ…ステラ。君は…!」

 

信じがたい摩訶不思議な現象を目の当たりにしたジョースター卿は感極まる。

その場にいた使用人達も驚き、俄かにざわめく中、扉の隙間から覗く人物もまた…

 

「あの力…傷を癒しただと…!?」

 

そう…事件の犯人であるディオさえも、驚愕していた。

この一件が、後の彼が《エクレシア》との契約にこだわる動機にもなってしまうのだが、この時点で誰が予測できただろうか…。

 

 

 

【To Be Continued… ⇒】

  

 




※デミックスは、ダニーを窮地から救った!

※ふーちゃんは、ダニーを癒した!

※ダニーは、生存ルートを辿る事になった!
  
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